ウルトラマンZが終わってウルトラ寂しい気持ちで書きました。
「うーんやっぱ難しいなぁ…」
昼休み菜生は音楽室でひとりピアノの前で頭を悩ませる。
元々バルタン星人やコスモスが交信に使っていた周波数が音楽のようだから、そんな理由で音楽なら言葉の通じない人とでもコミュニケーションが取れる。そう思ったから趣味としてはじめたピアノだったが、スクールアイドルが歌うような曲を演奏するのは難しい。
「使用許可はとったんですか?」
そうしていると不意に音楽室の入口の方からそんな声が聞こえた。気がつけばドアが開いており、一人の生徒が入ってきていた。
「えっと…生徒会長の中川菜々さんだっけ、なんでこんなとこに?」
「たまたま通りかかったら、ピアノの音が聞こえましたので…それより、許可は……」
「つ、次からちゃんと取るから見逃して?」
そう舌をペロッと出してバツの悪そうに笑う菜生に、「今回だけですよ…」と菜々は呆れ気味に告げる。
「ありがと。やっぱ難しいね、スクールアイドルの曲」
「そうですか?とても上手だったと思いますよ?」
「そお?でもまだまだだなって、耳コピだったんだけど本物には遠く及ばない」
そう言って菜生は鍵盤の蓋を閉じると立ち上がる。
「じゃあ私、教室戻るから。…絶対十人揃えて見せよ。絶対」
そう菜々の目をまっすぐ見て、笑いながら告げると、返事を待たずに音楽室を後にした。
放課後部室に来た菜生と歩夢、そしてかすみとしずくは以前同好会メンバーだった3年生を勧誘しに行く事にした。
愛と璃奈は用事があって来れないそうなので、今回はこのメンバーで動くことになった。
「私が居るところを知っているので、案内しますね」
「かすみんだって、彼方先輩のいそうなところ心当たりあるんですけどもっ」
まずは近江彼方という生徒を勧誘しに行く。そう決まると、居場所に心当たりのあるというしずくになぜか突っかかるかすみという奇妙な構図が生まれる。
「ふふっ、多分正解ですよかすみさん。保健室か中庭……ですよね。さっき見てきたんですけど、今日は保健室みたいです」
「彼方先輩ってどこか悪いの?」
「いいえ?会ってみればわかりますよ」
そう告げるしずくに菜生は首を傾げるが、行ってみない事には話も進まないしそのまま全員で保健室を目指すことにした。
「うう~ん…だれぇ?」
保健室に入るとそんな気だるげな声が聞こえてきた。
「しずくです。彼方さん」
しずくはそう答えると、声のしたベットの方へと近づいていく。するとそこには制服の上からカーディガンを羽織った。ウェーブのかかったオレンジブラウンの髪を伸ばした、眠そうな目をした少女がいた。
「しずくちゃん~?久しぶり~元気してる?」
「はい、おかげさまで元気です。…じゃなくて、今日は彼方さんをスクールアイドル同好会に連れ戻しに来たんです!」
ゆっくりとしたペースで話す彼女に乗せられてしまいそうになったが、しずくは本題へと入っていく。
「彼方せんぱぁい。同好会、潰されちゃいそうなんです!お願いです!戻ってきてください!」
かすみもそうつげると、彼方は驚いたような表情を浮かべる。やはり、同好会解散の話は彼方も知らなかったらしい。
「潰される!?それは……彼方ちゃん切ないな、阻止しないと。でも彼方ちゃん今戻るの厳しいなぁ…戻りたい気持ちはあるんだけども」
「はじめまして、二年の高田菜生って言います。同好会解散を阻止したくて、今日はここに来ました」
そう告げる彼方をなんとか説得しようと菜生は口を開く。
「こっちは同じ二年の上原歩夢。あと、一年生の天王寺璃奈ちゃんと二年の宮下愛ちゃんが新しく同好会に入ってくれました」
そう言って隣にいる歩夢や、今ここにはいないふたりの事も説明する。
「かすみちゃんが言ってたように。今解散の危機なんです。阻止するためには10人部員を集めないと行けなくて…だから、彼方先輩にも戻ってきてほしいんです」
「彼方ちゃんの居ない間になんてことに……」
菜生にそう告げられて、彼方は悲し気な表情を浮かべる。
「でも彼方ちゃん今ホント余裕ないんだよ~…スクールアイドルは好きだよ?でも今は無理。とってもピンチで忙しい…」
「ピンチって、何があったんですか?私達で力になれることなら何でも言ってください…!」
そうつぶやく彼方に、しずくはそう言い切る。彼女もまた、なんとしても彼方に戻ってきてほしいのだ。
「成績が下がってしまったんだな、これが…」
「え?」
成績が下がったから戻れない。確かに当然といえば当然なのだが、その返答に思わずしずくは言葉を失う。
「彼方ちゃん中間やばくってさ~期末ふんばらないとヤバイ。だからお勉強に打ち込んでいるんだけど、それでも数学はピンチすぎる、わけわかんない」
そう語る彼方をみて菜生は少し頭を悩ませる。そういえばライフデザイン科という話をしずくから聞いた気がする、ならばと思い立ち菜生はある提案をした。
「私やさっき話した宮下愛ちゃん、天王寺璃奈ちゃんは理系学科なんです。なんで多少なら教えられるかもしれません」
学年は下とはいえ、文系学科よりは数学に関しては進んでいるであろうと想定して菜生はそう提案すると、彼方は意外にも食いついてきた。
「えっ?そんなにおいしい話が?」
「まあ一応…三人いるし何とかなるかなると思いますよ」
正直彼方に戻ってきてもらう為に咄嗟に出た言葉だったが、思いのほか食いついてくれたのでとりあえずこのまま押し切る事にする。正直ここにいない2人には悪いが…
「おぉ~、ないすあいてぃあ~。それなら戻ろっかなあ。さっそくだけど、今その二人は部室にいるのかなぁ?」
「多分いると思いますぅ」
かすみがそう告げると、菜生は少し嫌なものを感じた。
(今日あの2人いないんじゃなかったっけ?怒られない?)
