今後こういったことが起らぬよう気を付けていきます。
今回で時の娘に関するお話は終わりです。どうか最後までお付き合いください。
防衛軍の諜報員を出し抜き、街から外れた場所にある廃屋まで逃げてきたレイと菜生は車から降りて座り込んでいた。
「もう何も思い出さなくていい…なんの治療も受けなくていいから……」
そう言って菜生は、レイのドックタグを投げ捨てた。そこで菜生はレイに、SRCがとういう措置を下そうとしていたかをすべて話した。
「私は誰にも死んでほしくない…人間だって、怪獣だって…それなのに…」
「菜生ちゃんはさ、本当に優しんだね…」
俯く菜生に、レイはそう優しく声をかけた。
「そんなことない…私が求めてることは、夢物語なのかな…?」
怪獣と人間が共存できる世の中。菜生は、スクールアイドルを応援することと同じくらいそんな世界を夢見ていたのだ。
「菜生ちゃん、どんなこともさ。最初に誰かが実現させるまでは、夢物語なんだよ?」
「え…?」
そんな諭すように告げるレイの言葉に。菜生は視線をを上げる。
「初めて人類が海に出た時も、初めて飛行機であの空を飛んだ時も。実現する前までは、誰もがそんなことできるわけない。夢物語だって言われてたんだよ?」
その言葉を、菜生は黙って聞き続けていた。するとレイは、空を見上げて続く言葉を並べた。
「だから俺はさ、あの空に時の娘を造りたかったんだ…。これ、俺だよね?」
その言葉に、菜生は顔を強張らせた。その写真をレイが持っていることは想像できていたが、記憶も戻っているとは思わなかった。
「それは…」
「後悔はしてないよ。俺は自分の夢を叶えるためにやったんだから」
「自分の夢を叶える…」
「そう。夢物語を、現実にするためのさ。あの
自分が既に死んでいる人間であることを自覚したうえで、レイは菜生に語り続ける。
「いままで沢山の人が、夢を追いかけてきた。実現させようとさ。俺たちジェルミナの建設クルーもそうだった。だから、自分たちが夢を継ぐものだって言う誇りを持っていたから。『時の娘』って名前を付けたんだ」
宇宙ステーションの建設など夢物語だ。そう言われても、その夢を諦めなかった先人たちの夢を継ぎ。現実にする。その誇りが、レイにはあったのだ。
「菜生ちゃんは違うの?スクールアイドルだけじゃない。人間と怪獣と、地球に産まれた命が一緒に生きていく。それが実現するって信じてるんじゃないの?君の夢は、君が信じないで実現するのか?」
あえて厳しめに問いかけるレイだったが、菜生は消えそうになっていた光が再び輝きを取り戻そうとしているのを感じた。
「そうだよね…私が信じないと、私が目指すのをやめたら。永遠に夢物語で終わっちゃうもんね」
そう言って立ち上がると、菜生はその胸に強く決意した。
「今の私にできることなんて少ないと思う。でも、私の夢は…私が叶えて見せる!」
「その意気だ」
「ありがとね」
そう言ってほほ笑むが、宇宙生命体の陰謀は次の段階へと入っていた。それは、菜生にとって更なる試練となる。
日が沈み始めたころ。地底からガルバスが再び出現し、学園のある近くのエリアに存在しているエネルギープラントへと進行を開始したのだ。
万が一、稼働中のエネルギープラントが破壊されれば。街には甚大な被害が出る。それに、そこまでガルバスが進行するだけで、防衛軍との戦闘の余波で街は壊滅的な被害を負ってしまうだろう。
菜生は、避難を呼びかけるべく鳴り響く警報の音でずっと電源を意図的に落としていたスマホを立ち上げて情報を得ようとしていた。
すると、歩夢からの着信が入る。
「…もしもし?」
『よかった、やっと繋がった……』
恐る恐る出ると、幼馴染がそうほっとした声が聞こえてくる。
「ごめん歩夢、私…」
『その話は後にしよ?今どこにいるの?菜生ちゃんも逃げよう?』
「えっと…」
その言葉に、菜生はどう答えるべきか言葉を詰まらせていると。近くにしのぶもいたのか『ごめん歩夢ちゃんちょっといい?』という声が聞こえた後、しのぶに電話の相手が変わった。
