お待たせいたしました。
これからは最低月一くらいは更新していきたいなと思っています。
ウルトラマンコスモスの体に爪を立て、コスモスの体から放出された光を吸収したカオスヘッダー・イブリースは地に伏すコスモスを嘲笑う。
「ぐっ…」
よろけながらもなんとか立ち上がろうとするコスモスに対して、イブリースは目から光弾を連射。コスモスの全身を襲う。
爆炎に飲まれ、コスモスの全身が見えなくなるまで撃ち込まれた光弾だったが。コスモスを倒すには及ばない。
「ハァッ!」
煙が晴れると、立ち上がったコスモスは右拳を天に突き上げて赤き太陽の光を宿す。
(負けない…!わたしは絶対に負けられないんだ!!)
「ヤァアアアアアアアアッ!!」
全身を赤い光が包み込み、コスモスは青いルナモードから赤いコロナモードへとその姿を変える。
目の前の相手はほかの生物は何も取り込んでいない、カオスヘッダーそのもの。更にルナモードでの戦闘によって純粋な腕力は脅威だが、コロナモードの力なら応戦できる。手加減は必要なく倒してしまっていい。
そう判断し、コスモスは大地を蹴って駆けだすとイブリースと苛烈な格闘戦を開始する。
「ウリャッ!デヤァアアアアア!!」
ルナモードの時とは打って変わり攻勢にでると、激しい拳の連打で相手が態勢を崩したとみるや腹部に強烈な蹴りを食らわせてから追い打ちとばかりに投げ飛ばす。
このまま一方的な攻撃が続くかと思われたが、イブリースは立ち上がると目から破壊光弾を連射。
だがコスモスは全て手で叩き落とし、カウンター気味に緑の矢尻形エネルギー弾【ハンドドラフト】を連射。
格闘戦では一方的と言っていいほどコスモスが押していた。その勢いのまま、戦いを優位に進めていくと思われた。
しかし、カオスヘッダー・イブリースは先ほどまで一度も見せていなかった能力を発揮した!
念動力によるバリア【クローキーバリア】を展開。ハンドドラフトを全弾受け止めてみせた。
(だったら…!)
クローキーバリアを展開したままのイブリースを見て、コスモスは飛び上がると上空からソーラーブレイブキックを放つ。
だが、バリアの前にはソーラーブレイブキックすらも意味をなさず。勢いを完全に殺されてしまうどころか、念動力の渦に巻き込まれ身動きを封じられてしまう。
一方で、正太とその父親はSRCによって倉庫の中から救出されていた。
「リーダー、正太くんとその父親を救出しました。しかし…」
「どうしたの?」
「娘さんが…菜生ちゃんが見つからないんです」
「そんな…」
隊員の一人が、しのぶに報告する。正太とその父親の救助に成功したこと、菜生が見つからないこと。
しかしすぐ近くではウルトラマンとカオスヘッダーが戦っていて、しかもウルトラマンが押され始めてきた。このまま救助を続ければ他の隊員にも危険が及ぶ。しのぶは決断した。
「救助は打ち切る。全員ここから退避!救助隊は正太くんとお父さんを病院へ!!」
その号令によって、全員動き出す。
倉庫のはずれに先に避難させられていた歩夢と、歩夢の護衛についていた隊員とも合流する。
「菜生ちゃんは…?」
しのぶは震える声でそう聞く歩夢に対して首を横に振る。
「そんな…」
菜生が見つからない。そう知らされて、頭の中が真っ白になった。
当の菜生は今コスモスに変身して戦っているのだが、誰もそのことは知らない。
促されれるままに車に乗り、この場を離れようとした。その時、大きな地響きが発生して全員立っていることも難しくなりよろけてしまう。
「何が…?」
地響きがした方向を振り向くと、地面に叩きつけられるコスモスの姿があった。
「ぐっ…」
カオスヘッダー・イブリースの手から放たれた。先ほど倉庫で菜生に向かって放ったものの強化版とでも言うべき超強力波動【クローキームーブ】によって、コスモスの体は大きく吹き飛ばされて地面に叩きつけられた。その余波で先の大きな地響きが発生したのだ。
―ピコン―ピコン――
コスモスのカラータイマーが青色の発光から、活動限界が迫っていることを知らせる赤い明滅へと変わる。
ウルトラマンコスモスはエネルギーをを地球上では急激に消耗する。維持できる時間はその時々の状況にも左右されるがおおよそ三分間しかない。
実体化したカオスヘッダーを前に、窮地に立たされている。
そこに追い打ちをかけるかのように、イブリースは更に目から破壊光弾を連射。すでにダメージの蓄積しているコスモスには、先ほどのように叩き落すほどの余裕はなく。まともに攻撃を食らってしまう。
更にグローキームーブによる攻撃が行われ、コスモスにはもう立ち上がる力も残っていなかった。
(立たなきゃ…立たなきゃ!)
