COSMOS The Rainbow   作:カズオ

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大変お待たせしました。
今回で一応一連の騒動は終わりとなります。
もう少ししたらμ's編の後半編をやって、物語も少しずつ折り返しに向かっていく予定です。
ごゆるりとお付き合いください。


30話 ぬくもりの記憶

―明日、アンタに渡したいものがあるんだ。

 

その言葉を受けた愛は、翌日純が入院している病院を訪れていた。

 

相変わらず寝たきりの純を見て、やはり昨日の夜あったのは別人なのではないかという気すらしてしまう。

 

「あれ…?」

 

意識は戻らないままだったが、まるで愛に渡すために動いたかのように純の握られていた手が愛の視線の先で開く。

 

そしてそこには、真っ白な石が握られていた。

 

「これが、渡したいもの…」

 

この石が何を意味するのか分からない。でも純がこれを愛に渡したかったのだということはなんとなく理解できた。

 

「目、覚めるよね…?」

 

最後にそう呟いて、愛は病室を後にした。

 

「やっぱ…もうちょっとだけ、生きてみようかな…」

 

病院の屋上から、帰っていく愛の姿を見て少年はそう小さく呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もう、十年程前の夏のある日の事だ―

 

「キミ、泣いてるの?」

 

「泣いてないよ」

 

神社の狛犬の下で座り込んでいる男の子に、少女が声をかけると少年はそう言い張り。持っていた地図を隠そうとして落としてしまった。

 

「見せて」

 

だがその地図を少女が拾い上げるも、その地図は濡れてしまっていてよく読み取れないがおそらくこの周辺の地図であろうことは理解できた。

 

「ここに行きたいの?」

 

少女がそう地図の中でペンで印を入れてある一点を指差して問いかけると、少年は大人しく頷く。

 

「ねえ、ここでだれかまってるの?」

 

「ママ」

 

「じゃあ、あたしもいっしょにさがしてあげる!」

 

そう言って少女は少年を手を取り、一緒に歩きだしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会では。

 

「今日愛ちゃんおやすみなんだ」

 

「うん、昨日の帰りにさ。今日は用意があるからごめんって」

 

休憩中に、愛のいないことを歩夢に聞かれて菜生はそう答えた。

 

「昨日愛ちゃんと遊んでたんだ?」

 

「うん、おいしそうなクレープのお店教えてもらったんだよね。色々あって行けなかったし、帰りも遅くなってお母さんに今日は真っ直ぐ帰ってこいって怒られちゃったけど」

 

そう苦笑いしながら答える菜生だったが、歩夢の顔は笑ってなかった。

 

「本当はまた何か危ないことやってるんじゃないの?最近の菜生ちゃんずっとそうだもん、怪獣だとか宇宙人だとか…」

 

「昨日のは本当に違うって、それに私も好き好んで宇宙人に襲われてるわけじゃないから…」

 

彼女が本気で自分の事を心配してくれているのは良く解った。でも、菜生はコスモスの事を明かすことはできずにそう取り繕う。

 

そんな時、轟音がその場を引き裂いた。

 

 

 

 

 

 

 

電波障害の原因を特定したSRCは、街の一転に発生していた電波の歪みが発生しており。その歪みが周囲の電波を吸収したために、今回の状況は発生したと判断した。

 

そこへアモルファス波を照射し、その電波の歪みを取り除こうとした。

 

そしてそこで、問題が発生した。

 

照射されたアモルファス波こそが、その歪みが最も好んでいたものであり。それを大量に吸収したことで、その歪みは急激に肥大化し一体の怪獣へと姿を変えた。

 

漆黒の巨体に角の生えた頭部、両肩から生えた触手に先端の尖った尻尾―まるで悪魔のような姿をした怪獣、グラガスこそが今回の事件の原因であり純が言っていた怪獣の正体だった。

 

突如街に出現したグラガスは、触手から電撃を飛ばし街を破壊し始めた。

 

「なにあれ…怪獣?」

 

「ここからは遠いし、学校にいた方が安全だとは思うけど…」

 

「とりあえず校内の様子、あたしが確認してこようか?」

 

