この作品とは関係ないお話ではありますが、コラボ作品に関わる事となったので活動報告の方で簡単にお話しさせていただきました。
今年度も当作品をよろしくお願いします。
「菜生が部長にね。どう?やっていけそう?」
「う~ん…まだ自信は無いけど、やれるだけやってみるよ」
それから数日、スクールアイドル同好会は練習を開始し、近々開催されるという。ソロ部門でエントリーできるイベントに全員が出場すべく活動を開始していた。
菜生が部長だという事を知って、母は不思議そうは表情を浮かべるが菜生はそう自信ありげに答える。
「でも菜生は歌って踊ったりはしないんでしょ?」
「まあ…ね。私は応援したいとは思うけど、自分がやりたいっていう気持ちは無いし」
「まあ好きになさい。そのかわり、ちゃんとやり遂げるのよ?」
「うん!」
菜生の宇宙への夢―その道のりに、スクールアイドルは回り道かもしれない。だが菜生はやってみたいから、だからこの道を選んだ。
追う夢は、必ず一つだけである必要はないし。スクールアイドルを間近で応援できるのも、高校生でいられる今のうちだけなのだから。
「そういえば菜生」
「ん~?」
暫しの沈黙の後、不意に母に話を切り出された菜生はトーストを咥えたまま返事をする。
「だから物咥えたまましゃべらないの…あの首に下げてた石はどうしたの?」
「…ッ!?ゲホッ…ゲホッ…」
普段なら寝起きでも必ず首から下げていた輝石が無くなっていることに気がついた母にそう問われて、驚いた拍子に食べていたトーストが気管に入ったのか、思いっきり咳き込む。
「だ、大丈夫……?」
心配する母を横目に、慌てて目の前の野菜ジュースを飲み息を整えてから菜生は答える。
「…ふぅ……いやさ、最近怪獣がよく街に出て危ないじゃん?この前落としかけちゃったから、暫くしまっとくことにしたの」
まさかウルトラマンコスモスと一体化して、変身アイテムに変化したとは口が裂けても言えず。菜生はそう言って誤魔化す。
「そう…まあそれがいいかもね。失くしたら大変だし」
「でしょでしょ?同じものは地球上どこを探してもない訳だし」
コスモスから貰った輝石は、地球上には存在しない物質が含まれている。文字通り世界で菜生しか持っていない石だったのだ。
だがそんな代物を今まで意地でも肌身離さず持っていた菜生がそう告げるのだから、多少無理はあったのかもしれない。
「ま、菜生がそう言うなら良いわ。ちゃんと自分が解るようにしまっとくのよ?」
「はーい。私だってもうすぐ17だよ?もう子供じゃないんだからそのくらい解ってるって」
「ならいいけど?」
「大丈夫大丈夫!」
そんなやりとりを交わしつつ菜生は内心ほっとしていた。不自然に思われたかもしれないが自分がコスモスだと言う事は誤魔化せたはずだと。
「ほら、早くしないとまた歩夢ちゃん待たせちゃうわよ」
そう言われて時計を見ると、そろそろ準備しないといつも通りの時間に登校できなくなるところだった。
「……ごちそうさま!」
急いで最後の一口を呑み込むと菜生は立ち上がる。急いで髪をセットしながら「あーやっぱめんどくさいなぁ…」なんとぼやくのを母親は聞き流しながら笑みを浮かべた。
「さてと、同好会の目標ですが…」
放課後、部室でミーティングの際一応部長だからという事で菜生が進行を務めていた。練習を開始し、スクールアイドル活動を開始した彼女達だが、まだソロで活動すると決まっただけで立つステージも曲もまだない。
「スクールアイドルフェスティバルへの出場!これを目標にしたいと思います!」
―スクールアイドルフェスティバル―菜生が初めてスクールアイドルと出会ったあの日、µ'sとAqoursのステージの映像で発表されたイベントの名称だ。
簡単に言ってしまえば、スクールアイドルによるお祭り。特別な参加資格が必要になるイベントというわけではないが、メインステージに立つことが出来るのは実績のあるスクールアイドルとなっているのだ。
「出るからには一番おっきいステージ目指さなくちゃ!……とゆーわけで、今度ソロ部門のあるイベントがあるからそれに出てみるのはどうかな?」
そう菜生は提案する。スクールアイドルと一括りにしても、一般的には一つの学校に一つのスクールアイドルグループ。というのが一般的で、まだまだ虹ヶ咲のようなソロで活動するスクールアイドルが複数人存在する学校は少数派なのだ。
「ソロ部門があるならアタシたちにぴったしじゃん!」
「そうね、まずは一人でどこまでいけるか試してみたいし」
そう告げる菜生の言葉を聞いて、愛と果林は望むところだといった様子だった。
「ごめんね、菜生ちゃんにリサーチ任せっぱなしにして」
「私も、もっと詳しくなるね」
「いいって、私が好きでやってるんだし。それになんてったって部長ですから!」
菜生が一人でみんなの為にと、ソロで参加しやすいイベント等についての情報をどんどん調べていることに対して歩夢と璃奈がそう申し訳なさげに告げると菜生はそう笑って見せる。
「それにみんなを一番近くで応援することが、私の夢だから!」
だから安心して練習に励んでほしい。そう菜生は笑うのだった。そんな様子に、ただ一人だけ浮かない表情を浮かべるのだった―。