コスモスと一体化している菜生もコスモス同様にダメージを負い焦っていた。
「ウルトラマンがやられる⁉」
「救護チームは早く移動を」
まだ戦闘している場所から離れきれていないSRCの隊員たちに緊張が走る。
(私たちが立たないと、誰が皆を守るんだよ!)
土を握りしめ、コスモスは何とか立ち上がろうとする。
しかし、そんなコスモスにとどめの一撃を放つべく、カオスヘッダー・イブリースは力を溜めて特大のグローキームーブを放とうとしていた。
そんな時だった。
「パパ!パパ!!」
目が覚めた正太が、まだ気を失っている父親の体をゆすり起こそうとしていた。
「しょう…た?」
「パパ?」
それによって目が覚めた父親も起き上がると、我が子を力いっぱい抱きしめる。
「パパ、苦しいよ~」
そう言う正太の表情も言葉とは裏腹にとても嬉しそうだった。
カオスヘッダーによって一度引き裂かれた親子が、やっと再会できたのだ。
菜生にとっては突然の出来事だった。
目の前で自分にとどめを刺そうとしていた相手が突然苦しみだしたのだ。
胸のオレンジ色の結晶体が突然膨れ上がると爆発を起こして、カオスヘッダーイブリースは動きを止める。
その視線の先には、親子がいた。
「会いたかったぞ…正太!!」
そんな父親の嬉しそうな姿を見た次の瞬間、カオスヘッダーイブリースは正太達親子やSRCの隊員。しのぶに歩夢がいる場所めがけて、クローキームーブを放とうとする。
しかし、手に集めた念動力は消滅。カオスヘッダー・イブリースは再び苦しみ始めると体が不安定になり、その巨体を維持できなくなる。
「何が、何が起こってるの?」
しのぶ達の視線の先で、突然苦しみ始めるカオスヘッダーに戸惑いが隠せなかった。
だが、次の瞬間。
最後の力を振り絞って立ち上がった、ウルトラマンコスモスが残されたエネルギー全てを乗せて放ったネイバスター光線によって、実体カオスヘッダーは粉微塵に吹き飛ばされた。
コスモスはその場に膝を付くと、縮小するようにしてその姿を消し。菜生の姿に戻った。
「はぁ…はぁ…」
菜生は汗だくでその場にへたり込むと、暫く動くことができなくなり。程なくして救助されるのだった。
「全く、なんでそんな無茶ばかりするの?」
「ごめんなさい」
「歩夢ちゃんにも謝っとくのよ。歩夢ちゃん、あなたが見つかった時泣いてたんだから」
翌日目が覚めた菜生は、SRCのメディカルセンターの病室でしのぶに注意を受けていた。
正太やその父親の証言で、菜生のしたことの危険性を注意されることになってしまったが。親子からは感謝された。
菜生が居なかったら、今頃どうなっていたかわからないと。
「今回もウルトラマンのお陰で無事だったけど、死んでたかもしれなのよ?」
「…」
「まぁ無事で安心したわ。菜生は夏休みが終わるまではここでケガを治しなさい」
そう言ってしのぶは病室を後にした。
「あの時、カオスヘッダーの体が急に不安定になった」
『あれがなければ、私達は負けていた』
「そう…だね。あのままじゃ危なかった…」
ベッドに腰かけたまま、菜生はコスモプラックを通じてコスモスと昨日の戦いについて話す。
もしも、あのまま戦闘を続けていたら間違いなく負けていた。
それはコスモスも菜生も共通して認識だった。実体化したカオスヘッダーの力は凄まじい。今まで怪獣に憑りついて暴れていた時とは訳が違った。
その時、病室のドアをノックする音が聞こえた。
「どうぞ~」
ドアの方にそう声をかけて、コスモプラックを布団の中に隠す。入ってきたのは歩夢だった。
「こんにちは~」
「歩夢!」
「菜生ちゃん、大丈夫?」
「うん!もう元気だよ、でも夏休み中はここにいろって言われちゃった」
「良かった。菜生ちゃんが見つかった時、すごい顔色悪かったから…」
「ごめん、また心配かけちゃったね…」
元気そうな菜生の顔を見て、安堵の表情を浮かべる歩夢を見て。菜生はそう謝った。
