四天王の重要任務   作:プレイズ

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蹂躙する襲撃者達

---風の神殿---

パンテオン兵をマシンガンで次々と倒しながらライオヌルが進軍する。

彼は一人の部下も連れず単独で、このネオアルカディア本部へ攻め入っていた。

この風の神殿は四天王ハルピュイアが司る神聖なる場所。ネオアルカディア本部の中枢施設である。

彼はそれをわかっていてあえてここに襲撃をかけた。

「さて、今のところ無風といったところか」

突然押し入ってパンテオン兵達を銃撃した彼に、当然パンテオン兵達は応戦した。

しかしライオヌルは巧みなマシンガン射撃で兵達を撃ち殺していく。

単身で乗り込んできているだけあり、彼は相当な実力者だ。その辺の歩兵ごときでは太刀打ちできるはずがない。まだ何一つ固有能力を使わずして、彼は風の神殿の中程まで到達した。

 

「ケロっ!そこまでだケロ!」

「ん?」

そこへ、頭上から何かが降ってきた。

声で気配を察知した彼はマシンガンを上方へと乱射する。

弾のあられが何かに当たった感触がした。

「外れたか」

ライオヌルが軽く舌打ちした。

彼の足元に落ちてきたのは大きな虫であった。さっきの声の主ではない。

弾が当たった事で虫はやられているが、彼の足元で不気味に蠢いていた。

「………」

周囲を見回すと、いつの間にかたくさんの木々が辺りに生い茂って存在していた。

上方には葉が無数にあり、今声を放った主はその奥に隠れているようだ。

だが、敵は完全に気配を消していてこちらからは位置をつかめない。

 

ガサガサ

 

「!」

手をこまねいていると、上からさらに何かが落ちてきた。

それはまた少し大きな虫であった。

ライオヌルの前後を挟むように、地面に落下してくる。

虫はまだ生きており、不気味に動きながら彼の方へ迫ってきた。

「邪魔だ虫けらどもが」

うざったそうに彼は吐き捨てると、マシンガンを虫に向けて放った。

弾の乱射を受けた虫はあっさりとその身を弾けさせて潰れる。

所詮はボスの生み出した雑魚らしく、体力は僅かしかないようだ。

「ケロン!」

「ぐっ!?」

だがそんな彼を強撃が襲った。

上方から鞭のような何かが振るわれていたのだ。

上を見ると、いつの間にかカエル型のレプリロイドが姿を現していた。

そのカエルの口は大きく開かれており、長い舌が下方へと伸びている。

それがそのまま鞭のようにライオヌルを殴打していた。

ライオヌルが地面を蠢く虫に意識を向けている隙を狙い、頭上の葉の奥から姿を見せて眼下の彼を狙い撃ちしたらしい。

「おい。やってくれるじゃねえか」

「ケロケロ!上手くカウンターが決まったゲロ!」

頭上のカエルがケロケロとせせら笑う。

「貴様は何者だ?」

「ワスの名前はバーブル・ヘケロットだ、ケロん!ハルピュイア様の命によりここでお前を討つケロケロ」

カエル調の言葉で彼と会話するヘケロット。

その口調にライオヌルが眉をつり上げる。

「気に入らねえ喋り方をするカエルだ。……貴様はハルピュイアの部下だそうだな?」

「ふふふ。そうだ、ケロ」

「俺はお前のような雑魚に興味はない。ボスのハルピュイアを早く出せ。すぐに出てこないというなら、手下の貴様から血祭りにあげてやるぞ」

「ケロケロ!出来るものならやってみろ、ケロ!」

挑発するように嘲笑うヘケロット。

ライオヌルがその笑いカエルに向けてマシンガンを放った。

しかしそれを予期した彼は手早く上にジャンプし、木々の葉の奥に姿をくらます。

「何だ、まともに勝負するつもりはないというわけか」

早々に逃げの手に出た相手にライオヌルは呆れた顔になった。

おそらくまた虫を落として注意を引き、隙を見て舌で急襲してくるつもりのようだ。

そして、これでは攻撃してもすぐにまた上方の奥に逃げられてしまう。

だが、彼からは余裕が漲っていた。

既に相手の大まかな攻撃パターンは見えている。それさえわかっていれば対処も容易だ。

 

