最近プライベートが忙しくなかなか執筆する時間がとれませんでした…
本日から少しずつ復帰していこうと思いますので、またごゆるりとお付き合いください。
ギギの襲撃から数日後、もう夏休みも残すところ僅かといったある日。ようやくμ'sへの密着取材が行えることになった。
「じゃあお母さん、行ってきます」
「気を付けてね。今日はお母さん休みだから、晩御飯一緒に食べましょ。何がいい?」
「ん~…じゃあハンバーグで!」
「わかった。じゃああんまり買い食いしないで帰るのよ?」
「はーい行ってきます」
ギギとの戦闘から一週間ほどが経過した今日、ようやくμ'sへの取材が行えることになったのだ。
といっても、急がなければ夏休みが終わってしまい。二学期に入ってから執り行うのは困難であろうという判断からくるものだった。
ようやくちゃんとスクールアイドルの話ができるという事実に胸を躍らせながら、菜生は電車に乗り音乃木坂を目指すのだった。
「そういえば」
その道中で、菜生はふと思い出した。
「お母さんがSRCで何してるのか聞いてないや。そっちも帰ったら聞かないとな~」
そう、結局ワロガにギギと立て続けに侵略者と思われる地球外の知的生命体からの襲撃を受けたこともあり。母は医療の仕事で忙しかったのか、それともSRCの特捜チームとしての仕事で忙しかったのか定かではないがずっと家には不在だったのだ。
「まあどっちにしろ、詳しいことは教えてくれないだろうけどさ。でもやっぱ一人娘の私としては気になっちゃうよね~、おとーさんだったら知ってたのかな…?」
不意にそう漏らすと空を見上げる。幼稚園の時に亡くなった父なら、もしかしたら本当の母の仕事をしっているかもしれない。
でもそれを聞く機会は菜生にはない。ひとまず今は今日の取材に集中しようとそこまで考えてから思考を切り替えたのであった。
そうして再び訪れた音乃木坂で、菜生は再びμ'sと再会することとなった。
「こんにちは~。今日はよろしくお願いします」
そう言って今度は迷わずにアイドル研究部と記された部室へと、そう挨拶しながら入っていく。
「こんにちは。じゃあ早速はじめよっか」
そう言って、密着取材が始まっていくのだったが。取材とえば普段の練習光景だったりといった活動の光景を見学させてもらうところから始まった。
そして、暫くの間菜生は無言でμ'sの練習を見学するのだった。
(やっぱりトップレベルのスクールアイドルって言われてるだけあって、やっぱり練習の動きの時点ですごいや…)
虹ヶ咲のみんなも、この短期間でかなり動きのキレも増したし。正直μ'sにも負けていない。そう言い張りたかったが、これがいくつものステージに立って人々を魅了してきたスクールアイドルの姿なのかと圧倒されるのだった。
だが、もうすぐ虹ヶ咲のみんなも最初のステージがすぐ近くに迫っている。ここでステージに立たないとはいえ部長の菜生が怖気付くわけにはいかない。
今日の経験で吸収できるものは全て吸収して、引けをとらないステージをみんなで作り上げていくんだ。その一心で見守る菜生の表情は真剣そのものだった。
この人たちと一緒の舞台に立てたのなら…一緒に多くの人々を笑顔にできるのなら…そう思わないわけがなかった。
「どうだった?」
「すごいよ!本番のステージ観てるみたいだった!!」
練習を一通り終わらせ、菜生にそう問いかけてくる穂乃果に対して菜生は目を輝かせて答える。
「でも同時に負けられないなって思った」
「負けられない?」
「うん。だって私、曲がりなりにも虹ヶ咲のスクールアイドル同好会の部長だからね。やっぱりただすごいなーって感想だけ持って帰るわけにもいかないし」
そう告げる菜生は、少々生意気に映ったかもしれない。だがそれだけ、菜生も真剣に同好会の事を考えているのだ。
「それにさ、私たちも立ちたいんだよ。あなたたちμ'sとおんなじステージにさ」
