COSMOS The Rainbow   作:カズオ

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大変お待たせしました。
サブスクでティガが遂に配信解禁されましたね。
この調子で色んな作品がネットで見れるようになってくれるといいですね。


28話 Touch The Fire

まだ菜生とかすみがしずくの家に着いた頃、一人そのまままっすぐ帰る気になれなかった歩夢は近くのショッピングモールを訪れていた。

 

「あれ、歩夢じゃん。練習今日休みなんだ?」

 

「美月ちゃん?そうなんだよね、ちょっといろいろあってさ」

 

水色の髪を肩のあたりで切りそろえた少女、遠山美月と出会ったのだ。

 

「あれ?美月ちゃんその腕…」

 

歩夢が気になったのは、美月の右腕だった。ギプスで胸元につるされていた腕は折れているようだった。

 

「ん?あぁこれか、インハイでゴリラみてーな女に折られた」

 

「だ、大丈夫なの?」

 

「まぁソイツには勝ったよ?でもこれのせいでこの後の試合棄権するハメになったし、ピアノもしばらく弾けないのがしんどいかな?そもそも利き腕だし」

 

何の事でもないかのように笑う彼女に、歩夢は少々引き攣った笑みを浮かべる。小学校のころは菜生と競い合ってきた美月の性格は知っているつもりだが相変わらずっぷりに困っているのだ。

 

美月は菜生と空手クラブで一、二位を争っていた相手だが菜生と似て自分が傷つくを恐れない節がある。もっとも、菜生と違ってそれは自分だけでなく相手にも適応される。試合を見たわけではないが、恐らくヒビの入った腕で無理やり倒したのだろう。

 

「ってなわけで、暫く作曲手伝えないから勘弁ね?まぁ菜生ももうかなり弾けるから杞憂だとは思うけど」

 

「は、早く良くなるといいね。ところで、美月ちゃんは何してたの?」

 

「妹の誕生日が近いから何か買ってあげようかと思って。…そうだ、歩夢も見繕うの手伝ってよ!あたしじゃ彩月の好きそうなかわいいの選べないし」

 

そう言って手を引いてかわいらしい雑貨の立ち並ぶ店に入っていく二人、菜生よりかは付き合いの短い美月だがこうなってはもう逃げられないと観念した歩夢はそのまま連れられて行くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして場面は戻り、コスモスはカオスジラークに背を向け。かすみを庇うようにして現れた。

 

(やっぱりカオスヘッダー…しずくちゃんを取り込まれたら下手に攻撃できない…)

 

下手に攻撃すれば、しずくにまで危害を及ぼしてしまう。だがこのままではかすみを巻き込んでしまう。そう思いかすみをそっと持ち上げると一度飛び上がり、離れた地点にそっと下ろす。

 

「お願いです、友達を助けてください!」

 

そのかすみの声に、コスモスはゆっくりと頷くと立ち上がり背後に迫りくるカオスジラークの気配を背中で感じていた。

 

そしても飛び上がると、カオスジラークの背後に立ち。こちらを敵として認識して振り返ったカオスジラークとの戦闘へと突入していく。

 

「シャアアアアッ!!」

 

「イヤアッ!!」

 

攻撃を回避し、少しでも街に被害の少ない場所へと相手を誘導していくコスモス。いや、菜生自身の希望だった。しずくに街を破壊させないこと、そして彼女を極力傷つけないことを。

 

だがやはり、体内に取り込まれているしずくへのダメージは最低限にせねばならない。

 

攻撃を防ぐ、捌くことに長けているルナモードでも一切ダメージを与えずに相手を無力化させることなど不可能だ。

 

そのうえ体内にしずくがいるのか、しずくの体を変質させたものなのかも判らない。だからこそ、普段以上に相手に攻撃する部位にも気を使う必要がある。

 

それを理解したうえで、相手の振り下ろした腕にこちらの腕を合わせて弾くと当たらないギリギリの距離で回し蹴りを放ち相手に回避行動をとらせる。

 