ガサガサ

 

また葉っぱの揺れる音がした。

それを聞いたライオヌルは、芋虫に備えると同時にある場所を見ていた。

上方で天井を覆っている木の葉だ。今その上ではヘケロットが芋虫を落とそうとしているだろう。

「ケロッ!?」

そのヘケロットから驚いた声が上がる。

下方を塞いでいた木の葉を貫いて何かが飛んで来たからだ。

ブーメランのような獲物が彼目がけて放たれていた。

ライオヌルは木の葉の動きからヘケロットのいる位置を正確に把握したのである。

飛来したブーメランはそのままヘケロットのボディに直撃した。

「ぎャああ!!?」

もろに喰らった彼は木の枝から足を踏み外して落下する。

そのまま階下の地面に彼は落ちてしまった。

「それで隠れているつもりか、あ゛?」

「ゲ、ゲロぉ…!よ、よくもやったなケロ!!」

怒ったヘケロットは舌を口から伸ばした。

だがその攻撃した先はライオヌルではなかった。

地面に落としていた芋虫を3匹ほど舌で絡め取ったのである。

「ケロケロぉ……パワーアップだゲロォ!!」

芋虫を食べた彼は身体のサイズが大きく太く増していく。

この芋虫は彼にとっては即効性の苛烈な成長剤のようなものなのだ。

食べるとパワー値が大幅に上昇する。

「ほう、随分と図体がでかくなったな」

「ゲロゲロ、これでお前は終わりだゲロ。一ひねりで潰してやるゲロ」

ライオヌルの4倍ほどに大きくなった彼は腕に力を込める。

身体のサイズ比の通り、通常時の4倍の筋力を彼は得ていた。

パワーと怒りを込めた一撃が振るわれる。

 

ドン!!!

 

轟音が轟いた。

だが、パンチはライオヌルに通っていなかった。

彼が片手で受け止めていたからである。

「ゲ、ゲロ…!?」

「むず痒いなあ、おい」

拍子抜けという顔をしてライオヌルが言った。

「ただでさえでかくなってスピードがのろくなっているというのに。肝心のパワーまでこれでは話にならんぞ」

「な、何故平然と受け止めていられる……ゲロ!」

「お前のパワーなど俺にとってはそよ風程度だ」

では覚悟はいいな?と彼は問う。

「調度掴めた事だし。これで存分に屠れるな」

「や、やめろ…!何をする気だゲロ……!」

「引き千切ってやるのさ。お前の四肢をな」

ヘケロットの顔面が引きつる。

反対にライオヌルの顔は三日月に笑んでいた。

 

ブチイ!!!

 

「ぎゃあああああーーー!!!!」

カエルの右腕が乱暴に引き千切られる。

ライオヌルが腕を引いただけでヘケロットの関節は肩から断絶してしまった。

荒々しく、むしり取るように。

激痛に彼から叫び声が上がる。

だがライオヌルは手を止めない。

千切った腕を放り捨てると今度は彼の左足を掴んだ。

 

ブチイ!!!

