これ以上更新ペースもクオリティも落とさないように執筆していけるよう精進していきます。
もうすぐ活動初めて一年たつし、まだ前作主人公も他の作者様とのコラボで活躍しておりますのでそちらに負けず菜生ちゃんと頑張っていきたい次第でございます。
「さーって、とりあえず最寄りのバス停まで来ましたよ~っと」
都内からバスで数時間かけて、件のトンネルの最寄りのバス停でバスから降りると菜生は凝り固まった身体をほぐそうと伸びをする。
その隣で同様に体をほぐす彼方の姿もあるのだが、彼女はいつもなら移動中の車内で寝るのは普通なのだが今日は全く寝ている様子はなかった。それだけ、妹が心配なのだろう。
もうすぐお盆がこようという8月の昼下がり、バスから降りるとむわっと一気に暑さが襲ってきた。
SRCが元々民間組織だったこともあり、菜生のような一般人でも意外と簡単に連絡を取ることができる。それを利用してムードンをトンネルの外に誘い出す作戦を提案した結果。
それを受けての作戦展開をしてくれていた。
「ほんとに大丈夫かな…?」
「大丈夫ですよ!妹さんと一緒に帰りましょう!!」
不安げに菜生を後をついてくる彼方に、菜生はそう告げる。
「きっとムードンは出てきてくれます。だって…独りぼっちは、寂しいですから……」
トンネル内を巣穴だと思っていたとしても、一人きりでずっとそこに居続けるのは寂しいはず。だから外に仲間がいると思えば出てきてくれる。そんな菜生の咄嗟の発想ではあったが、的を射た発想だと納得してもらえたので今回この作戦が採用されたのだ。
「菜生ちゃん…」
「まっ私の思い違いかもしれないですけどね?でも私、独りぼっちでいるの嫌でお母さんが仕事で帰って来れない時よく歩夢の家でご飯食べてるんですよね…」
そう苦笑いを浮かべながら告げる菜生だったが、彼方は「寂しいもんね~…」としか言わなかった。
そして現場近くまで歩み寄ったとき、事件が起こった―
物凄い爆音と地響きとともに、トンネルから真っ黒な煙が噴き出したのだ。
「な…なに!?」
「トンネルが…爆発した?」
この時、菜生達には知る由もなかったがトンネルが使えないことで経済的な被害を受けていた近隣住民や運送業、インフラ整備の人間の怪獣を排除してくれという声が大きくなりすぎた結果。防衛軍がトンネルを爆破、中のムードンを排除しようとしたのだ。
だが、ダイナマイト程度ではムードンにダメージを負わせることすらできなかった。巣を破壊され、帰る場所を失ったムードンは怒り、暴れ始めるのだった。
よりによって、一番最悪な場所を目指して―
「あっちは…」
「ダメ…遥ちゃん!!」
「待って!?」
遥たちが危ないと駆け出した彼方を、咄嗟に追いかけようとした菜生だったが。ムードンが動いたことで発生した地響きに足を取られてた間に倒れた木によって見失ってしまった。
「急がなくちゃ…急がないと遥ちゃんが…!」
その一心で森を駆ける彼方には、ほかのことを気に掛ける余裕はなかった。
気が付けば、ムードンの進行方向の先に、自分が立っていたことも。
「え…?」
頭上が真っ暗になったことでようやく彼方は気づいたがもう遅い、自分めがけてムードンの足は踏み下ろされる直前だったのだから。
もうどうやっても避けられない。そう思い目を伏せる彼方だったが、いつまでたってもその時は来ない。
恐る恐る目を開けると、後方へと倒れこむムードンと。そんなムードンの踏み込もうとした足を掬い上げた光が天へと昇っていくのが見えた。
「トリャア!!」
そして急降下してきた光は、ウルトラマンコスモスへと姿を変えた。土煙を巻き上げ、豪快に着地したコスモスは同じく立ち上がったムードンへと駆け出した。
そして振り下ろされたムードンの腕を振り払い、両腕を腹部へと突き立てるとそのままムードンの体を無人地帯へと思いっきり放り投げる。
ひとまず注意を自身へと引き付けるため、コスモスはその場から飛び上がると地を転がるムードンを飛び越え「お前の相手は私だ」と言わんばかりに構えをとる。
「ウルトラマン…助けに来てくれたの…?」
あっという間に自身から遠く離れた場所で激突する巨人と怪獣を見て、そう彼方はつぶやいたが当然コスモスに聞こえているわけもなく。両者戦闘へと突入していった。
ムードンがガムシャラに振るう腕をコスモスは的確に払いのけ、鋭く掌底で突き体力を奪っていく。
(ムードンが怒る気持ちも分かる…それでもッ!)
