四天王の重要任務   作:プレイズ

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水中花②

「何で本の中に宝石が…?それもこんな水の中に」

彼女は水没した本棚に思いもしない物を発見して驚いた。

ギラテアイトが隠してあるのならまだわかるが、宝石が収めてあるとはまさか思わない。

「もしかすると、敵はギラテアイト以外にも貴重品を隠し持っているのかもしれないわね」

人差し指を顎に当てて、レヴィアタンは推測する。

敵がギラテアイトを秘密裏に保有しているのは、それを売りさばいて儲けを得るためである。

ならば、高値で売れる物なら他にも隠し保有している可能性がある。

この宝石もその内の1つになりうるだろう。

(なるほど。だからわざわざ水の中に手を込んで収めてあるのね)

頷いた彼女は、今一度その宝石を見つめた。

美しくも妖しい光がきらきらと瞬いている。

「これはコハクかしら?シトリン?それともトパーズ…?」

この宝石が何の宝石かを彼女は考え始めた。

黄色い光を放っている所からすると、おそらく彼女が言った物の中のどれかだと思われる。

「フフっ、それにしても綺麗……」

しっかりカットして磨かれている宝石に彼女はうっとりする。

魅惑的な光沢が妖将の関心をくすぐり、将は無意識に表情を崩していた。

こういう煌びやかな宝石の類いに彼女は弱く、ついその輝きに見入ってしまう。

「はう……素敵……欲しい」

 

「――はっ」

 

「……だめだめ、今は任務中よ」

我を忘れそうになった所で、しかし彼女は邪心を断ち切った。

前回のミッションでの“失態”を彼女は忘れてはいない。

パタンと名残惜しそうに本を閉じて、レヴィアタンはそれを本棚に戻した。

この宝石は是非本部へ持ち帰りたい所だが、今探しているのはギラテアイトだ。

稀少資源を持ち帰る事が最優先であり、今余計な荷物を身体に抱えてはギラテアイトを持ち帰るにあたって不都合が生じかねない。

どうせミッションが完了すれば、後から部下の者達がここを訪れてくまなく調べる事になる。

「もし“他にも”宝石が本に収められているなら、後から派遣される部下達に持ち帰らせればいいわ。名残惜しいけど今はギラテアイトの探索が先よ」

気持ちを切り替えて、彼女は改めて本棚を見渡す。

今の所、持っている探査レーダーに反応は見られない。

この周辺の本棚にはギラテアイトは隠されていないようだ。

「じゃあ、もっと先に進んでみましょうか。おそらくこの先にデータ類もあるんだろうし」

ふわりと身体を上昇させた彼女は、施設の奥へと進出を再開する。

足を滑らかにバタ足させて彼女は水をかき分け始めた。

ヘッドのヒレパーツからブースト気泡が送り出され、彼女の前進を補助する。

レヴィアタンの身体機構は水中での移動に適した設計のため、巧みに水の中を泳ぐ事が可能だ。

水中にも関わらず動きが緩慢になる事はなく、むしろ陸上より速いのでは?と思わせるスピードで彼女は遊泳していく。

 

「ここで一度陸に上がりましょうか」

しばらく水中を泳いだ彼女は行き止まりに突き当たった。

上を見上げると陸地では先が続いているようだ。

彼女は敵に警戒しつつ水面から顔を出す。

周囲に敵の存在はない。

安全を確認すると、レヴィアタンは素早く水から上がった。

今度は陸地の上を歩いていく事にする。

いつでも迎撃できるようにジャベリンを構えながら、彼女は施設の先へと進んでいく。

 

「!」

しばらく進むと、前方に敵の姿が見えた。

ちょうどまた水面に入らなければいけない箇所であり、陸地の切れ目の場所だ。

水中に入るには敵をやり過ごすか倒さねばならない。

アヒル型の敵が水面の上に陣取る形で彼女を待ち構えている。

「!」

が、視線が合うやいなや、アヒル型の敵は“電撃”を放ってきた。

体内から電流を放電し、水面を伝わせて攻撃してきたのだ。

電流は水面を通って陸地まで到達する。

そのままレヴィアタンの足下にまでそれは迫った。

「たぁっ!」

だが反射神経の高い彼女は接触するより早くジャンプして回避する。

そのまま敵の上空まで移動した彼女は槍を真下に向けて突き降ろした。

「やっ!」

 

ドシュリ!

