四天王の重要任務   作:プレイズ

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水中花④

不意に背後から何らかの電撃を受けてしまったレヴィアタン。

彼女の肩にビリビリとした痺れが走る。

だが幸い受けた電撃の威力は大した事はなく、ダメージは少しで済んだようだ。

(まさか、あえて顔を見せて私が攻撃するのを誘発したっていうの?)

今のワンターンで彼女はこうなった原因を思考して推察した。

(攻撃を当てた私に隙が出来た所を、背後の“穴”から狙い撃って電撃を当てたってわけね)

この部屋には四方に穴が空いている。

ボスが出てきた穴にこちらの意識が向いている間に、逆側の穴から攻撃されれば完全に死角となってしまう。

おとりに引きつけられている内に攻撃を当てられてしまったのだ。

だが、彼女は過去にこれと似たような経験をした事があった。

(へえ……小賢しい真似をしてくれるじゃない。まるでこの前のデジャヴだわ)

彼女は思い出す。

前回のミッションで糞ジジイこと“老練ゾルベームグ”とやり合った時の事を。

あの敵はワームホールを駆使して雲隠れし、隙をついてくる厄介者だった。

今回のヴォルテールもそれと戦法が似通っているため、奴と同系統の敵と言える。

 

「ヒヒヒっ!」

「!」

彼女の思考を遮るように、ボスの奇声が響いた。

見ると反対側の壁の穴からヴォルテールの顔がのぞいている。

「出たわね!」

レヴィアタンはそこまで泳いで向かう。

そして彼に槍を突き刺そうとした。

「グャ!?」

だが、槍が命中する前にボスが被弾した声が上がった。

まだレヴィアタンは攻撃を当てていない。

彼女は声がした天井の方を見てみた。

すると、天井の穴から青い尻尾のような物が出ている。

ボスに近付く前に念のため“発声なし”で上の穴に1発放っていたホーミング弾がヒットしたのだ。

この尻尾はおそらく敵の身体の部位だろう。

尻尾の先を使って小さな電撃を放っていると思われる。

先程レヴィアタンが喰らったのがそれだ。

「ヒヒっ、悪いがそんなものは俺に効かない」

尻尾にホーミング弾がヒットしたヴォルテールだが、しかし彼は平然としていた。

どうやらダメージを受けた様子は無い。

「やっやっやっ!」

彼の顔に向けて、レヴィアタンはホーミング弾を3発放つ。

だが、次の瞬間敵は穴の中に頭を引っ込めてしまった。

ホーミング弾はそのまま穴に入ったが、敵に命中する事なく、ほどなくして霧散した。

暗闇の穴の奥で敵は姿をくらましてしまい、対象を見失ったホーミング弾は敵に当たる前に爆発してしまった。

「!」

技を打つと同時に、彼女はもう一度天井を見てみた。

すると、眼前に電撃を帯びた球体が迫っていた。

先程と同じように敵の尻尾の先からスパークが放たれていたのだ。

「くっ」

素早い反応で、彼女はその球体をかわす。

だが、かわしてもスパークは追尾して彼女を追ってきた。

どうやらホーミング機能があるらしい。

(追尾してきた…!このスパーク、ホーミング機能があるのね)

彼女はスパークから距離を取り、危険を回避する。

だが球体の速度自体は遅いため、見えていればかわすのはさほど難しくない。

(さっきホーミング弾が当たったのはあいつの尻尾のはず。でも被弾したのに効いてないみたい)

今し方敵の尻尾に攻撃を当てたはずだが、相手はダメージを受けていなかった。

おそらく尻尾には攻撃が通らない仕様になっているのだろう。

「!」

不意に、彼女は前方の壁から気配を感じた。

次の瞬間、長い何かが出てくる。

敵の尻尾が、彼女に向けて振るわれていたのだ。

レヴィアタンは反射的な体裁きで攻撃をかわす。

「あぐッ!」

だがかわしきれず、少々肩にかすってしまう。

バシッ!と衝撃音が響き、彼女のすぐ横の地面を尾っぽが勢いよく叩いた。

まるで鞭のような攻撃だ。

(痛いっ…!くっ、なかなか速いわね)

