COSMOS The Rainbow   作:カズオ

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お久しぶりです、何年振りかもわからない冬以外の更新です。
アーツのコスモスを予約したりしました。
去年は真骨頂のガイアを買いました
アグルも出てほしいなぁ…アーツ…真骨頂じゃなくても我慢できるから是非に
そんな37話です


37話 魔人出現

「落ち着いたか?」

 

「うん、ありがと…」

 

パトカーのサイレンが鳴り響く中、公園のベンチに座り込んでいた菜生にサラは自販機で購入したミネラルウォーターを差し出した。

 

「…私のお父さんね、わたしが小さいころに事故で死んじゃったの」

 

受け取った水を一口飲んで、菜生はおもむろに語り始めた。

 

「多分あの時の電話の声の子とそんなに変らないくらいの年だったと思うんだけど、急にその時のこと思い出しちゃって…辛くなっちゃって…」

 

サラはそれを何も言わずに聴き続けていた。サラもたくさんの同胞を失っている身だ、菜生のつらい気持ちは理解できる。

 

「あの子のお父さん、早く見つかるといいね」

 

「そうだな…さっき聞いた話によれば、似たような事件は最近立て続けに起こっていて、被害者はみんな数日のうちに発見されているらしい。だから見つかる…とは思う」

 

「そっか、でも心配だよね。お父さんが居なくなるって、辛いもん…」

 

あの時置き去りにされていた電話から聞こえてきた声に、菜生は父親を亡くした時の自分を重ねてしまったのだ。

 

 

 

 

 

その日の夜、菜生が家に帰ると母親が待っていた。

 

「ただいま~。あれ?お母さん今日は早いんだ?」

 

「おかえりなさい。そうね、今日は早く帰れたんだけど…この後出なきゃいけなくなっちゃったのよね」

 

しのぶがそう告げる。菜生はきっと、連日の失踪事件のことなんだろうなと察した。

 

「気を付けてね?」

 

「ありがと、行ってくるわね」

 

そういって玄関から出ていくしのぶを見送ってから、菜生はリビングに入るとしのぶが作ってくれた晩御飯が置かれていた。

 

(お母さん、やっぱり忙しいんだなぁ…)

 

SRCの仕事は忙しい、いくらしのぶが医療機関勤めであったとしても。何かあった時のためのバックアップの為にも有事の際は休んでいられない立場にいる。

 

そのことに寂しさを感じない訳がないが、それ以上にそんなしのぶが母親だったから今こうして暮らしていられる事も分かっているつもりだった。

 

その日、菜生は夢を見た。

 

大好きだった父親が、亡くなった時の夢を

 

「ねぇ、おとーさん帰ってこないの?」

 

「お父さんはね、空の向こうに行ったんだよ」

 

「そうなの?私もいけるかなぁ?」

 

「きっと…いつかきっと……また会えるよ…」

 

父の葬儀、泣き崩れる母や祖母の姿を見ても死というものが理解できなかった。あの時の記憶―

 

 

 

 

 

 

「また…あのころの夢か……」

 

翌朝目が覚めた菜生は、頬が涙で濡れていることに気が付く。絶対に忘れることのない記憶、でもそれはあまりにも辛い記憶。

 

「みつかるといいなぁ…あの子のお父さん」

 

朝起きて誰もいないリビングに向かい、トースターに食パンを突っ込んで顔を洗って髪を整えて、出来上がったトーストを朝食にする。母親がいない日はそうしてきた。前もって解っていれば、歩夢の家で一緒に朝食を食べさせてもらうこともあったが、基本的にはこうして過ごすことが多い。

 

ほとんどいつも通りの朝。

 

今日は同好会の練習は休みだから、残っている夏休みの宿題を終わらせてしまおう。

 

そう思って机に向かうのだが、鼓膜に張り付いて剥がれないのが昨夜聞いた、少年の父親を呼ぶ声。

 

もしもあの時もう少し早く気が付くことができれば、攫われる前に助けることができたかもしれない。

 

一人でいるとそんなことばかり考えてしまい、シャーペンを持つ手も止まりがちになってしまう。

 

どうしても集中できず、一人での外出はなるべく避けるように言われているもののふらっと外に出た。

 

 

 

 

 

 

「ごめんね菜生ちゃん。おつかいにつき合わせちゃって」

 

「いいよいいよ!私もちょっと外に出たいところだったからさ」

 

玄関を出てすぐ、歩夢と会った菜生は彼女がおつかいで外に出るところだというので付いていくことにしたのだ。

 

「最近物騒だし、ボディーガードでもなんでもしたげるよ」

 

ここ数日の失踪事件にのせいか街を歩く人はそう多くはないが、それでも仕事で行き来する人や車の通りは普段通りといってもいいくらいには多い。

 

それにここ数か月の市街地での怪獣の出現数は、過去の事例から考えても異常なのだ。

 

元々、怪獣が街中に出現すること自体が本来少ないこともあって怪獣保護という考えも認められてきた。街中で頻繁に暴れるようなら駆除する事も仕方のないことだ。

 

