被害を最小限に抑える為に、ルナエキストラクトでカオスヘッダーをゴミから分離させようとしたコスモスだったが、その光線は吸収され思わぬ反撃を受けてしまう。
だがここでカオスバグを倒さねば、折角のAqoursのステージを破壊されてしまう。だからこそ、コスモスはここで負ける訳にはいかない。そう自信を鼓舞してなんとか立ち上がった。
「デリャア!!」
拳を突き上げ、赤い光を見に纏ったコスモスは。基本形態のルナモードから戦闘形態であるコロナモードへと姿を変えた。
(もう容赦しない!)
「ダアッ!!」
拳を突き出すようにしてファイティングポーズを取ったコスモスは、そのまま突撃してくるカオスバグを待ち構えていた。
「ウルトラマンが……」
「変わりましたわ……」
初めて見たコスモス、そしてさらに彼のモードチェンジに思わず圧倒されてしまう。見た目も声も穏やかなルナモードとは打って変わって低く勇ましい声で戦う姿には威圧感すら覚える。
「フッ!ハッ!デリャッ!!」
カオスバグが左右の腕を突き出して攻撃してくるのを、拳を振り落として払いのけるとその腹に拳を撃ち込む。
その拳の重さに思わず後退するカオスバグだったが、すぐさまコスモスへと肉迫する。だがコスモスはそれを避けると背後に回り込み、相手が振り返ったのに合わせて両拳を同時に相手の腹に撃ち込む。
「フッ!」
両腕を広げた後、どっしりと構えをとる。
なおも突進し、コスモスへと両腕を振り下ろすカオスバグだったがその攻撃は歯の根蹴られ、再び振りかぶった左腕も側転でその横を通り抜けられ虚しく空を切る。
「ダアアッ!」
そして側転から体勢を整える勢いのままに相手を蹴り飛ばす。
「凄い…」
ルナモードも虚を突かれただけで苦戦していたわけでは無かったが、コロナモードへとチェンジしたコスモスの攻撃には一切の容赦はなかった。
「□□ーッ!!」
「ウオォッ!!」
尚もコスモスへと体当たりしようと突っ込んで来るカオスバグに対して、コスモスは真っ向からぶつかる。両者密着したまま膠着状態となる。
─ピコンピコン
だが、その時コスモスのカラータイマーが点滅を始めた。ウルトラマンコスモスは、地球上ではおよそ3分間しか活動することが出来ない。
カラータイマーの点滅が、コスモスに残された時間が残り少ない事を教えていた。
「オオォッ!デリャッ!!」
取っ組み合いが続いていたが、コスモスはカオスバグの身体を弾き飛ばすと連続蹴りを食らわせ相手を寄せ付けない。
そして相手の両腕を掴むとそのまま相手を投げ飛ばしてしまった。地を転がる相手の次の出方を待つかのようにコスモスは構えを取ったまま追撃には出なかった。
するとようやく立ち上がったカオスバグは、接近戦ではどう足掻いても勝てないと察し。再び目を青く光らせる。
ルナモードのリバースパイクバリアを貫いた、高威力の光線を再び放つつもりなのだ。
それを見たコスモスは両腕を水平に広げると、掌にエネルギーが収束していく。そして腕を円を描くように動かすと、コスモスの周りにはエネルギーの余波による軌跡が生じる。
カオスバグの攻撃を、真っ向から打ち破ろうというのだ。
「次でフィニッシュね…」
「大丈夫、ウルトラマンが勝つよ」
「え…?」
そう千歌が呟くと、梨子をはじめとして全員の視線が千歌へと向く。
「なんかね、上手く言葉に出来ないけど。ウルトラマンは大丈夫だって感じるの」
「そう…そうよね、きっと」
9人の少女が見守る中、両者は必殺の一撃を放とうとしてた。
「ヌウゥゥ……」
(これで…終わりッ!)
菜生の何としてもAqoursのみんなが作ったステージを守りたい。その想いがコスモスの身体を突き動かし、全エネルギーを集中させる。
「デリャアアアアッ!!」
コスモスは収束させたエネルギーを、右掌の下に左掌が来るようにして解き放った。カオスバグもそれと全く同じタイミングで目から光線を放つ。
ウルトラマンコスモス
最大の力で放たれたネイバスター光線の威力は凄まじく、カオスバグの身体はその凄まじいエネルギー量に耐えきれず粉微塵に吹き飛ばされてしまった。
「やったー!」
手を取り合って喜ぶAqoursの少女たちの方へ一度視線を向け無事を確認したコスモスは、すぐに飛び立ち青い空の中へと消えていった。
校舎の裏で変身を解除した菜生は、疲労で思わず膝を付いていた。
「はぁ…はぁ…良かった、なんとか守れた。ありがとうコスモス」
そうコスモプラックに語り掛ける菜生だったが、それでも疑問に思う事があった。
(今回カオスヘッダーは、この前と違ってゴミに憑りついた…何が狙いなの…?)