「イヤッ!ソリャア!!」

 

そして一度仕切りなおした後の相手の右拳を両腕で弾き、腹部に両腕で掌底を放ちのけぞらせると再び距離をとって両腕を広げた後にゆったりと構えなおす。

 

相手が怪獣なら、もっと力加減も掴みやすいのだが。今戦っているのは今までのカオスヘッダーがとりついた怪獣とはわけが違う。普段よりも弱い攻撃では、相手のスタミナを削ぐことはできていないのは相手の動きを見ても明らかだった。

 

元々持久力にも自信のあるルナモードだが、このままのペースではコスモスのエネルギーが先に尽きると予想して間違いはないだろう。それに相手がよく知る人間だというのもあって菜生は焦っていた。

 

(どうする…?あえてコロナになるって手もあるけど…)

 

(コロナモードの攻撃で短期決戦は狙えても、彼女の身体が攻撃に耐えられる保証はない)

 

(だよね。…だったら!)

 

コロナモードにも、カオスヘッダーを切り離すための技は存在する。だがそれ以前に、コロナモードの強すぎる攻撃力にしずくは耐えられない可能性が高い。

 

少々苦しくても、このままルナモードで力加減に気を使って戦うよりほかはない。それが菜生とコスモスの出した答えだった。

 

カオスジラークの攻撃をギリギリで回避し、逆に右足で蹴りを放つと相手は両手で受け止める。その力を利用して左足で地面を蹴って飛び上がると、宙返りをしながら距離をとりつつ着地する。

 

どこかで隙を作ってしずくの今の状態を知る必要がある。このままでは相手に好きなように攻撃をさせ、こちらはそれを必死に捌くだけの一方的な戦闘が続くことになる。

 

多少ケガを負わせてしまうかもしれないが、このまま街や人に被害を出してしまえば最悪彼女事怪獣を排除しようとする動きが産まれるリスクも考え。菜生はここでようやくちゃんと反撃をすることを決意した。

 

今度はこちらの番といわんばかりに蹴りを放つために接近してきた相手の首元に左腕をひっかけて転倒させると、想定外の方法での反撃だったためかカオスジラークは背中からまともに地面に叩きつけられた。

 

「しず子っ!?」

 

先ほどまでと違い、ダメージを与えるための攻撃に思わずしずくを心配する声がでてしまうが。「やめて」ということはしなかった。

 

この反撃で、相手の怒りを買ったのか我武者羅に腕を振り回して突っ込んでくるが。こうなってくれた方がこちらとしては攻撃を読みやすい。

 

一撃目の右腕を両腕と右足を使って防御すると左腕の二撃目を掴んで組伏し、そのまま顔面を蹴り上げる。そして怯んだ相手の右腕を掴み、今度は背負い投げの要領で投げ飛ばした。

 

先の攻撃への反応から、このくらいまでならやっても問題は無い。そういう判断での攻撃だったが思いもよらず相手は空中で態勢を立て直すと静かに着地した。

 

だが、着地して立ち上がってからコスモスの方を振り返る。その時間があれば十分だ。コスモスはルナスルーアイを照射、カオスジラークの体内の様子を伺うのだった。

 

そして見つけた、カオスジラークの左胸のあたりに気を失っているしずくの姿を。

 

(よかった…しずくちゃんは体内に取り込まれてるだけ、なんとか怪獣の体内から切り離せれば―)

 

「キシャアアッ!!」

 

だが安心したのも束の間、カオスジラークは口から光の矢を連射。思わぬ反撃に、コスモスは反応が一瞬遅れた為。無数の矢がコスモスに殺到、さらに背後には街もあるため下手に回避もできない!