 

「ぎゃああああああああ!!!!」

またしても鈍い音が響き、足が引き千切られた。

再度ヘケロットの叫びが上がる。

まさに残虐非道の所行だ。

その後もライオヌルは彼の残った手足全てを同様に引き抜いていった。

 

「…………」

後には床に倒れ伏すヘケロットの姿があった。

両手足を千切られ、もはや丸いダルマと化している。

あまりの激痛に既に彼の意識はなかった。

「何だ、もう終わりか。歯応えのないカエルだった」

虫ケラを始末したかのように軽く彼は言ってのける。

ヘケロットの痛々しい惨状を見ても罪悪感の欠片もないようだ。

 

「おい、貴様」

「お。やっとお出ましか」

不意に、上空から声が届いた。

彼が上を見上げると、緑の身体をした1人の男が空中からこちらを見下ろしている。

「賢将ハルピュイア。お前が出てくるのを待っていたぞ」

「ヘケロットをゴミのように屠るとはな。部下を派遣したのは俺の判断だが、どうやら間違いだったようだ」

ハルピュイアの顔は怒りに歪んでいる。

ヘケロットを無惨にも殺され、頭に血が上っているようだ。

しかしそれでも彼は冷静さを失わない。

「お前はここで討つ。無謀にも単身で乗り込んで来た事を後悔させてやろう」

「くく、いいねえ。強者と戦えるのは歓迎だぞ」

ライオヌルは憤怒の賢将にもたじろがない。

彼はそれだけ実力があるのだ。

「一応自己紹介しておこうか。俺は暴雪月花の1人、暴君のライオヌルだ」

「そうか。お前達の組織にはこれまで色々とギラテアイトの事で被害を被っている。頭の貴様を殺す事で組織を壊滅させてやろう」

「そりゃあ楽しみだ。せいぜい期待してるぜ?」

獰猛な笑みを浮かべたライオヌルが宙に浮く賢将を見上げている。

今、2人の強者が激突しようとしていた。

 

 

 

---炎の神殿---

ムーンフェイズは既に敵と相対していた。

傭兵として送り込まれたアヌビステップが彼の前に立ちはだかっている。

「われはアヌビステップ・ネクロマンセス6世。ファーブニル様の命で貴様を排除しに来た」

「さっそくボス格のお出ましでっか。まあそろそろやろて予想はしてたで」

なまり口調で彼はアヌビステップを見上げた。

相手は杖を持って空中に浮いて静止している。

どうやら少々やっかいな能力を持っているらしい。

だが彼は暴雪月花の1人である。

4人の中でも月の力を司る彼からすれば、少々の異能など恐るるに足らない。

「ま、肩慣らしには調度ええやろ。お手柔らかに頼むわ」

「我は砂漠の王ぞ。己が身の愚かさを知るといい」

言ってアヌビステップは杖をかざし、その身にオーラを込めた。

すると、ムーンフェイズの足元の傍から何かが沸き上がる。

「!」

それはパンテオン兵であった。

それも、直前に彼が屠って殺した兵達である。

死んだはずの歩兵達がゾンビのように起き上がり復活していた。

その数は10体前後はいるだろうか。

「こらたまげたわ。死者蘇生が出来るんか」

「言ったはずだ。我は砂漠の王である」

にちゃり、とアヌビステップが笑みを溢してみせる。

だがムーンフェイズに動揺はない。

蘇ったといっても所詮はパンテオン兵だ。

瞳の奥に装備しているサーチアイで見ても戦闘力は生前と大差ない矮小さ。

「まあええわ。とりあえずやろか」

彼はウォーミングアップよろしく戦闘体勢に入った。

 

3分後

 

「くはぁ、はあ……!!」

アヌビステップは地に這いつくばっていた。

既に特殊能力を使う魔力は残っていない。

ムーンフェイズとの戦闘で予想以上に体力を疲弊させられていた。

「何や、もう終わりかいな?」

何という事はない、という様子でムーンフェイズが言った。

彼はほぼ最小限の動きだけでアヌビステップを翻弄していた。

相手も相当な異能の持ち主なのだが、彼はそれをさらに上回ってしまったのである。

「ぐ、、、ば、化け物が……!」

「そらあ褒め言葉でんなあ。なら化け物らしく締めたげまひょか」

ムーンフェイズは腕を上げて指を1本立てた。

「暗転の三日月」

次の瞬間、辺りの景色が闇に包まれる。

アヌビステップの視界は何も見えなく真っ暗になった。

「何も……見えん、、!?」

周囲の状況が確認出来ず、彼は動揺した。

そしてそこへ斬撃が襲った。

 

