COSMOS The Rainbow   作:カズオ

19 / 58
大変お待たせしました。
花粉に起き攻めされる季節になりましたね、私は瀕死です!
そんな季節感をぶっ壊す14話をどうぞよろしくおねがいいたします…(土下座)


14話 熱い夏、来る!

沼津から戻ってきた菜生は、夏休みに入って初めて同好会のメンバーと顔を合わせていた。

 

「え~!?菜生せんぱいAqoursと会ってたんですか!?」

 

「うん、予定より長くなっちゃったけどね」

 

今現在、スクールアイドルの中でもトップクラスの実力を持つAqoursと会っていたなんて言われて、羨ましいと思わないはずもなくかすみを筆頭に皆にどうだったかだの質問攻めにあっていた。

 

「それでさ、スクールアイドルフェスティバルって言うのに誘われたんだけど…みんなどうする?出てみない?」

 

「スクールアイドルにとっては夢のイベントですよ?もちろん出たいです!」

 

「そうよね、トップクラスのスクールアイドルと同じ舞台に立つ機会なんて見逃せないわ」

 

「じゃあ参加するって方針でいいよね。参加の手続きは私やっとくよ」

 

折角できた繋がりを大事にしたい。そんな想いもあり、参加するという意志をみんなが示してくれたので、菜生が代表して運営にその旨を伝える事となった。

 

「でも、スクールアイドルフェスティバルって参加資格は学校に所属しているスクールアイドルってことだけだけど、メインのステージに立てるのは大会で実績のあるスクールアイドルだけ…」

 

「その辺はもうリサーチ済みだよ。その為にソロ部門のあるライブイベントも調べてるから、まずはメインステージに立つためにもライブに慣れるのが良いと思うんだ」

 

まだ活動を始めたばかりの同好会では、参加は出来てもメインステージには立てないのではないか?そんな不安に菜生はそう答える。

 

「やっぱり出るからにはいろんな人に観てもらいたいじゃん?少なくとも、私はみんなのライブを沢山の人に観てもらいたいって思ってる」

 

あくまで菜生がそう思っているだけで、当人はそうは思っていないかもしれない。でもそうならメインステージに立てるかを心配はしないはず。そう思って、出来るなら全員が立てるようにサポートをしたい、それが今の菜生の気持ちだった。

 

「そこを目指すのなら、やることは一つですね……」

 

「せつ菜ちゃん?」

 

「合宿です!スクールアイドルフェスティバルを目指して、合宿をやりませんか?」

 

「それいいかも」

 

数日後、こうして虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会の夏合宿を行うことが決まった。

 

 

 

その日の練習後、菜生は音楽室で水色の髪肩のあたりで切り揃えた身長もあまり変わらない少女と話をしていた。

 

「へー沼津のスクールアイドルの曲って桜内梨子が作ってんだ?」

 

「美月ちゃん知ってるの?」

 

「知ってるも何も、あたしコンクールで見かけたことあるもん。凄い上手なんだって」

 

菜生に美月と呼ばれた少女はそう告げる。『遠山美月』何を隠そうこの少女こそが、菜生が同好会のみんなの曲を作るのを手伝っている少女なのだ。

 

「どうりで上手くなってる訳だ。菜生才能あるしこのまま音楽科に編入しない?」

 

「それはしないかなぁ、だって私の夢知ってるでしょ?」

 

「ははっそりゃそーか」

 

そう言って笑う少女に「もうやめてよ」と言いつつ菜生も笑みを浮かべる。

 

「そもそも美月先生の教え方が上手だからだよ」

 

「褒めたってなんも出ないぞ~?本当にそう思ってるなら今度ご飯おごりな?」

 

「はいはい。美月ちゃんもスクールアイドルやらない?美月ちゃんかわいいし」

 

「それはマジで勘弁。知ってるでしょ?アタシ音痴なんだよ。そもそも好きな音楽のジャンル的に合わないし」

 

知り合いに手当たり次第に勧誘する菜生に美月はそう苦笑いを浮かべる。

 

「音痴にアイドルなんて勤まるかよ。それにあたしゃまだ空手現役だかんね?」

 

「それもそっか、ごめんね」

 

「まあいいよ。菜生の気持ちも解るし」

 

そう言ってお互い微妙な空気が流れてしまった。

 

