皆さん長らくお待たせしました
Twitterの方で言い訳は散々しているのでここには書きません
ただただ申し訳ない気持ちでいっぱいです。
ワロガとの戦闘があった翌日、菜生は何もする気が起きず布団の中で過ごしていた。
母にも聞きたいことは山ほどあるが、そんな母も今回の事件の後処理に追われて菜生と歩夢をを送り届けた後そのまま基地の方へと戻ってしまった。
いくらなんでもいつまでも寝たままではまずい。そう思って布団から起き上がってスマホの画面を見ると、時刻はもうすぐ正午を示そうとしていた。
「…ッ!?……つぅ~」
起き上がろうと腕に力を入れると、左肩から胸にかけて一瞬痛みが走り思わず顔をしかめる。昨夜の戦闘で執拗に狙われたガルバスの火球を受けた箇所のダメージがまだ少し残っていた。
だが、ガルバスに敗れた時のダメージも菜生は痛みを感じる程度で済んでいるのは。コスモスが菜生が眠っている間も、まだ戦闘で使ったエネルギーが回復していないので少しずつで菜生の傷を癒していたものが完治していなかった為だ。
「えっと今日の練習は…」
歩夢以外のみんなにも無事な姿を見せたいし、練習には参加しよう。そう思って練習の予定表を確認しようとすると、歩夢からメッセージアプリで『もう起きてる?』とメッセージが飛んできた。
―おはよ、さっきやっと起きたとこ
―おはよう。体は大丈夫?
―大丈夫大丈夫、練習もちゃんといくよ~♪
心配そうな歩夢の表情を容易に想像できてしまうので、少しでも安心してほしいと思いつつ返事をうっていく。
―おばさんまだ帰ってないでしょ?もしよかったらお昼一緒に食べない?持っていくよ
―ありがと、玄関カギあけとく
―わかった。あとでね
そのメッセージのあとに付けられたかわいらしいスタンプをみると思わず笑みが零れた。
「おじゃましまーす」
「はーい」
それから10分もせずに歩夢は菜生の家に来た。結局鍵を開けた後も、ベットに座ってぼーっとしていた菜生は歩夢が来たのに気づいてからリビングへと移動した。
「ありがと~さっき冷蔵庫見ても食べ物無くってさ、助かったよ~」
「どういたしまして…って菜生ちゃん髪ボサボサ!?」
「ん?あ~…昨日シャワーだけ一応浴びたんだけど、そのまま寝ちゃったみたい…アハハ……」
「もぉ~風邪ひいちゃうよ?こっちきて、なおしてあげるから」
そう呆れたように告げる歩夢に引っ張られて化粧台の椅子に腰かけると、歩夢が後ろから櫛で髪を梳いてくれた。
「今日も三つ編みにする?」
「んやいいや、普段どーりの髪でアレ結構めんどくさかったし」
「そっか…」
それ以上、歩夢は何も言わずに。手慣れた手付きで菜生の長髪をツインテールにしていく。
「…これでよしっ!」
「ありがと~やっぱ歩夢にやってもらうと早いな~自分でやったら倍はかかるよ」
「ふふっどういたしまして」
嬉しそうに自分の髪を撫でながら告げる菜生に、歩夢もそう笑って返すと。もってきた昼食を一緒にとった。そして、ふたりで学校へと向かうのだった。
「ねえ菜生ちゃん」
「ん~?」
「スクールアイドルは…どうするの?」
道中、ずっと歩夢の中で昨晩から気になっていたことだった。だが、なかなか言い出せず。もう学校が目の前というタイミングでようやく切り出せたのだ。
「ステージに立つ…っていうのはさ、やっぱり私がやりたいことじゃなかったんだ。でも、みんなを一番近くで応援したい。それは変わらないよ?」
だが菜生は、あくまでいつも通りの優しい表情でそう返した。ステージへ立つことへの興味を一切失ったわけではないが、それでも自分の動機がみんなと比べれば不純なものだったと思っており、まだやりたいとは言い出せなかった。
「そっか…」
歩夢もそんな菜生に、それ以上は聞かなかった。今回の出来事は、菜生の中で整理する時間が必要だと思ったから。
そして部室へとたどり着くと、そこにはもう全員が揃っていた。
「菜生さん大丈夫ですか!?」
部室に入って挨拶をしようと菜生が口を開くより早く、せつ菜がそうかけより問いかけてきた。
「うん、もう大丈夫!ケガもちょっとぶつけたくらいだし」
そう右腕を振りながら答えるが、周りはあまり安心したような様子ではなかった。
