恐らく年内最後の更新となると思います。
虹アニメも終わりましたが、2期が放送されることを切に願います。
昨日のイゴマスの一件により、その日は見送りになってしまった彼方の言う読者モデルの生徒『朝香果林』を勧誘すべく放課後集まっていた。
その女子生徒との待ち合わせは学園の敷地外で、指定された場所へ行くとそこにいたのは私服姿の女性がいた。
青みがかった黒髪をウルフカットにし、肩から胸元まで大胆に露出し左鎖骨下にみっつ並んだホクロが目に付く彼女は確かに高校生離れしたルックスをしていた。
「ふ~ん…スクールアイドルねぇ」
「どうです?やってみませんか?絶対楽しいですよ!」
「そうね……今までいろんなお誘いを貰ったけど、スクールアイドルは初めてよ。でも…私にできるかしら?」
「もちろんですよ!果林先輩とってもスタイル良いし、衣装映えしそう!」
そう菜生は熱心に目の前の三年生を勧誘していた。その後ろでかすみは胸を撫で下ろすような仕草をしていた。
「…かすみちゃん、安心して胸を撫で下ろしてるの?」
「……時々考えるだけです。神様って不公平だなとか」
それに気がついた歩夢にそう聞かれると、かすみはただそれだけ答える。だが果林と菜生はそんな様子に気づいてはいないようだった。
「そうね…スクールアイドルに興味はあるけど……」
「じゃあ入ってくれますか?」
「でも、私でいいの?私、フリフリの衣装とか似合わないわよ?体のラインの出るような衣装とか、露出の高い衣装なら自信あるけどね」
「ろ、ろしゅつ…ですか……」
そんなやり取りを聞いて歩夢は顔を赤らめると視線を下に落とす。読者モデルをやっている彼女と違い、普段人前であまり肌を晒すような経験はないのだ。
「そう。例えば……隣の子がチラチラ見てる胸元のほくろが目立つような……ね?」
そう言って果林が歩夢からその隣のかすみに視線を移すと「み、見てないです!」といってかすみは慌てた様子で告げる。
「かすみさん…自白です……」
「だって、すごくきれいだなって思って…うう……」
そうしずくに指摘されると、かすみは正直にそう白状するのだった。
「ふふっ褒めてくれてありがと」
そんな羨望の目を向けるかすみにそう返すと、果林は菜生の方へと視線を戻した。
「スクールアイドルになってもいいけれど。ひとつ、条件があるの?」
「条件…ですか?」
「私は、私の目指すスクールアイドルになりたい、それでもいい?同好会には入るけど、グループ活動はあんまり得意じゃないっていうか……」
「なるほど……いや、それだ!」
果林の言う条件を聞いて、菜生は手を叩いて何かを思いついたようだったが、周囲は訳が分からないといった様子だった。
「今後の同好会の方針は、ソロアイドルで行こう!ソロでも活動できるんだったよね、かすみちゃん?」
「は…はい」
そう勢いよく菜生に詰め寄られて、かすみは若干引き気味に頷くと菜生は満足したように笑うと続ける。
「前は、無理にグループで活動しようとしたのが上手くいかなかった原因だと思ったんだよね。みんな個性がバラバラで、やりたいこともはっきりしてるみたいだしさ」
そう腕を組んで、以前かすみやしずくから得た情報から色々自分なりに考えた結果を述べていく。
「だからさ、みんな同じ同好会に所属してるけど、スクールアイドルとしてはそれぞれ違う自分の理想を目指す…目指すものが違っていいんだよ!自分の好きなものを…夢を追いかけていいはずだよ!!」
「めっちゃいいこと言う~彼方ちゃんもそれに賛成~」
「グループとしてまとまってなくてもいいってこと?」
菜生の提案に対して、エマはそう問うと菜生は頷く。
「絶対にまとまってないといけない訳じゃないと思うんだ。それぞれが好きな部分を伸ばす方法を探してみましょう」
そう言って菜生は再び果林へと向き直る。
「今までにない刺激をあげられるスクールアイドルを目指して、私たちと一緒にやりましょう、果林先輩!」
「今までにない刺激…ふふっ面白そうね、そういうことなら入部させてもらおうかしら」
「やったぁ!よろしくお願いします!!」
果林が入部してくれることになり飛び跳ねて喜ぶ菜生、これであと2人。ふたり入部すれば、スクールアイドル同好会は存続できる。
「せつ菜さん……本当に誰に聞いても、居場所が分からない……」
部室に戻ると、せつ菜を勧誘すべく彼女の居場所に心当たりのある生徒はいないか情報収集をしてくれていた愛と璃奈と合流し、作戦会議を始める。
「あーアタシも声かけられるとこ全部当たったけどぜんっぜん情報なし…まいったね~」
「スクールアイドル同好会優木せつ菜捜査本部を作るしかないな~」
「彼方さん、捜査本部って……何?」
いくら学園が広いとはいえ、ここまで情報が得られないことを不思議に思いつつもなにか手は無いかと考えているとそう切り出した彼方に歩夢は首を傾げる。
「捜査本部を作って、学園中の目撃情報を募る!」
「…大げさでは?」
そうしずくも苦笑いを浮かべつつ告げると、「でも、なんだかおもしろそう」と璃奈は乗り気だった。
「それくらいしなければ、せつ菜ちゃんは見つからないと彼方ちゃん思うんだよ~」
「優木せつ菜さん探し……これは時間かかりそうだね」
名の知れたスクールアイドルであり、この虹ヶ咲学園の生徒でありながら学年も科もクラスも一切不明な彼女は今、いったいどこにいるのだろうか?菜生には想像もできなかった。
「うちの学年でも知ってる人いなかったよ~。何年生なんだろ?」
「もともとソロ活動で有名だったってことは、一年じゃないよね?」
エマたち3年生に知っている人は居なかったらしく、愛の推測通り元々名が知れているのなら一年生という可能性は極めて低い。なら二年生だろうか?
