四天王の重要任務   作:プレイズ

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in the dark④

「き、貴様……よくもやってくれたな」

ゆらりと立ち上がったクロウペリオンが隠将を睨みつけた。

彼は首に刺さったクナイを掴んで思い切りよく引き抜く。

バチバチとショートした火花が飛ぶが、ダメージはそこまで大きくはないようだ。

「な、なんであいつまだ生きて……!」

「奴はミュートスレプリロイド。それも強化タイプのようだ」

ファントムが顔を敵に向けたまま話す。

「故に通常のレプリロイドに比べて“固い”。クナイを1本喰らった程度では耐えれるようだな」

「そ、そんな……!」

「くく、そういうことだ。俺はこの程度では死なんぞ」

にちゃり、と獰猛に笑んでクロウペリオンが牙をむいた。

「どこぞの狼藉が乱入してきたかと思えば、まさかかの隠将とはな」

「拙者は無駄な殺生は好まぬ。主が大人しく投降するなら、命までは奪わぬぞ」

「たわけ!!!」

咆哮を上げるように大声が飛んだ。

その威圧に労働者達が震え上がる。

だがファントムは微動だにしない。

「俺を誰だと思っている?」

「はて?1ミュートスレプリロイドという事くらいしかわからぬが」

「くくく。隠将ともあろう者が俺の名を知らぬとは、無知もいいところだ」

彼は侮蔑の意思を含んだ笑顔を隠将に向ける。

「俺は暴雪月花の1人ムーンフェイズ様に仕える1番部下、月下の牙クロウペリオンだ」

「ほう、それは初耳でござる」

初めて聞いたという様子でファントムが言った。

嘘ではなく、事実として彼はその通り名を知らなかった。

「ちっ、不敬な野郎だ。いいだろう、貴様はここで俺の手で血祭りにあげてやる。そしてその後は……俺に反逆したゴミどもを盛大にいたぶってやろう」

「「「ひっ!?」」」

ファントムの後ろに下がっている労働者に向けてクロウペリオンが獰猛な目を向けた。

ファントムを殺したあかつきには彼らを殺戮して粛正するつもりのようだ。

その殺気を受けて皆が恐怖する。

「心配はいらぬ。拙者がこやつを倒して主達を解放する故」

「ファ、ファントム様…!」

「お、お願いします!私達を助けて…!」

この恐ろしいボスに抗う術はもはやファントムにすがるしかない。

労働者達は皆、隠将の背中に祈っていた。

「ぐはは!笑止千万だ。どうやらこの俺に勝てると思っているらしい」

「念のため訊いておくが、主は拙者が誰かわかっているか?」

「もちろんよく知っているぞ。だがそっちの肩書きなんざ関係ねえ。“隠将”だろうと俺の力の前では地を這う事になるからな」

殺意を秘めた牙を向け、クロウペリオンが動いた。

前方の隠将に向けて突進をかける。

彼は先程までの二足歩行から一変、四足歩行になりスピードが一気に増した。

「速い!」

格段に上がった素早さにファントムが感嘆の声を上げる。

だが敵の突進は彼に当たらなかった。

ファントムも素早い身のこなしで横にステップし、見事にその攻撃をかわしていたのである。

「ふん、俺の飛びかかりをよけるとはそれなりにやるようだな」

「それなり、どころではない」

ひゅ、とさらに反転してダッシュし、ファントムが一気にクロウペリオンの背後に回る。

忍者のごとき素早さで敵との間合いが詰められ、見る間にゼロ距離に。

不意打ちで先手を取ったはずの彼は次の瞬間には隠将に後ろを取られていた。

「なに…!?」

「隙あり」

 

ザシュ!

 

