話の展開事態は連載開始前から考えていたものなのですが本来より早い開始にしたせいでいろいろ手直しするハメになっております笑
そしてコスモスのムック本買いました。
当時撮影されて使われなかったであろう写真を見て存在しない記憶がよみがえりました。
「あ……む…」
どさり。と音を立てて倒れる菜生を見下ろす歩夢の顔は、普段からは想像できない程おぞましいものだった。
左手首に付けた銀色の金属質なブレスレットを撫でながら、菜生が気を失うさまを見届けると歩夢は菜生の方へと歩み寄る。
菜生の意識が途切れる直前、菜生は目の前にいるのが歩夢ではないと気づくことができたが、もはや全て手遅れだった。
「さぁ、復讐の始まりだ!!」
そう宣言する声は、狂気に満ちていた。
コスモスは、歩夢から放たれている異様な気配に気が付くことはできたが。不幸にもグラガスとの戦闘で力を消耗していた為、菜生が襲われる前に助けることができなかった。
「まずはお前の大事なものから壊してやるよ」
気を失った菜生の髪を撫でながら、歩夢はそう呟くと。次の瞬間、菜生と歩夢の姿は消えていた―
「―んっ…あれ?ここは……」
「気が付いたか」
菜生は、ひやりとした空気を感じて目が覚めた。意識がはっきりすると、両腕を鎖で縛られた状態で自身が吊るされていることに気がついた。
どうやらここは使われていないビルの一室らしい。周囲を見渡すと、窓の向こうに虹ヶ咲学園が見えるし。恐らくここに自分をつるし上げたであろう歩夢―に似た人物の背中が見えた。
「歩夢じゃない、キミは何者なの?」
目の前の歩夢の姿をした何かに、菜生はそう問いかける。
「身体は間違いなく上原歩夢のものだ。でも今はオレが使ってる」
自分の胸元を触りながらそう告げると、菜生は激昂した。
「歩夢をどうした!?今すぐ歩夢を解放しろ!!でないと―」
「さもないと?ハッ!今のお前に何ができる?精々オレが今からやることを眺めることぐれーだろ」
そう吠える菜生をあざ笑うだけでなくコスモプラックを振って見せびらかす歩夢に、菜生は悔しそうにギリリと歯を軋ませて悔しがる。
「なにが目的?私が狙いじゃないの?」
「正確には違う。お前と『その中にいるヤツ』にだ」
菜生の問いにそう笑って答えて見せた。菜生の中にいる存在―即ちコスモスの事であろうことはすぐに理解できた。
だが、菜生には目の前の存在の正体がわからなかった。そのことが、歩夢のことと相俟って菜生の心に焦りを産んでいるのだ。
「だったらなおさら歩夢は関係ないでしょ!彼女を解放して、私はどうなってもいいから!」
「断る。お前たちは充分に苦しめてから殺す。この女はそれまでオレの駒だ…そうだな、まずは学校とやらを壊してみようか?」
あくまで狙いは菜生とコスモス。だが、菜生とコスモスを苦しめるための手段として歩夢を乗っ取っているという相手に、菜生は完全に平常心を失った。
「歩夢の声で、歩夢の顔で…そんなこと言うなッ!!」
鎖できつく縛られている両腕を激しく動かして脱出しようとする菜生だったが、手首の皮膚が裂け血が出るばかりで効果などありはしなかった。
「クソッ…クソッ!!」
「元気なこって。だがただの人間のお前に、その状態で鎖が解けるわけないだろう」
そんな菜生の様子を見て、尚も目の前の存在は嗤う。そして、それを見るのにも飽きたといわんばかりに指を『パチン』と弾いた。
すると周囲に地響きが轟き、白い装甲を煌めかせた刺々しいシルエットのロボットが現れる。その姿はまるでネオバルタンを彷彿とさせるものだった。
「あれは…?」
「『バルタンラッヘ』かつて地球での我が父とコスモスとの戦闘データを元に設計した。お前たちにラッヘを止めることはできず、大人しく目の前で大事なものが失われていく様を眺めるがいい!」
「そっか…キミはあの時のバルタン星人の子供の一人なんだね?君の気持ちもわかる。でも、破壊や復讐は何も産み出さない。何も…産まないんだ…」
復讐を行ったところで、新しい悲劇が増えるだけ。なんの解決にもならないはずだと、菜生は冷静さを取り戻してそう告げる。
