新たなるエネルギー①
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ここはネオアルカディアの一角に位置するとある都市。
その都市内はあまり隆盛を誇ってはおらず、市街地は所々で廃れている。
ここは以前は栄えていた都市であった。
しかし、バイルによって強力なミサイルを市街地に落とされ、甚大な被害を被った。
あの事件によって多数の犠牲者を出し、建築物の大半が崩壊した。それによって完全に興廃したのだ。
その後、徐々に復興の道を辿った都市だったが、未だ完全に元の状態には戻っていない。
「………」
興廃した都市の一角に、1つの高層ビルがそびえ立っている。
一際高く立てられたその施設は都市の新たなシンボルであり、その周囲は未だ再建途中なため遠目からは異物のようにも見える。
「どうしました、ミスター・ハルピュイア」
「いえ、少し外を見ていただけです」
背後から声をかけられ、ハルピュイアと言われた青年が振り向いた。
緑の装甲が窓からの陽光に若干反射して輝いている。
「ご覧の通り、未だこの都市の復興は道半ばです。現状、そこから見える景色の通りですな」
同席していた関係者が賢将に向けて呟いた。
窓の外には未だ再建途上の少々廃れた市街地が広がっている。
ミサイル落下による都市のダメージはあまりに大きく、一帯は当時焼け野原となった。
その爪痕は深く、月日が経った今でも克明に眼下に刻まれている。
「あれは忘れもしない、甚大な“人災”でした」
「…………」
関係者が言葉を続け、ハルピュイアが無言でそれを聞く。
今、この高層ビルの最上階にて、とある会合が営まれようとしていた。
議題は興廃した都市の再建状況の報告、そしてエネルギー問題で“未だ”困窮に苦慮している一部のレプリロイド達についてだ。
都市の人間の代表者数名と、当該レプリロイドの代表者が数名。
そしてネオアルカディア統括府を代表して賢将ハルピュイア。加えてエネルギー部門の科学者代表が出席していた。
「我々はあの日を忘れもしません。おぞましきバイルの手によって同胞が傷つけられた日を」
「私はネオアルカディアを統括する立場にいながらエックス様の命令で……職を立ち退かざるを得ませんでした。そしてみすみすバイルの強行を許してしまった。何と言って詫びればいいか、言葉がありません」
彼に対して苦悶の表情でハルピュイアは頭を下げた。
本来ならバイルを止めれる立場、止めなければいけない立場にあったはずなのだ。
しかしコピーエックスによって四天王の職から降ろされ、統括支配に口を出せなくなってしまった。
そしてバイルによるミサイル投下が引き起こされてしまった。
彼は直後に現地に駆けつけたが、時既に遅く、市街地は凄惨たる状態になっていた。
周囲一帯は全てが吹き飛び、相当な数の犠牲者が出た。
あれから約1年弱。
この高層ビルを始め一定の復興は成したものの、まだ街の半分以上は崩壊したままだ。
「貴殿が当時置かれていた状況は理解しますが、それでも貴方への心情は到底穏やかにはなれませんな」
「貴方の立場ならば、エックス様にバイルの本性を告げるなりしてもう少し何とか出来たのではありませんか?」
「本来悪人のバイルが都市の治政の中枢に関わっていた事自体、今思えばおかしいのですよ。違いますか?」
「……申し訳ありません」
参加者達が立て続けにハルピュイアへ向けて不満の声を述べる。
当然、彼もエックスにその手の進言はしていた。
しかし当時のエックスはバイルへの絶対的信頼を置いており、その彼を下げるような意見を言っても同意されずに否定されてしまった。
そればかりか、結果としてハルピュイア達3人は四天王を降ろされる形になったのだ。
その結果悲劇が起こってしまった。
「まあまあジョゼフさん。確かに“言いたい事”は山ほどありますが、ひとまず今回は置いておきましょう」
「そうですね。今回のメインの議題は稀少資源を必要とするレプリロイド達についてなのですから」
ここで、別の参加者が話題を変えてきた。
今回の会合の目的は都市の復興についての議論だけではない。
それに関しては進捗状況の確認と、再建において何か懸念事項がないかの確認程度である。
その途中で、かつてバイルを止められる立場にいた賢将に対して一部の参加者から不満が出てしまい、しばし会議が中断していた。
本来の主題はこの後話し合われる事に関してである。
この世界には、稀少資源がないとエネルギー補給ができない特殊なレプリロイド達が存在する。
その彼らについてこれから話し合いが行われるのだ。
「では、本日の本題に入りましょう。既に皆さんご存じかと思いますが、レクトル・ディンマ代表のステアラー様です」
「紹介にあずかりました、ステアラーです。本日はお集まりいただきありがとうございます」
レクトル・ディンマとは稀少資源を生命エネルギーとして必要とする特殊レプリロイド達が加入している組織の名称である。
特殊レプリロイド達がエネルギー不足によって生命を脅かされないよう、彼らの生存権を守り、そして不当に差別されないよう保守するための組織団体だ。
その代表が彼、ステアラーである。