得意の闇駆けが背中に決まり、クロウペリオンがよろめいた。

「ぐおおっ!?」

だが、同時にカウンターで彼は腕を後方に薙いでいた。

後ろにいるファントムを敵の豪腕が襲う。

「!」

しかしその腕は空を切った。

反撃を予期していたファントムが頭を伏せてかわしたからである。

「その程度の腕では拙者にダメージは与えられぬぞ」

「うるさいぞ黙れ!」

悪態を吐いて、クロウペリオンが両腕を大きく広げた。

そして技を繰り出す。

「ニードル・ラウンドダンス」

伸ばした両腕の先から爪が切り離されて発射された。

合計10本の鋭い爪が空中を危険な凶器と化して飛翔する。

手から切り離された事で、爪には回転がかかり、規則性の無いランダムな方向へ飛んでいく。

爪が壁に当たって跳ね返り、不規則にバウンドして空間を飛び交った。

「ふん」

ファントムはクナイを使って幾つかを弾き、そして残りは体裁きで回避した。

乱反射の飛翔攻撃にも彼は落ち着いて対処する。

「うわああ!?」

「きゃああ!!?」

「ひぃぃ!」

だが、彼の後方から悲鳴が上がった。

ファントムの背後にいた労働者達の元にも“凶器”が襲ったのである。

鋭い刃先が空中をどこにでも向かって飛翔しているのだ。

これでは室内の誰に当たってもおかしくはない。

「ぬう、小賢しい真似を」

「ふはは!お前だけが標的だと思うなよ!」

狡猾に言ってクロウペリオンがさらなる攻勢を仕掛ける。

彼の手には爪が再装填され、再び攻撃が可能となっていた。

一度爪を発射しても10秒ほど経てば彼は新たな爪を生やす事が出来るのだ。

「さあて、第2撃と行こうか」

続け様に彼は追撃の2撃目を放った。

先程と同様に鋭い爪が高速回転して空中を不規則に飛んでいく。

「これ以上勝手な真似はさせぬ!」

これに対応するためファントムが新たな技を繰り出した。

彼は懐から大手裏剣を取り出すと、それを投げた。

そして自らがそれに飛び乗る。

手裏剣に乗った彼は空中を縦横無尽に高速で移動した。

そして宙を飛翔している爪を弾き落とす。

「なにっ!?」

空中を手裏剣で滑空する隠将にクロウペリオンが驚きの声を上げる。

だがファントムはさらに技を繰り出した。

「鋼吹雪!」

高速移動する手裏剣からさらにクナイが複数打ち出される。

十字方向、そしてX字方向にクナイが飛ばされ、宙を乱舞した。

それらの“二次クナイ”がクロウペリオンの回転爪に空中衝突し、次々と打ち落としていく。

敵の厄介な飛び道具に対し、隠将はクナイを空中乱舞させる事で対応したのだ。

20もあった凶器が、一気に数を減らされ始めた。

「ちぃ!俺の爪を…!」

業を煮やしたクロウペリオンは標的を再びファントムに定めた。

手裏剣に乗って滑空する彼を強引に仕留めようとする。

「喰らえ!」

移動する彼が近くに寄ってきた所を狙ってクロウペリオンがジャンプして飛びかかった。

爪を伸ばして大きな腕を振るう。

だが、その斬撃が届く前に隠将は手裏剣から飛びすさっていた。

空を切る形で薙ぎがよけられ、その彼の背後にファントムが着地した。

「ぐっ…!」

死角を取られたクロウペリオンは慌てて振り向いた。

斬撃を喰らわないように両腕でガード体勢を作る。

だが、隠将は攻撃する代わりに別の絡め手を打ってきた。

「朧舞・空蝉」

ファントムの姿がぶれて、4つに分身する。

隠将と瓜二つの個体が何と複数現われたのだ。

1体だったはずの彼が増え、クロウペリオンは困惑した。

「な、何だこれは……!?」

「くく、どれが本物の拙者かわかるでござるかな?」

戸惑う敵に対して忍が不敵に笑った。

その余裕にクロウペリオンは苛立つ。

「俺を舐めるなよ!!」

殺気だった彼は手当たり次第に分身を攻撃することにした。

1番近くにいた個体に彼は爪を振るう。

 

ボン!

 

「なに!?」

だがそのファントムは爆発し、霧散した。

同時に頭上から“本物”が振ってくる。

 

ザシュリ!

 