『菜生、今わかってることを全部教える。そのうえで、あなたを心配しているみんなの所に戻ってきてほしい』
「お母さん…」
『今ガルバスがエネルギープラントに向かっているの、このままだと甚大な被害が出る。それに、ガルバスの頭には変調器が撃ち込まれているの。全部、あの夜に現れた宇宙生命体に仕組まれていたのよ』
そう、レイを送り込んでSRCの機能をマヒさせ。大人しいはずのガルバスを暴れさせているのも、全て偶然ではなく仕組まれていたのだ。
もしこのままガルバスが街で暴れまわれば、多くの人間は怪獣を排除するべきと考えるだろう。
そうして、自分たちにとっての快適さのみを追い続ければいつか人類は勝手に滅びる。ただでさえ環境破壊だの言われているご時世だ。そんな未来が来ることも想像に難しくない。
「じゃあプラントのタービンを止めないと…」
『あなたに何ができるっていうの?いいから戻ってきなさい!』
「俺なら止められる!」
「レイ!?」
そのやり取りを聞いていたレイがそう叫ぶと車へと乗り込んでいった。そして菜生もそれに付いていくようにして電話を切ってレイを追うのだった。
「あの子はほんと…歩夢ちゃんたちはここにいて?私は娘を説教してくるから」
そう苛立った様子でしのぶも菜生を捕まえるべく飛び出すのだった。
(菜生ちゃん、無事でいて…)
歩夢にはもう、言葉の届かない幼馴染にそう祈るしかなかった。
一方で、防衛軍の戦車部隊が出動し。夜の街は普段の様子からは想像もつかない程に、人の気配がなかった。
そんな街を車で駆け抜けてプラントへと侵入した菜生とレイは、問題のタービンの前にたどり着いていた。
「ダメだ、ロックかかってる…」
扉を掴んで強引に開けようとする菜生だったが、女子高生の筋力でロックのかかった鉄の扉が開くわけもない。
「菜生ッ!」
「なっ…お母さん!?」
そうしていると、菜生達を追ってきたしのぶが追い付いてくると菜生は驚愕の表情を浮かべた。しのぶの服装は、医療施設で働いているときの白衣ではなく。SRCの怪獣保護などの活動を主に行っている特捜チームの制服だったからだ。
そしてそれだけでなく、しのぶは一切の迷いもなく。腰に下げていた銃をレイに突き付けたことで、菜生は一層訳が分からないといった様子だった。
「あなたが悪くないのはわかってる。でも、その先へ行かせることはできない」
「やめて!レイを撃たないで!!」
そう告げ、トリガーへと指をかけると。レイを庇うように菜生が立ちはだかった。
「…どきなさい」
「嫌だ!私は誰にも死んでほしくなんかない、誰も殺してほしくないの!!」
「彼はあの宇宙生命体が送り込んできたのよ?それに本来なら、彼は死んでいる。私は親子喧嘩をしに来たわけじゃないの」
だが、お互い譲るつもりはなかった。菜生の言っていることは、子供のわがままのようにも聞こえていたのかもしれない。だがそれ以上に、見過ごした場合の被害のことを考えればしのぶには絶対にレイを通すわけにはいかなかったのだ。
「撃ってください」
「レイ!?だめだよそんな…」
「けどその代わり、菜生ちゃんとこの町に住む人たちの安全を約束してください」
菜生としのぶの間に流れる静寂を打ち破って、レイはしのぶの前に自ら出るのだった。
「わかったわ。元々、私の仕事はそれだしね…」
そう短く返すと、再び引き金に人差し指をかけ。引き金を引くべく指に力を入れる。
「いたぞ!」
さらに後方から、そんな男性の声と共に防衛軍の特務部隊がなだれ込んできた。その方を振り返ったしのぶはすぐにレイに視線を戻すと、引き金を引いたのだった。
しのぶが引き金を引いたのを見て、菜生は目を閉じた。だが聞こえたのは、何か金属が爆ぜた音だけ。恐る恐る目を開くと、レイではなくタービンへ続く扉が破壊されていた。
「早く行きなさい」
そうレイと菜生に告げると、レイと菜生は扉の奥へと向かう。
「何のつもりだ!?」