怪獣が頻繁に現れるようになって時間は立ったが、それでもやはり怪獣の出現に緊張が走る。そんな中で、そう美月は立ち上がって提案した。

 

「いや、私が行くよ。美月ちゃんケガしてるし、代わりにみんなといて?」

 

「…わかった。ただし10分で戻ってこいよ?絶対ここで待ってるから」

 

その中で、それを制止したのは菜生だった。そんな菜生の顔と、それを止めようとした歩夢が動くより早く美月はそう条件を出した。

 

「だから、絶対戻って来いよ。あたしはここのちゃんとした部員じゃないけど、みんなと一緒に部長であるお前を信じてここで待つ」

 

「わかった。約束する」

 

そう言って菜生は部室を飛び出すと、そのまま人気のない場所へと移動する。

 

「10分あれば!すぐ終わらせよう、コスモース!!」

 

菜生は誰もいないことを確認すると、コスモプラックを天に掲げ自身と一体化している巨人の名を呼んだ。

 

「シュア!!」

 

グラガスの目前に着地するコスモスに、驚いたのか後退って胸を押さえるとおう人間臭い仕草を見せるグラガスに対してコスモスは右拳を天に突き上げる。

 

すぐさま太陽の如き赤い光を身に纏い、コスモスは青いルナモードから赤い巨人、コロナモードへと姿を変える。

 

「ジュルル…」

 

「ダアアッ!!」

 

グラガスは腕で口元をぬぐう動作を見せる中。コロナモードへと変わったコスモスはファイティングポーズをとる。

 

両者は同時に駆け出すと、コスモスはグラガスの目前で飛び上がる。そしてそのままの勢いで顎を蹴り上げて一回転して静かに着地する。

 

蹴り飛ばされたグラガスは起き上がると、忌々しそうにコスモスを睨みつける。

 

相手がどのような怪獣なのか現時点では判断はできない。だがしかし、現状から判断して目の前の相手を友好的な怪獣と解釈することは難しい。

 

だから倒さなくとも、コロナモードの力を使って戦意を削ごうという判断をしたのだ。

 

だが目の前の怪獣は、まるで

 

お互い同時に駆け出すと、コスモスはグラガスに殴り掛かろうとするが、グラガスは自身の口元を拭った腕をそのままコスモスの顔面に押し付けそのまま顔を掴んだ。

 

「ウアッ!?」

 

(嫌っ…!?)

 

自分の手を唾液で汚してから相手の顔につかみかかるという、下品な攻撃に対処が遅れてしまっただけでなく。菜生の無意識下での嫌悪感と相手の握力の強さも相俟って、すぐさま脱出することができなかった。

 

そんなコスモスの様子を好機と見たグラガスは、そのまま空いている方の腕でコスモスの腹を殴りつけ、膝蹴りをして態勢を崩してから顔面をさらに殴り飛ばした。

 

そしてさっきまで抑えられていた顔を押さえているコスモスを背後から蹴り、殴りつけてその巨体をもって押し倒した。

 

(こん…のォッ!!)

 

「ウオオッ!!」

 

だがそんなグラガスに対して、調子にのるなと言わんばかりに起き上がりざまに蹴りを入れそのまま上空へと飛び上がった。

 

だがその判断は間違いだった―

 

グラガスの背中の二本の触手が伸び、コスモスの胴体に巻き付いた。

 

そしてそのまま触手を操り、飛び上がったコスモスを地面に叩きつける。そしてそのまま、さらに触手から電流を放ちコスモスへ攻め立てる。

 

「ぐああああっ!?」

 

さらにカラータイマーまでコスモスの活動限界が近いことを赤く点滅して知らせ始めた。

 

そしてその戦闘を、少し離れた場所から見守っている人物がいた。勿論愛だ。

 

「このままじゃ…」

 

まさに絶体絶命。だがあの怪獣がこの騒動の正体であり、あの怪獣が倒されなければ純はあのまま彷徨うことになってしまう。なんとなく愛はそう察していた。

 

でもただの人間である愛に、怪獣と戦う力などないしどうすることもできないのだ。

 

「あの石を使って」

 

「え?」

 

ふいに背後からそう声がした。振り返ると、いつものごとくどこからともなく純が現れた。

 