コスモスの中で、菜生は歯噛みしながら目の前のムードンの動きに集中する。戦うのは基本的にコスモスだとしても、同化している菜生が集中を切らしたり、戦うことを拒めばそれだけコスモスの戦闘能力は低下してしまう。
だからこそ、一度変身したからには菜生はムードンと戦うしかないのだ。もしそれが、望まぬ結果を招いたとしても。
ムードンが右腕でコスモスの顔面を殴打しようとするが、コスモスはそれを両腕をクロスさせて防ぎそのまま腕を跳ね飛ばして無防備な腹部に掌底打ちを叩きこむ。
「ハアッ!イヤァッ!!」
反撃だといわんばかりに頭を振り回して角でコスモスを攻撃するムードンに対して、コスモスは連続でバク転をして距離を取ってからスキができたのを確認するや否やかけよると再び掌底打ちで相手の態勢を崩す。
なんとかムードンを大人しくさせようとルナモードで戦闘を続けるコスモスと菜生だったが、防衛軍はムードンを排除するために戦闘機を投入してきた。
戦闘機の機銃掃射によって、周囲に爆炎が巻き起こるとコスモスとムードンは一度距離をとる。そしてコスモスは、戦闘機の機銃がムードンに向いているをの見るとすかさず飛び出した。
(だめッ!!)
「テリャアアアッ!!」
咄嗟に飛び出したコスモスは、ムードンの前に立ちはだかるとその背で戦闘機の機銃の掃射を受けた。だがムードンはそんなコスモスにお構いなく、頭部の角を突き出して突進してきた。
(…かはっ……)
「ブシュッ」というトマトを握りつぶしたような音とともに菜生は腹部に強い不快感と激痛が走るのを感じた。視線を落とせば、ムードンの角がコスモスの腹に突き刺さっているのが見えた。
深々と突き刺さった腹部からは、光が漏れ出しまるでコスモスが血を流しているようだった。
「ウルトラマンが……」
人間なら間違いなく致命傷となりうるダメージを受けたコスモスを初めてみたその目は、不安に染まっていた。
「アアアッ……」
そのままムードンは首を振り上げ、そのままコスモスの巨体を空中に放り投げる。コスモスはそのままムードンの後方の地面に叩きつけられると、ダメージですぐには立ち上がれないでいた。
―ピコン―ピコン――
そしてさらにコスモスのエネルギーが残り少ないことを知らせるカラータイマーが明滅を始めてしまう。コスモスに残された時間も、もう少ないのだ。
そしてムードンはゆっくりと向き直ると、コスモスへと突進を開始する。
(来る…!うご……けぇッ!)
「セヤアアアッ!」
実際に菜生の腹に穴が空いたわけではないが、それに匹敵する痛みに思考が鈍化してしまうも次の攻撃を食らうわけにはいかないとなんとか立ち上がると寸でのところで突進を回避すると、そのまますれ違いざまに回し蹴りを見舞う。
だが態勢が崩れたまま放った蹴りに大した威力はなく、何事もなかったかのように振り返ったムードンによりわき腹に頭突きを受け、態勢の崩れたところを逆に蹴り飛ばされてしまう。
「グォォオオオオ!!」
今度こそトドメを刺さんとムードンは再びその鋭い角を突き出して突進してくる、だがコスモスは先ほど貫かれた腹部を抑えたまま立ち上がれないままでいた。
このままではコスモスが負ける。誰もがそう思った時だった―
『キャオォォン!』
ムードンに似た。それでいて高い鳴き声が周囲に響くと、コスモスめがけて一直線に走っていたムードンは立ち止まり鳴き声のする方を向いた。
そこにいたのは、ベニヤ板を何枚をつなげて作ったプレートに描かれた。子供のムラノクラフドンをイメージしたイラストだった。
菜生の考えていたムードンの気を引くための作戦は、子供が外にいるとムードンに思わせることだったのだ。
当初の予定とは違う使い方になってしまったが、効果はあった。ムードンは、自分の子供がそこにいると思いコスモスにはもう目もくれず、一直線にそちらに歩み寄っていった。