壁からは結構な距離があったはずだが、敵の尻尾は長いためリーチがある。

離れた距離でも敵に十分届かせる事が出来、それもかなりの高速で可能らしい。

彼女の反射神経を持ってしても避けきれなかったのだ。

敵から距離をとっていてもそれで安心とはいかないようである。

(尻尾に攻撃が通じないなら、頭部かボディに当てる他ないわ)

再び戦略を練り直すレヴィアタン。

だが、敵が出てくるのは四方の穴のどれか。その全てをカバーするのは難しい。

いくら泳ぎの速い彼女とはいえ、部屋の上下左右の4箇所に移動するのではどうしてもロスが生じてしまう。

その間に敵が穴に潜り、他の穴へと移動してしまうのだ。

(なら簡単な事よ。“あの時みたいに”氷を利用すればいいんだわ)

しかし彼女は慌てる事なく、くるんとフロストジャベリンを一回しした。

そして水中をふわりと浮き上がると、次の瞬間高速で遊泳を開始する。

彼女は突然、部屋を縦横無尽に泳ぎ回り始めた。

「フフフ」

妖しく微笑みながら妖将が室内を泳いで上下左右に横断していく。

だが、特に攻撃を放つ素振りはないようだ。

彼女はただ、室内を広く泳ぎ回っていく。

 

(ヒヒっ……あの女、さっきから何をやっていやがるんだ?)

穴の奥から様子を伺い見たヴォルテールは、妖将の行動に疑問を浮かべた。

彼女はただ周囲を泳ぎ回っているだけで、何かしてくる兆候は無い。

(…どうやら俺に対して打つ手なしってわけか。それで泳ぎ回って俺の気を引こうって腹らしい)

痺れを切らしてこちらが穴から出て行くのを彼女は待っているようだ。

それを読んだヴォルテールは、内心でほくそ笑んだ。

(…ヒヒっ、ならば俺は出て行かないぜ。このまま穴の中に入れば奴は俺に攻撃する術がないんだからよ)

妖将相手に今優位に立っているのは自分だ。

ならばとことん引きこもってじらせてやろう。

そして向こうが痺れを切らした頃に穴から顔だけ出て行って、また尻尾で“騙し討ち”してやればいい。

そうして少しずつ攻撃を当てて削っていけば、妖将相手の勝利も夢ではない。

(ヒヒッ、四天王とはいえ所詮は小娘。たいしたことはない)

彼は少々気を抜いて穴の奥でしばらく“休む”事にした。

 

一方その頃、レヴィアタンは着々と準備を整えていた。

部屋の天井周辺を泳ぎ回り、周回する。

そして、下準備をこしらえていく。

既にほぼ9割方のセットが完了していた。

(そろそろ頃合いかしら)

敵が隠れている間に上手く部屋の一帯にとある物を配置させる事が出来た。

彼女は口元を緩める。

どうやら敵はまだ気が付いていないらしい。

おそらく穴の奥でしばらく待ち、機会をうかがっているのだろう。

(やっぱりこの前のゾルベームグと同じタイプの奴だわ。こちらはもう準備完了したわよ)

部屋の天井隅に陣取ったレヴィアタンが下方を見下ろす。

くるん、とフロストジャベリンを回して彼女は切っ先を斜め下へと構えた。

そして機は熟したと号令をかける。

「フフ、さあ逃げ切れるかしら?行きなさい、私の氷達!」

 

【挿絵表示】

【挿絵提供めざしごはん様】

 

妖将の合図と共に、大量のマリンスノーが一斉に舞い散った。

まるでみぞれのように、彼女がバラ撒いた氷粒が拡散して降り注いでいく。

それらは部屋の四方に向かって飛んだ。

その先にはボスの出入り口である穴がある。

大量のマリンスノーが部屋の各穴の中へと送り込まれたのだ。

彼女の必殺技の一つ“マリンスノー”。

機雷の作用がある氷を生み出し、自由に操ることが出来る。

今回はそれを大量に設置し、一挙に操ってみせたのだ。

設置時間がかかってしまうのが玉に瑕だが、今は幸いボスが“怠けて”いる。

この期を彼女は逃さず、素早く仕掛けを施して技を発動させたのだ。

 

(ん…?)

穴の中でヴォルテールは異変に気付いた。

キラキラ光る何かが穴の中へ送り込まれてくる。

(…何だ、あれは……?)