「怪獣はあの石が嫌いなんだ。初めて見た時も、額に埋め込まれてたその石を必死に剝がしてた」

 

恐らくこの石には、あの怪獣の力を抑制する力があったのだろう。だがこの石をどう使ってコスモスを救う?今自分にできることは何か?愛はそれを必死に考えた。

 

その時、避難誘導をしているSRCの特捜隊員の姿が目に入った。

 

「あの人なら…!」

 

そう言って愛はその隊員の元へと駆けだした。

 

「すいません」

 

「あなたは確か…」

 

運のいいことに、それは菜生の母親であるしのぶだった。

 

「どうしたの?早く逃げなさい!」

 

「これ!この石を怪獣に使ってください!!」

 

「なにを言って…」

 

はたから見れば、真っ白い小石にしか見えない。それでどうしろというのかと訝しむしのぶだったが、現状を鑑みて、このまま何もしないよりはマシという考えに落ち着き。愛から石を受け取ると、腰に下げていた銃にアタッチメントを取り付けカプセルに石を装填した。

 

「愛ちゃん、離れてなさい」

 

「はい!」

 

信じてくれたしのぶに対してそう頷くと愛は後ろに下がる。すると耳元でまた「ありがとう」という純の声が聞こえた気がした。

 

そして、それから一瞬の間が空いた後しのぶの銃口から怪獣目掛けて弾丸が放たれた。

 

その弾丸は、怪獣グラガスの顔面目掛けて真っ直ぐ飛んでいき―口の中へと入ってしまった。

 

「当たった!」

 

「……」

 

当たったことを喜ぶ愛と、その効果を無言で見届けるしのぶ。

 

その視線の先で、先程までコスモスへの電撃攻撃を行っていたグラガスの様子は一変。もがき苦しみ始めたのだった。

 

(電撃が止まった?よし!)

 

「ウォオオオオッ!!」

 

それを好機と見たコスモスは、触手を掴むと思いきり引き千切り拘束から脱出した。

 

触手を引き千切られたことで、怪獣は思わず仰け反るが。すぐさま立て直し、コスモスへと攻撃しようと駆け出した。

 

だがしかしもうコスモスには、グラガスの肉弾戦での戦い方は通用しなかった。

 

(その手はもう食らわないよッ!!)

 

再びコスモスの顔面を掴もうと伸ばしてきた腕を振り払い、逆にグラガスを両腕の拳を同時に叩きこむ。

 

さらに態勢の崩れたところに追い打ちをかけるようにして、飛び上がりざまに回し蹴りを顔面に叩きこんだ。

 

このままコスモスが一気に押し切るだろう。戦いを見ていた人々はそう思った。

 

だが実際は、このままではコスモスにやられてしまうと察したグラガスはすぐに拝み倒すような仕草をとり。コスモスに見逃してもらおうとし始めたのだった。

 

なんとも情けないような格好だったが、コスモスが構えを解くとそのままグラガスは飛び去ってしまった。

 

(まぁもう戻ってこないなら、倒さなくてもいいよね。このまま倒すと苛めてるみたいだし)

 

コスモス自身も、菜生と同じような考えだったのか特に追撃の意思は示さず街の状況を確認しようとしてグラガスがいた方へ背を向ける形で振り返る。

 

だが、それがいけなかった―

 

グラガスは、コスモスの注意が自分から逸れた事に気が付くと。ニィっと笑うと、空中から球体状にした電気の塊を乱射。完全に無警戒になっていたコスモスへの攻撃を回避することはできなかった。

 

「グアッ!?」

 

油断していたとはいえ、電撃の威力もかなりのものでコスモスの姿は爆風に包まれて見えなくなった。

 

「そんな…」

 

爆炎の中に消えるコスモスを見て、愛はそう小さく漏らした。グラガスの卑怯な攻撃によって、コスモスがやられてしまったと。

 

だが、その次の瞬間―

 

 

 

 

 

 

 

 

「デリャアアアアアアッ!!!」

 

爆炎を切り裂いて、炎の圧殺波動(ブレージングウェーブ)が飛び出し、グラガスの身体を完全に吞み込んだ。

 

コスモスの怒りの反撃は、グラガスを塵一つ残らず完全に消し飛ばしてしまった。

 