「じゃあ早速いこ~!彼方ちゃん久々におめめがぱっちりしてきたよ~」
そう告げる彼方を引き連れ、同好会の部室へと戻っていくが菜生は正直この時は内心ヒヤヒヤしていた。
「……っていいないじゃ~ん!かすみちゃんめ、嘘ついたな~!」
部室に誰も居ないのを確認すると彼方はそう言ってかすみをジト目で見つめる。
「あーん!だって彼方先輩が心変わりしないうちに拉致って…じゃなくて囲って…でもなくて、とにかく部室に来てほしかったんですもん~」
そうかすみに訴えられ、彼方も困った表情を浮かべる。
「こんにちはー、にぎやかだね~」
そうしていると部室の扉が開き、菜生にとっては見覚えのない生徒が入ってきた。
「あれ?いつの間にか人が増えてるね!」
「エマ先輩!?」
「もしかして私達が動いているのを見て、戻ってきてくださったんですか!?」
部室の中に居る人間を見渡し、そう嬉しそうに告げる少女に対してかすみとしずくがそう驚いた声を上げる。
エマと呼ばれた今は言ってきた少女は、背がここにいるメンバーの中で頭一つ高く。赤毛を二本のおさげにした、鼻のあたりのそばかすが印象的な彼女が、元々同好会メンバーのもう一人の三年生なのだろう。
彼女はしずくの言葉に「え?戻る?」と首を傾げながらも答えてくれた。
「うん、さっきスイスから戻ってきたんだよ~。はい、これお土産。たくさんあるから人数増えても大丈夫だよ、なかよく食べてね」
「は…はあ……」
そう言ってかすみは手渡されたお菓子の入った箱を受け取る。
「はじめまして、わたしはエマ・ヴェルデ。これからよろしくね~」
「はじめまして、高田菜生です」
「上原歩夢です」
ふと目が合ってそう自己紹介してくれた彼女に菜生と歩夢も同様に返す。
「あの…エマ先輩は自発的に同好会に戻ってきたんですか?」
「え?だってここスクールアイドル同好会の部室でしょ?普通にくるけど…?」
菜生の質問にエマは不思議そうに答える。さっきスイスからと言っていたし、もしかするとエマも解散の事は知らないのかもしれない。
「あのあのっ、エマ先輩ここしばらく来なかったですよね?同好会と距離置いてましたよね?」
「ん?わたし、スイスに一時帰国してただけなんだけど……手紙置いて行ったよ?」
かすみがそう聞くと、エマはそう不思議そうに答える。すると「もしかして…」とロッカーを漁り始める。
「…これ、エマ先輩の手紙だったんだ……ライバルからの怪文書かと……」
そう一人こちらに背を向けたまま呟くと、こちらを振り向くと泣きそうな表情を浮かべる。
「あ~ん!ごめんなさーい!かすみんの早とちりでした~!」
「エマさんは戻ってきてくれたし、全然いいよ。結果オーライだよ」
そんなかすみに、しずくはそう笑ってフォローを入れる。
「これで7人だね、このまま10人までがんばろ~!」
「そうだね、次は優木せつ菜さんの説得に行こうよ!居場所はわかんないらしいけど、手分けして探せば…」
そう菜生が提案した時、なにかがドアに激突したような大きな音が部室に響いた。
「なんだろ?今何かがドアにぶつかったよね?」
「私見てくるよ!」
ドアの方を振り向いて呟く歩夢にそう告げると菜生はそう告げると「入部希望者かも!」と言って飛び出した。
「あり?」
廊下に出たはいいが、周囲にそれらしき人影は無かった。だが廊下の奥の方で、見覚えのある人影が走り去って行くのが見えた。
「あれは…確か……」
「菜生ちゃん?」
「へ?多分誰かが走っててドアにぶつかっちゃったみたい」
そんな菜生の様子を不思議に思った歩夢が近付いてくると、菜生は振り返ってそう告げた。なぜ彼女が逃げるようにして走っているのか疑問ではあるが、まずは同好会だ。
「それより彼方先輩とエマ先輩が戻ってきてくれて良かったです」
「私はやめたわけじゃないけどね」
「まったく人騒がせですよね、ぷんぷん!」
そう言って話題を逸らした菜生に、エマはそう告げると隣でかすみがそんな事を口走ると彼女に彼方が近寄るとその頬を引っ張った。