「この前はありがとう」

 

「ん?どしたの急に?」

 

「私たちが宇宙人に連れ去られたときに、ウルトラマンコスモスが助けてくれたよね。帰ってこれたときに、すぐ菜生ちゃんが駆け寄ってきてくれて嬉しかったの」

 

先日のレイビーク星人の件だった。

 

コスモスと共にスコーピスを倒して地球に戻った時、菜生はみんなが無事か気が気でなかった。変身を解いて宇宙船に向かうと、みんなの無事を確認して思わず泣いてしまうほどに。

 

「だって、不安だったんだもん。コスモスは、宇宙船ごとみんなを連れて帰ってくれたけど中で何があったかとか、あの時はわかんなかったし」

 

地球に戻った時に謎の存在に聞かされた、スコーピスを仕向けた【サンドロス】という黒幕の存在。

 

しかも後から発覚したことだったが、レイビーク星人とサンドロスは無関係。偶々襲われただけだったのだ。

 

カオスヘッダー以外にも宇宙から来る脅威に備えて、歩夢や同好会のみんなを守るため。脅威に晒されないようにするために、強くなりたい。

 

「でも、本当に嬉しかったの。『あぁ、帰ってこれたんだ』って」

 

「うん…良かった。本当に良かった」

 

あの日の話をすると、どうしても考えてしまう「もっと早く助けられなかったのか?」そんな考えが浮かんでしまう。昨日だって、もっと早く気が付くことができればー

 

「ねぇ、菜生ちゃんあそこ」

 

「え?」

 

不意に歩夢が指を指した方へ向くと、5歳くらいだろうか?幼い男の子が夏の炎天下の中フラフラになりながら歩いているのが視界に入る。

 

「キミ大丈夫?」

 

慌てて少年に駆け寄ると、近くの木陰に連れて行って休ませる。

 

「これ飲んで」

 

「ありがとうおねーちゃん」

 

「キミ一人?お父さんかお母さんと一緒じゃないの?」

 

菜生は自販機でスポーツドリンクを買ってくると男の子に飲むように促す。

 

見たところ熱中症にはなっていない。ただ疲れているだけのようだった。落ち着いたところに、歩夢が保護者は一緒にいないのかと聞くと少年は首を横に振る。

 

「パパね、わんがんまちのさんばんそうこにいるの」

 

「そこに行きたいんだね?わかった!一緒に行こう!!」

 

男の子は湾岸町の三番倉庫といった。おそらく港で働いている人なのだろう。このまま一人で歩かせるのは危ないと思い、菜生はそう提案する。

 

「ごめん歩夢、でもほっとけないし。いいかな?」

 

「うん、私もいっしょに行く」

 

歩夢も菜生と同じ気持ちだった。かくして予定こそ変わってしまったが、この男の子―正太(しょうた)を引き連れて湾岸町に向かうのだった。

 

バスを使い、男の子の言う倉庫の前まできた三人だったが。人気がなく、静かだった。

 

「菜生ちゃんここ…」

 

「ここ!パパ~!!」

 

「あっ!正太くん待って!!歩夢、私が連れ戻しに行くから通報お願い!」

 

「菜生ちゃん待って!」

 

「私は大丈夫!すぐ連れて戻るから、ここにいて!いいね!!」

 

倉庫の中に駆け込む正太を追う菜生を、歩夢は引き止めたかった。

 

しかし菜生は、そんな幼馴染の声を聞かずに倉庫の中へと走っていくのだった。

 

「菜生ちゃん、なんで…?」

 

歩夢は菜生の背中を泣きそうな目で見送ると、スマホで通報するのだった。

 

すると電話の相手は歩夢にそこにいるように伝える。

 

すぐに警察やSRCが来てくれる、何も起きないはずだ。

 

歩夢はそう自分に言い聞かせるしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「正太くん!どこ!?」

 

倉庫の中で正太を探す菜生の声は、暗がりに消えてしまう。何かの拍子に小さい正太がケガをしてしまってはいけない。早く見つけないとと焦る菜生だったが、倉庫の中を進んでいくと奥から人のうめき声のようなものが聞こえる。

 

声の方へと向かっていくと、薄暗い倉庫の中でパソコンのモニターの光を見つける。

 

そのすぐ近くに、こちらに背を向けて佇む人影が見えた。

 

「正太君のお父さんですか…?」

 

その人影に声をかけると、それはゆっくりとこちらを振り向いた。

 

「…ッ!お前は、カオスヘッダー!?」

 

外見は30代半ばくらいであろうか?成人男性に見えるが、その顔は普通ではなかった。

 

目元と頬に赤と青の隈取のようなラインが入っていて、目は赤く光っている。

 

目が赤くなるのは、今まで戦ったカオスヘッダーに取りつかれた怪獣に見られたものと一致していた。

 

「カオス…ヘッダー…?それは我々の名か?」

 

地の底から響いてくるような不気味な声で、菜生が口に出したカオスヘッダーという名前を反芻する。

 

この名前は、人間が光のウイルスに付けた名前だ。向こうがそう名乗ったわけではない。

 

「なんで人間に憑りついた?その人を開放して!」

 

「人の感情は、面白い…!」

 

菜生の言葉にカオスヘッダーは不気味にほほ笑むと、その目を光らせる。

 

(何かくる!)