「ぐああっ!」

「カカカ」

偽物を切りつけたクロウペリオンにファントムが嘲笑う。

頭上からの本物の彼が斬撃を見舞っていた。

敵が慌てて腕を振り回して薙ぐが、隠将は軽くジャンプしてそれをかわす。

もはや彼には相手の動きが完璧に読めていた。

「ぐおお、、!よ、よくも」

痛んだ身体を押さえ、クロウペリオンが息を乱す。

いくら強化型で耐久力があるとはいえ、ダメージの蓄積が溜まり、そろそろ追い込まれてきた。

「!」

間髪入れずにファントムがまた朧舞・空蝉を行使する。

再び分身が出現し、本体と見まがう4体の隠将が現われた。

「ま、また分身か…!」

「さて、次は当てられるでござるかな」

「この野郎……!」

余裕の物言いにクロウペリオンのプライドが傷つけられる。

自分は上級のミュートスレプリロイド。

並のレプリロイドとは違い、尊敬と畏敬の念を持って見られるべきだ。

それが、今は好きなように翻弄され劣勢に立たされている。

こんな事が本来あってはならない。

だが、生憎相手の隠将の実力は本物だ。癪だがこのまま普通にやり合っても勝ち目は薄いだろう。

ならば――。俺は、プライドを捨てる――。

「きゃああ!?」

「ぬっ!」

突如、クロウペリオンが後ろにジャンプして飛びすさっていた。

そして、下がって見ていた労働者の内の1人を掴んで爪を突き付けた。

女性の労働者を人質に取ったのだ。

「こいつを殺られたくなかったら俺への攻撃をやめろ」

「……貴様」

「聞こえねえのか!!言う通りにしろ!!」

労働者の首元に爪を突き付けてクロウペリオンが呻った。

ファントムは内心でしまったと思った。しくじった、と。

優位に立っていた事で後ろの労働者達の事を一瞬意識から外してしまった。

その隙に敵に人質を取られてしまったのだ。

「無駄な抵抗はやめぬか!」

「うるせえ!」

敵は興奮しており、ファントムの言う事に耳を貸さない。

いや、明確に敵対している時点でこちらの言う事など聞き入れないだろう。

「武器を置いて両手を上げろ。そのまま丸腰でこっちまで来い」

「………」

ファントムはどうすべきか悩んだ。

言う通りにすれば接近した所を攻撃されてしまうだろう。

これまでの優位に立っていた状況が逆転してしまう。

「さあ、早くしろ!この女が殺られてもいいのか!」

「く…」

一瞬の逡巡。

だが、クロウペリオンは爪の切っ先を女性労働者の首筋に若干刺し始めている。

たまらず人質が声にならない悲鳴を上げた。

「ぁ、あ゛あ、、!」

「ちぃ!」

今にも突き刺しかねない状況に、ファントムは意を決した。

クナイと手裏剣を手から下に落とす。

ガシャン

彼は武器を捨てて丸腰になった。

「よーし、それでいいんだ。そのままこっちへ来い」

「………」

敵からの誘い。

大人しく応じれば人質は解放されるだろう。

しかし彼はファントムをそのままでは返さないのは明らか。

さっき散々やられた倍返しをしてくるはずだ。

「………」

無言のままファントムはクロウペリオンを見据える。

が、決心がついたように、歩を前へと進めた。

「へへっ」

降参したとも取れる行動に、クロウペリオンが笑みを漏らした。

このまま目の前まで来たら、そのまま爪であいつを刻んで報復する。

向こうが丸腰な状態ならばいくらでもやり様はあるのだ。

「………」

ファントムが彼との射程圏に入る。

逃げるそぶりは、どうやらないようだ。

「………」

さらに2歩隠将が前進する。

「よし、お前はどけ!」

「きゃ!?」

ここでクロウペリオンが人質の女性を解放する。

だが手荒く乱暴に横へ突き飛ばしていた。

「…!」

同時に、ファントムが後方へ飛ぶ。

捨てた武器をもう一度手に取るためだ。

「させねえよ!!」

しかし、それを見越していたクロウペリオンが先んじる。

完全に射程圏に入っていたファントムを巻き込むように腕を薙ごうとした。

ここで爪を振るえば、奴が退避しようがかわし切れずに確実に深手を負わせられる。

 

ザンッ!

 

切り結ぶ斬撃音が響いた。

だが、隠将の身体には傷はついていなかった。

「ぐ、お、、!?」

呻き声はクロウペリオンの喉元から上がっていた。

気が付くと、彼の喉元から刃が突き出ていたのである。

困惑した彼が、後ろを、振り向く。

「き、貴様、、、!」

「残念だったね。ゴミムシ」

すぐ傍の背後に立っていたのはルチャブだった。

己のツルハシをクロウペリオンの喉元目がけて打ち下ろしていたのだ。

既にクナイの突き刺しを受けていた箇所に向けて。

「が、、ば、か、、な……!」

硬質な彼の装甲も、一度ファントムの攻撃を受けた事で皮質が弱まっていた。

そこにピンポイントでツルハシの刃先を穿たれ、刃が貫通した。

彼にとって首は貫かれれば急所である。

敵は隠将だけだと見なしていたために、彼はルチャブの強襲を感知出来なかった。

「殺されたマリン、皆の仇討ちだ。罪に報いて地獄に落ちな」

「く、そ、ぉおおおお……!!」

せめてもの悪あがきに彼は腕を振ってルチャブを道連れに刺そうとする。

だが、それは叶わなかった。

 

ザシュリ!

