COSMOS The Rainbow   作:カズオ

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お待たせしました。
この時の娘というサブタイトルの回は、私がウルトラマンコスモスで一番好きな回だったりします。
本家通りとはいきませんが、モチベーション上げて頑張ります!


19話 時の娘

「ハァッ!イヤアッ!!」

 

コスモスは目の前にいる青い体に大きな耳が特徴的な地底怪獣―ガルバスと対峙していた。

 

工事の音で目覚めてしまったのか、興奮状態でむやみやたらと腕を振り回すガルバスはコスモスにとって脅威とはなり得なかった。

 

ルナモードの耐久力と防御力を駆使し、攻撃を捌きながら無人地帯へと誘導するとそのままフルムーンレクトを浴びせる。

 

すると落ち着きを取り戻したのか、ガルバスはまるで逃げるように地底へと返っていった。

 

(…ごめんね。こうしないと、街を守るためにって防衛軍が攻撃しに来ちゃうから…まだ私たちは、一緒には暮らしていけないんだ……)

 

人間の都合で追い出してしまった形になってしまったことに、菜生は罪悪感を覚えたが。本来大人しい気質のガルバスには、無理やり保護させるよりこうして地底へと戻ってもらった方がいいのだと思い込むよりなかった。

 

そしてそれから数日後に、私にとってはきっと今までで一番辛くて―そして忘れることのできない出来事が起きたんだ。

 

 

 

 

 

「歩夢、帰ろ~?」

 

「うん、帰ろう」

 

午後からの練習に切り替えたので、練習終わりに歩夢と二人並んで帰ると既に日は沈み道を街灯が照らしている中を歩く。

 

「そういえば菜生ちゃん、ニュース見た?」

 

「見た見た!やっと出来たんだジェルミナ3…事故で開発中止になったときはもう駄目だと思ったんだけど…とにかくこれでまた宇宙進出へ一歩前進ってとこだろうね」

 

歩夢に話題を振られた菜生は、そう嬉しそうに答える。

 

居住型宇宙ステーション『ジェルミナ3』3年前、建設中の事故で死亡者を出してしまい一次計画中断となっちたのだが、先日ついに完成したというニュースが巷では現在持ちきりだったのだ。

 

「宇宙かぁ…どんなところなんだろうね?」

 

「う~ん…行ったことないし……やっぱり行った人にしかわかんないんじゃない?ステージからの眺めだって、実際に立ってみないとわかんないっしょ?」

 

歩夢の問いかけに、菜生は暫し考える仕草を見せるがすぐにそう笑って答えた。

 

「じゃあ菜生ちゃんも立ってみる?」

 

「私はいいよ、客席からみんなを応援するのが私のやりたいことなんだから」

 

「似合うと思うんだけどな…」

 

自分はスクールアイドルとしてステージに立つつもりのない菜生に、歩夢は残念そうな表情を浮かべるがおそらくどういっても菜生の気持ちは変わらないと思い、話題を切り替えるのだった。

 

「でも菜生ちゃんはずっと、宇宙に憧れてるんだもんね」

 

「まぁね。いろいろ悩んだけど、やっぱり諦めたくない。叶えたいんだ」

 

「ふふっ、絶対叶うよ」

 

「ありがと!」

 

そんな会話をしながら、学園から家に帰るための最寄りの駅へともう少しでたどり着く。そんな時―

 

「な、なに!?」

 

突然の爆音が大地を揺るがし、炎が夜空を彩った。

 

「宇宙人…?」

 

その方向を見て、歩夢がそう震える声で呟いた。そしてその視線に映ったのは巨大な黒い人型のシルエットだった。

 

頭部の目と思わしき赤い発行部に真っ黒な無機質な身体、そして両腕には先端の尖った籠手のようなものを装着しており、そこから破壊光球を放ち街を破壊していた。

 

「…ッ!?菜生ちゃん見て、あそこに人が!」

 

視線を宇宙人の足元に下した歩夢が、菜生の制服の裾を引っ張ってそう叫ぶと菜生も歩夢の指さした方を見ると、宇宙人の破壊光球から逃げるように走る人影が見えた。

 

「歩夢、とりあえず学校の方に逃げよう!私は近くに同好会のみんながいないか見てから行くから!」

 

「でも菜生ちゃん…」

 

「いいからッ!!」

 

