主人公の幼少期の話から始まるので遠分ニジガクメンバー出てこないのでご了承ください。
序幕 光との邂逅
これは私達がまだ小学5年生だった時のお話、勿論虹学のみんなとはまだ出会ってすらなかった頃の光との出会いの物語。
「菜生〜?歩夢ちゃん迎えに来てるわよ」
「はーい、今行くよ〜」
母親に菜生と呼ばれた少女は部屋を飛び出した。真っ黒な髪をボブヘアーにした少女はそのままリュックを背負って玄関の外で待っていた歩夢と呼ばれたピンクの髪をお団子にした少女へ駆け寄る。
「えへへ、お待たせ」
「待ってないよ?じゃあいこ?」
そう言って差し出された歩夢の手を「うん!」と頷いて取る菜生に、母親が。
「じゃあ歩夢ちゃんの家族に迷惑にならないようにね」
「解ってるよ〜」
そう注意するのを、菜生はそう元気よく返事をした。今夜は歩夢の家族と一緒にキャンプに行く約束をしていたのだ。母親に手を振ると車で準備していた歩夢の両親と合流しキャンプに向かうのだった。
「菜生ちゃん、それ何?」
「これ?天体望遠鏡だよ」
その日の夜、夕食を取ったあとランタンの明かりの下で菜生が自身のリュックから天体望遠鏡をとり出していた。
「菜生ちゃん星好きだよね」
「うん、お父さんみたいに宇宙にいってみたいんだ」
歩夢に聞かれた菜生がそう目を輝かせて答えるが、歩夢は表情を曇らせたが菜生は気が付いていない。
「菜生ちゃんはお父さんみたいになりたいのかい?」
後ろからそんな声が聞こえて、菜生は天体望遠鏡を準備していた手を止めて振り返ると、その声の主は歩夢の父親だった。
「はい!そうすればまたお父さんに会える気がするんだ」
そう菜生は笑顔で答える。
「そっか…菜生ちゃんのお父さんは凄い人だった。菜生ちゃんも頑張ればきっとお父さんみたいになれるよ」
「がんばります!」
菜生の父親は、菜生が小学校に上がる前に事故で亡くなっているのだ。死因はロケットのテスト中の事故だったらしい、優秀な宇宙飛行士だった父を幼くして失った菜生は、宇宙に行けば父親に会える。そう思っている節があるようだった。
「お父さんみたいになりたくて、空手も頑張ってるもんね」
「うん!お父さんみたいに強くなったら歩夢ちゃんも守ってあげる」
「ふふっありがとう」
父親の話をしている間もニコニコしていた菜生だったが、セットした天体望遠鏡を覗いていると空中を何か人影のようなものが横切った。
「ウルトラマン?」
ウルトラマン、都市伝説として語り継がれている宇宙の平和を守る光の巨人だ。
「え?本当?見せて!」
すると歩夢もウルトラマンを一目見ようと菜生が顔を離した天体望遠鏡を覗きこむが、もうそこには何も見えない。
「何も見えないよ?」
「おかしいな~確かに何か横切っていったんだよね」
そう首をかしげる菜生だったが、それは見間違えでは無かった。
その時、地球を目指す存在は二ついた。一つは両手が巨大なハサミになったセミのような顔を持つ人型の宇宙人。そしてもう一つは青と銀の体を持つ巨人。
巨人の方は宇宙人が地球に行くのを阻むかの様に立ちふさがるが、宇宙人はそんな事はお構いなしに地球へと進攻する。
お互い宇宙空間を自在に飛び回り、時に組み付いて殴打の応酬を、時に光線を放ち牽制しあっていた。
だが宇宙人は巨人の攻撃を躱しながらどんどん地球へと近づいていく。そして巨人はずっと宇宙人に対して何かを訴えかけていたが、それが相手に届くことは無かった。
そのまま宇宙人は巨人を振り切ると大気圏へ突入してしまう。
「雨?」
夕飯を食べた後、一緒に片づけをしていたところ、急に曇り空になり星が見えなくなると。ぽつりぽつりと雨が降り始める。
「菜生ちゃん、早く片付けないと!」
水滴が肌に落ちてくるのを感じた菜生が、暫く空を見ていると歩夢がそう声をかける。