確かに、あの日菜生がコスモスを呼ばなければ、バルタン星人は死ななかったかもしれない。だがそれは同時に、菜生達地球に住む者たちがもっと傷ついていたであろうことも想像できた。
菜生だって大切な誰かを失う悲しみは良く知っている。だからこそ、新しい悲しみが産まれる前にこの復讐を止めたいと思った。
先程までの激情が嘘のように、菜生は冷静だった。
「お前にそう言われて辞める程度の復讐なら、最初からやるわけないだろう?お前はただ、自分の無力さを呪っていればいいんだ」
だが、バルタン星人も譲るはずもなくラッヘを起動。ラッヘは無情にも両腕から破壊光線を発射し、街を破壊しつつ虹ヶ咲学園へを進行を始める。
時間は少し遡る。
集合時間を過ぎても部室に現れない菜生と歩夢を、同好会のメンバーたちは心配していた。
「二人とも電話に出ませんね…」
「珍しいですよね。二人そろって遅刻なんて」
スマホを耳から離したせつ菜がそう告げると、かすみはそう言って同調する。
「菜生先輩と連絡付かない時、大体何か起こってるから心配…」
「璃奈ちゃん鋭いね。正解だよ」
「「「えっ!?」」」
菜生と連絡が付かない時は、音乃木坂でギギに襲われていたりワロガとの騒動だったりと何かとトラブルに巻き込まれていることが多い。
だから璃奈はまさか今回もと思ったのだが、そんな彼女の心配が現実になったと今日も練習を手伝いに来ていた美月が告げる。
「菜生のかーさんに電話したけど、昨日から帰ってないって。んで、歩夢も同じなんだと」
「そんな…でもなっち昨日は家の近くまでアタシと一緒に帰ってたんだよ!?」
そう、昨日の練習後に菜生と一緒にいた愛は、菜生が家の近くまで帰っていったのを知っている。だからこそ、美月の言葉が信じられなかった。
「でも事実なんだろ?だから昨日の夜から警察やらSRCが必死に二人を探してるって話みたい。それにあの人がそんな面白くない冗談言うなんてありえない」
この中では、一番菜生や歩夢との付き合いの長い美月がそう告げると。周囲には重苦しい空気が流れる。
「…今はとにかく二人の無事を信じて、あたしたちは練習やろうよ」
「この状況で練習するんですか!?」
「そうは言うけどさ。皆がライブで争うのはここにいる全員だけじゃないでしょ?他の学校のスクールアイドルが相手なんだから、ここにいる人間だけがライバルじゃない」
練習の開始を提案した美月に対してかすみがそう言うが、美月は冷静にそう言い返した。他校の生徒と競い合ってきた彼女だからこそ、そういうことがすぐさま言えたのだろう。
少々厳しいかもしれないが、スクールアイドルフェスティバルでμ'sやAqoursと同じステージに立つことを目標に掲げたからにはそれだけの努力が必要なのだ。
そして練習を始めようとした時、地響きを鳴らして白金の鎧が現れたのだった。
「白いロボット…?」
「なんか前に見たバルタン星人に似てる気がするけど…」
唐突に現れたロボットを見て、その存在に首を傾げるエマの隣でそう彼方が呟いた。
エマとしずく以外の全員は、かつてこの街でコスモスとバルタン星人が戦ったのを目撃している。そして、街が破壊されたことも―
「ちょっと、あのロボットこっち見てないかしら…」
「とにかく一度逃げた方がよさそうですね」
じっと学園のほうを見つめているように見えるロボットに、本能的に恐怖を感じた面々はすぐに学校から離れることを決意。
だがその瞬間にはもう、
一方で菜生は、現在バルタンラッヘが虹ヶ咲学園へ進行するのをただ見ていることしかできなかった。
「ダメ…やめて!みんなが…みんなは関係ない!!そんなに私が憎いなら、ここで殺せばいいでしょ!!」
何度目かわからない、でも菜生がそう叫ぶ。そしてそうすればするほど、バルタン星人はこれが一番菜生の心にダメージを負わせることができると確信させるだけだった。
「全部終わったら殺してやるよ。それまでここで見学してな」
悪魔のような笑みで笑う歩夢に、菜生は再び冷静さを失いつつあった。
(SRCや防衛軍がラッヘを止められると思えない…どうする?どうすれば学校のみんなを…歩夢を救えるの?)