そして煙が晴れると、コロナモードのコスモスが中から現れた。

 

コスモスは、グラガスの卑怯な戦法に怒り。見逃すことをやめ、そのまま倒したのだった。

 

「よしっ!」

 

「じゃあオレ、帰るから」

 

コスモスの勝利に、小さくガッツポーズをした愛の背後でそう小さくささやく声がした。そして、先程まで背後に感じていた純の気配が消えたのを感じて愛は振り返った。

 

「純君…?」

 

そこにはもう、愛には見えていたはずの少年の姿は無かった。

 

周囲を見渡しても、見えたのは空の向こうへと飛び去って行くコスモスだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、愛と菜生は純が入院している病院を訪れていた。

 

「目、覚めてるかな?」

 

「大丈夫だって、きっと元気になってるよ」

 

そう愛を励まそうと話す菜生だったが、病院の廊下の向こうから見たことのある女性が、車いすを押しているのに気が付いた。

 

そして、その車いすに座っていた少年こそが純であった。

 

「よかった~!目、覚めんたんだね」

 

そう言って愛は駆け寄っていくが、純は首を傾げて「この人ダレ?」と母親に尋ねていた。

 

そして、その言葉に当然愛はショックを受けて表情を曇らせる。それを見て菜生もなんと声をかければいいのかわからずにいた。

 

「まぁ、覚えてるわけ…ないよね……」

 

「愛ちゃん……」

 

思い返してみれば、今まで会っていた純が本当に目の前にいる少年と同一人物だという保証はなかったのかもしれない。言ってしまえば、幽霊のような非科学的な存在だったあの少年は、ただ今目の前にいる『高杉純』という少年の姿を借りていただけなのかもしれないし。

 

そう考えて愛は諦めようと思った。

 

「でも、純君が元気になってよかったよ!!」

 

純の手を握ってそう告げると、愛はそのままこの場を離れようと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―つかれた、もう歩けない

 

―じゃあ、手をつなごう?手をつないだら、いっぱい歩けるんだよ

 

まだそれほど歩いてはいない。だがしかし、幼い彼らにとっては夏の炎天下の中で歩き続けるのは容易ではない。すると少女はそう言って手を差し伸べる。

 

そして、少年はその手を取って二人はまた歩き始めるのだった。

 

―純!

 

―ママ!

 

すると、正面から女性が駆け寄ってきた。少年の母親だったようで、少年は探していた母親を見つけたことで少女から手を放して母親へと駆け寄っていく。

 

―もう迷子になっちゃ、ダメだからね~

 

―わかった

 

―もし迷子になったら、愛さんがきっと見つけてあげる!

 

そう言葉を交わすと、少女は少年と別れた。

 

 

 

 

 

その少女こそが、宮下愛で少年が高杉純だったのだ。そのことを思い出した純は、去ろうとしていた愛を呼び止めた。

 

「もしかして…愛さんですか?」

 

その一言で、愛の表情に笑顔が戻った。

 

そして、幼い日に一緒に歌った歌のフレーズを純が歌いだすと、愛はそれに続いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夕方、純が無事に退院していくのを見送った愛と菜生はそれぞれ帰路についた。

 

「な~おちゃん♪」

 

もう少しで住んでいるマンションに帰り着く。そんな時に背後から声をかけられて菜生は振り返った。

 

「あれ?歩夢今日もおつかい?」

 

「ん~そんなとこ」

 

「なんかいいことあったでしょ~歩夢、めっちゃご機嫌じゃん」

 

異様にテンションの高い歩夢に、それほど嬉しいことがあったのかと菜生は問いかける。

 

「知りたい?」

 

「教えてくれるの!?」

 

そう聞き返すと、歩夢はにぃっと笑うと「それはね―」と言ったところで菜生の意識は途絶えた。

 

「あ……む…」

 

「やっと仇が討てるのが嬉しいんだよ『ウルトラマンコスモス』」

 

復讐者が、そこには立っていた。




次回から、完全にオリジナルの展開になります。
最後に出てきたのは何者なのか?本家コスモスにも登場しなかった存在が菜生の前に立ちはだかります。
次回「哀しき復讐者」
お楽しみに
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