「そんなこと言うのはその口か~」
「あーーん」
「あはは……ともかく元々いた部員で勧誘してないのはあと一人。彼女をどう勧誘するか考えないと」
そんなやり取りを苦笑いしながら見ていた菜生はそう切り出す。
「優木せつ菜さんですね」
「どんな人だったんですか?」
「ん~どんな人かぁ…一言で言うには難しく、語るには……」
「語るには…?」
「彼方ちゃんが眠りに誘われる」
まだ出会ってそんなに経っていないがこの眠そうな先輩は、本当に少し長い話をしたらすぐ寝てしまいそうな感じがする。思わずずっこけそうになる菜生に、エマが代わりに口を開く。
「彼方ちゃんが眠くならない程度にお話するね」
「以前少しお話しする事と被りますが、せつ菜さんは、この同好会を引っ張っていく存在でした」
そうエマに続いてしずくも口を開く。『優木せつ菜』解散寸前に陥る前の同好会の中心人物で、生徒会長曰く『同好会に亀裂を入れた存在』
「かわいい顔してダンプカーみたいな…」
「かわいいダンプカー?」
かすみの言葉に菜生は首を傾げるが、恐らくダンプカーみたいに力強くみんなを引っ張っていく存在だったのだろうと自分の中で納得させると話の続きに集中する。
「一番やる気があったし、もともと個人でスクールアイドル活動もしていたから、結構有名だったの」
「私も聞いたことはありました。そんな有名人が!?って同好会に入った時は驚きましたよ~」
「かすみちゃん、スクールアイドルの事いっぱい勉強してるんだね!」
「将来のライバルになりそうな芽は、早めに摘んでおかないと……じゃなくって、いっぱい吸収させてほしいなと思って」
歩夢がそう感心しているとなにやら物騒な事を口走るかすみだったが、慌ててそう言って舌をペロッと出して誤魔化した。
「みんなの話聞いてるとめっちゃ目立ちそうだけど、学園内じゃ全然噂とか聞かないよね?」
「そうなんですよね」
「虹ヶ咲にいるのは確かなんだけど、同好会以外では一度も見たことがないの」
それだけの存在感のある生徒なら、学園内で有名になっていてもおかしくないはずなのに全くそんな話を聞かない。それを疑問に思った菜生にしずくとエマがそう告げる。
「前はスクールアイドルのイベントに行けば、必ず会えたんですけど。最近はそれにも出ていないみたいなんですよねぇ…」
「もしかして、スクールアイドルやめちゃったのかな……」
かすみの言葉を聞いて、そう呟く歩夢だったが。それには彼方が首を横に振る。
「それはない。せつ菜ちゃんは心の底からスクールアイドルが好きだったから、やめるってことは考えられないよ~」
彼方はそう断言してみせると、そのまま言葉を続ける。
「大好きって気持ちを世界中に広めたいっていう熱意に燃えてた。だから離れてるとしか思えないんだよね~」
「せつ菜さんは本当にすごかったですからね。歌もダンスも……スタイルだって良かったし」
「ぬぬっ!?スタイルといえば!同好会に入れたい子が一人いたのを思い出した!せつ菜ちゃんを探す前に勧誘しよう!」
そう彼方に続くようにして告げたしずくの言葉を聞いて、彼方がそう声を上げる。
「どんな方ですか?」
「なんでも、毒藻…?らしい……」
なんだそれは…?と頭を悩ませていると、再びエマが口を開く。
「読者モデルのことだね」
「連絡してみる~」
そう言って彼方はスマホをとり出すと、件の読者モデルの生徒に連絡を取る、その時だった。
「みんな大変!」
「愛ちゃんどうしたの?」
唐突に部室に駆け込んできてそう叫ぶ愛にそう問いかける。
「空から、降ってきた…!」
「降ってきた?」
そう璃奈が告げるも話が見えない。「凄いから見てみてよ!」そう言って手を引く愛に引っ張られるようにして学園の外に出る。
「う、うそ……」
そして目の前にそびえる物体に思わず言葉を失うのだった。
『僕はイゴマス。おもちゃのイゴマス』
というわけでまだ1人勧誘が残っているところで次のトラブルです。
あと3話くらいしたらメンバー全員揃うかなって思ってます。
それでは次回、お会いしましょう。