COSMOS The Rainbow   作:カズオ

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珍しく(?)一週間空けずに更新できました…
今回ちょっと短めですが、タイトルの通りです。よろしくお願いします


15話 乙女の眠り

そのまま昨晩は、歩夢より先に戻ってきた菜生はそのまま寝てしまい歩夢の方を気にかける余裕も無かった。

 

 

 

 

 

 

「歩夢!歩夢…!」

 

「うそ…これだけやって起きないなんて……」

 

翌朝、起床時間を過ぎても歩夢が起きなかったのを最初は寝坊なんて珍しい程度に考えていたのだが、昼を過ぎても一向に起きる気配がないので全員が不安に駆られていた。

 

「そっ…そうだ、お母さんに…!」

 

『もしもし?菜生どうしたの?』

 

「お母さん、歩夢が…歩夢が!」

 

『ちょっと菜生!?落ち着きなさい、歩夢ちゃんがどうしたの?』

 

なんとか落ち着きを取り戻した菜生は、母に事情を告げると歩夢はSRCの医療センターに搬送された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここは…?」

 

歩夢は気付けばどこか見覚えのある風景の中に立っていた。

 

「そうだ、ここって幼稚園の……」

 

そう、幼稚園のお遊戯会をした体育館の中だ。どうして自分がこんな所に?そう思っているとさらに信じられない光景を見ることになった。

 

『カエルの騎士、オレは悪魔に魂を売ったのだ!』

 

『そんなこと絶対許さない!』

 

目の前のステージで、魔法使い風の杖をもって狐の面を被っているのは同じ幼稚園だった男子だった。そしてその男子と向かい合うようにして立っている騎士風の衣装を着て、カエルの面を被っていたのは菜生によく似た少女だった。

 

『カエルの騎士、どうか狐さんの中の悪い悪魔をやっつけてください』

 

その菜生に似た少女の背後に立っていたのは、なんと幼き日の自分だった。歩夢は今、幼稚園の時の自分や菜生を見ていたのだ。

 

「あれは…私?」

 

このステージにも、そこに立っている園児にも見覚えがある。これは自分の過去の光景を客観的に見ているのだと歩夢は直感的に理解した。

 

そうしていると、演劇はどんどん進んでいきカエルの騎士が狐を倒してしまった。

 

『ありがとう、これでこのくみにも平和が…』

 

『歩夢ちゃん、くみじゃなくて国ね』

 

『あっ……』

 

『また歩夢のとちりかよ』

 

やんわりと間違いを指摘した菜生とは対照的に、男子は冷ややかな声を歩夢に飛ばす。

 

『そんな言い方無いだろ!またやり直せばいいじゃないか』

 

菜生はそれを庇うように男子と歩夢の間に立つと、男子はその視線を今度は菜生に向ける。

 

『なんだよ王子様気取りか?かっこつけんなよ』

 

『王子さまって……ボク女の子なんだけど?』

 

『うっせぇこのオトコオンナ』

 

『何だと!?』

 

その光景を見て歩夢は思い出していた。小学校低学年まで菜生の一人称が『ボク』だったこと、そしてボーイッシュな格好をしていたためこうやって冷やかされていた事があったと。

 

だが幼い歩夢は、自身に向いていた矛先が菜生に変わったことで菜生が目の前の男子と一触即発の雰囲気になったのを見て泣き出してしまう。

 

「もうやめて!」

 

そんな歩夢の叫びは虚しく、ただ菜生と少年が喧嘩を始めるのを眺める事しかできなかった。

 

夢の中の出来事に、干渉できなかったのだ。

 

 

 

 

 

一方でその頃、医療センターに運びこまれた歩夢は菜生の母によって検査を受けていた。

 

「母さん、歩夢は?」

 

待合室で、同好会のみんなとそれを待っていた菜生は、『高田しのぶ』と書かれた女性―菜生の母が室内に入ってきた途端そう詰め寄るようにして立ち上がった。

 

「残念だけど、まだ目は覚めてないわ」

 

「そう……」

 

首を横に振る母を見て、菜生はそう肩を落とすと座り込んでしまう。

 