「気が変わったのよ」
そして自身に銃口を向けた特務兵に、しのぶも銃を向けると不敵にそう返すのだった。
そして菜生とレイはタービン室に入り込むと、レイの手によってタービンの停止を目指していた。
「ジェルミナのシステムとやっぱり同じだ。マザーにログインせずにタービンを停止して見せる」
そう言って、パネルを外すと中のコンソールをいじり始める。
だがそうしているうちにも、ガルバスは防衛軍の戦車部隊に攻撃を押し切り。着々と都市に入り込もうとしていた。
「菜生ちゃん、そのレバーを下ろして。それで終わるから…」
「わかった」
作業を始めて十数分が経過したのち、レイは肩で息をしながら菜生にそう指示をすると。意外と堅かったレバーだったが、なんとか菜生はそのスイッチを切ったことでタービンは停止した。
そして、そのタービンを目指すように操られていたガルバスは。対象が活動停止したことで変調機も止まってしまい正気に戻るのであった。
正気に戻ったガルバスは、大量の戦車を目前にして。先ほどまでの凶暴性は鳴りを潜め、怯えた様子で後ずさりを始めた。
だが、それを攻め時と判断した防衛軍は一気にガルバスへ対して攻勢に出るのだった。
そして逃げようとするガルバスに、宇宙生命体は背後に光球の姿で現れ。ガルバスを攻撃し始めた。
「…止まったか……」
「レイ大丈夫?」
「ハァ…ハァ…ごめん肩貸して?ここでようか」
「わかった、すぐに病院へ」
「ちょっと休めば平気だよ。それに病院はまずいっしょ」
疲れた様子のレイに、菜生はそう慌てるが。その申し出を聞き入れ、とにかく外に出て公園の街灯下まで運んだ。
すると、ガルバスが防衛軍と宇宙生命体の両方から攻撃しているのが見えた。
そちらに注意が逸れレイの腕を掴んでいた力が弱まると、レイに埋め込まれていたバイオチップが止まりかけているのか、先ほどまでより余計に顔色を悪くして崩れるようにして座り込んでしまった。
「レイ大丈夫!?」
「俺の心配はいい…ガルバスを救うには、ワロガを倒すしかない」
心配する菜生に、レイは顔を伏せたままそう告げた。
「そう言われても…」
「キミは優しいから、俺が生きていたら。ヤツを倒すのをためらう」
「何言ってるの?私があんなのと戦えるわけ…」
菜生がその気になれば、宇宙生命体『ワロガ』を倒せるという風な口ぶりに菜生はそう否定しようとした。
「あいつを倒して、俺を眠らせて…ウルトラマンコスモス……」
その言葉に、菜生は息を呑んだ。
「初めて会った時から、キミを知ってる気がした。でもそれは、あいつに埋め込まれた偽の記憶だった。…全部仕組まれた、罠だったんだ」
レイを菜生が助けたことすらも、仕組まれた罠だったと。菜生がレイに惹かれれば、レイを死なせないために。菜生はワロガと戦うのを拒む。全て敵の思う壺だったのだ。
「それでも俺は、キミと出会えてよかった。だから、キミの手で俺を人間に戻してほしい。あの
「できないよ…だって…だって私はッ!」
レイのことが好きだから。レイに生きていて欲しいから。そう言おうとした菜生の言葉を、レイは遮った。
「その先を言ったら、君はもう戦えない。でも、アイツを倒せるのはキミしかいないんだ。キミの夢と、俺の夢の為に。ヤツを倒して」
そう告げるレイに、菜生は何も言わないまま。目に涙を浮かべつつもコスモプラックを取り出し、胸の前でコスモプラックを握った右腕と左腕の間に光の球を作ると。その光に包まれながら右腕を天に突き上げ、光の花を咲かせた。
防衛軍とガルバスの間に光が立ち上ると、月明かりに照らされながら現れたコスモスは、レイの方に視線を一度向けると両拳を握りしめた。
そして駆け出したコスモスは、ガルバスの前へでると。ワロガから放たれた雷撃を手刀で払いのける。
「セリャア!」
そしてそのまま、後ずさりその場から逃げるガルバスには目もくれず。コスモスはワロガ目掛けてルナストラックを放った。