小学生の頃、菜生と美月は空手で一緒だった時期があったのだ。菜生がある事情でやめてしまい、音楽に興味を持った時は二足の草鞋だった美月がピアノ教室を紹介したり。なんだかんだ歩夢を覗けば一番付き合いの長い腐れ縁だったりする。

 

「まっ精々頑張んな?」

 

「ありがとね」

 

彼女なりのエールを受け取って、菜生はその日の練習を終えるのだった。

 

「そうだ、菜生こんな噂知ってる?」

 

「噂?」

 

「なんかオーロラを見ると永遠に眠っちゃうんだってさ」

 

「何それ?美月ちゃんそんなの信じてるの?」

 

「なわけ、妹が言ってたんだよ」

 

「ははっ彩月ちゃんそういうの好きそうだもんね」

 

知ってるかと聞かれた噂の突拍子の無い内容に思わず笑ってしまう菜生だったが、美月の妹からの情報と聞いて、噂好きだからななんて笑って納得する。

 

「そういえば彩月ちゃん元気?」

 

「おかげさまで、本当にありがとう」

 

「大したことしてないよ、早く退院できるといいね」

 

「もうすぐ秋には退院だってさ」

 

「退院したらお祝いしなきゃね」

 

「そうだね」

 

美月の妹は今現在入院しているのだが、その話はまたの機会に。

 

そしてありえないと笑った噂が、近いうちに菜生にとって最悪の形で降りかかることをこのときはまだ知らない。

 

 

 

 

 

そして迎えた合宿当日。

 

ただし合宿といっても、海辺の別荘だったり大きな旅館に泊まったりすることは無く学園の敷地内にある研修室を借りることになった。

 

「この広さでちゃんと人数分の布団もあるし、泊まる場所場所としては申し分ないね」

 

和室風の造りとなっている研修室に全員で移動して荷物を置くと、まずはと菜生は布団など人数分あるのかを確認する。

 

「まずは晩御飯にしよっか?」

 

「調理室の使用許可も取ってるし、みんなで作ろ」

 

その日は夕方集合だったのもあり、初日は一緒に晩御飯を作ったりして交流を深めるのを第一にしたのだったが。

 

「やっぱこういう時はカレーっしょ!」

 

「めっちゃ甘くしてね?」

 

「菜生ちゃん辛いのダメだもんね」

 

そんなやり取りを横目に泡だて器を使っていた璃奈はある事に気がつく。

 

「何か独創的な匂い……」

 

「できました!」

 

その匂いの方に視線を向けるとそう自信ありげな様子のせつ菜がいたのだが、彼女の目の前にある鍋の中身は紫色の液体がぐつぐつと沸騰していた。

 

「お味見いかがですか?」

 

「…!?」

 

そう言われてしまえば断るわけにもいかない。意を決して一口食べると、味も大変独創的だった。

 

「どうですか?」

 

咄嗟に涙目のボードをとり出して、直接言及することを璃奈は避けようとした。

 

「涙が出るほどおいしいんですね!?」

 

「はわわわわ……」

 

はっきり言った方が良かったのかもしれない。そう思ったが、嬉しそうな彼女の表情を見るとその言葉は喉の奥に引っ込んでしまった。

 

だが、彼方がこっそり味を調整してくれたおかげで、夕飯の時には「見た目よりおいしい」と好評だったので、璃奈は密かにほっとしたのだった。

 

 

 

 

 

 

「おいしかったね」

 

「そうだね~」

 

菜生と歩夢、ふたりならんで食器やらを洗いながらそんなたわいのない会話をしていた。

 

「ねえ覚えてる?小学校の宿泊研修の時も、こうやってふたりで並んで洗い物したよね」

 

「あ~あったあった!あの時もカレーだったっけ?」

 

「違うよ菜生ちゃん、あの時はハヤシライスだよ」

 

「一緒じゃん?」

 

「違うよ~」

 

そんななんでもない会話がをしていたのに、どこか違和感を覚えていた。

 

「ねえ菜生ちゃん」

 

「ん~?」

 

「沼津に行った時も、怪獣が出たんだよね?」

 

「出たよ?でもコスモスがすぐやっつけてくれたから何ともなかったよ」

 

不意に心配そうに問いかけてくる歩夢に、菜生は何の事でもないかのように笑って答える。でも歩夢はそれが納得いかなかった。以前ガモランが現れた際も、子供を庇って囮になって注意を引こうとしたり最近何かと無茶な事をしているから。