だがその答えを知るものは居ない。解っているのは、カオスヘッダーによって滅ぼされた星が存在するという事実だけだ。
「あっ菜生ちゃんいたいた!どこ行ってたの?気がついたら居なくなってて心配したんだから」
「千歌ちゃん…ごめんごめん、逃げてる人見かけて追いかけたら迷っちゃってさ」
「まったく、菜生ちゃんまだこの辺に慣れてないんだからそういう時はちゃんとわたし達に言ってくれないと」
「ごめんごめん、気をつけるよ」
咄嗟に思いついた言い訳を後頭部を右手で抑えながら告げる菜生だったが、なんとかごまかせたようだった。
「でも凄かったよね、ウルトラマン」
「思わず背筋がゾッとしたわ…強すぎて」
そんな会話をする1年生を横目に、思わず『それほどでも』なんて言いそうになる菜生だったが、そこはなんとか我慢する。
「でもこれでサマーフェスティバル開催できるんじゃない?」
「確かに、先ほどの怪獣があの騒動の原因であったとすれば、ウルトラマンさんのお蔭で解決したと言えますわね」
「そっか!じゃあ私達ライブ出来るんだ!!」
そう菜生が告げると、ダイヤはそう言って納得し千歌はそう言って喜ぶのだった。
「きっとできるよ!」
「菜生ちゃんがびっくりするライブにするよ~」
「だからちゃんと答えを見つけてね」
曜と梨子もそう言ってライブへの意気込みを菜生に告げるのだった。
「でもお祭りって言ってもまだ日にちはあるし、菜生ちゃんそれまでどこかに泊まるの?」
「もしよかったらホテルオハラに特別価格で招待するわよ」
当日までどうするのかを果南に問われると、鞠莉がそう口を挟む。すると「ふっふっふ……」と千歌が得意気な表情をして割って入ってきた。
「なんと菜生ちゃん…十千万のお客様なのです!!」
「ワオ!?」
「ま…まぁ千歌ちゃんとそのご家族のご厚意で……」
さすがに定価で宿泊するだけの財力は無いので最初はどうしたものかと悩んでいたのだったが、差塩は千歌の部屋に泊めてくれると言い出したのだが、さすがに旅館でそれはまずいと言った菜生に、かなり破格な値段で泊めてもらえることとなったのだ。
「なら仕方ないわね、また来る時があったら是非ウチに来てね」
「あの淡島のおっきいホテルだよね…?」
「そだよ?」
「ぜ…ぜひお願いします……」
鞠莉の家がホテルを経営しているのは初耳だったが、ホテルの名前に聞き覚えがあった菜生は隣の千歌にそう聞くとなんでもないかのように頷かれてしまった。
またアルバイトしようかな?そんな考えも脳裏をよぎりつつ菜生はその申し出に答えるのだった。
カオスバグとの戦闘の後、その残骸をSRCが調査した結果。やはり最近の蛍に自動車を襲われただのの騒動の原因はカオスヘッダーにあったこと。ウルトラマンコスモスがカオスバグを倒したことによって、今後同様の事件が起きる可能性はほぼないであろうということが明らかになった。
なので、当初の予定通りにとはいかなかったが、サマーフェスティバルは3日後に開催されることが発表された。
なので開催までの3日間、菜生はAqoursの練習のサポートをしながら当日を楽しみにしつつ、彼女たちと交流を続けたのだった。
「そういえば、菜生ちゃんの学校ってどんなとこなの?」
「お台場にある学校で、科がいっぱいあるんだよね。私が通ってるのは情報処理学科だけど、普通科だったり音楽科だったり国際交流科とかさ?」
「すごい…」
「未来ずら…」
練習中、不意にそう千歌に聞かれて答えると、逆に聞いた側が言葉を失っていた。
「あっでも、浦の星みたいに海が近いんだけどね、海は断然こっちのほうがきれいだよ」
「本当?」
「うん、それにこっちのほうが星がよく見えて私は好きだなぁ」
「菜生ちゃんって星が好きなの?」
「うん。星を見てるとさ、落ち着くんだ。でも東京の空ってあんまり星が見えないんだよね」
実は夜な夜な外に出て星を眺めていた菜生は、そう言って笑っていた。
「こっちに来て私の悩みが晴れたみたいに、星空もきれいに見れて本当にここに来てよかったって思ってる。みんなAqoursのお蔭だよ、ありがと」
「まだ気が早いですよ」
「そうそう、ちゃんとサマーフェスティバルでのヨハネ達のパフォーマンスを観て貰わないと」
「そうだったそうだった、気が早かったね」
この場所での出会いは、きっと永遠に忘れる事のない思い出になった。
そしてライブ当日―