 

鋭い切っ先がアヒルの頭部を刺す。

たまらず敵はもんどり打ってひっくり返った。

甲羅を上にする形で反転し、頭部を水面に隠す。

それによって電撃もストップした。

同時に、反転した甲羅の上に足場が出来る。

スタンとそこに彼女は着地した。

「なるほど。頭が弱点ってわけね」

どうやら頭部を攻撃すると怯んで反転し、甲羅を上にして水中に隠れるようだ。

その間は電撃攻撃もしばらく止むらしい。

今のワンターンだけでそれを見抜いたレヴィアタンは、早速前方にいる2体目に向かった。

甲羅から飛び上がって彼女が進撃を開始する。

またアヒルと目が合った所で、敵が電撃を打ってくる。

だがもはや無意味な攻撃だ。

「たぁっ!」

水面に着地するよりも早く妖将の薙ぎがアヒル敵の頭部にヒットしていた。

頭に攻撃を受けた途端、アヒルは怯んで電撃を中断する。

そして頭を水中に隠して裏返る。

その甲羅の上に舞い降りるレヴィアタン。

あっという間に彼女は2体目を攻略した。

しかし、前方にはさらに3体目がいる。

今度は距離があるため、1回のジャンプでは敵までは届かない。

途中でどうしても一度水面に降りる事になる。

そうなるとその隙を狙った敵に電撃攻撃を喰らわされてしまう危険があった。

これが身体能力の高いファーブニルなら、1度のジャンプで10m先の敵にも優に到達出来るだろう。

ハルピュイアなら飛行能力を使って地に降りる事なくそこまで到達するだろう。

ファントムならば手裏剣に乗って飛んでそこまで到達するだろう。

では、レヴィアタンはどうだろうか。

彼女には飛び抜けた身体能力も飛行能力もない。

離れた場所まで行くにはどうしても少々手間がかかる。

代わりに水中移動に特化した力があるが、その水面は今敵の電撃攻撃によって封殺されている。

これでは打つ手なしか?

「や!」

だが彼女は簡単にアンサーを返して見せた。

槍の先から一発飛び道具を放ってみせたのだ。

放たれたのはホーミング弾。

これは小型のミサイルであり、彼女が狙った対象をホーミング(自動追尾)する機能がある。

もちろん敵が遠くにいようが関係ないため、遠距離の敵に有効な技だ。

「ギ!」

弱点の頭部目がけてミサイルが飛び、アヒル敵が反応する。

しかし距離があるため敵は首を逸らしてかわそうとした。

「ギイ!?」

だが、弾は外れた軌道を修正して敵の頭部を追尾していく。

このホーミング弾は一度定めた標的を追い続けるのだ。

かわしたはずがしっかりと“ホーミング”され、敵の頭部に弾が命中した。

「ギイイ!?」

慌てたアヒル敵が反転して水中に頭を隠した。

裏返った敵は完全に防衛体勢に入り、放電がストップした。

それを確認した彼女は前方にジャンプ。

 

ザブン

 

彼女のジャンプ力では1度のジャンプでは敵まで届かず、そのまま中間の水面に着地する。

だが電撃は既に止まっているため彼女が攻撃を喰らう事はなかった。

そこから素早い泳ぎで進出した彼女は再びジャンプしてアヒルの甲羅の上に降り立つ。

「フフ、じゃあ先に行きましょうか」

余裕の表情で彼女はアヒルのトラップエリアを突破した。

対応力の高い彼女の前ではこの程度の小細工は障害にはならないのだ。

 

