COSMOS The Rainbow   作:カズオ

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何年振りかわからない二日連続更新です。
やる気が続くうちに書いておきたい!
あわよくば完結までこのペースで走り抜けたい…!

あと、39話の内容を少しだけ変更しました。
過去に書いた話と齟齬が出てしまいましたので…
ちゃんと確認しないで書くからこういうことになるんですね。気を付けます。


42話 夢みる勇気

翌朝、菜生は今日もあまり眠れずに重い体を何とか起こす。

 

昨夜は結局あれ以降、動画編集をやるつもりにもなれずにとりあえずUSBメモリだけ持ってきた状態だ。璃奈にコスモスの事がバレた以上、全員に秘密にすることは出来ない。それなら、やっぱり歩夢にも教えるべきではないだろうか?

 

(どうしよう…)

 

こんな事誰にも相談できない。菜生はそう考え、ならどうする?という問いを自分に投げかけ続けていた。

 

腕の傷痕を指摘される前まで、自分では全く気になっていなかったのに。歩夢に言われてから、腕の傷が目に入るとあの日の事を思い出してしまう。

 

普段の練習の時に使っている、タオル生地のリストバンドを付けて隠すことにした。隠したからといって、消えるわけでもないのに。

 

時計を見るといつもより既に遅い時間で、バスの時刻表を見ると遅刻せずに学校にたどり着くために乗らないといけないバスまでもう時間がない。

 

菜生は髪を結ぶのを忘れて急いでバス停へと向かった。

 

歩夢はいつも通りのバスに乗ったのか姿は見えなかった。昨夜の事もあって、今歩夢と顔を合わせることに気まずさを感じていた菜生は少しほっとした。

 

「おはよ~」

 

「おはよう。って誰!?」

 

「へ?」

 

クラスに入って隣の席の生徒に挨拶しながら席に着くと、そのクラスメイトは菜生の顔を見た途端に誰か認識できなくなっていた。

 

「菜生ちゃんか。いやだって髪型違うからびっくりして…」

 

「あ~…これね?今日寝坊したから時間なくてさぁ」

 

「なるほどね~」

 

「ヘアゴムも忘れちゃったし、今日はこのまま髪下ろしとくよ」

 

ずっとツインテールで学校に来ていたこともあって、他の髪形を知らなかった事もあってたいそう驚かれてしまった。少し大人っぽく見えたらしい。

 

「そういや菜生知ってる?」

 

「何を?」

 

「今度の日曜日にさ、数千年に一回レベルの金環日食が見られるらしいよ。菜生って星好きだから知ってるかと思って」

 

「ごめん全然知らなかった」

 

そのままホームルームまでクラスで談笑して、一日授業を受ける。普段ならもっと日食の話にも食いついただろうが、今日の菜生はあまり関心を持てなかった。

 

そして、菜生の様子がいつもと違うことを気にする人もいなかった。

 

しかし、頭の中はずっと昨日の事ばかり考えていた。

 

―菜生ちゃん、私に何か隠してるでしょ?あの日からずっと

 

―私ってそんなに頼りない?

 

―お願い、ちゃんと私を見て

 

あの時自分がすぐに全てを話していたら、結果は変わったのだろうか?

 

結局その日は、授業にも身が入らず一日中上の空だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして放課後になると、美月が教室にやってきた。

 

「菜生いる?」

 

そう菜生のクラスメイトに声をかけた美月は、菜生に気が付くと。「ちょっといいか?」と菜生を教室から連れ出した。

 

「この前はごめん。言い過ぎた」

 

「私の方がごめんだよお陰で冷静になれたから」

 

屋上に出たふたりは、周囲に話が聞かれない位置に移動すると美月の方から話し始めた。

 

美月自身もカッとなって言い過ぎたと思っていた様子だった。もっとも、美月から見れば小学校の時に辞めた空手でいきなり勝負を挑まれたのだから、舐められたと感じてしまうのも無理もなかった。

 

「菜生はもっと、周りを頼ることを覚えるべきだよ」

 

先日とは違って、美月は優しい声で語りかけてきた。

 

「彩月がさ、心配してたんだ。昨日久しぶりに会った菜生が元気がないって」

 

「彩月ちゃんが?」

 

「菜生が中学の時あんなに必死に励ましてた彩月がさ、今度は菜生を励ましたいって言ってた。お前が辛い時は、周りの誰かに頼っていいんだよ。あたしが無理なら歩夢でも、同好会の誰かでもさ」

 