コスモプラックも手元にない今、菜生は本当に無力だった。ただ、菜生の腕を鎖を無理に振りほどこうとした際に出た血が腕を伝っていた。
その時だった。暗闇の中から、金色の鏃状の光弾が飛び出してきた。そしてそれは、菜生を縛っていた鎖を粉砕したことで彼女は尻もちをついた。
「ったぁ…今のは?」
「誰だ!?」
光弾が飛んできた方へ思わず振り返った歩夢の背後で、菜生は残った鎖を放り捨てた。
「タアッ!」
「うっ……」
疑問に思うことはあるが今が好機と駆け出すと、菜生は歩夢の腹部を殴って気絶させてコスモプラックを取り戻す。
「クソッ!」
すると歩夢の身体に入り込んでいたバルタン星人は分離し、そのままどこかへと去ってしまった。
「ごめん歩夢、痛かったよね…後で絶対助けるから」
今にも泣きそうな顔で幼馴染をその場にそっと寝かした菜生は、立ち上がると学校へ腕のビーム砲を向けんとするラッヘを睨みつける。
「絶対に、止めて見せる…!コスモース!!」
ラッヘの腕からビームが放たれたと同時に、菜生の身体は光に包まれた。
「やばっ…みんな伏せろ!!」
飛来する一撃を前に、美月が咄嗟に叫ぶがそんなことをしても助からない。目を伏せたまま、大人しくその時を待つがいつまでたってもその時は来ない。恐る恐る目を開けると、青い巨体が見えた。
ビームを防いだ光の中から、ウルトラマンコスモスがゆっくりとその姿を現したのだった。
「ハァアアッ!!」
ラッヘへと振り返ったコスモスは、そのまま赤き光を灯した右腕を突き上げコロナモードへとその姿を変化させた。
「まぁいい…コスモスだけでも倒すさ。ラッヘにはコスモスの戦闘データが入ってる、負けるわけねぇ」
ラッヘを載せてきた宇宙船に戻ったバルタン星人は不敵にそう笑う。そしてその視線の先ではコスモスとラッヘの戦いが始まろうとしていた。
参考になったネオバルタンのように、左腕のビーム砲から光の鞭を展開するとその鞭を振り上げてコスモスへと攻撃するラッヘに、コスモスは横に飛んで起き上がりざまにハンドドラフトを連射する。
しかし、その攻撃は強固な装甲によって阻まれて有効なダメージを与えることができない。
しかし『コスモスとネオバルタンの戦闘データから、コスモスを倒すために造られた』というラッヘが牽制用の技でダメージが与えられるとは最初から思ってなどいない。
歩夢や同好会のみんなの為にも、早く勝負を付ける必要がある。コスモスは駆けだすとラッヘへと肉薄し、そのまま右の拳でストレートパンチを放つ。
ラッヘはそれを右腕の大剣の腹で受け止めると、返す刀で斬りかかるもコスモスはバク転でそれを回避。装備こそネオバルタンと概ね同じではあるものの、やはりコスモスの動きを研究している事もあり攻めあぐねていた。
(どうする…どうすればコイツを倒せるの?)
一度仕切りなおしてどうするか悩んでいた菜生だったが、そんなことはお構いなしにラッヘの装甲が展開し夥しい数のミサイルが放たれた。
そしてそのミサイルはコスモスの身体を避け、背後の学校目掛けて飛んでいく。
(やめろっ!!)
コスモスはすぐさま振り返ると、ハンドドラフトを連射。迫りくるミサイルをすべて撃ち落とした。
しかしそれを待っていたと言わんばかりにラッヘは左腕から光線を発射、そのままコスモスの背中を焼く。
コスモスの身体はダメージに耐えきれず地に伏すが、ラッヘはそこにダメ押しとばかりに肩の装甲を無数の針に変化させバンプスプレーを放つ。
それにギリギリで気が付けば、痛む背中をこらえて転がってなんとか範囲外へと逃れ両手で強く地面をつき跳ね起きる。
(…っつぅ~……)
先程の鎖を無理に解こうとしたせいで負傷した両手首に荷重がかかったことによって、菜生の両腕に痛みが走った。
「ハアッ!!」
一瞬両手を振って手首を気に掛けるような仕草を見せたが、コスモスはすぐに構えをとった。
そして両者同時に駆け出すと、ラッヘが右腕の大剣を振り下ろす。
それを紙一重で回避したコスモスは、そのまま両腕を掴んで背負い投げの要領で投げ飛ばした。
―はずだった
「ンな馬鹿な!?」
「うそでしょ!?」
戦闘の様子を見守っていた同好会の面々もその光景に信じられないといった反応を示した。
そう、確かにコスモスはラッヘを投げた。
だがラッヘの背面の装甲が展開、スラスターを拭かせてそのままホバリングで距離を取り。何事もなかったかのように態勢を整えたのだ。
―ピコン―ピコン――
そしてこのタイミングでコスモスのエネルギーが危険域に入ったことを知らせるカラータイマーが赤く明滅を始めた。
動きや攻撃を読まれてしまっていることで、かなりのハンデを背負っているようなものだ。このまま戦っても、コスモスに勝ち目はない。
(どうする?どうすれば…)
初めて直面した、コロナモードで歯が立たない相手に菜生の心には段々と恐怖と焦りが見え始めていた。
今回色々起きましたが、菜生を助けた人物の正体などは後々判明しますのでお待ちください。
そして今回オリジナルの敵として登場したバルタンラッヘ。ラッヘとはドイツ語で復讐を意味する単語で、ネオスに登場したザムリベンジャーから着想を得て考えました。
それでは次回でお会いしましょう。