「ほえ~すっごい人数…本当に街の人たちが総出でやってるお祭りなんだね」
会場に集まっている人々を見て、菜生は思わずそう声を漏らした。
「菜生、はいコレ。練習と準備を手伝ってくれたお礼」
「ヨハネちゃんありがと。…何これ?」
「堕天使の涙よ」
「あータコ焼きてきな?いただきまーす」
不意に善子からそう言って手渡された、タコ焼きによく似た食べ物を口に含んだのだが、その顔は一気に赤くなる。
「辛い!辛い!!辛い!!私辛いのダメなんだよ……」
堕天使の涙と称されたそれは、タコでは無くタバスコが大量に入っており辛いものが苦手な菜生にとっては味覚より先に痛覚が働く代物だった。曰く、他のメンバーにも指摘されてかなり辛さを控えたらしいのだが、それでも菜生が異常に辛いものに弱いため耐えられなかったのだ。
「ご、ごめんなさい…まさかそんなに苦手とは思わなくて……」
そう言って菜生に水を手渡しながら善子は申し訳なさそうに告げる。
「…んぐんぐ…ふうぅ……いや大丈夫だよ。私辛いものメチャクチャダメでさ?」
水を飲んでようやく落ち着いた菜生は、そう言って笑う。
「善子ちゃんだから堕天使の涙はやめておこうって言ったずら…」
「気にしなくっていいよ。私が特別苦手なだけだから……」
先の菜生の叫び声が聞こえたのか、様子を見に来た花丸がそう告げる。
「最初にルビィが食べた時よりは辛くないけど、やっぱり辛いものは辛いよ」
ルビィがそう告げるのを聞いて、これでマシになってのか…と菜生は少し最初のを食べていたらタダでは済まなかったなと怖くなってしまう。
(…コスモス、私が辛いの食べて泣き出したら治してくれる?)
『残念だが、それは出来ない……』
(だよね……)
「…?どうしました?」
「へ?なんでもない何でも!!」
食べ物の好き嫌いをウルトラマンに助けてもらえるとは思ってはいなかったが、想像通りの返しに思わず肩を落とすと不審がられたので慌てて誤魔化したのだった。
「それよりさ、ライブ頑張ってね!私ちょっとライブまで他のお店見てくるね?」
そう言ってその場を菜生は離れたのだった。
そして、遂にAqoursの9人の少女たちによるライブが始まった。
「凄い熱気…そっか、これがスクールアイドルの輝きなんだ」
街中の人全員が、このライブを心待ちにしていたことが解る人の数とその人々による歓声。
初めて生で見たAqoursのライブ。ステージにいる彼女達は、以前モニター越しに見たライブとは比べ物にならないくらい、ステージ上にいる彼女達は輝いて見えた。
以前初めて彼女達と出会った時に千歌が行っていた、『自分達だけの輝き』それは誰かの真似では決してなく、自分達で自分達の道を探す事なのだろう。
きっと彼女達は、自分達が進む道が見えているからこそこの輝きを生み出せるのかもしれない。
「そっか…Aqoursのみんなも、始めた時はきっと目標にしてたスクールアイドルもこんな風に見えてたんだ」
彼女達と会った事でぼんやりと見えたものが、今はより鮮明に見えるようになった気がした。
「もう帰っちゃうんだ?」
「まあね、そろそろ帰らないとニジガクのみんなとも練習しなきゃだし」
サマーフェスティバルの翌朝、東京へ帰る菜生をAqoursは総出で見送ってくれた。
「それでわかった?菜生ちゃんが知りたかった事」
「うん!私も見つけるよ、私達だけの輝きをさ」
そう言って菜生は笑いかけた。
「うん!きっと見つかるよ。そうだ、スクールアイドルフェスティバルには出るの?」
「すくーるあいどるふぇすてぃばる?」
千歌から告げられた単語に思わず首を傾げる菜生だったが、それには梨子が説明を入れる。
「簡単に言えば、スクールアイドルのお祭りね。参加資格は学校所属のスクールアイドルであることだけだから、もしよかったら虹ヶ咲学園のみんなも出てくれたら嬉しいわ」
「そう言う事なら私がみんなに声かけてみるよ」
「ありがとう。また詳しい話はその時にね」
「オッケー!じゃあ、またね」
「「またね」」
そう言って菜生はヘルメットのシールドを閉めると走り出した。
だが今回初めて怪獣以外に憑りついたカオスへッダーだったが、これはまだまだこの先待ち受けている困難のほんの序章にしか過ぎないことを菜生はまだ知らない。
駆け足気味でしたが、これでひとまずAqours編は終了となります。
次回からは再び同好会のメンバー達との物語となります。