「この学園も広いしね。ある程度あたりをつけていかないと見つけるのは難しそうね」
「でも、あたりをつけようにも、目撃情報は皆無…」
「そうなのよね……」
「ひょっとしたらひょっとして、何ですけど……これって生徒会長の罠だったりしませんか?」
どうしたものかと頭を悩ませていると、かすみがそう口を開いた。
「…罠?」
「会長がせつ菜先輩のこと誘拐して、かすみんたちが探してる間に時間切れを狙うとか!そもそもですよぉ?5人いれば同好会活動はできるはずなんです」
首を傾げる菜生に、かすみはそう続ける。
「そうね。そもそもこれだけ人数がいるなら本来は問題ないはず。規則にもそうあるんだからね」
「ここはひとつ、交渉してみない?」
それを聞いて頷く果林と、交渉を提案するも「ないない、それに…」と菜生は笑って首を振ると話し始める。
「会長との約束は、守りたいかな?大丈夫、きっとうまくいく!みんなの大好きな事をやるわけだし、みんなの夢はきっと叶うよ!」
「菜生ちゃん、本当にスクールアイドルが好きなんだね」
「それはみんなもでしょ?」
歩夢にそう言われた菜生は笑ってそう答える。ここにいるみんな、スクールアイドルが好きだからここに集まっている訳だから。
そうこう話をしていると、部室の扉が開く。
「私の見込んだ通りだったわ!きっと10人の部員を集めてもう一度同好会を復活させてくれると信じていました!」
「か…会長!?」
入ってくるなりそう告げる人間を見て、かすみは驚きの声を上げる。何故ならその人物は生徒会長である、中川菜々だったからだ。
「え?…え?なに?どういうこと…」
彼方も、きっとこうして同好会のメンバーを集まるのを期待していたかのような菜々の物言いに混乱していると。目の前の少女はハッとして口元に手を当ててオロオロし始めた。
「あ…またやっちゃった……今私、生徒会長モードだった……」
「生徒会長モード…?まさか、生徒会長が優木せつ菜さん…?」
菜々の様子を見て、菜生はおずおずとそう問いかける。すると菜々は観念したかのように頷く。
「はい……私がせつ菜です」
そう言って奈々は眼鏡を外して三つ編みを解く。「これで信じてもらえるでしょうか?」そう告げる彼女を見て、「えぇ~!?」と全員驚きの声を上げる。
「ほ、ほんとにせつ菜ちゃんだ…」
「そ、そんな…せつ菜さんが生徒会長だったなんて……」
そう、優木せつ菜という生徒が学園内で見かけた事のある生徒がいなかったのは、生徒会長である中川菜々のスクールアイドルとしての顔だったからだ。
普段学園内ではせつ菜としてでなく、菜々として生活しているのだから見つからなくて当然なのだ。だとしても…
「全校集会とかでも見ていたはずなのに、もともとメンバーだったみんな気づかなかったの?」
「彼方ちゃん、その時間はすやぴしてるんで」
「全然気づかなかった自分の事がショックです…」
そうしずくが肩を落として落ち込む。生徒会長という全校生徒の前に顔を見せる機会の多い彼女がせつ菜であることに、同好会のメンバーすら気がつかなかったのだ。
「生徒会長とスクールアイドルの二重生活なんて反則です~。かすみんたら、せつ菜先輩に向かってロボットとかいっちゃいましたよぉ…」
「あははっ、私も意地悪に接してましたからね、気にしないでください。それに私の方こそごめんなさい」
そう言って頭を下げるせつ菜に「せつ菜せんぱーい」とかすみは泣きそうな声を上げる。
「でもでもっなんで先輩は私たちに部員を10人も集めろって無茶言ったんですか?せつ菜先輩だって、同好会潰したくなかったですよね?」
「続けたかったけど……でも、怖かったんです。こうなってしまった原因を作ったのは私だったから」
「せつ菜さんのせいって思ってるメンバーなんていませんよ!」
自分が同好会が自然消滅する原因を作ってしまったから、だから存続の為に動くことが怖かった。でもしずくはそんなことを思っているメンバーなんて居ないと告げるがせつ菜は首を横に振る。
「私、スクールアイドルが大好き過ぎて、それを抑えられなくて……好きって気持ちをみなさんと共有したくて、色んなこと押し付けちゃいました」
自分の好きなスクールアイドル像を目指して、みんなを引っ張っていく存在だった彼女はその結果自分の好きを押し付けてしまったと感じていたのだ。