かつて内浦で出会ったAqoursに誘われた大会ではあるが、自分がスクールアイドルに興味を持つきっかけとなった2つのグループと同じ舞台に立てる。それは菜生にとってだけでなく、同好会みんなのなかで大きな目標となっているからだ。
「じゃあ虹ヶ咲のみんなも、スクールアイドルフェスティバルに出てくれるの?」
「もちろん!まぁまだ始まったばかりだし、まずは実績作りから始めないとなんだけどね」
夏合宿でみんなで話し合って決めた目標。そして菜生自身も、その為に色んなスクールアイドルを調べてどのようなパフォーマンスをしているかを動画サイトを使ってチェックしたりしていた。
最初は菜生が言い始めたことだった。そして自分はそれを一番近くて応援したい、それを同好会のみんなは受け入れてくれて一緒に上を目指していくことになった。
だからこそ、妥協せずにしっかりと部長としての務めを果たしたい。それが菜生がここにいる理由、決して遊びに来ている訳では無いのだ。
「じゃあなおさら頑張らないとね!」
「もちろん!なんたって部長だからね!!」
そう自分の胸を叩く菜生。『部長だから』みんなが菜生を信じてくれたからこそ背負ったものが、菜生を突き動かす原動力となっていた。
―その数日前の話
「―はい、ありがとうございます。喜んで引き受けます」
スクールアイドルであり、演劇部にも籍を置いている桜坂しずくは今度行われる演劇での主役の座を勝ち取っていた。
演じることが好きで、誰かの理想のスクールアイドルを演じていたい。そう思っていた彼女、だがその考え方がののちに彼女を大きく悩ませることとなってしまう。
そして、しずくは同好会の練習の傍ら演劇の練習にも熱心に取り組んでいたのだった。
ライブも近い状況下で、ハードなスケジュールとなることはわかりきっていた。でも、それでも彼女にとってはどちらも大事なことだからと。それにそのことについて、同好会のメンバーも反対などせず「頑張って」と背を押してくれたから。
でも――
「降板…ですか……?」
「今回の役は、しずくとはちょっと違う感じだったから」
演目の練習も滞りなく進んでいる。そう思っていた矢先に演劇部の部長から言い渡されたのは、主役の交代だった。
「ダメなところがあるなら直します!だから―」
「この役は、もっと自分を曝け出す感じで演じてほしかったの。歌手の役だし、スクールアイドルのしずくならピッタリかなって思ったんだけど…」
求められた演技ができていなかった。そう言われているようで、とてもショックだった。でも、『自分をさらけ出す』ような演技。
その答えは、見えてこなかった。
なんとか主役の再オーディションを受けさせてもらえるように頼み込むことには成功したが、自分をさらけ出す演技。それができないまま受けても、主役を演じることはできないだろう。
しずくは重い足取りで、帰路についていた。
「あれ?しずくちゃんじゃん、お疲れ様!」
「先輩…」
ふと声のする方を向くと、そこには菜生が居た。
「今日は音乃木坂に行っているはずじゃ…?」
「うん、行ってたよ。ちょっと部室に用事あってさ、帰る前によってこうかと思ったんだけど。もうみんな帰っちゃった?」
「私は演劇部の方に行っていたので…」
「そっか急なスケジュールだったけど、しずくちゃん頑張ってるもんね」
当然しずくが主役を降りるかもしれないという話は、菜生は知るはずがない。眩しいくらいの笑みでそう告げられ、しずくはなんと返せばいいかわからず顔を逸らす。
「どうしたの?私でよければ力になるけど―」
「ごめんなさい、疲れちゃってて…失礼します」
「う、うん。また明日部室でね」
若干逃げるようにして帰っていく彼女を、菜生はそう控えめに手を振って見送る事しかできなかった。
「あんまりうまく行ってないのかな、演劇の方は私からっきしだけど何か力になれるといいんだけど…」
演劇なんて幼稚園の発表会でしかしたことは無いし、演技の経験があるなんて口が裂けても言えない。そんな菜生に、恐らく演劇で悩んでいるだろうしずくの力になれることなんてあるのだろうか?