そう言って菜生は駅から学校の方へと続く通路へと階段を駆け下りると、歩夢を突き放すようにした反対方向へと駆け出した。

 

「菜生ちゃん…」

 

鬼気迫る表情で菜生に言われた歩夢は、彼女の後を追うこともできず。しぶしぶ言われたように学園の方へと歩を進めるのだった。

 

(ごめん歩夢…まだ、本当のことは言えないんだ……)

 

「コスモース!!」

 

駆け出した菜生も、歩夢に対してそんな罪悪感を覚えつつも目の前の相手に意識を集中すると懐からコスモプラックを天に掲げた。

 

「ハアアァァァァ……」

 

コスモプラックから光を解放した菜生は、光となって天へと上る。そして謎の宇宙人に立ちはだかるように光が降り注ぐとその中からウルトラマンコスモスが現れた!

 

「―――」

 

正面に現れたコスモスに静かに右腕を向けた宇宙人が、その籠手の先から破壊光球を放った。

 

「ハアッ!」

 

するとコスモスも、咄嗟に右手の先からルナストラックというルナモードでは珍しい攻撃用の光弾を発射してそれを相殺する。

 

一人の人間をピンポイントで狙う意図は分からないが、現れたコスモスにもすぐに攻撃という判断をしたところを見るにどうやら友好的な宇宙人ではなさそうだ。

 

ひとまず相手から攻撃の意思を削ごうとコスモスは駆けだし、裏拳の要領で手刀を打ち込むが相手は屈んでそれを回避した。

 

だが宇宙人はそれ以上は何もせずに、怪しい光に包まれると光球へと姿を変えそのまま飛び去って行ってしまったのだった。

 

その様子を見送ったコスモスは、先ほど追われていた人が倒れていたのを見つけるとそのまま変身を解くのだった。

 

 

 

 

 

「大丈夫ですか!?」

 

菜生は慌ててその人物へと駆け寄っていくと、肩を揺さぶってそう何度も話かけた。青年は、黒いライダージャケットに身を包み、赤毛にまだあどけなさの残るものの端正な顔立ちだった。

 

どうやら相手は気を失っているようだったが、呼吸も規則正しく外傷も見受けられなかったのでひとまずほっとした。

 

「…うっ……」

 

「気が付きました?」

 

「…君は…?そっか君が助けてくれたのか」

 

「いえ…たまたま見かけただけですよ。私は高田菜生って言います。あなたは?」

 

「オレは……」

 

名前を聞いた菜生に対して、青年は普通に受け答えをしようとしたが。そこまで言いかけて表情を曇らせたままそれ以上何も告げることはなかった。

 

「菜生ちゃん!」

 

そんな青年の様子に、菜生はどうすればいいか頭を悩ませていると。歩夢や同好会のメンバーがこちらへと駆けてきた。

 

「みんな…」

 

「とにかく救急車を呼びましょう!この人ケガしてます」

 

「そっそうだね…」

 

そう生徒会長モードのせつ菜―もとい菜々の言葉で、菜生はスマホを取り出すとまたあの宇宙人に狙われるかもしれない事を考慮して、SRCの医療施設へと搬送するように通報するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして翌日、菜生は昨日の青年が気になって午後の練習前に医療施設を訪ねた。

 

「あら菜生ちゃん、お見舞い?」

 

「はい、昨日の人どうでした?」

 

「外傷はかすり傷程度だったんだけど、脳に強いショックを受けたのか記憶を失っているの」

 

母であるしのぶが働いていることもあり、他の職員ともある程度顔なじみである菜生はに廊下で出会った看護師に聞いてみると、そう顔を曇らせて告げた。

 

「そうだ、部屋はこの先突き当りの929号室よ」

 

「ありがとうございます」

 

「その髪、似合ってるわよ」

 

「えへへ…」

 

今日は菜生は髪を三つ編みに結っていたのだがそれを見た看護師にそういわれるとまんざらでもないように笑みを浮かべるのだった。

 

「失礼しまー…あっ、ごめんなさい検査中だとは思わなくって……」

 

病室に入ると、しのぶが青年の頭部から何やら装置を外しているところだった。

 

「もう終わりだから大丈夫よ。でも部活に遅れないようにね、部長なんだから」

 

「はぁ~い」

 

しのぶは菜生の顔を見るとそう言って「じゃあお母さんは他の仕事があるから」といって病室を出て行った。

 