「…心配かけちゃってごめんなさい。この通り私は大丈夫だから、これからも精いっぱいみんなのサポートをさせてください」
そんな雰囲気を察してか菜生はそう頭を下げる。
「当り前じゃない。菜生ちゃんは私たちの仲間よ」
「そうだよ、元気だってわかって安心したよ」
そんな中、最初にそう口を開いたのは果林とエマだった。
「みんな事情はある程度聞いてるし、心配はしたけど誰も怒ったりはしてないよ」
そう言って、誰も菜生を責めることはしなかった。事情は菜生の母から聞いたことである程度理解していた。尤も、最後にレイとの別れを選んでワロガを倒したのが他でもない菜生自身であることは知る由もないが。
「でも、本当に心配かけてごめん…でももう大丈夫だから!私は今まで通りの私だから」
もう気持ちは切り替えた。だから今まで通りの自分で、今まで通りみんなをサポートしていきたい。そう菜生は自分の中で気持ちの切り替えを行った。
いや、実際にはそうしたつもりでいるのだ。
だがそのことを、菜生自身が自覚できているかは別の問題だった。
「本当によかったの?」
「あぁ、やっぱステージには立たないっていったこと?」
「うん…だって菜生ちゃん、立ちたいって言った時の目キラキラしてたのに」
「わかんない」
そう、結局菜生は練習で自分はステージに立つことが目標ではなく。あくまでサポートに徹するということを伝えたのだった。そしてそのことについて帰りに歩夢に問われた菜生は、そうあっさりと答える。
「わかんないって…」
「本当はさ、ステージに立ちたいって思った理由は…これ、歩夢だから言うよ?」
「うん…」
そう前置きをする菜生に、歩夢は頷くと息を呑んで菜生の続く言葉を待った。
「レイに見てほしかったんだ。きっと、歩夢やみんなみたいにステージ上で歌ってる私を―でも、レイはもういない。それに、その為に一番最初に思ったみんなを一番近くでサポートしたいって気持ちをおざなりにしていいものかってずっと悩んでたんだ」
そう、ずっと誘われていたスクールアイドルとしてステージに立つことを拒んでいたのに。急にそうしたいと言い出したのは、レイの存在が大きかった。
だがそれによって、当初の目的だった。『一番近くでみんなをサポートする』それがおざなりになってしまうことも、ずっと危惧していた。
「だから今はまだ…さ?それに、やっぱり私の夢はみんなを一番近くで応援すること!それは譲れないし」
そう口にすることで、菜生はそれ以上は考えないようにした。昨日のことは辛かったけど。それでも自分は前を向いて生きていくしかないのだから。
そんな時、菜生のスマホが着信音を奏でた。
「あれ?メールだ、なんだろ…?」
そう言ってメールを開くと、菜生はその場に立ち尽くしてしまった。
「あれ?どうしたの?」
「やっば…忘れてた!μ'sに一日密着取材できるっていうのが、スクールアイドルのファンサイトで企画されてて応募してたんだった……」
この数日間のドタバタで完全に忘れてしまっていたのだが、以前Aqoursと出会った時に思い付きで応募していたのだ。
「そ、それで結果はどうだったの…?」
「えっと…当選……しちゃった……」
「菜生ちゃん本当に運がいいもんね。小学校の時も雑誌の懸賞当たってたもんね」
「そうだっけ?そういやそんなこともあった気がする」
一体どれくらいの応募者が居たのかはわからないが、菜生の引きの良さは元々持ち合わせたものだったよねと笑いあっていた。
こうして、菜生は今現在有名であるスクールアイドルAqoursに続いてμ'sとも関わる機会を得たのだった。
だがそれが、本当に幸運だったのか?それは菜生にも歩夢にもわからない。
だが菜生にとってこの出会いもまた、かけがえのないものになることは間違い。
そしてついにやってきた週末、菜生は普段通りに虹ヶ咲学園の制服にツインテールに纏めた髪で音乃木坂を訪れた。
「実際のところ、ライブしてるところしか知らないからどんな人たちなんだろ?楽しみだな~」
元々、他のスクールアイドルがどのような練習を行っているかとか。そういったことを勉強させても対つもりで応募したはずだったのだが、菜生の脳内では楽しむことしかすでになかった。
『菜生、止まれ』
「…コスモス?」
『その先は危険だ』
だがそんな菜生の足は、コスモスから突如発された警告によって止まってしまう。