「でも、そのうち目覚めるって可能性もあるんじゃ…」

 

「歩夢ちゃんの場合、異常な点がいくつかあるの」

 

「異常…?」

 

そう彼方が希望的観測を述べるも、それはバッサリと切り捨てられる。

 

「彼女、ずっとレム睡眠のままなの。つまりずっと夢を見ている状態、ここに運び込まれてからずっとね…」

 

そう告げると、さらに周囲の空気が暗くなるが母は話を続ける。

 

「昨日の夜、歩夢ちゃんの様子に変なところは無かった?」

 

「そう言えば昨日、屋上から戻ってきたらそのまま布団に入ってすぐ寝息を立ててたような……」

 

「やっぱりね…」

 

「どういうこと?お母さん」

 

母にそう聞かれて、せつ菜が代わりにそう答えると納得したように頷いた母に菜生はそう問いかけると、

母は事の詳細を説明してくれた。

 

「実はね、今歩夢ちゃんと似たような症状の人が病院に搬送されているの。それで、連絡してくれた人の証言には、倒れる直前にオーロラのようなものを見たって証言があるの」

 

「でも昨日はなっちも屋上にいたんだよね?なんで歩夢だけなの?」

 

その母と愛の言葉に、菜生はサーッと血の気が引いて行くのを感じた。あの時一緒に戻っていれば、歩夢がこんな目に遭う事は無かったのにと。

 

「私のせいだ……」

 

「菜生?」

 

「私がスマホを忘れて屋上に行かなきゃ歩夢は屋上には来なかった!私が先に戻ったりしないで、一緒に戻っていれば……私の…私のせい……」

 

そう頭を抱えて菜生はうわごとのように繰り返し始める。空手を辞めた本当の理由、その原因となった出来事を思い出していたあの時、歩夢にきつく当たったりせず一緒に戻るべきだったんだと。

 

「菜生。大丈夫、あなたは悪くないわ。それにお母さんたちを信じて、必ず助けるから」

 

「…うん……」

 

そう菜生の肩をもってそう告げる母に、菜生はそう静かに頷くのだった。

 

「今日は遅いし、あなた達も泊まって行きなさい。全員が泊まれる部屋を確保してくるわ。親御さんに連絡はしておくから」

 

そう言って室内から出ていく母親を見送ると、時計に目をやると既に午後の九時を回っていた。

 

「お母さんはああ言ってたけど、みんなはどうする?送ってもらえるように頼んでこようか?」

 

そう菜生が問いかけるとみんな首を横に振る。

 

「もともと合宿の予定でしたし、大丈夫ですよ」

 

「そうですよ、それにこの状況で帰れません」

 

菜生はそんな気遣いを見せたが、やはりみんな歩夢が心配なのだ。今日のところは、みんな歩夢の傍についていたいというのが総意だった。

 

「でもその前に一回歩夢ちゃんのところに行きたいよね」

 

「確かに、面会禁止にはなってなかったし。行けば入れてくれると思う」

 

そんな会話をエマと璃奈がしていると「賛成」といった声が上がるが、菜生はコスモスに語り掛けていた。

 

(コスモスの力で、歩夢を目覚めさせられないかな?)

 

『可能かもしれないが、歩夢一人を救ってもこの問題は解決しない』

 

(そうだよね……)

 

「菜生ちゃん?」

 

「へ?あぁごめんぼーっとしてました…」

 

1人だけぼんやりしていた菜生の顔を覗き込む彼方に、菜生は慌ててそう答える。

 

「大丈夫?先に寝ちゃっても大丈夫だよ?」

 

「ううん、大丈夫です。歩夢のとこ行くんですよね?私も行きます」

 

そう言って立ち上がると、歩夢がいる病室に全員で移動を開始した。

 

 

 

 

病室に入った菜生たちが見たのは、機械的な椅子に腰かけて眠る歩夢の姿だった。

 

「えっと…この装置は……」

 

「これは『ドリームシアター』といって、端的に言うと夢の中を見るための装置だよ」

 

そう装置をセッティングしていた男性に菜生が問いかけるとそんな返事が返ってきた。

 

「そんなことできるんですか?」

 