すると、ワロガは光球状の姿から。人型へと姿を変え、コスモスを倒すべく戦闘態勢に入った。それを見たコスモスも、その身を青いルナモードからコロナモードへとすぐさま姿を変えた。
「ダアッ!!」
優しさから強さへとモードチェンジしたコスモスはワロガへと果敢にも駆け寄っていく。
だがワロガはそんなコスモスに対して腕を水平に振るい、それを回避するために屈んだコスモスの胸から肩にかけてをを蹴り上げる。
そして態勢を整えようとしたコスモスを今度はラリアットでなぎ倒す。コスモスは、普段と打って変わって直線的な動きが多いせいでもあった。
それもそのはず、今現在コスモスは菜生の意思のみで戦っている状態であり。コスモスは、菜生諸共敗北するリスクを承知で菜生にこの戦闘の全てを委ねたのだ。
それに加えて更に、先日のガルバスの戦闘で菜生にもダメージが残ってしまっていた左肩から胸のあたりを重点的にワロガは攻撃していた。
『ォォォォオオー』
悠然とコスモスへと振り返るワロガに少しでも食い下がろうと菜生は起き上がるが、ワロガはその様子を見てすぐさまコスモスへと駆け寄り殴りかかる。
「グアッ…」
それを前転で回避しても、振り返ったワロガに起き上がる際の隙を突かれて殴り飛ばされてしまう。
それでもコスモスは、後転から素早く両腕を付いて跳ね起きると距離を取る。
レイは、そんなコスモス―否、菜生の戦う姿を息を呑んで見守っていた。
その視線の先で、先の尖っている籠手でコスモスを貫かんと放たれたワロガの腕をコスモスは掴んで受け止めた。
そしてそのままワロガの腕を抱えると、一本背負いのように豪快に投げ飛ばして見せた。
このまま一気に攻勢に出よう。そう考えていた菜生の目の前で、ワロガは突然姿を消した。
(どこだ…?どこにいる?)
だが菜生は五感でワロガからの殺気は感じ取っていた。だからこそ、周囲を警戒していたのだが。ワロガはコスモスの背後に現れると、組み付いて首を絞めてきた。
「うぐっ…」
―ピコンピコン
そして、前回の戦闘のダメージが残っていたことも災いしてエネルギーが既に危険域であることを知らせるカラータイマーが音を立てて赤く点滅を始めた。
しかしコスモスは慌てることなく、ワロガの腕を掴むと再び勢いよく投げ飛ばす。しかし今度はワロガも地面に手をついて、側転をすることで地面に叩きつけられることなく態勢を整える。
そしてコスモスが一度仕切りなおそうと距離を取ると、ワロガは再びその姿を消す。
だが、レイにはワロガの姿が見えていた。ワロガは、自身にとって都合のいいようにレイを泳がせるために。レイとシンクロしていたのだ。テレポート能力を駆使してコスモスの視界から消えたワロガを、レイは目で追うことができていたことでそのことに気が付いた。
「許さねぇ…」
ワロガがレイに仕込んだバイオチップから情報を得て、SRCの活動をマヒさせたように。レイにもワロガを邪魔することができるという致命的な弱点を、この局面でレイに気づかれてしまったのだ。
レイがワロガに抵抗したことで、まずは戦闘個所の近くの水面にワロガの姿が映り込み。ワロガの実態が現れる。
突然自身の能力を無効化されたことに驚くワロガだったが、無防備に姿を現した相手をコスモスは決して見逃さなかった。
「ウォオオオッ!デヤッ!!」
突き出した両腕の間に虹色の光を作り出し、それを右拳に収束して前方に突き出すようにして放たれた楔形の破壊光弾―シャイニングフィスト―を連続発射しワロガの顔面を強襲した。
テレポート能力を司る目の付近を攻撃されたことで、ワロガは大きくよろけた。
そしてその隙にコスモスは駆けだすと、近寄らせまいとして振るわれたワロガの腕を躱すと無防備な腹に両腕の拳を同時に打ち込み。さらに追い打ちとばかりに顔面を蹴り飛ばした。
「ウオオッ!」
コスモスの猛攻に、ついに膝をついたワロガに対してコスモスはまるで威嚇するかの如く両腕を頭上にげる。
そしてコスモスは一度だけレイの方へと視線を落とす。
(…本当にいいんだね?)