「そういうのはダメだってわかっているのに、我慢できなくて、それでみなさんとの仲がどんどんぎこちなっちゃったのが怖くて」
「でも、私たちが同好会存続の為に動いているのをこっそり見守ってたよね?やっぱりせつ菜ちゃんも、やり直したいって思ってたからだよね?」
菜生は薄々察していたのだ。菜々がせつ菜だということではなく、菜々もスクールアイドルが好きなのだろうと言う事に。そしてその菜生の問いかけに、せつ菜は頷く。
「10人集めてしまうくらい情熱を持った人がいてくれれば…今度こそ、うまくいくんじゃないかって……。ふふ…調子のいい考えですよね?」
「そんなことないよ。聞いて、私たち同好会の新しいやり方を考えたんだ」
自嘲的に笑う彼女に、菜生は首を振ってそう告げる。
「そうだよせつ菜ちゃん、菜生ちゃんがナイスアイディア出してくれたんだよ」
「うん、私たちにはきっとあってるやり方だと思うよ?」
「そうですよ!だから先輩も戻ってきますよね!?」
「こんなにたくさんの仲間が集まってくれたんです!新しいスクールアイドル同好会として活動しましょう、せつ菜さん!」
すると元々同好会メンバーだった面々が、そう言ってせつ菜に戻ってきてほしいと告げる。
「みなさん…でも、まだちょっと自信無いです。活動を再開させたら、またスクールアイドルが大好きって気持ちが暴走しちゃうかも……」
「大丈夫!その『大好き』は全部私が受け止める!私は、みんなのことを応援したいんだ!!」
そう宣言する菜生に、せつ菜は驚くがすぐに笑顔を浮かべる。
「ありがとうございます…!改めて、私もスクールアイドル同好会に入部させてください!」
「これで9人!あと一人もすぐに見つかるよ!!」
「ううん、もう見つかっていると思います」
せつ菜が戻ってきてくれたことであと一人だと無邪気に喜ぶ菜生に、せつ菜はそう告げる。
「みんなわかってるわよね?」
「気づいてないのはなおっちだけだよ」
「菜生さん、にぶにぶです」
意味が解らないといった様子の菜生に、果林や愛、璃奈はそう告げる。
「ほんとにわかってない?」
「何がです?」
「寝起きでボケボケのときの彼方ちゃんだってわかるのにな~」
エマや彼方に言われてもまだ菜生は理解できていなかった。今自分の周りに立っている少女は全部で9人、やはり一人足りないではないか。
「誰が私たちを集めてくれたんでしょうか?」
「初日に生徒会室に行った時、緊張のあまり反対方向に走っちゃった人で~す」
「え?え…?」
「私は生徒会長として、部員を10人集めることを条件としましたが、『スクールアイドルを10人集めろ』とは言っていません」
しずくやかすみ、そしてせつ菜もそうほぼ答えと言って良いレベルでヒントを出して「まさか…」とやっと菜生も理解できて来たようだった。
「10人目は、私の目の前にいる人です」
「わっ…私!?」
「そうだよ、菜生ちゃん!」
自身を指さす菜生に、歩夢はそう笑て告げる。
「スクールアイドル同好会、再始動です~」
「一つだけ…再始動にあたってお願いがあります。菜生さんに、部長になってほしいんです!」
「えっ!?そ、そんな無茶だよ~」
「ここにいるメンバーを集めて、もう一度同好会を作ってくれたあなたが中心にいれば、今度こそきっと大丈夫だと思うんです」
「賛成!私たちをその気にさせたのは、菜生ちゃんだもん!!」
部長になってほしい。その申し出を受けて狼狽える菜生だったが、歩夢もせつ菜を同じ気持ちらしい。いや、彼女だけじゃない。気がつけば菜生を囲むように全員が立っていた。
菜生がいたから、元々同好会にいたメンバーは戻ってきてくれたし、新しいメンバーも増えた。それは紛れもない事実なのだ。
「わかった…!私やるよ、絶対にみんなの味方でいる!絶対にみんなのこと全力で応援する。約束する!」
菜生にはもう、迷いは無かった。みんなを応援するため、みんなの中心に自分も身を置くことを。みんなを応援する。それが今の菜生の夢だから―
「虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会、再始動だよ!!」
そう宣言する菜生の表情は、とても晴れやかだった。
という訳で、同好会全員がそろった所で前書きにも書きましたが、なんない最後の更新となると思います。
みなさん、よいお年をお過ごしください。