 

それでもコスモスは落ち着いていた。高速移動で一瞬で後退して距離を取ると、両腕と両脚に気を集中させる。

 

そうすることで発動する二種類の防御技、マストアーム・プロテクターとマストフック・プロテクターを併用することで効果的に光の矢を粉砕し、さらに高速移動も織り交ぜることで距離も詰めていく。

 

「ハァアアアッ!!」

 

そうして全弾叩き落した後にそのままフルムーンレクトを放つ。怪獣自体を大人しくさせた後に、しずくを助け出そうという判断だった。

 

しかし―

 

「邪魔しないでください!!」

 

それが逆効果となったのかしずくを目覚めさせ、そのまま彼女の感情に同調するようにカオスジラークは攻撃性を増した。

 

様々な要因で追い詰められてしまった彼女に、「壊してしまえばいい」という言葉はまるで麻薬のようなもだった。

 

本来そんなことは望まない彼女に、「本当に全部壊して無くしてしまえばいい」と思わせるほどに。

 

カオスジラークは左腕から光の鞭を形成、そのまま振り下ろした。

 

フルムーンレクトが通用しないという想定外の事態に一瞬反応がおくれてしまい、右手首に巻き付かれてしまう。

 

そのまま引っ張られるようにしてコスモスの身体が宙を舞い、地面にしたたかに背中を打ち付ける。

 

「グッ…」

 

先ほどまでと打って変わり、コスモスは一気に追い詰められてしまった。

 

(このままじゃ…)

 

右腕の自由を奪われた状態では、先ほどのように攻撃を防ぐことができない。それに加えて、鞭から電撃を流されコスモスのカラータイマーは点滅を始めていた。

 

「このままじゃコスモスが…」

 

一気に窮地に立たされてしまったコスモスを見て、かすみはそう呟いた。

 

今までコスモスが戦っているところは何度も見てきた。あのコスモスがここまで苦戦することなどなかったはず。きっとしずくを助けるために全力で戦えていない。それは見ていてなんとなく理解できた。

 

そして、コスモスが倒されればもう誰もしずくを助けられないことも。

 

それは、実際戦っているコスモスと菜生もわかっている。

 

だがこのままではしずくがどうなってしまうかわからない。ここで負けるなどありえない、なんとしてでもこの状況を脱し彼女を救わなければ。

 

一瞬コスモスの視界にかすみの顔が見えた気がした。本当は逃げてしまいたいけど、大切な友達の身を案じて離れることができない彼女の顔が。

 

(怖いよ…)

 

『しずくちゃん?』

 

(素の自分って何…?みんなから嫌われるのが嫌で…だから演技を始めた私に、そんなことわからないよ!)

 

きっとそれがしずくの本心だったのだろう。みんなの輪から外れるのが怖くて、みんなに好かれる自分を演じたことが演劇を始めたきっかけだったのかもしれない。

 

そして、その感情が爆発し。それをカオスヘッダーに利用され曲解した方法で解決するといい寄ったのだろう。

 

『ふざけるな!!』

 

(先輩?)

 

だが、菜生叫んだ。しずくに届くほど大きな声で。

 

『だから壊すの?しずくちゃんはしずくちゃんで、それ以外のなにでもないんだ!嫌われるかもしれない?私は絶対、どんなしずくちゃんでも受け入れる。だから君が本当はどうしたいか教えてよ!!』

 

(本当はこんなことしたくない…先輩、助けて…)

 

『わかったよ、しずくちゃん』

 

その時、「絶対に負けられない」という感情が炎のように燃え上がった。そしてコスモスはその菜生の炎に触れ、電撃に耐えつつ無理やり鞭を掴みそのまま引き寄せようとする。

 

(絶対に…負けるもんかぁッ!!)