レヴィアタンが何かの技を打ってきたらしい。

だが彼は慌てる事はない。

穴の“奥”へと逃げ込んでしまえばいいからだ。

(…ヒヒっ、だからそんなもの効かないって――)

穴の奥へ向かおうとした彼だが、その後ろから大量の氷が流入してくる。

淡い水色の氷群が、彼を襲った。

氷の機雷は穴の中を“埋め尽くすように”送り込まれており、彼が穴の奥へ逃げ込んでも、行き場が無くなってしまう。

(な、何……!どこもかしこも氷だらけじゃねえか!?)

いつの間にか、穴通路の中を氷の機雷が大量に占有していた。

妖将は数の暴力によって穴の中を氷で一斉攻撃する作戦に出たのだ。

ヴォルテールは氷を避けようとするが、あまりに数が多く、どうしても身体に当たってしまう。

「ギャアアーー!!」

マリンスノーが接触し、彼はダメージを喰らった。慌てて彼は氷で満たされた穴の中から脱出する。

「ち、ちくしょう!」

穴から這い出てきたヴォルテールが地面に這いつくばる。

まさか穴の中の空間全てを埋め尽くす攻撃をされようなど、彼は思いもしなかったのだ。

「フフ、ようやく出てきてくれたわね」

「!」

彼が顔を上げると、斜め前方にレヴィアタンがいた。

微笑んで見下げるようにこちらを見ている。

「クス、やっとまともに喰らわせる事が出来たわ」

戦法が上手くいき、妖将が微笑みを見せる。

そして這いつくばるボスを見て、彼女はある事に気付いた。

「どうやらあなた、氷が苦手みたいね」

彼の身体には全身に氷が張っており、1/3ほど凍結していた。

彼は身体を振って張り付いた氷を払い落とす。

「…ちぃ…!…よくもやってくれたな…妖将」

「あなたが穴の中で怠けているからよ。おかげで下準備がしやすかったわ」

彼女は立ち泳ぎしながら愉し気な笑みを浮かべる。

それを見たヴォルテールは憤った。

「…俺をあんまり舐めるんじゃねえぞ!」

「フフ」

「…てめえ――グエッ!?」

彼はレヴィアタンにまた尾っぽを振るおうとした。

だが、彼女に攻撃を繰り出す前に、彼から悲鳴が上がった。

彼の背後にある穴から、先程打ったマリンスノーの1つが命中したのである。

1度穴の中に送り込んだマリンスノーのいくつかを、まだ彼女は制御していた。

あえて爆発させずに置いておき、時間差で操って敵の背後から当てたのである。

「ギャアアーー!!」

氷の機雷が爆発し、ボスにダメージが通る。

同時に、また彼の身体が凍り付いた。

ヴォルテールの動きが鈍り、数秒ほど氷が張る。

「…ぎィ!よくもやりやがったな…!」

怒った彼はレヴィアタンへと“突進”する。

素早い動きで彼の身体が一気に妖将へと迫る。

だが彼女は落ち着いて横に素早く回避してかわした。

水中なので普通なら動きが鈍る所だが、彼女はヘッドパーツの補助機構により水の中でも滑らかな動きが出来る。

むしろ、水中こそが彼女の本領発揮。

 

(ふぅん、氷が苦手なのね。なら、これからあなたをもっと凍らせてあげるわ)

フフフ、とレヴィアタンの顔が愉しげに笑む。

まるで玩具を見つけた少女のような顔だ。

(じゃあお次はこの技よ)

チャキン、と槍を構えるレヴィアタン。

そして高速で回転させ始める。

キャンディーの柄のような柄を持つ槍を、彼女はくるくると回していく。

そして見る間に綺麗な氷がリング状に連なって輪を形成した。

「ハァッ!」

小気味いい発声と共に氷の輪が放たれる。

氷の輪がみるみる拡散し、部屋中に伸びた。

「…ぐお…ッ!」

迫る氷の機雷に慌てるヴォルテール。

だが、穴の中に逃げ込む事は出来ない。

先程レヴィアタンが打ったマリンスノーがまだ残っている危険があるからだ。

どうにかしてこの場で回避するしかない。

しかし、彼の身体は縦に長い。氷の輪の隙間をくぐり抜けるにはいささか無理があった。

 

バチッ

 