ザシュザシュザシュ

 

「ぐあ゛あ゛ァあ゛…!!」

鋭利な刃がどこからともなく飛来して彼を切り刻んだ。

その刃はまるで鋭い三日月のようであり、恐ろしい凶器と化した。

本来彼は直接攻撃を受けてもそうそう大きなダメージは負わない。

自身のボディにナノマシンを搭載しているので、動力源となる箇所が致命傷を受けていなければ何度でも復活できるからだ。

しかしムーンフェイズの攻撃はそれが通用しないかのように彼の体力を的確に削ってきた。

まるで理を無効化するような不可思議な攻撃。

「さ、これで仕舞いや」

さらにもう1つ刃が飛来してきた。

それは寸分の狂いもなくアヌビステップの首元を切断した。

「ぐはあ゛ア」

切り離された彼の生首が宙に飛ぶ。

それは斬首で斬り落とされた首のようだった。

恐ろしい三日月の円舞が彼の命を刈り取ったのだ。

 

倒されたアヌビステップの身体は泥が土に染みこむように崩れ落ちて崩壊した。

その光景を見てムーンフェイズが軽く息をつく。

「よし、これで1丁あがりや」

ボスを1体倒し、彼は肩をこきこきと鳴らした。

そこへ声がかけられる。

「よお、なかなかやんじゃねえか」

「あん?誰やあんた」

前方から赤い体躯を誇るがたいのいい男が近付いてきた。

その姿は明らかに強者の雰囲気を纏っている。

「アヌビステップをあそこまで翻弄するとはな。正直見くびってたぜ」

「てことはあんたは今の奴の親分さんか何かか?」

「おうよ、闘将ファーブニルって言やあわかんだろ」

「まあな。知ってるわ。ちょっととぼけただけでんがな」

ムーンフェイズは闘将を見て織り込み済みというように頷いた。

「ってか面白え喋り方すんなおめえ」

「そうでっか?生憎生まれつきなんでな」

彼は肩をすくめて見せる。

「自分の名はムーンフェイズ。暴雪月花の月を担当しとる」

「知ってるぜ。こっちもデータをちっと持ってるからよ」

「へえ、こりゃあ困りましたわ」

あちゃーと嘆いて彼は頭をかいた。

「でもまあええわ。わいがここであんたを倒したる」

「へへっ、そうこなくっちゃな」

バシッと拳を付き合わせてファーブニルが笑う。

「随分と楽しそうやな。これから殺し合いをするっちゅうに」

「俺は強え奴と戦えれば燃えるからよ。最高に楽しみだぜ」

「けったいでんなあ。わいはとてもそんな気分にはならへんで」

おかしな者を見るようにムーンフェイズが闘将を見た。

「ノリが悪いなあおい。もっと燃えてこうぜ!」

言うが早いか、敵へ目がけてファーブニルの体躯が突進した。

 

 

 