実年齢はまだ20歳前後だが、堂々とした立ち振る舞いで人間達相手でも気後れする事なく発言する事が出来るリーダーだ。
「ネオアルカディアには既に【システマ・シエル】という画期的な永久無限エネルギー供給システムがあります。しかし、我々はその恩恵に預かる事は出来ません」
マイクを通して彼は長机の周囲に座る参加者達に語りかける。
「システマ・シエルは夢のような新エネルギーですが、“どんなレプリロイドにも適用できるエネルギー”を生み出せるわけではない。あくまで一般的なレプリロイド達にとっての有用なエネルギーを得られるシステムなのです」
約1年半前、ドクターシエルによって開発された新機構システマ・シエル。
それはエネルギー問題に苦しむネオアルカディアからすれば画期的な発明であり、それは困窮するレプリロイド達にとって革新的なシステムとなった。
バイルが死去した後、シエルが率いるレジスタンス達はネオアルカディアに帰還を果たした。
もはや無実のレプリロイド達をイレギュラーとして糾弾する者はいなくなったからである。
バイルに替わって都市の統括治政を担当する事になった新たなリーダーの元、ネオアルカディアは新体制でスタートを切っていた。
その上層部と掛け合い、シエルはレジスタンス達を都市の住人として受け入れてもらえるように交渉し、そして了承されたのだ。
彼らの住人としての権利が認められたのは、それまでの不当な糾弾が無くなったのもあるが、シエルが発明したシステマ・シエルの存在が大きかった。
ネオアルカディアでエネルギー不足問題に苦しむレプリロイド達にとって、それはまさに夢のようなエネルギー生成システムだったのである。
その功績が認められ、シエルとその仲間であるレジスタンス達は都市に受け入れられた。
しかし、ステアラーが言う様に、システマ・シエルは万能ではなかった。
このシステムが生み出すのはあくまで一般的なレプリロイドに適したエネルギーである。
だがその“通常のエネルギー”では生命を維持できない特殊なレプリロイドもこの世界には存在していた。
それが、ステアラーを代表とするレクトル・ディンマに所属する者達である。
彼らは、人間によって造られた際に特殊な内部構造で製造されており、動力エネルギー源にも汎用物ではなく稀少資源が使われていた。
そのため、エネルギー補給の際は普通のエネルゲン水晶などでは回復する事ができない。
稀少資源には特有の素因子配列、DNA構成があり、それらを満たしたエネルギー体でなければ彼らの身体に適応させる事が出来ないのだ。
彼らが必要とする稀少資源は、同じく稀少資源とされるギラテアイトという鉱石でカバーする事が可能である。
ギラテアイトは他の稀少資源のどれにも共通するエネルギー素因子、DNA構成を備えており、それらの代替品として使う事が出来る。故にその商品価値は非常に高い。
しかしその分自然界に存在する量も少なく、産出できるのは極一部の地域で稀少量だけである。
ネオアルカディアでの産出量は非常に僅かであり、そのため市場の価格も釣り上がっている。
「このギラテアイトはシステマ・シエルでは生成できない特別なエネルギーであります。故に自然界の産出物に頼るしかないのが現状です」
「しかし、市場にはあまり出回っておらず、価格も簡単に手が出る値段ではない。我々が日々の生活でエネルギーを補給するには困難を極めます」
ステアラーの言葉には重みがあった。
彼らの仲間は皆、毎日の日常生活においてネオアルカディア政府から支給されるギラテアイトによって何とか生き長らえている。
しかし産出量が低い関係で、支給される量は極僅かしかない。
「そのためエネルギー補給も最低限しか出来ず、満足な生命活動を送れるレベルにないのが現状です。このまま行けば、いずれ暴徒化してイレギュラー化してしまう者がますます増えるでしょう。我々としてもそれは本意ではありません」
既に実際にイレギュラー化した者も現実として出ているのだ。
ここ数ヶ月の都市のイレギュラー発生率が最も高いのが、この特殊レプリロイド達である。
彼らがイレギュラーになった理由は明白だ。
エネルギー補給を長期間満足に受けられなかった事によるメモリー回路のエラーが原因である。
「組織の上層部である我々のように高い役職に就いている者、又は潤沢な資金を持っている者ならば、まだ一定量のギラテアイトを確保する事が出来ます。しかし、他の多くの庶民層の特殊レプリロイド達はそうではない……」
一般市民として暮らす層の特殊レプリロイド達は、それほどお金を持っていない。
故に市場で高額なギラテアイトを買い付けるのは不可能だ。
そうなると、政府から支給される“最低限”(実際は最低限にも満たない極小な量である)のギラテアイトしか頼みの綱がない。
しかしそれではあまりにも不十分であり、レクトル・ディンマに所属する会員達からは常日頃から不満の声が上がっていた。
「賢将ハルピュイア殿、現状我々の末端である庶民達には十分な量のギラテアイトが行き届いておりません。今の支給分では到底足らないのです。今後は何としても供給量を増やして頂きたい」
ステアラーがハルピュイアに公開の場で申し立てする。
あえてこの公開会議の場で表明したのは、非公開の場でするよりも効果が高いからだ。