 

「がっ!?」

「往生際が悪い。さっさと逝くでござる」

ファントムが彼に斬りかかっていたからだ。

敵がルチャブに気を取られているうちに、床に置いた刃を手に取って隠将がとどめを刺しに来ていた。

僅かな隙を逃さない立ち回りに、クロウペリオンはやられる事となった。

「ち、ちくしょおおおおーーー!!」

断末魔の叫びと共に、クロウペリオンの身体は爆発四散した――。

 

+++++++

 

激しい戦闘の後、採掘場に平和が訪れた。

ボスであるクロウペリオン、配下のパンテオン達はファントムによって倒され、もう労働者達を強制労働させる者はいなくなったのだ。

「かたじけない。先程は助かった」

「いいってことさ。あんたが来てくれなきゃ、今頃あたい達はあいつに全員殺されてた。だから、あんたはあたい達にとっての救世主だよ」

頭を下げてくる隠将に、ルチャブは清々しい顔で首を横に振る。

彼女としても、最後に油断したクロウペリオンに一矢報いる事が出来た。

これも、全てファントムがチャンスをくれたおかげなのだ。

 

パンテオン兵に打たれそうになった時、彼女の前にファントムが現われ、敵を討って助けてくれた。そして、彼からこの施設の詳細を訊かれた彼女は、彼に洗いざらいこれまでの経緯を話していた。半年前に突然居住区が襲撃され、彼らによって強制連行された事。この採掘所に連れてこられて強制的に労働させられ、身体を壊しかねないレベルの労働を長期間強いられた事。異を唱えた仲間が反逆者と見なされ容赦なく惨殺されてきた事――。

それらの話を聞いたファントムは、彼女に敵の討伐と仲間達の解放を約束した。

討伐にあたり、彼はそのまま襲撃するよりも闇討ちした方がやりやすいというので、ルチャブがある提案をしたのだ。それは、採掘場の明かりを消して停電を引き起こし、その混乱に乗じて敵を倒すというもの。

これまでは戦力が不足していたため実行に移せなかった作戦だったが、隠将ほどの実力者がいればそれが可能になる……とルチャブは考えた。そして、その予測は的中した。

ボスのクロウペリオンは流石に一筋縄ではいかなかったものの、彼女の機転もあり、見事に討伐を成したのだ。

「ルチャブよ。これでお前達は自由だ」

「うん、これでようやく落ち着けるってとこかねえ」

戦いが終わったのを告げるように、外からは朝日が差し込んでいた。

彼らにとっての、ここでの長い長い夜が明けたのだ。

「死んでいったマリン達にも……これで、少しはいい供養になったと思う」

犠牲になった仲間達を想い、彼女は両手を合わせて祈りを捧げる。

ファントムも目を閉じて亡き者達へ鎮魂の想いを馳せた。

(ねえマリン。あたい達、やったよ……。あんた達の仇も…討った)

仲間達を塵のように殺したボス。その仇を討ち、彼女は弔いを果たした。

死んでいった者の命には当然代えられないが、それでも残った者達の解放という大義は達成したと言えるだろう。

「さて」

一息ついた彼女は、休息を取っている隠将に礼を言った。

「本当に…本当に…ありがとうよ。あんたのおかげで、私達はこれからも希望を持って生きていける」

「そうか」

「そうだぜファントムさん!あんたは俺達の英雄だ!」

「ええ、私達にとっての救世主様よ!」

「そうだわ、かっこいいし素敵!!」

「寡黙でクールだけど、強くてイケメンで優しくて悪を討つ…!まさに私達にとっての王子様よ!!キャー!」

「………」

また女性陣から声援が飛び、隠将はむせぶように咳をする。

「ふふっ、隠将さんも意外とシャイだねえ」

「な、何を言うか。あまり調子に乗るでない」

彼は咳払いし、表情を隠すように後ろを向いた。

その様子を見てルチャブは可笑しそうに笑った。

こうして、エネルゲン水晶採掘場でのミッションは無事成功に終わったのであった。

これまで投稿された話で好きな話はどれですか?※アンケートの結果で今後の話の展開やキャラの偏りなどに影響が出る事はありません。あくまで皆さんの感想を知りたいために実施するアンケートですので^_^

  • 第1章:稀少資源ギラテアイトを奪取せよ
  • 第2章:敵本拠地を急襲せよ
  • 第3章:エネルゲン水晶発掘所を攻略せよ
  • 第4章:水没した図書館を攻略せよ
  • 第5章:スカイビルでの戦い
  • 第6章:四天王VS暴雪月花
  • その他個別に好きな箇所があればこちらへ
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