最後に「仲間ってそういんもんじゃない?」と付け加えて、美月は笑っていた。

 

「あとは、そこの陰で聞いてるお行儀の悪い後輩ちゃんも混ぜてあげようか?」

 

「へ?」

 

最後に声の大きさを一段階上げた美月が、物陰の方をのぞき込む。

 

「ゲッ…い、いつから気が付いてたんですか?」

 

「かすみちゃんがそこに隠れた時からかな?」

 

物陰で聞き耳を立てていたのはかすみだった。美月に隠れていることがバレてバツの悪そうな顔で出てきた彼女をからかうような態度で美月はかすみに話しかける。

 

「菜生を呼びに来たんだろ?ごめんな、もう話終わったから」

 

「ごめんかすみちゃん、もう部活の時間だったね。美月ちゃんまたね」

 

そう言って菜生は階段を駆け下りていく。少しだけ、菜生の表情は屋上に来た時よりは幾分明るかった。

 

「美月せんぱい、菜生せんぱいと何かあったんですか?」

 

「彩月が菜生を励ましたいって言ってた。のあたりから聞いてたでしょ?あたしの妹でね、幼い時から病弱で入退院を繰り返してて、昨日久しぶりに外に出れるようになってたまたま菜生と会ったんだよ」

 

かすみに聞かれて、美月はそう彩月と菜生の間にあった出来事を教える。

 

「んで、ずっと入院しててずっと暗い顔してた彩月に、菜生が小学校のころから大事にしてたクレバーゴンってロボットを上げたんだよ。友達として、話し相手になれるようにって」

 

「そんなことがあったんですね」

 

「昔っから人には優しいんだよ、そして自分の夢に向かって真っすぐ。そこはいいところなんだけどなぁ…」

 

「美月せんぱいも、菜生せんぱいと歩夢せんぱいと幼馴染なんでしたっけ?」

 

「まぁね」

 

幼馴染だというと。何が悔しいのかわからないけど悔しそうな反応をする後輩がかわいらしくて、いじわるしたくなるが美月も部活に行かないといけない。

 

「あたしも練習いくから、またねかすみちゃん」

 

そう言って屋上を後にして空手部に向かう。

 

「ちょっと!置いてかないでください~!!」

 

かすみも置いて行かれたことに気が付くと、あわてて部室等へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうこうしていると、先日と同様な地震が突如発生。

 

カオスエリガルが、再び学園近くに出現した。幸い無人地帯ではあるが、学校からはそう遠くない。周囲はたちまちパニックになった。

 

「菜生せんぱい~!」

 

「かすみちゃん!急ごう!!」

 

怪獣出現により、避難警報が鳴り響く中。菜生はかすみを迎えに、降りてきた階段を駆け上るとすぐに降りてくるかすみと出会う。

 

「菜生先輩!かすみさん!」

 

幸い、部室の近くでしずくとも合流できた。

 

「他のみんなは?」

 

「部室には誰もいません。私もさっき演劇部の部室から、同好会に向かっているところだったので」

 

「じゃあみんなきっと避難してるね、行こう!」

 

一年生二人を引き連れて、菜生は学園の外に出ると。今回はちゃんと他の生徒と同じように避難所へ向かう。

 

カオスエリガルは、すぐに暴れだすといった様子は無かった事もあり。避難自体は割かしスムーズだったと言える。

 

そして何より、連日の怪獣騒ぎで警戒態勢になっていた防衛軍の対応は早かった。

 

たちまち無数の防衛軍の戦闘機が現れ、カオスエリガルを攻撃する。

 

しかし、今回のカオスエリガルはエリガルの体が変異したものなのか、暴れるというより苦しそうにもがいているだけのように見える。

 

それでも、先日毒ガスが変異したこともあり。速やかな処分を狙い、防衛軍は集中砲火を浴びせる。

 

「カオスヘッダーせいで苦しんでるだけなんだ。」

 

集中砲火に晒されて、カオスエリガルは余計に苦しんでいるように菜生には見えた。

 

「あの怪獣、この前ガス吐いてたやつですよね?」

 

「別の個体だけどね」

 

怪獣の姿を見て、不安そうにつぶやくしずくに菜生はそう短く返す。

 

別の個体だと言い切ったのは、先日の個体の命を奪ったのは自分だから。そのことを思い出すと、少し表情に影りが浮かぶ。

 

「三人とも、無事でよかった」

 

避難してきて同好会の他のメンバーと合流できた。だが、避難所の中は先日以上に慌ただしく点呼をしている様子もなかった。

 