―また、守れなくなるところだった。
レイビーク星人の時も、バルタンラッヘの時も。菜生の力だけで歩夢を守ることは不可能だった。
膝の上に置いていた手が、シーツを握りしめる。
「大丈夫だよ」
その手を、歩夢はそっと握る。
「え?」
「だって、菜生ちゃんがあそこで動いてくれたから、正太くんとお父さんも助かったんだから」
あの時、菜生が正太を追いかけて倉庫に入ったから正太と父親は助かった。菜生が歩夢に通報するように言ったから、SRCが早く助けにこれた。
だからみんな助かったんだと。歩夢は菜生を励ました。
「行こう?正太くん達お家に帰るんだって、お見送りしよう」
「わかった!」
歩夢と菜生は病室から出ると、丁度正太たちの家族がタクシーで帰るところだった。
「お世話になりました」
「本当にありがとうございました!」
正太の父親と、その隣にいる女性は母親だろう。菜生と歩夢の姿に気が付くとそう頭を下げる。
「いえ、わたしはなにも」
「気を付けて帰ってください」
そう菜生と歩夢が返すと、タクシーに乗り込もうとしていた正太も二人に気が付く。
「あっ!なおおねーちゃん!あゆむおねーちゃん!」
「正太くん、お父さん無事でよかったね」
「うん、ばいば~い!」
「バイバイ!!」
お互いに手を振ってお別れとなった。
家族がタクシーに乗り、走り出した後も菜生と歩夢はそのタクシーが見えなくなるまで手を振り続けた。
「そうだ、サラちゃんにも教えてあげないと!」
「サラちゃん?」
タクシーが見えなくなった後、父親が連れ去られた現場の近くに菜生と一緒に居合わせたサラはまだこのことを知らないはず。
菜生は正太達親子が再会し、無事に帰ったことをメッセージアプリでサラに伝えるのだった。
返事は『そうか、良かった。本当に』と短いものだったが、サラの性格からするとそれでも心配していたであろうことが分かった。
「いい家族だったね」
「あの時ね?」
病室に戻る途中、歩夢がそう切り出した。
「正太くんとお父さんの目が覚めた時、二人とも再会できたことをすごく喜んでたんだ」
思いだすのは昨日のこと、カオスヘッダーから解放されて救助された後の事だった。
「その時にね、カオスヘッダーの体がおかしくなったの」
「そう…なんだ」
「きっと、正太くんとお父さんの気持ちがカオスヘッダーを倒したんじゃないかって思うの。家族の優しさ…っていうのかな?」
カオスヘッダーが人間に憑りついたときに得た感情は、憎しみや怒りといったマイナスなものが多かったのだろう。正太の父親より先に攫われ、発見された人々は口をそろえて具体的には何も覚えていないが、恐怖を感じたと言っていた。
何より、戦った時にカオスヘッダーから向けられたものは憎しみや怒りだった。
「家族の優しさ…か」
「だから、菜生ちゃんもお母さんを心配させちゃダメなんだからね?」
「それは…反省してます……」
痛いところを付かれて菜生は顔をそらす。
「早くケガ治して、また学校行こうね」
「うんっ!」
この夏休み、色んな出会いと別れがあった。
怪獣の騒ぎで予定より少し長くなった夏休みも、もうすぐ終わる。
スクールアイドルフェスティバルが中止になってしまったのは残念だけれど、今回の事件が解決したことでまた平和な日常が戻ってくるはず。
そうなれば、きっとまたスクールアイドルの活躍できる舞台があるはず。
この時の菜生は、そう思っていた。
『ウルトラマンコスモス…!オ前ガ、憎イ!!』
宇宙の何処かで、その名を唸るように呟く何かがいた。
―まだ菜生とコスモスの戦いに、終わりは来ない。
おねショタ?そこになかったらないですね。
というわけでカオスヘッダー・イブリース戦終了です。
あと、やたら長かった夏休みも終わりました。
ざっと計算してみたら、三日に一回くらいのペースで菜生は戦ってたことになるみたいですw