「そうだ、望遠鏡!」
そこで菜生は慌てて外に出していた望遠鏡やらを片付け始める。そして何とか道具類は歩夢の親とも協力し、なんとか嵐になる前に片付けてしまうのだった。
「まさかこんな急に天気が悪くなるなんてな…」
「折角来たのに…」
歩夢の父親も今日の為に天気は気にかけてくれていたのだが、まさか天気予報が外れてこんな雷雨になってしまうとは思わなかった。
「星見たかったなぁ…」
幸いロッジでのキャンプだったので、天気が荒れても寝泊まりする分には全く困らないのだが天体観測も楽しみにしていた菜生が残念そうにつぶやく。
『東京から神奈川にかけて局地的な雷雨となっておりますが、もうすぐ山場は超える見込みです』
「お願い…晴れて…」
ラジオの天気予報を聞きながらそう願う菜生に歩夢も「晴れて…」と願うのだった。
一方空中では、嵐の中巨人と宇宙人の戦闘が続いていた。
巨人は何としても宇宙人を地球の外に追い返したい様子だったが、宇宙人は止まらない。背後から組み付くも、腕のハサミから光線を放ち巨人を引き剥がす。
そして巨人へ向き直ると、追撃しようと更に光線を放つのだが、巨人も右腕を突き出し光線を放つ。
激突し、拮抗する二つの光線をなんとか押し切ろうと両者は接近するがお互いにダメージを負い墜落してしまう。
そして巨人と宇宙人はそれぞれ別の場所へ落ちていくが、巨人の身体は雷に撃たれ光を放出しながら菜生たちがいるキャンプ場近くの森の中へ墜落したのだった。
「ん…朝か…」
早朝目が覚めた菜生は外に出ると、まだ早い時間だったのもあってまだ薄暗かったが嵐は過ぎ去っていた。
『―――』
「誰かが、呼んでる…?」
少し霧がかかっていたキャンプ場で、菜生は誰かが自分を呼んでいる声が聞こえた気がした。そしてその声がする方に向かって駆け出した。
「ハァ…ハァ…もしかして、あなたは…?」
そこで菜生が見たものは今にも消えてしまいそうなほど体が透けている巨人が、森の中で力なく倒れこんでいた。
「わたし…見えるよ、ウルトラマン!」
『――――』
ウルトラマン、菜生がそう呼んだ巨人は力なく頷くと何かを訴えかけているようだったが地球の言葉ではないので、人間である菜生には聞き取れない。
「光?光が欲しいんだね?」
だが、菜生には光を欲しがっているように聞こえた。何故だったかはわからない。でもきっとそうだと直感で感じ取ったのだ。すると巨人はそれにゆっくりと頷いた。
「ちょっと待ってて、何とかするから!」
そう言って菜生は来た道を駆け戻る。
「おはよう菜生ちゃん、早いんだね?」
「おはよう歩夢ちゃん、ちょっと手伝って」
戻ってくると歩夢や、歩夢の両親が起きていたが菜生は懐中電灯や使い終わったアルミホイルなど、兎に角光を反射しそうなものをかき集め始める。
「よし、これ持って」
「え?ちょっと…」
何の説明もなくいきなり色々漁っては持たせて来る菜生に不満げな声を上げるが、菜生はそれに気づかないといった様子だった。
ウルトラマンがいる場所まで戻ってくると、朝日が昇り始めており少しづつ辺りも明るくなる。
「これで…よしっと」
「ねぇ菜生ちゃんなんでこんな事してるの?」
「え?歩夢ちゃんには見えないの?」
「何かあるようには思えないけど…」
少しでも多く光をウルトラマンに与えようと、ウルトラマンの位置に光が反射するようにかき集めたものを配置していると、歩夢にそう不思議そうに聞かれる。
「嘘…見えないの?ウルトラマンが…?」
「ウルトラマン…?本当にいるの?」
ウルトラマンというワードを聞いて、少し歩夢の表情が明るくなると、菜生も嬉しそうに頷く。
「まだ足りない…ならこれで」
もっとウルトラマンに光を、そう思った菜生は天体望遠鏡をとり出すとのぞき穴をウルトラマンへ向け懐中電灯の光を当て増幅させる。