---氷の神殿---

「ぜえぜえ………ボ、ボファー、、!」

ポーラー・カムベアスは肩で息をしていた。

既に片腕はなく、満身創痍の状態だ。

先刻、侵入者の迎撃に来た彼は早速敵の少年に攻撃を仕掛けた。

しかし、敵だと思ったそれは実は氷で出来た偽物であり、氷の破片となって粉々に砕け散った。

そして驚く彼の隙をつかれて背後から反撃を喰らったのである。

少年は氷で作られた鋭利な剣を腕から直接生やしており、その"アイスソード"を振るった。

カムベアスはパワーの馬力こそあるもののスピードは緩慢だ。

その弱点を突かれる形となり、彼は片腕を両断された。

「おでを舐めるなど!!」

まだ年端もいかない子供に手傷を負わされ、彼は怒り狂った。

残った片腕に力を込めてエネルギーをチャージする。

だがチャージ中は無防備になるため、少年が攻勢を仕掛けてくる。

「ただでさえ肥満体なのに、おじさんは隙がありすぎ」

「ヴォ、ファあ……!」

アイスソードを小気味いいスピードで振るわれ、カムベアスはさらにダメージを受ける。

氷の剣による攻撃は手数が多く、さらに高速であり隙がない。

動きのとろい彼からすれば捌くことは容易ではなかった。

身体を切り刻まれ、体力ゲージが赤を表示する。

「ばぁ、ばぁ……!よ、よぐもやっでぐれだど……、だがやっど準備がとどのっだ」

息を切らしながら、しかし彼は起死回生の笑みを浮かべた。

満身創痍ながらようやく片腕のチャージが完了したのである。

彼はスピードは遅いがその分パワーが物凄い。

一撃の攻撃力の高さは四天王の部下達の中でもトップクラスだ。

「喰らえど!」

彼は溜めた氷の冷気を一気に解き放つ。

「ウォールクラッシュ!!」

天井まで届くかという氷の壁を彼は作り出す。

そしてそれを少年に向けて剛力で飛ばした。

氷の壁で少年を壁に挟み大ダメージを負わせる算段だ。

さらに氷の破片を拡散させての二段攻撃も意図したEX技である。

少年は諦めたかのように迫り来る氷壁を見つめた。

いや、見つめたのは一瞬の出来事だった。

瞬時に技の発展性、意図を見抜いた彼は素早いダッシュジャンプで前進する。

氷の壁に密着する所まで来ると、その身のアイスソードを空中から振り下ろした。

 

ザン!

 

そして続け様に流れるような剣撃を氷壁に見舞う。

 

ザン!ザン!ザザン!!

 

目にも止まらぬ速さで氷の壁が切り刻まれていく。

その細かい打撃は効果覿面であり、氷の壁はものの見事に破壊された。

その際に飛び散った氷の破片も全て少年の剣により捌かれていく。

「ば、ばがなどォ……!」

自分の最大必殺技が完全に防がれ、カムベアスの瞳が驚愕に見開かれる。

既にチャージで溜めたエネルギーは使い切り、すぐに反撃できるパワーは残っていない。

その隙を少年が逃すはずがなかった。

「これで終わりだね。不細工な熊のおじさん」

「ボ、ボファーぁ!」

迫り来る少年にカムベアスはせめてもの悪あがきと片腕の巨腕をぶん回した。

だが大降りは返って隙を晒すだけだ。

簡単にかがんで下をくぐられる。

「じ、じまっだど、、、!」

「グッバイおじさん」

とどめの一撃が振るわれる。

頭から斜め下に袈裟斬り一閃。

カムベアスの身体は綺麗に両断された。

 

ドドオオオ!!

 

爆音を響かせて氷刃の熊将が大破した。

彼は少年にほぼ完封される形であえなく散ったのだった。

 

 

「さて、これでまた先に進めそうだね」

カムベアスを片付けた少年は何でもなかったように踵を返した。

辺り周辺はカムベアスのパワー攻撃の影響で壁や地面にヒビが入っている。

だがそんな激戦だった事など微塵も感じさせないほどに彼は落ち着いていた。

手傷もほとんど負っていない。

「この分だと氷の神殿は比較的容易に制圧出来そうかな」

「ふふ、それはどうかしら」

「!」

 

前に進もうとした少年に、どこかから声がかけられた。

彼がはっと気が付くと、次の瞬間に異変が起こる。

いきなり大量の水が流れ込んできたのだ。

「これは、水……!」

まるで川が決壊したかのように、通路の奥から勢いよく水が流入してくる。

瞬く間に彼はその中に飲み込まれ、水中へ入る形となった。

 