 

「でも……」

 

「大丈夫だよ、私はAqoursのみんなと逃げてただけだし。歩夢は心配症だなぁ」

 

「心配するよ、菜生ちゃん優しいからすぐ無茶しようとするんだもん」

 

「歩夢…ありがとね、心配してくれて。でもやっぱり困ってる人がいれば助けたいって思うし、私はずっとこんな人なんだと思う」

 

作業していた手を止めて、菜生がそう話すのを歩夢も手を止め菜生の方を見つめていた。

 

「でも自分の命を危険に晒すようなことは私もしたくない。お母さんも……ましてやお父さんも、そんなこと望んでないって解ってるつもりだから」

 

「菜生ちゃん……」

 

「だから心配かけちゃったのはホントゴメン!でも内浦に行ってた時は本当に逃げてただけだから、ね?」

 

本当は逃げていた訳では無く、自分は戦っていた。なんて言える訳もなく、そう言って自分を本気で心配してくれている幼馴染をだますのは気が引けるが、それでも菜生は歩夢に本当の事を言うことは出来なかった。

 

「それにきっと、私達おばあさんになってもこんな感じで一緒にいる気がする。色んなことを経験して、色んなものを見てさ」

 

「うん、そうだよね」

 

今までも、これからも2人一緒にいるんだろうな。そう菜生も歩夢も思っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

―翌日

 

「あと3周いくよ~」

 

グラウンドをランニング中、先頭を走る菜生はそう後ろを振り向きながらそう声をかける。

 

「菜生先輩とても涼しい顔して走ってる…」

 

「すごい…」

 

「私も負けてられません!」

 

「愛さんも!」

 

空手を辞めた後も好きだからと身体を動かすことの多かった菜生は、同好会の中でもかなり体力に自信のある部類の人間だ。

 

そんな菜生が一層張り切って走るものだから元々どちらかというとインドア派だった人間は辛かったかもしれない。

 

「ふぅ…おつかれーじゃあ20分休憩ね」

 

「「つかれた~」」

 

そう言ってへたり込む仲間を横目に菜生は水道まで歩いて行くと水で顔を洗う。

 

「先輩」

 

「しずくちゃん?」

 

「ちょっとお話があるんですけど―」

 

そう真剣な眼差しを向けるしずくの話は「まだ誰にも言わないでほしいのですが―」といって切り出されるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「わかった。じゃあそのつもりで私もイベントのエントリーだったり練習時間だったり調整するね」

 

「ありがとうございます」

 

そう菜生に頭を下げるとしずくはかすみと璃奈の元に戻っていく。

 

「あーゆむっ、大丈夫?」

 

「ちょっと疲れちゃったかも」

 

「ごめんごめん、ジョギングなのに張り切りすぎちゃった」

 

対して菜生は歩夢の方に寄って行くと、そう言って歩夢の隣に座る。

 

「菜生ちゃんやっぱり体力あるよね」

 

「そうかも?体動かすのはなんだかんだずっと続けてたからね」

 

「ふふっそうだったね」

 

それにしても自分はダンスだったりの練習ではあまり引っ張っていけないからと言って頑張りすぎたなと自嘲的に笑ってしまう。

 

「さてと、そろそろ戻ろっか」

 

「そうだね」

 

先に立ち上がった歩夢の後に続いて、菜生もみんなに合流すべく立ち上がった。

 

「結構汗かいちゃったね~」

 

「それなら次はアレしかないんじゃない?」

 

合流すると、果林がそんな含みのある言い方をしていて菜生はなんのことやらと首を傾げる。

 

「菜生ちゃん、水着持ってきてる?」

 

「なるほど!」

 

その質問で合点が言った。

 

この後は全員で校内のプールを使用して全身の筋力や肺活量を強化する練習―ではなく普通に遊んでいた。

 

「結局遊んでしまうんですね…」

 

「そんなこと言ってせつ菜ちゃんも可愛い水着持ってきてるじゃん」

 

「それは…」

 

もっとしっかり練習しなければしけないのにと項垂れていたせつ菜を、菜生がそう言って茶化すと吹っ切れたのかせつ菜もみんなとバレーをしたりなんだかんだ楽しそうにしているのだった。