「じゃあまずは、今度のイベントに向けて頑張ろう!」
「「おー!!」」
こうして、虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会は最初の活動目標ができたのだった。
「…ねえ菜生ちゃん?」
「ん~?」
練習後の帰り道、歩夢は隣を歩く菜生に話しかけると当人は先程コンビニで買ったスティック状のチョコレートの塗られたお菓子を咥えたまんま返事をする。
「本当にいいの?菜生ちゃんの夢って本当は……」
「宇宙に行く事だよ?でもそれは高校を卒業した後の事、今はスクールアイドルとしてステージに立つみんなを応援したいんだ。欲張りかな?」
咥えていたお菓子を呑み込むと、菜生は歩夢の方を向いてそう笑って答えるがすぐに笑みは消え、俯いてしまう。
「歩夢だから言うね…?本当はさ、解んなくなってたんだ。宇宙に行く事が、本当に私の夢なのかって…中学の時から少しさ……」
「『あの事故』のせい…?」
その問いに菜生はこくりと頷く。菜生にとって、その事故は菜生の夢に暗い影を落とした。
居住型宇宙ステーションの開発中に起こった事故、それによって死亡者を出してしまった事で建設が中断となったのが3年前。
それが菜生の夢に迷いが生まれた瞬間―そして、なぜ菜生が宇宙に行きたいと思うようになったかというと、今は亡き父が宇宙飛行士だったからという事が大きかった。
幼少期の菜生は今より男勝りで、空手の有段者でもあった父のようになりたいと空手もやっていた。そんな菜生を父はいつも笑顔で応援してくれた。でも、宇宙に行きたがる時の菜生にだけは困った顔を浮かべていた気がする。
―ボクもおとーさんと一緒に行く!
―これは、新しいロケットのテストだからすぐ戻ってくるよ。だからお母さんと待ってな?
仕事に出かける父に、また宇宙に行くんじゃないかとついて行こうとする菜生の頭をポンポンと叩くと父はそう言って笑いかける。
―わかった!じゃあボクが大人になったら、そのロケットで一緒に宇宙行こうね!
―わかった、約束だ!
だが、それが父と交わした最後の言葉だった。
開発中だった大型宇宙探査ロケット『コスモ・ノア』の事故により帰らぬ人となった。
―おとーさんどこにいったの?
―お父さんはね、宇宙に行ったのよ
―うそつき!一緒に行ってくれるって言ったのに!
父の葬儀の際、状況が理解できなかった菜生はそう母に叫ぶ。
―ううん、きっとお父さんは宇宙で菜生の事を待ってるわよ
―ほんと?
幼い菜生は、母の父は宇宙で菜生がいつか宇宙に来るのを待っている。その言葉を信じた。
だから菜生はずっと宇宙に行くのが夢だと言い続けてきた。
だがしかし、少しづつ大人に近づいて行くにつれて、死とはどういう意味か?父親がどうなったのか、菜生は母からはっきりと告げられることなく理解していた。そして中学の時に起きた宇宙ステーションの事故で、菜生は宇宙での命の危険を認識して怖くなってしまったのだ。
母親が、夫だけでなく一人娘までも失ってしまう可能性があることが。
「そりゃ今でも宇宙にはいきたいよ?でも、それがお母さんを悲しませる結果になるかもしれない…それが怖いんだ」
「菜生ちゃん…」
「でも、この夢から逃げるためにスクールアイドルを応援するわけじゃない。なんか、みんなを応援してたら私も自分の答えを見つけられる気がするんだ」
だからみんなを応援することが今の自分のやりたいこと。そう菜生は胸を張ってそう告げるのだった。
「だから、歩夢の事一番近くで応援するね?」
「ありがとう。菜生ちゃん」
この数年間、幼馴染に勘付かれてはいても面と向かってはっきり口にすることができなかったことを、ここで菜生は初めて口にした。
そして歩夢もまた、そんな菜生の言葉を受け止めた。きっと誰にも言えずにずっと燻ってきた感情を、目の前の幼なじみは明かしてくれたからと。
菜生にとって歩夢は、一番長い時を一緒に過ごしてきた相手でもあった。お互い両親が多忙で家を空けることが多かったことと住んでいるマンションが隣部屋だったこともあり、必然的に親より共に過ごす時間が多かったから。菜生にとっては家族と言っても良い存在だった。
そんな歩夢にだから見せることが出来る『弱い自分』まだ知り合って間もない同好会のメンバーには、決して見せられない自分。
だがそんなやり取りを、突如として街中に響き渡った地響きが遮ってしまった。
「□□□□ーーーッ!!」
そして地底から、『襟巻怪獣スピットル』が出現した。本来夜行性で大人しい性格のスピットルは、カオスヘッダーの影響で目覚めてしまい地上に現れたのだ。
そして自身が嫌うジェット音を消し、東京を静かにするために真っ直ぐ空港へと歩み始める。
そして不運にも近くを飛行中のジャンボジェット機に狙いを着け、フード状の襟巻を開きその中から現れた目は真っ直ぐジェット機を見据えていた。
「飛行機が!」
「菜生ちゃん!?」
歩夢の声を置き去りにして菜生は走り出した。
(このまま怪獣が飛行機を攻撃したら…それにこのままじゃ、あの怪獣も殺されちゃう!そんなの…そんなの嫌だ!)