 

咄嗟に身の危険を察知した菜生は右に跳躍した。

 

その直後、菜生が今さっきまでたっていた場所の後ろにあった柱に光線が命中。コンクリートの柱が焦げていた。

 

(コスモプラックを…コスモスに変身しなきゃ…!)

 

菜生は懐のコスモプラックに手を伸ばす。その時にはもう、光線の第二射の構えに入っていた。

 

「パパ~」

 

「正太くん来ちゃダメ!逃げてッ!!」

 

そんな最悪のタイミングで、父親を探して先に倉庫に入っていた正太が入ってくる。

 

正太の姿が目に入ったカオスヘッダーから目の光が消え、その表情は驚きの色に染まる。

 

「ボク、助けに来たんだよ?」

 

そう言ってカオスヘッダーに憑りつかれた父親へと駆け寄ろうとする正太に、カオスヘッダーは腕から念動弾を放つ。

 

「キャッ⁉」

 

咄嗟に間に入った菜生だったが、まともにそれを食らってしまい後方へと吹き飛ばされて背中から勢いよく柱に激突すると地面に伏してしまう。

 

「やめてパパ!」

 

正太は、攻撃してきた父親に抱き着くと菜生に追撃するのをやめさせようとする。

 

「グ…グォォオオ……」

 

すると、カオスヘッダーは苦しみ始めた。

 

憑りつかれた父親が、正太を助けようと懸命に抵抗しているのだ。

 

「しょう…た」

 

「パパ!」

 

正太が自分を呼ぶ父親の声にこたえると、父親の体から虹色の光が離れていき、カオスヘッダーが分離した。

 

カオスヘッダーは虹色の光の中で悪魔のような邪悪な顔を浮かび上がらせながら苦しむ声を上げ、倉庫の外へと逃げ出した。

 

カオスヘッダーは逃げ出す前に激しく光ると、親子を気絶させて倉庫の外で巨大な人型を形作る。

 

その巨体は、ウルトラマンコスモスよりも頭一つ以上大きく。黒い巨体に三日月のような突起が頭と上半身にある左右非対称で、胸にはオレンジ色の発光体を持つ禍々しい姿。

 

カオスヘッダー・イブリース

 

ついにカオスヘッダーは怪獣の体をコピーせずに実体化できるようになってしまったのだ…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

菜生と正太が入っていった倉庫から出てきた光の中から現れたカオスヘッダー・イブリースは、港を破壊し始めた。

 

「菜生ちゃん!」

 

それを見た歩夢はいてもたってもいられなくなり、倉庫の方へと駆け込もうとする。

 

すると、イブリースは歩夢を見つけ目から破壊光線を放とうとする。

 

「シュア!!」

 

そこにウルトラマンコスモスが割って入り、イブリースにとびかかると倉庫から引き離す。

 

青い巨人と黒い魔人の戦いの火ぶたが切って落とされた。

 

「歩夢ちゃん、大丈夫?」

 

「私は大丈夫です。でも中に正太くんと菜生ちゃんが…」

 

「解ったわ。ここは私達で対応するから、歩夢ちゃんは外へ」

 

ここでようやく駆けつけたしのぶが、歩夢に避難するよう指示。

 

歩夢はSRCの隊員に促されるままに倉庫から離れていく。

 

コスモスはカオスヘッダー・イブリースの攻撃を躱し、回避できないものは腕で防ぎつつ掌底での突きや蹴りでダメージを与えつつ。未知の存在である実体化したカオスヘッダーを相手にルナモードのまま格闘戦を続けていた。

 

しかしカオスヘッダー・イブリースの力は凄まじく、我武者羅に振り下ろされた腕を防ぎきれずに受けてしまうと態勢を崩してしまう。

 

一度態勢を崩してしまうと、立て直すことは難しく防戦一方となってしまう。

 

拳の一発を腕を掴むことで一度は防ぐことに成功するが、イブリースは掴まれた腕を力ずくで振り回してコスモスを放り投げてしまう。

 

背中から受け身も取れずに勢いよく地面に叩きつけられたコスモスは、膝をつき何とか立ち上がろうとする。

 

そんなコスモスの胸に、イブリースは手を押し付けその禍々しい爪をコスモスの体に突き立てた。

 

「ぐぁあああっ⁉」

 

爪を突き立てられたところから、まるで出血のように光が飛び散る。

 

そして、カオスヘッダー・イブリースはその光を吸収し始めた。まるでウルトラマンコスモスの力を奪い取ろうとするかのように。

 

やがて光の放出が収まると、コスモスの体から力が抜ける。

 

するともう用はないと言わんばかりにコスモスを放り投げ、地に倒れ伏す巨人を見て勝ち誇ったかのように悪魔は嗤う。




次回 「混沌を乗り越える力は」
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