「く……まさかこんな仕掛けがあるとはね」

予想外の水攻めに彼は少々意表を突かれる。

だが水の中でも彼は行動不能になったりはしない。

高度な機体性能を誇る彼の身体は水中でも行動可能な設計になっているからだ。

だが陸上よりは若干能力が制限される事は否めない。

「悪いわね。いきなり驚かせちゃって」

気が付くと、いつの間にか少年の前方に1人の少女が現れていた。

彼の目線よりやや上を立ち泳ぎしながら、直立で一定の位置を維持している。

彼女はこちらを興味ありげに見ていた。

「お姉さんって、まさか」

「私はネオアルカディア四天王が1人、妖将レヴィアタンよ」

 

【挿絵表示】

 

ストンと地面に舞い降りるレヴィアタン。

軽く自己紹介すると、彼女は少年に質問する。

「ところであなたは何者?」

「僕は、名も無き兵さ」

「へえ?面白い冗談ね」

少年の返答にレヴィアタンがふふ、と微笑む。

「ただの無名がカムベアスを圧倒出来るわけないでしょ」

「別に。大した事じゃないよ」

謙遜するように少年は首を横に振った。

「それよりも僕はお姉さんの方が驚きだな」

「どういう事?」

「妖将の名は知ってたし、それが女性だという事も知っていた。でも、実際に見てみると綺麗な人でびっくり」

妖将の風貌に意表を突かれたように少年が言った。

「へえ……?それはおべっかのつもりかしら」

「ううん、本心だよ」

彼はレヴィアタンの顔をまじまじと眺めつつ頷く。

どうやら嘘は言っておらず本音のようだ。

「お姉さんみたいな可愛くて美しい人が、まさかこれから倒さないといけない敵とはね。正直動揺してる」

「そ、そう………?」

「さっき倒した部下はデカブツで不細工なおじさんだったから。そのボスがこんな綺麗なお姉さんだなんて」

少年が純真な感情を吐露する。

その様子にレヴィアタンは少々ペースを乱される。

「…ふふ、なかなか殊勝な子じゃない。ま、私を褒めてくれるのは光栄だけど、だからといって容赦はしないわよ、ボク?」

「もちろん。僕もいくらお姉さんが優秀なレプリロイドでも手加減するつもりはないからね」

カチカチカチ、と彼は腕から氷の剣を生やした。

先程も使っていたアイスソードだ。

「あなた、見たところ氷タイプなのかしら」

「まあね。“妖将”のお姉さんにだって負けてるとは思わないよ」

「ふぅん、それは楽しみだわ」

四天王の自分相手にも臆した様子のない少年に、彼はなかなかの大物かもと彼女は思った。

彼は可愛さの残るあどけない見た目通りおそらく自分よりも年少である。

それでいて堂々とした立ち振る舞いと確かな実力を持っている。

しめていく必要があるわと彼女は認識した。

「じゃあそろそろ殺らせてもらうけど。悪く思わないでねお姉さん」

「ふふ、こちらを気にかけてる暇なんてあるのかしら。でないとそっちが死ぬわよ?」

不敵に笑ってみせるレヴィアタン。

その笑みを受けて少年も狡猾な笑みを持って返した。

今、少年と妖将の静かで熱いバトルが始まる。

これまで投稿された話で好きな話はどれですか?※アンケートの結果で今後の話の展開やキャラの偏りなどに影響が出る事はありません。あくまで皆さんの感想を知りたいために実施するアンケートですので^_^

  • 第1章:稀少資源ギラテアイトを奪取せよ
  • 第2章:敵本拠地を急襲せよ
  • 第3章:エネルゲン水晶発掘所を攻略せよ
  • 第4章:水没した図書館を攻略せよ
  • 第5章:スカイビルでの戦い
  • 第6章:四天王VS暴雪月花
  • その他個別に好きな箇所があればこちらへ
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