そう菜生が問いかけているような視線に、レイはゆっくりと頷くとコスモスはようやく立ち上がったワロガへと視線を戻す。
「デヤッ!ハアァァァァ……」
するとコスモスは両腕を前方に突き出し、回転させることでエネルギーを収束させていく。高温を秘めたエネルギーの塊を胸の前に作り上げると、それを一度体の方へと引き寄せる。
「デリャアアアアアアッ!!」
そして再び両腕を付きだすことで放たれた
これにて、邪悪な宇宙生命体の陰謀も完全に打ち砕かれたのであった。
全てが終わったのを確信し、肩の力を抜いたコスモスがレイのいた場所へと再び視線を戻すと―
そこにはもう、誰もいなかった―
変身を解いた菜生は、呆然と公園に一人立ち尽くしていた。
「菜生ちゃーん!」
「歩夢…ってうわぁっ!」
すると、不意に背後から歩夢の声が聞こえて振り向くと。彼女に抱き着かれる。
「よかった…菜生ちゃんが無事で……」
「ごめん歩夢…また私、約束破って無茶しちゃった」
震える声でそう漏らす幼馴染に、菜生はそう返した。
「菜生ちゃんのバカ…みんな心配してたんだから…」
「うん、わかってる……」
「もう帰ろ?おばさんが送ってくれるって」
どうやら、しのぶがすぐそこまで来ているらしい。他のメンバーは時間も時間なので他の職員の手によってそれぞれ自宅まで送ってもらったということだった。
「そだね、帰ろっか」
そう返事をすると、歩夢は菜生から離れた。
「あの人はどうなったの?」
「レイは、全部思い出して自分の居場所に帰っちゃった」
嘘は言っていないが、真実をそのまま話すことは菜生には耐えられなかった。
「菜生ちゃん、泣いてる…」
「えっ…?これはえっと…」
耐えられないからぼかして返事をしたのに、レイの顔が頭から離れなくなり。歩夢に指摘されて初めて菜生は自分が涙を流していることに気が付いた。
「ぐすっ…うぅ…私…私……ボクはッ………」
ダムが決壊したかのようにとめどなく流れる涙と、嗚咽が止まらなくなった菜生はその場に崩れ落ちる。
「もっと一緒にいたかった…一緒に生きていたかった…なのに…なのに……」
本当はもう死んでいる人間で、菜生が―ウルトラマンコスモスがワロガと戦うのを躊躇わせるために傀儡として送り込まれてきたこと。ワロガを倒したことで、本来の人間としての正しい状態へと戻ってしまったこと。全部吐き出したかった。
でもできなかった。ただただ、菜生は泣いた。
「大丈夫だよ」
そんな菜生に、歩夢は寄り添ってくれた。
「菜生ちゃんの気持ちは、レイさんにきっと届いてるから」
「うん…うん…」
そのまましばらく、幼馴染の胸で泣き続けるのだった。
―レイ、私は夢を継いでいく。この星の命を守る夢を、私はあなたに貰ったから
そして泣いた後に菜生は、星空にそう誓った。
これにて時の娘編終わりとなります。
ジェルミナⅢの事故は、その当時菜生の心に大きな影を落とし。宇宙に行きたいという気持ちを鈍らせてしまっていました。
しかし劇中での完成、そして事故当時に死亡しているレイとの出会いを経て菜生の夢は少しずつより明確なものへと変化していきます。
そして次回は彼女たちが登場する予定です、お楽しみに。