更新してなかった期間中、虹ちゃんの話の方をスクスタに寄せたまま行くか、アニメに寄せていくかずっと悩んでました。
悩んでたらスクスタ終わっちゃった…ってことでアニメに寄せる方向で軌道修正。
でもなんかしっくりこない。
みたいな感じで悩みながら書いていますが、このままペースは維持していきたい所存でございます。
誰もいない、山奥の無人地帯で激しい地響きがしていた。
「ハァアアアッ!!」
「デリャア!!」
激突する二人の巨人。
一人は青い体を持ち、もう一人は赤い体をした巨人同士が激しい攻防を続ける。
赤い方が鋭い拳を放つと。青い方がそれをいなし、なんとか回避する。蹴りも腕で弾き、体制が崩れそうになりつつもなんとか持ちこたえて距離をとる。
再び突撃してくる赤い巨人の拳の連打を、青い巨人は的確に捌いていき隙を見て首元に手刀を撃ち込むがすんでのところで避けられる。
赤い巨人が一方的に攻めているように見えるが、青い巨人は負けじとその攻めを的確に捌いていきどちらも決め手に欠ける。
すると痺れを切らしたのか、赤い巨人は胸の前にエネルギーを収束させるとそれを押し出すように照射した。
青い巨人は金色のバリアを展開してそれを防ぐ。
「ウォォオオオッ!!」
「イヤァアァアッ!!」
赤い方は光線を放ちながら、青い方はそれをバリアで防ぎながら駆け出し両者が零距離まで接近すると、ぶつかり合ったエネルギーが激しくスパークして周囲を巻き込む大爆発が起こった―
「うわっ!」
菜生はベッドから跳ね起きた。うなされていたのか息は上がっており、全身が汗だくでシャツが張り付く不快感もする。
「ゆ、夢か…」
先の巨人の戦いは、菜生の見た夢だった。
ルナモードとコロナモードのコスモスが、優しさと力をぶつけ合っているようだった。まるで、どちらか片方が正しいとでも言いたげに。
昨日、菜生はエリガルを救えなかった。そのあとどうやって家に帰ったのか覚えていない。
誰もいない家で、風呂を済ませ味のしない夕飯を胃に流し込んで眠ったのは覚えている。
スマホの時計を見ると深夜の三時。まだ起きる時間ではないのだが、もうひと眠りする気にもなれない。
よく見ると、同好会のグループチャットの通知が大量に溜まっていた。古いものを見ると、エリガルが暴れていたころの時間で菜生と璃奈を心配するものだった。
そして画面をスクロールしていくと、璃奈がうまく誤魔化してくれていたことがわかる。
「璃奈ちゃんには明日、お礼言わないとな」
こんな時間にメッセージを送ったら迷惑になるだろう。そう思いメッセージを打とうと動きかけた指を止め、スマホを充電器につないで机の上に置くと菜生はベランダに出た。
夏休みが終わったが、まだまだ暑い日々が続いているもののこの時間帯は涼しかった。
「私は、皆を守りたかったはずなのにな…」
星を見ながら呟いた言葉は、暗闇に消えていった。
「菜生ちゃんおはよう」
「おはよ!」
朝になって、菜生はいつも通り歩夢と学校へ向かうバスを待っていた。
「昨日は大丈夫だったの?メッセージもなかったし…」
「ごめん、熱中症気味ですぐ寝ちゃったんだ」
「体調悪いならお休みした方がいいんじゃない?」
「心配させてごめん、もう大丈夫だから!」
そういって軽く飛び跳ねてアピールしてみせると、歩夢は「無理しないでね?」とだけ返すとすぐに別の話題が始まる。
「実はね、昨日の夜同好会のみんなと相談したんだけど―」
「え?」
「もうすぐオープンキャンパスがあるでしょ?だから、そこでライブできないかなって」
「そっか、すっかり忘れてた!そうだね、やろうよ!!」
夏休みにあるはずだったスクールアイドルフェスティバルができなくなってしまって、次の目標をどうしようかとライブイベントは探していたのだが、オープンキャンパスの存在はすっかり忘れてしまっていた。
「ただ―」