 

「菜生ちゃんって意外と筋肉あるのね」

 

「ほえ?あぁまぁ…前は色々運動してたから……」

 

「なになに?なっちなにやってたの?」

 

そんなみんなの様子をぼうっと眺めていると、不意に果林にそう聞かれてしどろもどろになりながら答えると愛もその話題に食いついてきた。

 

「えっと…空手とか……かな?」

 

「へ~凄いじゃん!」

 

「意外です…てっきりピアノとか文科系の習い事をしていたのだとばかり…」

 

正直に言うか迷ったが、こういう時に嘘をついてもどうせすぐバレると思い菜生は正直に答えると気づけばしずくやほかの面々も周囲に集まってきていた。

 

「まあ小学校でやめちゃったし、中学はピアノ習ってたから間違いじゃないよ」

 

「でも、どうして空手はやめちゃったんですか?」

 

「……」

 

一切の悪気は無いのだろう。でも菜生は、その問いにすぐに答えることが出来なかった。

 

「ごめんなさい。触れられたくないですよね…」

 

「あぁいやゴメンそんなことないよ?相手を泣かせちゃってさ、なんか後味悪くて嫌になったのかもね」

 

「やっぱり先輩は優しいんですね」

 

「そんなことない。あの時の私は、多分過剰に人を傷つける事を怖がってただけだよ」

 

そう答える菜生の目は、どこか冷たかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜、お風呂を済ませてそろそろ寝ようかという話をしていた際。歩夢は菜生の姿が見えないことに気がついた。先の事もあり不安になってしまう。

 

「菜生ちゃんどこいったんだろ?」

 

「そういえばさっきから姿を見ませんね」

 

不意にそう呟くとせつ菜もそういえばと周囲を見渡す。まあスマホがあるし電話をかければすぐわかるだろう。そう思って電話をかけてみると、菜生のカバンに近くで菜生のスマホが着信音を奏でる。

 

「もう菜生ちゃんったら……」

 

「夜の校内は流石に心配ですし、探してきますね」

 

「あっ私も行く」

 

「じゃあもし行き違いになったら連絡するよ」

 

せつ菜と歩夢が手分けして探しに行くのに対し、愛は行き違いになって混乱すると悪いからと室内に残る事を選んだ。

 

「も~、菜生ちゃんどこに行っちゃったんだろう……」

 

夜の校内は、予備灯の明かりと周辺のビル明かりなどで仄かに明るいがやはり不気味な気配がする。こんな中菜生は一体一人で何をしているのか?そう思いながら校内を歩夢は一人歩き回っていた。

 

「もしかして星を見てるのかな?」

 

菜生の事だ。きっと屋上かどこかで星を見ているのかもしれない。そう思い立って歩夢は屋上へと駆け出した。

 

(違うな…きっと今も怖いんだ……)

 

「菜生ちゃん!」

 

「歩夢…」

 

屋上で星空を見上げていた菜生をみつけた歩夢は、思わず彼女の名前を大声で呼んで駆け寄る。

 

「もう何にも持たないで居なくなって…心配したんだから……」

 

「へっ?うわホントだ!スマホ忘れてる…」

 

完全に気がついていなかった菜生は歩夢に指摘されて、ズボンのポケットに手を突っ込んでようやく気がついたらしい。

 

「菜生ちゃん良かったの?空手やってたこと話して」

 

「別に嘘ついたってバレるだけだし、実は武術もちょっとできますってかっこいいじゃん?」

 

「でもやめた本当の理由は―」

 

「歩夢!」

 

なんのことでもないかのように笑う菜生に、そう思わず問い詰めるような勢いの歩夢を菜生は遮った。

 

「ごめん歩夢、その話はまだしたくない……」

 

そう言って菜生は先に校内へと戻ってしまう。

 

「菜生ちゃん…」

 

そんな菜生を追うことは、歩夢には出来なかった。

 

そしてそんな彼女の頭上には、不自然にもオーロラが発生していた。




という訳でどちらかというとスクスタよりアニメ寄り(?)な合宿回です。
新キャラの遠山美月ちゃんは、諸事情で公開できなくなってしまった私の別の作品で主人公になるはずだった子です。菜生にとっては歩夢の次くらいに交流の長い子になります。
そして菜生と歩夢に迫る不穏な影―次回をお楽しみに
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。