今のハルピュイアは再びネオアルカディアの四天王に復帰し、4人の代表として統括役を務めている。
その彼にとって、公開の場でレクトル・ディンマの代表者達を蔑ろに扱えばマイナスイメージがつくのは必至。
世間のイメージを落とすような真似は簡単には出来ないだろうという意図が彼にはあった。
「現在、我々四天王がギラテアイトの収集に動いています」
ハルピュイアがステアラーに対して答える。
「一連のミッション活動によって一定の成果がありました。少量ですがギラテアイトを確保する事に成功しております」
これまで行ってきたギラテアイトの探索ミッションの成果を報告するハルピュイア。
「これまでの活動で得られたギラテアイトは一部を研究開発に回し、残った分はレクトル・ディンマの方々に配給するつもりです」
「有り難い話ですが、報告書を見る限り分量が十分とは言えませんね」
ステアラーの隣に座るレクトル・ディンマの副代表が眉根を寄せて言った。
四天王達の尽力で幾らかはギラテアイトが手に入ったが、レクトル・ディンマの全員に支給するには数が不足している。
「申し訳ありません。あなた方全員に行き渡らせるには現状では量が足りておりません」
「それでは困るんですよ!レクトルの加入者達は今日もエネルギー不足でいつ動力停止になるやもしれぬと怯えているのですよ」
「………」
副代表の鬼気迫る言い様に、ハルピュイアが無言になる。
これまでのミッションで一定の成果は上がったものの、それでも彼ら全員に行き渡る量までの稀少資源は得られていない。
「このままでは、我々の皆の動力がいつまで持つかも知れません。機能停止すれば、それは即ちレプリロイドとしての死を意味する。そうなったらどう責任を取ってくださるおつもりですか?」
「それは……」
「待ってください」
ハルピュイアが一瞬回答に詰まる。
その時、彼の横から白衣を着た女性が立ち上がった。
「今私どもの科学部署にて、あるプロジェクトを進行中です」
発言してから、彼女は副代表に向けて軽く会釈する。
そして顔を上げると、凜々しい瞳で前を見据えた。
年齢は15歳前後だろうか。おそらくまだ未成年であろうこの女性はかなり若い。
白衣を着た出で立ちで、科学者のような見た目をしている。
少女を見た副代表は怪訝な顔を見せた。
「君は誰だい?ハルピュイア殿の部下か何かかね」
「副代表、彼女は――」
「申し遅れました。私はネオアルカディア本部所属の科学者、シエルといいます」
ハルピュイアが紹介しようとするのを抑えて、少女は自ら名乗って自己紹介した。
「シエル……?」
「まさか、あのシステマ・シエルを開発した科学者の……!?」
「はい、私が製作者です」
「なにっ!?ほ、ほんとうかね…?ハルピュイア殿」
「ええ、彼女の言う通り、システマ・シエルの開発者はこのドクターシエルです」
ハルピュイアの言葉に会場は騒然となった。
画期的なエネルギーシステムであるシステマ・シエルの発明者がこの場にいる。
彼らはシステマ・シエルの名前は知っていても、製作者の顔までは知らなかった。
まさかこんな未成年の少女が開発者だとは思わなかったのだ。
どよめく会議室の雰囲気をよそに、シエルは話を続けた。
【挿絵提供しょうが@お仕事募集中様】
「今私は本部の科学部署にて新プロジェクトを進めています。それはシステマ・シエルⅡの開発です」
「システマ・シエルⅡ……?」
「システマ・シエルはこれまでの物とは全く違う新しいエネルギーです。しかし、万能ではありませんでした。あなた達レクトル・ディンマのようにエネルギーの恩恵を受けられない方々も存在する。それでは全ての方達を救う事が出来ない――。そう考えた私は、システマ・シエルに改良を加えてさらに発展させる事にしたんです」
これまで投稿された話で好きな話はどれですか?※アンケートの結果で今後の話の展開やキャラの偏りなどに影響が出る事はありません。あくまで皆さんの感想を知りたいために実施するアンケートですので^_^
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第1章:稀少資源ギラテアイトを奪取せよ
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第2章:敵本拠地を急襲せよ
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第3章:エネルゲン水晶発掘所を攻略せよ
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第4章:水没した図書館を攻略せよ
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第5章:スカイビルでの戦い
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第6章:四天王VS暴雪月花
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その他個別に好きな箇所があればこちらへ