「ただ?」
「部活が多いから、全員がライブできるかはわからないんだよね」
虹ヶ咲は部活や同好会の数がとても多い。だから、9人全員がソロライブをやる時間を確保させてもらえる可能性はあまり高くないのだ。
今度生徒会や、オープンキャンパスの実行委員で会議をするとのことなのでそこで大まかなスケジュールが決まるらしい。
「じゃあ部活紹介もかねて、夏休みに出たライブの映像があるからそれを使ってメドレー風のPVとか作っても面白いかもね」
歩夢の話を聞いて、ふと思いついたことも提案してみる。放課後、同好会のみんなとその件についても話した方がいいだろう。
でも折角なら、スクールアイドルフェスティバル用に準備していた曲もあるのでそれをお披露目できるのが好ましいのだが。
「まぁ、放課後みんなで話してみよーよ!じゃあまた後で!」
「うん、後でね」
学校に着くと、科が違うのでそう言って歩夢と別れると菜生は自分のクラスに向かう。
昨日あんな事があったのに、それでもいつも通り世界は回っていく。
教室に着くと、クラスメイト達からも「昨日は大丈夫だった?」といった心配する言葉を多くかけられた。「心配させてごめんね」と返すが、周囲に心配をかけてしまったことへの罪悪感は大きかった。
「でもよかった~。だってウルトラマンが怪獣をやっつけてくれたもん」
「え?」
「だってそうじゃん。あの怪獣、毒ガス吐いてたんでしょ?そんなのがこの辺うろついてたら安心して生活できないよ」
「そう…だね…」
あるクラスメイトのその発言に、菜生はなんとかそう返す。
目の前の菜生がウルトラマンで、エリガルを救おうとしていたことを知らないのだ。だから仕方がないと思い、なんとか同意の言葉をひねりだした。
その日の授業はなんとなく上の空になってしまっていることが多かった。
やがて放課後になり、生徒会に行っている奈々以外の全員が揃っていた。
「昨日は連絡取れなくてごめんなさい。今日は、昨日皆が話し合っていたオープンキャンパスについて相談があります。
そう菜生が切り出して、オープンキャンパスで自分たちが何をするかという議題で話し合いが始まる。
「私としてはライブができるのが一番ベストだと思うんだけど、この学園って同好会と部活を合わせたら一体いくつあるのかわからないレベルで多いです。なので、夏休みに行ったライブの映像があるのでそれを用いて同好会の宣伝のプロモーションビデオとか作れるといいかなぁって思ってます」
まだライブができないと決まったわけではないが、先んじて動いておかないと時間が足りない。
そう思い今回はこういう提案をさせてもらった。
「とりあえず。皆にはライブが出来る前提で今のところ動いて欲しいんだけど…どうかな?動画はこっちで準備するから」
この夏休み、ライブは一回しかできなかった。まだまだライブの実績が欲しい。
「菜生さん、動画編集したことあるの?」
「あ…いやそのぉ…これから勉強しようかなって…」
璃奈に動画編集の経験があるのか問われたが、残念ながら菜生にそんな経験はない。皆には練習に集中してほしかったから自分でやる前提で話していたが、すぐボロが出てしまう。
「私、動画編集できるよ」
顔を赤くして暫くきょろきょろと視線を動かしていた菜生だったが、やがて観念したかのように小声でこう呟く。
「すいません、天王寺先生助けてください…」
観念したらしい。
皆が外で練習している間、菜生と璃奈は部室で同好会のビデオ作製に取り掛かっていた。
「璃奈ちゃん、昨日はありがとうね」
「私の方こそ。菜生さんのお陰で助かったから」
作業中、部室から他の人の気配がしなくなってから菜生はそう切り出した。
「菜生さん、菜生さんっていつからウルトラマンだったの?」
「私がコスモスと一体化してるのは、夏休みのちょっと前から。」
そう説明すると、菜生の隣に座っていた璃奈は納得した様子だった。