「まぁ、コスモスの事隠してるのは演技って言えなくもな―」
「せんぱい演技してるんですかぁ?」
「にょああああああああ!?」
「ご、ごめんなさいそんなびっくりするなんて思わなくて…」
自分がウルトラマンコスモスと一体化しているから、コスモスとなるためにみんなの前から隠れたりしていることを誤魔化しているのはある意味演技なのか?そんなことを考えていたら不意に背後からかすみに声を掛けられて、思わず大声をあげてしまった。
「び、びっくりしたぁ…演技してないけど?もしかして聞こえてた…?」
「演技って言えなくも~ってところから…」
「な、な~んだ…幼稚園の発表会は演技かな~?って独り言、入らないよね」
「ま、まぁ確かにそれは入らないかもですね」
一番聞かれたくない箇所を聞かれなかったのは、ある意味助かったのかもしれないが。かすみは菜生にそう言われて困ったようにそう答える。
「そうだ、しず子みませんでした?」
「しずくちゃんならさっき帰ったよ?私も部室に用事あったんだけど、もう閉まってそうだからかえろうかなって」
「一緒に返ろうって約束したのに…」
「やっぱりしずくちゃん、うまく行ってないのかな…?」
それを聞いて、菜生はしずくの様子がおかしかったのは気のせいではないと確信した。
「何か聞いてない?演劇の事」
「かすみんも気にはなってるんですけどしず子全然話してくれないんですよ」
「そっか…あんまり言いすぎてもプレッシャーかけてかえってよくないかもだし、今日は大人しく帰ろ?」
渋々といった様子で、その言葉に従ったかすみと家の最寄り駅まで送り届けると菜生も自分の家へと帰るのだった。
だが、家に帰ると母の姿は無く。今朝菜生がリクエストした、ハンバーグが冷蔵庫の中でラップされた状態で置かれていた。
『ごめんなさい』
ただそう書かれた置手紙をテーブルに残して、母は急遽仕事に行ってしまったらしい。
「…何かあったんだ」
だから出かけたのだろうと自分に言い聞かせるが、何度経験しても寂しさをぬぐい切れることはない。
また怪獣が出たのだろうか?そう思いながらテレビを付けてみると。そこには信じられないものが映り込んでいた。
「…クジラ?」
テレビで大々的に取り上げられていたのは、通常ではありえない。全長100メートルは優に超えるクジラの姿だった。
しかもありえないのはそれだけでなく、そのクジラはなんと空を泳ぐようにして空中に佇んでいた。
「何だこれ…?怪獣なの?」
テレビが言うには、実体のない蜃気楼のような存在で実体はなく。現在は危険性のないものとして考えていいものだというのが、現在の見解であった。
「こりゃお母さん、今夜は帰って来れないかぁ…」
テレビを切ると、菜生はそう力なくソファに座り込んだ。
どうすればいいのだろう?
今のままの演技では通用しない。それは理解している、でも自分を曝け出すということがどういうことかわからない。
いや、わからなくなっているのだ。素の自分というものが、常に演じることが染みついてしまっている彼女には。
小さいころから映画や演劇が好だった。だがしかし、流行りというよりかは古い作品の方が好きだったことが周囲から変な目で見られてしまい。それが嫌だったから『みんなから好かれるいい子』を演じるようになった。
『だったら、無くしてしまおうよ。嫌なものは全部』
「だ、誰ですか…?」
もう少しで家に帰り着く。そんな折に不意にまるで脳に直接語り掛けるかのような声に、しずくは周囲を見渡しながら怯える声で訪ねる。
『ぼくはジラーク、君が望むならどんなことだってしてあげるよ。例えば、学校を破壊するとかさ』
「私はそんなこと望んでません!」
『それはキミが一番よく知っているはずさ、いつまでも待ってるからキミの答えを聞かせてよ』
その言葉を最後にもう声は聞こえなくなった。
だが彼女の頭上では、例のクジラが一瞬だけにやりと笑ったのに気づいた人は一人もいない。
といわけで今回はここまで
アニメの方が終わってから半年以上たちましたが、ずっとやりたかったお話なんで次回はもっと早く更新できるかなと思います。
それではまた次回で