「頑張ってね!」

 

「そっ…そんなんじゃなくって私はただお見舞いに…って行っちゃった……」

 

するとしのぶの補助をしていた看護師がそうニヤニヤしながら菜生を揶揄ってから外へと出て行った。

 

「昨日はありがとう…えっと菜生ちゃんだっけ?」

 

「はい、もう体は大丈夫ですか?」

 

「うん、おかげさまでね」

 

「よかったです」

 

ベッドの上にいる彼がそう答えると、菜生も笑みを浮かべる。

 

「ねえ、菜生ちゃんは何か部活やってるの?」

 

「はい…といってもスクールアイドル同好会って言って、同好会なんですけどね」

 

「スクールアイドル?学生がアイドルやってるってこと?」

 

「えっと…まあそんな感じですかね?私たちの学校では、グループじゃなくてソロでの活動をメインでやってます」

 

そう説明すると、青年はさらに驚いたような表情を浮かべるのだった。

 

「じゃあ菜生ちゃん一人で観客の前で歌ったり踊ったりするんだ?かわいいもんね」

 

「いや私は部長とはいっても、歌ったり踊ったりはしなくて…マネージャーみたいな感じです」

 

「そうなの?菜生ちゃん似合うと思うけど」

 

「…じゃあまぁ、やってみようかな……」

 

「そしたら見に行かないとな~。俺もちゃんと全部思い出さないと」

 

そうスクールアイドルとしてステージに立つことに、菜生がそう興味を持つと彼もそう嬉しそうに告げる。

 

「それは?」

 

「あぁこれ?思い出したものなんでもいいから書いてって、先生がね。まあ俺が思い出せるのはこの言葉だけなんだけど…」

 

彼が手に持ったメモ帳に、菜生が興味を示すと彼は一言だけ書かれたページを差し出した。

 

「『時の娘』何か思い出そうとすると、必ずこの言葉が頭に浮かぶんだよね。菜生ちゃんは聞き覚えある?」

 

「いや、私にはまったく……」

 

『時の娘』それが彼の記憶の鍵となるキーワードなのだろうが、菜生にも全く聞き覚えはなかった。

 

「俺にとっては、何かきっと大切な言葉なんだと思うんだよね…早く思い出さないとね、俺は誰で何をしていたのか……」

 

「早く、思い出せるといいですね」

 

「うん、菜生ちゃんも部活頑張ってね」

 

「はいっ!じゃあまた来ますね」

 

気づけばそろそろここを出ないと部活に間に合わない。そう言って菜生は病室を後にした。

 

 

 

 

 

 

「やっほー歩夢」

 

「あっ菜生ちゃん、昨日の人どうだった?」

 

「ん~元気そうだったけど、やっぱり記憶喪失なんだって…」

 

「そっか、やっぱり昨日の宇宙生命体のせいなのかな?あの人のこと狙ってるみたいだったし……」

 

学園の近くまで来ると、歩夢と出会ったので一緒に部室へと向かうふたりだったが。自然と会話は記憶喪失の青年の話になる。

 

「でも不可解だよね。それならどうして、コスモスが来たらすぐに逃げちゃったんだろう?コスモスには勝てないって思ってるのかな?」

 

「どーだろ?でも言われてみれば歩夢の言う通りおかしいかも…」

 

「なにか、私嫌な予感がする…」

 

「大丈夫、何が起きても私が守ったげるって」

 

そう不安そうにする歩夢に、菜生はそう笑って応じると。歩夢は少し意地の悪そうな顔をする。

 

「急に髪の毛編んじゃってかわいくして、そんなかっこいいセリフいってもなぁ~」

 

「にゃんだと~?そういうのは最初に言うもんだよ~」

 

そう言って歩夢にじゃれつく菜生だったが、歩夢もまんざらでもない様子だった。

 

「ねえ歩夢、もし…もしもだよ?」

 

ふいに離れた菜生は、歩夢の目を見て真剣な表情を浮かべると。一度息を深く吸ってから切り出した。

 

「昨日はああ言っちゃったけど…私も、ステージに立ってみたいって言ったら。歩夢はどう思う?」

 

「え……?」

 

今まで頑なに拒んできた菜生にそう告げられて、歩夢はすぐに答えることができなかった。




今回はここまでです。
あと2話ほど続く予定です。
それではまた次回お会いしましょう。
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