「できる。既に彼女と同じ症状の人8人に使用している」

 

「それで何が解るんですか?」

 

夢の中を見る。そんなまさに夢物語のような装置、それをみてかすみをはじめみんな訝しむような表情になるが、目の前の職員に既に使用していると言われると信じるしかなくなる。

 

そうこうしていると、装置が起動する。

 

「これ…わかります…?」

 

「愛さんにはノイズにしか…」

 

「見て!」

 

だがノイズが晴れると、ピンク色の毛の羊のような生き物が浮かび上がる。

 

「ひつじ…?」

 

「やはり…今まで調査した人全員、この羊の夢を見ているんです」

 

だがモニターに映った羊を見て男性はそう確信を持ったかのように告げる。

 

「つまり、羊によって眠らされている確率が高いんです」

 

「じゃあその羊は、歩夢の頭の中にいるんですか?」

 

「いいや、この場合別次元から夢を見させていると考えるのが妥当だ」

 

そう問いかける菜生に、男性はそう首を横に振ってそう告げると。更に深刻な事実を告げる。

 

「このまま眠り続けた場合、彼女の命にも危険が及ぶかもしれません…。でも安心してください、我々科学技術部が総力を挙げて原因を突き止め、彼女を救って見せます」

 

しまったと思ったのか、慌てて絶対に助けるからと告げるがやはり心配なのは皆同じだった。

 

「……」

 

別次元に犯人がいる、それさえわかってしまえば菜生は自分に出来ることは見えた。別にSRCを信用していない訳では無い。だがしかし、それで歩夢が確実に救えるのか?それに手段は多い方が良い。菜生は誰にも気づかれないように、こっそりと部屋を抜け出した。

 

 

 

病院の屋上に出た菜生は、コスモプラックを通じて自分の中にいるもう一人の存在に語り掛ける。

 

「コスモス、歩夢の夢の中に入る事ってできないかな?」

 

『可能だが、危険だ』

 

「…危険?」

 

『そうだ。私にとっても、未体験の空間に入るわけだから』

 

コスモスの能力をもってすれば、歩夢の夢の中に突入することは可能。だがしかし、そこで何が起きるかまでは現時点では解らない。

 

コスモスにとっても未知の領域への突入は、コスモスだけでなく菜生自身も危険に晒される可能性が跳ね上がる事を示していた。

 

「そういうことなら私の気持ちは決まってるよ」

 

だが菜生の脳裏によみがえるのは、眠ったまま装置に繋がれた歩夢の顔だった。彼女の為ならば、菜生の答えは初めから決まっていた。

 

「コスモス、行こう!」

 

『菜生……』

 

菜生の精神世界で向き合うコスモスは、菜生の顔を見てそれ以上は何も言わずにただ頷くのだった。

 

「必ず…必ず助けて見せる……!」

 

決意を胸に、菜生はコスモプラックを掲げその光を解き放つ。

 

闇夜に現れたコスモスは、ルナポーションという本来対象を瞬間移動させるための光線を身に纏い、歩夢の夢の世界へと姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コスモスの能力で歩夢の夢の中へと移動した菜生だったが、コスモスのエネルギー消費が激しかったのか変身が解けて気を失ってしまっていた。

 

『お姉さん大丈夫?』

 

「うん、私は大丈夫、ありがとね。……君は?」

 

菜生は気がつくと、自分を心配そうに見下ろす青い浴衣を着た幼い少女にそう問いかける。

 

『ボクは高田菜生。お姉さんもお祭りにきたの?早くしないとはじまっちゃうよ?』

 

「え…?」

 

自分と同じ名前を告げた少女に驚く菜生だったが、確かに幼い時の自分にそっくりだった。そして目の前の少女は菜生が大丈夫そうなのを確認するとそのまま先に進んでしまった。

 

「あの子、小さい時の私だった…そっか、夢の中ならこんなこともあるんだ……」

 

きっと少女が進んでいった先に歩夢はいる。そう直感した菜生は、幼い日の自分の後を追って動き始める。

 

その結果、過去の傷を抉られることになるとも知らずに―




次回、菜生が空手を辞めた本当の理由が明らかに?
お楽しみに
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