 

「ヤァァアアアアッ!!」

 

菜生の感情とシンクロし、ルナモードでは本来出せないレベルでの力を発揮。そのままカオスジラークの身体を引き寄せると、その腹部に左手で掌底を打ち込み。その時のショックでカオスジラークは技を解いてしまう。

 

そのまま追撃に出たかったが、コスモスは先の電撃のダメージで思わず膝を付く。

 

これ以上の戦闘は、コスモスの限界も近い。地球上ではただでさえエネルギーの消耗の激しいコスモスは、しずくを救うために無理を続けてきた。もうエネルギーの底が見え始めていたのだ。

 

だが先に態勢を整えたカオスジラークは、口にエネルギーを集中させそのまま破壊光弾として撃ち出そうとしていた。

 

「危ない!」

 

かすみの叫ぶ声に反応するように、コスモスは右腕を突き出すと。捕縛用光線ネットトラック・ボックスを発射、今度は逆に光の網でカオスジラークを捕縛。攻撃を中断させる。

 

そして両腕で胸の前にエネルギーを収束させ、そのまま七色の光線・ルナレインボーを照射する。

 

するとカオスジラークの体内に取り込まれていたしずくは解放され、実体化するための核を失ったカオスジラークは実体を失って消滅した。

 

「しず子…!」

 

切り離されたしずくは光に包まれ、地上へとゆっくりと戻された。それを見てその場へとすぐさま駆け付けたかすみは、しずくが気を失っているだけなのに気が付くとほっと息を吐く。

 

「ありがとうございます、ウルトラマン」

 

その言葉に、コスモスはゆっくりと頷くと夜空へと飛び去って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして数日後、カオスヘッダーの影響から解放されたしずくは無事に復帰。とくにケガもなく、スクールアイドルと演劇の二足の草鞋の生活に戻っていた。

 

「先日はありがとうございました」

 

「私は何もしてないよ?それよりも、あの事なんだけど…」

 

練習の後、話があると言ってしずくに呼び出された菜生は、自分がコスモスであることがバレてしまったと思い。誰かに言いふらされたりしないかとハラハラしながら日々を過ごしていたのだ。

 

「ごめんなさい、実はあの日の事は覚えてないんです…どうやって助かったのかも、私がどうしていたのかも…」

 

「そ、そうなんだ…でもよかったよ。主役、しずくちゃんで決まったんでしょ?」

 

「実は、そのことでお願いがあるんです」

 

「お願い?」

 

しずくの真剣な表情に、菜生はまっすぐと目を見据えて続きを待ったが。この後にそれを後悔することとなった。

 

 

 

 

 

 

そしてしずくが主役を務める演劇の当日。

 

「そろそろ始まりますよ!」

 

「そういえば菜生ちゃんは?」

 

客席で座っていたせつ菜がそう興奮気味に話していると、菜生の姿が見えないことに気が付いた。

 

「あり?菜生来てないんだ?」

 

「み…美月ちゃん!?」

 

「なんだよ人を幽霊みたいにびっくりしたなぁ…」

 

いきなりさも当然のように歩夢の隣に腰かけた美月に、歩夢が驚くと「心外だなぁ」といたずらが成功した子供のように笑う。

 

「そういえば、今日は用があるから現地集合って言ってはいたけど…」

 

「もしかして道に迷ってるのかしら?」

 

「どうなんだろ…?」

 

そうこう話していると、菜生が合流しないまま演劇が開始された。

 

 

 

 

そして最後まで滞りなく舞台は進み、拍手喝采で幕を閉じた。

 

そして菜生はというと―

 

「つ…疲れたぁ~……」

 

実はしずくと体格が近いからという理由でとある役で出ていたのだ。

 

「お疲れ様です。先輩、またお願いしてもいいですか?」

 

「私も見る側が良かった~!しずくちゃんが演技してるとこ客席で見たいからヤダ~!!」

 

この先、菜生が演劇部に入ったのか。はたまた次回以降は客席から見る側になったのか。それはまた別のお話。




最後の演劇がどういうものだったかは、虹ヶ咲のアニメを見ていただければ幸いです。
今後もアニメも参考にして話を広げていければなと思っています。
それではまた次回
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