「あとさ――」
「大丈夫。誰にも言わない」
「ありがとう」
菜生がコスモスだということを誰にも言わないで欲しい。そう頼もうとしたが、璃奈は菜生が言いたいことはわかっていた。そして、それ以上この話題について言及することもなく作業を続けていく。
菜生も動画編集は未経験だったが、菜生も宇宙飛行士を目指している身である為機械にはそれなりに強い。
パソコンも普段の授業で使用する為、操作そのものは問題なくできるため作業自体は順調に進んでいく。
「こんにちわ~…」
動画の編集作業をしていると、不意に部室のドアが開いて学校の生徒ではない白いワンピースを着た少女が入ってきた。
「あれ?彩月ちゃん?」
『ナオ!久しぶりだね!』
菜生に彩月と呼ばれた長く青い髪の少女は、両腕でロボットを抱えていた。そのロボットは菜生に久しぶりと声をかける。
その少女、
「それにゴンまで!久しぶりだね!どうしたのこんなとこで?」
「お姉ちゃんを迎えに来たんだけど、菜生さんに会いたいってゴンちゃんが…」
「そっか。元気になった?」
「うん、来週から学校に行けるって」
「良かった!」
そんなやり取りを続けていたが、菜生ははっと後ろを振り返る。
「璃奈ちゃん、この子は彩月ちゃん。美月ちゃんの妹でこのロボットが、クレバーゴン!この前話したロボットだね」
「はじめまして」
「ライブ見ました!可愛かったです!」
「あ…ありがとう」
璃奈に彩月とゴンを紹介する菜生だったが、璃奈を見た途端彩月の眼の色が変わった。どうやらこの前のライブの映像を観たらしいのだ。
後から話を聞くと、この時は初めて生で見たスクールアイドルに舞い上がっていたらしい。
「彩月ここにいた。ダメだろ他の部室に入ったら」
「ごめんなさい…」
暫く彩月と話していると、美月が部室に入ってきた。彩月が迎えに来ていると聞いて、探していたらしい。
「彩月ちゃん、退院したんだね」
「うん、菜生のお陰だよ。ゴンもずっと彩月に付いててくれて話し相手になってくれたから、やっと外に出れるまで回復したんだ」
彩月は元々体が弱く、入退院を繰り返していた。そういった事情から、塞ぎ込んでしまっていたのを知った菜生が友達として彩月にクレバーゴンをあげたのだ。
「まぁ親父が言うには、まだ運動はダメなんだけどな」
「そっか、お父さんがお医者さんなんだっけ?」
「まぁ腕は確かな医者だと思うんだけど…な……」
「うん?」
何やら含みのある言い方だったが、菜生は二人の父親に会った事がないのでキョトンとしていた。
「次ライブあるときは、今度は会場に見に行きたいです!」
「うん、待ってる」
「じゃあ帰るか~」
「うん!菜生さん璃奈さん、さよなら~!」
美月の手にひかれて、彩月とゴンも帰っていく。
(次のライブ…か)
他の部活も新人戦の開催が危ぶまれていたりと、まだまだ不安は多い。次のライブといってもいつになるかわからない。
暫く動画編集を続けた後、「今日はこのくらいにしておこうか」と菜生が言い。他のみんなも部室に戻ってきたことで解散になった。
「ただいま~…」
家に帰ると、やっぱり母親の姿はなかった。昨日のエリガルの件でまだまだ街は騒ぎになっていた。
学校は昨日の時点で毒ガスの影響を受けていない事が確認されていたから、今日は学校があったがまだまだ街には入れない場所もあるらしい。
テレビを付ければ、エリガルとカオスヘッダーの話題で持ちきりだった。菜生はそのニュースを見る気にはなれずにすぐにテレビをきる。
結局すぐに部屋に入ってパソコンを付けると、持って帰ってきたUSBメモリの中に入っている動画データを使ってビデオ制作の続きを始める。
教えてもらったことを試しながら作業に没頭していると、インターホンが鳴る。
こんな時間に誰だろう?そう思いながら玄関から外に出ると、来客は歩夢だった。