スピットルがジャンボジェットを攻撃すれば沢山の人の命が奪われる。それだけでなく、スピットル自身も防衛軍によって排除されてしまう。
菜生は怪獣が元々大人しい存在だと、人間が何もしなければ向こうも何もしてこない存在だと信じている。
それに何より、自分の前で命が奪われるのが嫌なのだ。怪獣も人間も、同じ命だから。自分のように、大切な人に二度と会えない悲しみを味わって欲しくないから。
そして今の菜生には、その気持ちに応えてくれる存在もいる。
『菜生、救うのだ。その力で、その心で…!』
コスモスは、そんな菜生に変身するように促す。コスモスの力なら、スピットルも、ジャンボジェット機も救えるはずだと。
そして菜生はコスモプラックを掲げ、光を解き放つと辺りは眩い光に包まれて何も見えなくなる。
「シュワ!!」
その光が収まると、天からウルトラマンコスモスが飛来し、土砂を巻き上げて着地した。
「コスモス……」
菜生を追いかけようとしていた歩夢は、視線の先に現れた青い巨人の背を見つめ、その巨人の名を静かに呟いた。
「□□□ーッ!!」
コスモスとスピットルは同時に駆け出すと、コスモスはスピットルの巨体を躱して背後に回り込む。
「フッ!ハアッ!トリャア!!」
スピットルの両腕を振り回すようにして繰り出された引っ掻き攻撃を、コスモスは捌き切ると腹部へ掌で突きを繰り出し、スピットルの巨体を後退させる。
そしてその隙に、ジャンボジェット機はコスモスの背後を通るようにしてその場を飛び去って行く。ひとまず乗客を巻き込むという事態は防ぐことが出来た。
コスモスは、スピットルが暴れはじめたのはカオスヘッダーの影響であろうと推測こそすれど、カオスヘッダーに憑りつかれている訳ではないことを理解した上で、スピットルを引き付けていたのだ。
「ハァァアア……イヤアッ!!」
両腕を広げた後、平手のまま右腕を突き出すようにして構えるコスモスに対してスピットルは悔し気に地団太を踏む。
そのまま勢いよくコスモスへと体当たりを敢行するも、コスモスに上手く受け流されその勢いはそのままに転ばされてしまう。
すると起き上がったスピットルは、コスモス目掛けて真っ黒い溶解液を口から吐き出して攻撃する。するとコスモスは金色のバリアを壁状に展開すると、そのバリアを押し飛ばしスピットルを包む。
コスモスの多彩なバリアのバリエーションの一つ、ムーンリバースパイク。
攻撃を無力化されたスピットルは戦意を喪失し、外敵だと思っていたジャンボジェット機も居なくなったことで再び頭部を襟巻で覆い隠すと地底へと帰って行った。
それを見送ったコスモスもまた、飛び立つとそのまま光に包まれて見えなくなってしまった。
その直後、空から銀色の光が降り注ぎその中から菜生が現れる。
「ありがとう、ウルトラマン」
そうコスモプラックに菜生は語り掛ける。街を守るだけなら、スピットルをそのまま倒してしまうのが一番手っ取り早い方法だ。
それでもコスモスは、菜生の想いに答えてくれた。スピットルの戦意を削ぎ、元居た場所に帰すという方法で。
「菜生ちゃん?菜生ちゃーん!!」
歩夢が自分を探す声が聞こえる。そう言えば思わず飛び出しちゃったなと苦笑いを浮かべながら、懐にコスモプラックをしまうとその声の方に駆け出した。
「おーい!歩夢~!!」
「もう、心配したんだから…」
「ごめんごめん、なんか気がついたら走ってた」
「もう」と頬を膨らませる歩夢に、菜生は自分がコスモスと一緒に戦っていることを隠していることに罪悪感を感じつつも、知れば彼女は絶対に菜生とコスモスがともにいることにいい顔をしないのかもしれない。
「そういえばお腹すいた、クレープ食べ行かない?」
「さっきお菓子食べてたじゃん、晩御飯食べれなくてお母さんに怒られても知らないよ?」
「うぐっ…それはまずい……」
誤魔化すように提案した結果、手痛い反論を受けて菜生は余計に青ざめるのだった。
というわけで最新話でした。
菜生の心の奥底で眠っているもの、0章時点ではまだ宇宙に行けば父に会えると思っていたんですよね。
この先菜生の夢はどうなっていくのか?そしてまだ触れられていない過去とは?今後をお楽しみに