さらに先へとしばらく泳いでいくレヴィアタン。

すると、少し開けた場所に出た。

「ここは……」

前方に何やら大きなコンピュータ端末がある。

そしてその奥に大画面モニターが設置されていた。

これはこの施設の管理制御装置だろうか。

「ちょっと触ってみましょう」

彼女は警戒しつつも、端末のキーボードを操作してみる。

電源スイッチが作動し、モニターに画面が表示された。

『どのデータをサーチしますか?』

説明文と共に、いくつかのデータ名が出てくる。

『ファシュロカのデータ』

『ノッラのデータ』

『???のデータ』

『ギラテアイトのデータ』

「該当するデータが4つ……」

彼女はとりあえず1つ選択してみた。

すると、モニター画面にどこかの場所が映し出される。

「もしかしてここがそのデータがある場所なのかしら?」

ふうん、と頷いて彼女は順に各データの場所を表示させていく。

そして4つ全て確認し終えると、彼女はそれを短時間で頭にしっかりとインプットした。

「よし、全部覚えたわ。じゃあ先へ行って探してみましょうか」

レヴィアタンはゲートをくぐってモニター室から先へと進む。

前方は入り組んだ道になっており、彼女は壁蹴りやジャンプを駆使して進んでいく。

当然途中には雑魚敵がいたが、

「はぁ!」

彼女の槍捌きによって軽く瞬殺されていく。

敵が遠くから豆弾を打ってきても、上手くタイミングを計ってかわして接近し薙ぎを見舞う。

数体の雑魚敵は全く彼女の障害にならず破壊された。

「!」

そこへ、さらなる敵が現われる。

彼女の上方からパンテオンが現われた。

通常のパンテオンより身体が大きく、パワーがありそうな個体だ。

死角である上からの登場に、彼女は間合いを取るため後方に飛びすさった。

「!」

だが、そこにも敵が待ち構えていた。

いつの間にか後方からも同様のパンテオンがやってきていたのだ。

大柄の強化パンテオンがハンマーのような武器を振り上げる。

そしてそれを後方にジャンプしてきたレヴィアタンへ目がけて一閃した。

 

ガキイ!

 

金属音がして、振り下ろしが止められる。

フロストジャベリンを盾にして彼女が攻撃をブロックしていた。

だが敵は腕力があり、その一撃は重い。

「ぐっ…」

細腕の彼女では受けただけで少々反動がある。

相手のパンテオンは普通の個体ではなく、パワーが3割増しで増強された強化型だ。

通常の雑魚パンテオンのようにはいかない。

「!」

不意に、ガードした彼女の身体が少々沈み込んだ。

パンテオンが腕の筋力をさらにパワーブーストさせ、無理矢理ねじ伏せにきたのだ。

レヴィアタンも踏ん張って抵抗するが、相手のブーストパワーの方が僅かに上回っている。

徐々に彼女の身体が沈み、強化パンテオンがハンマーを彼女の方に押し込んでいく。

「ぐっ」

苦手としている力勝負に持ち込まれ、彼女は顔をしかめた。

彼女の筋力はそれほどではないので接近戦の押し比べは不得手としている。

女性な分どうしてもパワーでは劣ってしまうのだ。

そこへ、間の悪い事にさらに新手が現われた。

先程反対側の上から振ってきたもう一体のパンテオンが加勢してきたのだ。

押し込んでいるパンテオンの逆側から妖将へとハンマーを振り下ろす。

 

ドギャ!!

 