「菜生ちゃんご飯食べた?お母さんが持って行ってって」
「わぁ~ありがとう!」
菜生の母親が帰って居ない事を知っていた歩夢の母親が、タッパーに入れた夕飯を歩夢が持ってきてくれたのだった。
「菜生ちゃん、ちょっといい?」
「いいけど…部屋で話そうか」
そう言って菜生は歩夢を自室に招き入れる。
「いつぶりだっけ、私の部屋に入るの?」
「一か月ぶりじゃない?」
「そうだっけ?もっと前かと思った」
そんなやり取りをしながら自室のドアを開けて電気をつける。机の上には、動画編集中のノートパソコンの画面が煌々と光っていた。
「帰ってからずっとやってたの?」
「まぁ…せっかく教えてもらったから忘れないうちにものにしたくてさ」
「昨日も体調悪かったんでしょ?休まないと…」
「今は何かに没頭したくて…ごめん」
心配そうにこちらを見つめる歩夢を直視できずに、菜生は目を背けてしまう。
「菜生ちゃん、夏休みに入ったあたりからずっと謝ってばっか…」
「へ?それは―」
「謝ってばかりで何も教えてくれないし、その腕だってケガの痕残っちゃって…」
歩夢の視線の先にあった菜生の腕の傷痕は、歩夢に乗り移ったバルタン星人の子供に鎖で縛られた時に菜生が無理やり腕を動かしたときにできたものだった。
手首には傷痕が残ってしまい、医者には完全には消えないと言われていたが菜生は誰にも言わなかった。
「菜生ちゃん、私に何か隠してるでしょ?あの日からずっと」
「そんなこと、ないよ?」
言えるわけがない。菜生には全てを歩夢に打ち明けることなんてできなかった。
「私ってそんなに頼りない?」
「そんなことないよ!」
有耶無耶にして誤魔化そうとしているように感じられて、段々声が大きくなっていく。
「じゃあなんで教えてくれないの?なんで自分の事はそんなに隠したがるの?」
「ごめん。でも今は…今は言えないんだ!腕の事も、歩夢は悪くないんだ!!だから―」
「ウルトラマンコスモスが関係しているの?」
「―ッ!!」
このままだと喧嘩になる。そんな勢いで言い合っていた二人だったが、歩夢の一言で菜生は自分の息が詰まり冷汗が噴き出すのを感じた。
「あの時の事、実は少しだけ覚えてるの。私に乗り移ったあの子が、菜生ちゃんの事をウルトラマンって呼んでたの」
「え?」
「本当は何があったの?なんで菜生ちゃんはケガしなきゃいけなかったの?」
もう誤魔化せない。どうしよう?そんな感情で頭がいっぱいになった菜生は、口は開いていても声が出せずに口の中は乾いていくのを感じた。
なんて言おうと必死に考えていたが、急に両肩に何かが当たる感覚がしたと思ったら視界が回る。背中から布団に倒れた事だけは理解できた。
そして目の前には歩夢の顔。
「お願い、ちゃんと私を見てよ…」
歩夢に押されて布団の上に組み伏されてしまった。そこで、歩夢が泣いていたことに初めて気が付く。
もう全部言ってしまおう。歩夢が全てを知ってどう思うかより、早く全部言ってしまって楽になりたい。
「私ね―」
口を開きかけた時に、歩夢のスマホの着信音が鳴る。その音ではっとしたように歩夢は菜生のそばを離れた。
「…ごめん、帰るね」
そう言って菜生の部屋を出て、歩夢は帰っていった。
普段の菜生だったら呼び止めただろう。
でも、この日の菜生は違った。
(あぁ、言わないで済んだ…)
気が付いたらほっとしてしまった自分が、そのまま大切な幼馴染の背中を見送ってしまっていた。
遠くで玄関が閉まる音が聞こえた。
「ボクって、最低だ…」
無意識に幼少期の一人称が出てしまった事にも気が付かない。
そのまま暫く、パソコンも室内灯も光りっぱなしの部屋で、菜生は右腕を顔の前において光を遮り、そのままベッドの上で横になっていた。
そして菜生のには倒れた拍子に落としてしまったのか、コスモプラックが転がっていた。
次回「夢見る勇気」