『目には見えないが、特殊なバリアのようなものがあの場所を包んでいる。迂闊に近寄れば吹き飛んでしまう』
「音乃木坂ってそんな厳重なんだ…すごいな……」
『いや、これは地球人によるものではない。不用意に入り込もうとするのは危険だ』
「…わかった」
コスモスの警告を聞いて、菜生の表情が固くなる。また宇宙人が何かよからぬことをしているのか?そんな考えばかりが頭に浮かんでしまう。
菜生は路地裏に駆け込むと、周囲に誰もいないことを確認してコスモプラックを取り出す。そしてそれから放たれた光に包まれると、そのままコスモスの能力であるテレポートを使用して音乃木坂の敷地内へと入り込むのだった。
「さて…と。まずはμ'sの人達が心配だよね…」
そう言って菜生は事前に連絡で聞いていた、音乃木坂のスクールアイドル部の部室を目指して校内を進んでいく。
だが、校舎の中に入ってから。それまでは全く感じていなかった違和感がどんどん強くなっていくのを感じた。
コスモスに言われなければ、敷地内を囲っていたバリアに跳ね飛ばされてけがをしていたかもしれない。そう思うとゾッとするが、今はそれ以上にこの学校の生徒たちが心配だった。
初めて入る校舎だったのもあり、メールの文面で書かれただけですぐに部室にたどり着くことは難しい。少々時間はかかったが、スクールアイドル研究部と書かれたプレートがかかっている部室を見つけた。
「ええっと…多分ここなんだけど……」
そう呟き、ドアへと手を伸ばすが中に人の気配がするのを感じ。一瞬躊躇うが、息を呑むと一気に扉を開く。
「…ッ!?」
そうすると、中にいた3人の人影が一斉にこちらへと振り向いたのをみて一瞬たじろいでしまうが。実際に会うのは初めてとはいえ知っている顔だったので安心した。
「あっ、あなたが取材の人?」
「はい!虹が先学園から来ました、高田菜生っていいます」
「はじめまして。私、高坂穂乃果です!」
そう菜生に最初に声をかけてきたのは、オレンジの髪をサイドテールにした活発そうな少女だった。映像でしか見たことのないμ'sのリーダーが今目の前にいる。
「取材ってどんなこと話すのかな?もしかして菜生ちゃんも緊張してる?」
「えっと…まぁ……」
(あれ…?平気そうにしてるけど外の事知らないのかな…?)
目の前でしゃべり続ける穂乃果を見て、菜生ははっきりしない返事をしどろもどろになりながらも返すが、そう疑問に思った。
「私も緊張してるんだ。だから一緒だね~」
(なんか…おかしい気がする。なんで?私は何に違和感を感じてるの?)
穂乃果の後ろにいる二人は、同じμ'sの園田海未と南ことりで間違いないはずなのだがふたりは表情を変えることもなく会話にも入ってこない。
それに加えて、この場には菜生と同い年の3人のメンバーのみで他の学年の6人は全く見当たらない。一度この場を離れるべきではないかという考えが脳裏をよぎる。
『菜生、ここは危険だ』
「どうしたの?顔色悪いよ?」
「へ?いやそんなことはないんだけど…ちょ、ちょっとトイレ行ってくる!」
そう言って菜生は部室を飛び出した。
こんどばかりはコスモスが何を言いたいのか聞く必要はなかった。さっきの一言だけでどうすればいいのか、菜生にはすぐにわかったから。
部室を飛び出した菜生は、校内を走っていたがそれの足はすぐに止まることとなった。
「ギギ…」
「…ッ!」
階段の踊り場の壁の中から、まるで壁などなかったかのように黒と銀の身体をしたX字の青い目をした異形が目の前に現れたからだ。
すぐに引き返そうと踵を返した菜生だったが、背後には丸い黄色目と逆三角の赤目のおそらく同族の異形が立っていて既に囲まれてしまった状態だった。
「クソッ…!」
珍しく毒づきながら懐のコスモプラックへと手を伸ばした菜生だったが異常はそれより早く持っていた銃から光線を菜生目掛けて放った。
そして、その光をまともに浴びた菜生の姿はどこにもなく。「ギギ…」と不気味に嗤う異形のみがその場に残ったのだった。
はい、というわけで今回登場したのはアイツらですね。
菜生ちゃん行く先々でトラブっててそろそろかわいそうになってきますが、次回ではきっと本物に出会えると思います。
それでは次回でお会いしましょう。