身体の一部が機雷と接触する。

1秒後には、氷の輪が連鎖して爆散していた。

氷属性の技を受けた事で、彼は再び全身に氷が張る。

身体が硬直した事で、彼は動きが鈍ってしまう。

「くそお…!…俺をまた凍らせやがって!」

慌てて彼は身体を振って凍結を振り解こうとする。

だが妖将がその好機を逃すはずはない。

「無駄よ!」

彼女は間髪入れずに二の矢を放った。

くるんとフロストジャベリンを回して、真打ちを放つ。

「出ておいで!」

彼女のかけ声と共に、大きな氷の龍が生み出された。

突然どこかからワープでもしてきたかのように、氷のドラゴンが現われたのだ。

「…な、何だコレは……!?」

いきなりの強烈な氷龍に、ヴォルテールが慌てる。

距離を取ろうにも、レヴィアタンの攻撃が速かったためそんな時間はない。

「…ぐ、ちくしょおう!」

だが彼は悪足掻きを見せる。

水中で身体をくねらせると、彼は方向転換して右に曲がったのだ。

氷龍の進行方向から横に逃げたのである。

「…ヒヒっ!かわせれば何てことはないぜ…!」

「フフ、無駄だって言わなかったかしら?」

「!」

妖将の余裕の笑みが彼の目に映った。

一瞬、彼女の方に気を取られた彼が、再び氷龍の方に視線を移す。

すると、氷龍も彼と“同じように”右に曲がっていた。

「な、何……!?」

彼の目が驚愕に見開かれる。

何とこの氷龍にもホーミング機能が備わっているらしい。

これでは進路を変えてもついてこられてしまう。

「う、うわあああーー!?」

迫力のあるドラゴンの顔が眼前に迫り、ヴォルテールが破顔した。

既にゼロ距離であり、回避は不可能だ。

 

ドシャアアアア!!

 

轟音が轟き、氷龍の突進がヴォルテールにまともに当たった。

「グギャアアアアーーーーッ!!」

断末魔のごとき叫び声が上がる。

苛烈な氷が全身に張り、加えて強力な衝撃を受けた事で彼は致命的なダメージを負ったのだ。

一気にHP残量が0を計時し、彼は絶命した。

そして、まるで花火のように彼の身体は爆散したのだった。

 

「フフ、綺麗な氷花火だったわ」

敵の最後の断末魔を見て、レヴィアタンが愉しげに微笑んだ。

 

ボスとの戦闘に勝利したレヴィアタンはジャベリンをくるくると回す。

そして、背中ごしに斜めに下げて格好を作った。

「逃げ切れる?」

勝利の効果音が聞こえてきそうな決めポーズで妖将がのたまう。

ヴォルテールは既に逃げ切れずに攻撃を喰らって絶命したわけだが、その意趣返しでもあった。

何にせよ、ボスを倒した事でこれでこのステージは完全攻略となった。水没した図書館を完全にクリアーしたわけだ。

「これでミッション達成ね。ま、ギラテアイトが無かったのは残念だったけど」

残念ながらこのステージには目当てのギラテアイトは見つからなかった。

彼女が携帯している探知レーダーには、半径50m以内の圏内にギラテアイトがあれば、サーチ音が鳴るように作られている。

だがステージの最後まで来たが、ここまで探知レーダーには全く反応がなかったのだ。

「ふぅ……残念だわ」

彼女は憂いた様子で口惜しがる。

だが、その代わりに敵の貴重なデータを4つも手に入れる事が出来た。

「敵のデータは色々手に入ったし、一定の収穫はあったかしら。まあよしとしましょう」

ギラテアイトは見つからなかったものの、彼女は確かな収穫を手に入れた。

懐のデータを確認し、彼女は微笑む。

「じゃ、本部に帰りましょ」

転送装置を起動させたレヴィアタンは、ふわりと軽くジャンプした。

そして、そのまま本部へと転送されていった。

これまで投稿された話で好きな話はどれですか?※アンケートの結果で今後の話の展開やキャラの偏りなどに影響が出る事はありません。あくまで皆さんの感想を知りたいために実施するアンケートですので^_^

  • 第1章:稀少資源ギラテアイトを奪取せよ
  • 第2章:敵本拠地を急襲せよ
  • 第3章:エネルゲン水晶発掘所を攻略せよ
  • 第4章:水没した図書館を攻略せよ
  • 第5章:スカイビルでの戦い
  • 第6章:四天王VS暴雪月花
  • その他個別に好きな箇所があればこちらへ
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