「「!?」」

だが、パンテオンは吹っ飛ばされた。

それも1体ではなく2体ともが。

レヴィアタンは槍を弧を描くように一回転させ、強力な回転薙ぎを繰り出していた。

彼女の得意技の1つ【ウォーターサークル】だ。

これはただの回転切りではない。

先程パンテオンがやったように体内でパワーをブーストさせた一撃である。

細腕の彼女はどうしても筋力面で劣るが、この技ではそうではない。

体内で一時的にパワーブースターが作動し、瞬間的に男顔負けの強力な打撃技が打てるのだ。

これは今のような苦手とするパワータイプ向けとして実装されているもの。

レヴィアタンはそれを見事に使いこなしていた。

「はあ、私をあんまり舐めないでよね」

鬱陶しい雑魚共なこと、と彼女は気怠げにため息をつく。

今の一撃で2体のパンテオンは奥まで吹っ飛ばされ、壁に衝突していずれも大破していた。

レヴィアタンのまさかのパワー攻撃の前に彼らは粉砕されたのだ。

その残骸を見て彼女は爽快そうに笑みを見せる。

「さ、じゃあ先に行きましょ」

彼女はさらに奥へと進出を再開した。

さらに先へと進むと、途中からまた水没しており、水中へと入る。

水の中を泳いで彼女は進む。

すると、少し先に大きな部屋を見つけた。

扉がいくつもあり、どこかへと通じているようだ。

「なにかしら、ここは――」

不思議な部屋構成に彼女は怪訝な顔をする。

だが、すぐに合点がいった。

「ああ、さっきモニターで見た場所ね」

先程のモニター室で表示されていた画面。

あれはまさしくこの扉だらけの部屋を指していたのだ。

おそらく、この扉群のどこかにデータが隠されていると思われる。

「まずは……ここね」

彼女はさして迷う事なく、1つの扉を開けた。

室内に早速入るレヴィアタン。

すると、すぐに彼女は目当ての物を見つけた。

「これかしら?さっき書いてあった“データ”は」

そこには四角いメモリーに収められたデータがあった。

彼女は見事に一発で隠し場所を当ててみせたのだ。

先程、あのモニター画面に表示されていた場所は各データの収められてある部屋の場所である。

だが、ちょっと見ただけではすぐに扉の場所を覚えるのは難しい。

しかしレヴィアタンはあの短い時間に1回見ただけで各場所を完璧に頭にインプットしていた。

そのため、こうして1発回答で正しい場所を当てられたのだ。

だが決してこれは誰にでも出来る芸当ではない。

記憶力と空間認識能力に長けた彼女だからこそ出来る事であり、普通のレプリロイドであれば何度もモニターで場所を確認して迷っては時間を食う羽目になる。

これも賢い妖将だからこそ出来た事なのだ。

【ファイルナンバー425917--ファシュロカ--】

【ネオディストピア四天王の一人】

【彼はとあるレプリロイドを元に作られており、類い稀な氷を操る能力に長ける】

【その威力が苛烈な様から凍将と呼ばれる】

【彼の容姿はかなりのイケメンである】

「……これは、敵のデータかしら?それも、敵の四天王の」

データを読み上げ、彼女は思慮する。

敵側の四天王のデータのようだ。

ファシュロカという名前も以前小型端末で見たデータと一致する。

「へえ……“ネオディストピア”なんて皮肉の効いた名前ね。組織名か何かかしら。それに氷を操るって、私の能力と被ってるじゃない」

あまり快く思わない表情で彼女はデータを眺めた。

「でもイケメンっていうのはちょっと気になるかも。ふふ、私の目を満足させられるレベルの顔なのかしら?」

悪戯ッ子のような笑みを浮かべて彼女は苦笑した。

「まあいいわ。とりあえず次のデータを探しましょ」

ひとまず読み終わったので切り替えて彼女はデータを懐にしまう。

そしてすぐに次のデータを探しに向かった。

 

ほどなくして、彼女は2つ目のデータも見つけ出した。

先程のモニター画面に映った場所を彼女はほぼ完璧に覚えているため、場所を外す事がないのだ。

「よし、これで2つ目ね」

またしても一発回答で発見してみせた彼女は嬉し気に微笑む。

【ファイルデータ512286--ノッラ--】

【ネオディストピア四天王の一人】

【とあるレプリロイドを元に作られており、様々な花を操る能力を持つ】

【その美しさから華将と呼ばれる】

【艶やかで華のある様はネオアルカディア四天王の妖将に勝るとも劣らない】

「………」

彼女は無言でデータを見つめる。

「ふうん、花を操る……ね」

「っていうか、私の名前が出て引き合いに出されてるじゃない」

「美しさで私に勝るとも劣らないですって…?」

「フフ、面白いジョークだわ」

データを読んだ彼女は不敵に笑った。

“妖将”である自分に美しさでためをはろうとは片腹痛い。

自分のそれにプライドのある彼女は、内心でも実際にも笑ってみせた。

これまで投稿された話で好きな話はどれですか?※アンケートの結果で今後の話の展開やキャラの偏りなどに影響が出る事はありません。あくまで皆さんの感想を知りたいために実施するアンケートですので^_^

  • 第1章:稀少資源ギラテアイトを奪取せよ
  • 第2章:敵本拠地を急襲せよ
  • 第3章:エネルゲン水晶発掘所を攻略せよ
  • 第4章:水没した図書館を攻略せよ
  • 第5章:スカイビルでの戦い
  • 第6章:四天王VS暴雪月花
  • その他個別に好きな箇所があればこちらへ
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