そして、その絵を自分の子供と認識したムードンは嬉しそうに雄たけびを上げる。何千万年も待ち続けて、ようやくムードンは自分の子供に出会うことができたのだ。
(ムードンが、泣いてる…)
思わずその様子を見て、菜生は呆然とする。家族に会えてうれしいのは、きっとどんな生き物にも共通の感情なんだとそう感じたのだ。
だがこのままその様子を眺めていて、もしムードンが目の前にあるものが偽物だと勘付けばまた暴れるかもしれない。
そうなってしまえば、今のコスモスのエネルギーではもうムードンを大人しくさせることも防衛軍から守ることもできないだろう。
するとコスモスは、先のダメージでよろけながらもエネルギーを胸の前で球状に収束させると絵をめがけてその光をフルムーンレクトや、ルナエキストラクトに近い構えで解き放つ。
―コスモ・リアライズ―そう呼ばれる物質の元素固定をさせる効果のある光線は、ムードンの子供の絵を三次元の物質として組成を仮定したうえで元素固定することで実体を与え、生きているかのように動き始めたのだ。
「オオォォォン!」
『キャオオオ!』
ムードンは、子供の前に立つとお互いに嬉しそうな鳴き声を上げる。そしてムードンは泣きながら、その子供へと手を伸ばす。
そしてその手を子供がつかんだ時、ムードンの体は光に包まれ砂に返ってしまった。そしてコスモ・リアライズの効力も切れたことで、子供もまた砂へと返る。
寄り添うようにできた二つの大小の砂の山が残るのみで、そこにはもう怪獣の姿は無かった。
「………」
そしてそれを最後まで見届けたコスモスは、そのまま静かに夕日に向かって飛び去ると周囲には沈黙だけが残されたのであった。
「遥ちゃん!」
「お姉ちゃん!?どうして……」
「よかった…本当によかったよ~」
そのあと、無事に遥と再会できた彼方は嬉しそうに最愛の妹へと抱き着いた。
「よかったですね、彼方先輩」
「菜生ちゃん…うん、今日はありがとうね~」
「いえ、私は何もできませんでした。それに結局、ウルトラマンのおかげですし」
「そんなことないよ~、菜生ちゃんが動いたから私はこうして遥ちゃんと会えたわけだしぃ。ウルトラマンにも助けてもらったお礼、ちゃんと言わないとね」
「そうですね」
変身を解いて、おそらく彼方は妹の方へと向かったのだろうと思った菜生は無事に彼方と合流するとそう笑みを浮かべた。
「でも、あの怪獣はなんで消えたんだろう?」
「きっと、家族に会いたいっていう願いがかなったから…自分の世界に帰っちゃったんじゃないかな?」
妹の疑問に、彼方はそう静かに答えた。
「やっぱり、いいですね。家族って…姉妹って」
「うん、彼方ちゃんは遥ちゃんっていう妹がいてとっても幸せだよ~」
そう告げた菜生に、彼方は笑みを浮かべたままそう告げるのだった。
(私…寂しいのかな?)
それを受けて、菜生は表情こそ笑みを浮かべたままだったが内心そう思った。自分にも、家に帰ればいつも顔を合わせる家族や、兄弟が欲しかったのかもしれない。
「じゃあ終バスも近いし、さすがに他校のバスに乗っけてもらうわけにもいかないし私たちは先に帰りましょうか」
「そっか残念~。じゃあ彼方ちゃん、またあとでね~」
「うん、菜生さんもありがとうございました!」
そう頭を下げる遥に手を振ると、菜生はバス停へと歩み始める。
(ううん、寂しくなんかないよね?だって私には、こんなに素敵な仲間がいるんだから…!)
隣を歩く彼方を見て、菜生はそう感じたのだった。それにまだ、スクールアイドル同好会のみんなをはじめとした色んな人との関りを、菜生は持っているのだから。
菜生が助けた青年は記憶を失っていた。そんな彼が唯一思い出せるのは「時の娘」という言葉のみ。
そして街には大人しいバズの怪獣ガルバスが暴れ始める。
すべての異変の背後にはすべてを操る陰謀の影が―
次回『時の娘』
過酷な試練が、菜生を待ち受ける…!