「これなら…」
「いいの?それ使っちゃって…」
本来の用途からかけ離れた使い方を始める菜生に、歩夢はそう不安げに聞く。これは彼女が最近誕生日に買って貰ったと喜んでいたものなので心配になったのだ。
「いいのいいの、これでウルトラマンが元気になるなら…」
そう言って菜生はウルトラマンに光を当て続ける。そしてその光がウルトラマンの額のある一点に当たった時、辺りが光に包まれる。
「わぁ…」
「これが…」
ウルトラマンの身体が色づくと、その巨体がゆっくりと立ち上がる。そしてその光が晴れた時、菜生と歩夢を見下ろすようにウルトラマンが現れる。
青い身体に銀のラインを持つ、優し気な顔をした巨人。それがウルトラマンだった。
『ありがとう』
そうウルトラマンの声が脳内に響く、恐らくテレパシーなのだろう。
「大したことしてないよ、ウルトラマン」
「私も菜生ちゃんについてきただけだし」
そう菜生と歩夢が照れ臭そうに答えると、ウルトラマンは続ける。
『私はウルトラマンコスモス。君たちのお陰で、私は力を取り戻せた。』
「コスモス…それがあなたの名前」
「ウルトラマンコスモスって言うんだね」
そう歩夢と菜生に言われると、ゆっくりと頷き2人の前に膝を降ろして座り込む。
『君たちにお礼がしたい、君たちの願いを言ってほしい』
「菜生ちゃんがコスモスを見つけたんだし、菜生ちゃんがお願いしたら?」
「でもわたし…」
「だって、私には見えなかったんだもん。私何もしてないけど、菜生ちゃんはお願い言うべきだよ」
そう歩夢に言われ、菜生は暫く考え込むと照れ臭そうに口を開く。
「わたしね、宇宙に行くのが夢なんだ。ウルトラマンと空を飛びたい…でも、無理だよね?」
いくらなんでもそんな願いを叶えてもらえるなんて思っていない菜生が、そう言うとコスモスは無言でこちらへ手を差し出す。乗れと言う意味だろう。
「え?いいの!?本当に?」
思わずそう聞くと、コスモスは頷く。
「やったぁ!歩夢ちゃんも」
そう言って菜生は歩夢の手を取ると、一緒にコスモスの手に乗る。
「私もいいの?」
そう歩夢が聞くと、コスモスは当然という風に頷くとゆっくり立ち上がる。そして反対の腕を天に掲げると…。
「シュウワッ!」
2人を乗せ大空へと飛び立つのだった。
「すご~い!」
「街があんなに小さい!」
はしゃぐ菜生と歩夢を乗せ、暫く大空を飛び回ると再び出会った場所へ戻ってくると2人を降ろす。
「ありがとう、ウルトラマンコスモス」
「また、また会えるよね?」
礼を言う歩夢の隣で、菜生がそう聞くとコスモスは頷く。そして菜生のズボンのポケットを指さす。
菜生はそれを受けてポケットを漁ると、青く輝く綺麗な石が入っていた。
「これは…?」
「すごいキレイ…」
『君が真の勇者、本当に勇気のある者となった時。その輝石が再び私たちを出会わせてくれるだろう』
「どういうこと?」
コスモスの言葉の意図が解らず、菜生はそう聞き返すが。ピコンピコンとコスモスの胸に付いている青い結晶のようなものが、赤く明滅を始める。
「そっか、もう時間が無いんだ…」
その様子をみて、菜生はそう直感した。さっきの光だけでは、完全にエネルギーが回復しなかったのだろう。
「菜生ちゃん、きっとまたすぐ会えるよ」
そう歩夢が菜生を肩をそっと触れてそう告げる。
「そうだよね…約束する、わたし本当の勇者になる!だから、また会おうね…」
そうコスモスに対し目に涙を浮かべながら菜生は告げた。そしてコスモスは、菜生と歩夢をその場に残して再び大空へと飛び立った。
「元気でね…」
コスモスの姿が見えなくなった後、菜生はそう呟くのだった。
ひとまず今回はここまでです。
別の作品の連載がメインなので更新頻度は低いかもしれませんがまた次回お会いしましょう。