避難所の中にあるモニターで中継映像で外の様子を伺うことができる。防衛軍機が一方的にカオスエリガルに攻撃を続けていたが、倒せそうな気配はなかった。

 

だが、カオスヘッダーによって苦しんでいるエリガルの姿を菜生は苦しそうな顔で見ていた。

 

やがて、菜生は何かを決心したかのような顔をするとこっそり皆の輪から抜け出した。

 

「今の私に、一体どれたけのことができるかなんて解らない。でも、目の前で苦しんでるエリガルも、不安そうにしてる学校のみんなも助けたい…!」

 

周囲の喧騒に乗じて、外に出た菜生はコスモプラック越しにコスモスに語り掛ける。

 

「菜生ちゃん…?」

 

「あゆ…む……?」

 

背後から聞こえた声に思わず振り返ると、菜生が今日気まずいからと顔を合わせるのを避けていた幼馴染の姿があった。

 

「菜生ちゃん、それってやっぱり」

 

歩夢の指さす先にあったのは、菜生の右手でしっかり握られていたコスモプラックだった。

 

「あなたは菜生ちゃんなの?それとも―」

 

「歩夢ごめん!でも、後でちゃんと話すから。今は大好きな歩夢を、みんなを守りたいから」

 

もう、後戻りはできない。もう言い訳を並べることも許されないだろう。でも、菜生は出来るだけ優しい声でそう告げる。

 

「もう一回だけ…わがままに付き合って」

 

歩夢だけでなく、コスモスにも向けて菜生はこの言葉を放つ。

 

歩夢もコスモスは言葉で答えることはしなかったが、コスモプラックに光が宿る。菜生がその光を天に掲げると、光のつぼみが花開いた。

 

カオスエリガルと防衛軍機の間に銀色の光が立ち上り、攻撃を防ぐ。そしてその光の中からウルトラマンコスモスが現れると、首を横に振って攻撃を辞めるように訴えかける。

 

そんなコスモスの様子を見て、防衛軍は一時的に攻撃を中断してコスモスの様子を伺う。

 

防衛軍の攻撃が止まったことで、コスモスは蹲っているカオスエリガルへと向き直ると手を差し伸べながらゆっくり近づいていく。

 

その次の瞬間―

 

 

 

 

カオスエリガルの背中に備わっている二つの噴出口から、毒ガスが噴き出しコスモスの顔面を襲う。

 

蹲っていたことで、噴出口は丁度コスモスの方を向いていたのだ!

 

(なッ…!)

 

咄嗟に右に飛びのいてガスを避けるコスモスだったが、カオスエリガルは上半身をずらしてコスモスの回避先にも毒ガスを噴射。

 

もろに毒ガスを浴びたコスモスは、首元を抑えて苦しそうにその場に屈みこむ。

 

そして、それを好機と見たカオスエリガルは両腕に備わった真っ赤な鎌でコスモスに斬りかかっていく。なんとか攻撃を捌こうとするコスモスの全身に、鎌による切り傷が付いていく。

 

まるで血のように、コスモスの全身に刻まれた切傷から光が零れる。

 

「菜生ちゃん…」

 

大切な人が傷ついていくのを、歩夢は見ていることしかできなかった。歩夢の視線の先で、コスモスの身体が痛めつけられていく。

 

幸い、鎌で切断されるという事態に陥ることはなかった。だが、カオスエリガルは今度こそコスモスの身体を完全に引き裂こうと大ぶりの攻撃を仕掛ける。

 

鎌になっていない腕の根元で攻撃を受け止めようとするが、体重の乗った一撃の前ではそのまま体制を崩されてしまう。

 

そして、体制が崩れればこの密着状態で毒ガスを受けることとなる。目の前で繰り出された毒ガス攻撃に、なんとかムーンライトバリアを展開して防ぐ。

 

逆に自分の吐いた毒ガスを浴びて、カオスエリガルは一時的に呼吸を阻害されたことで動きが鈍る。

 

コスモスはそのすきにバク転で距離を取ると、両腕を胸の前に掲げてエネルギーを集めるとそれを右腕で押し出すようにして放つ。

 

「ハァァアアッ!!」

 

放たれたルナエキストラクトは、カオスエリガルの体を包み込むが前回同様カオスヘッダーを切り離すことは無く弾かれてしまう。

 

ルナエキストラクトはもうカオスヘッダーには効かない。それでもエリガルを救いたい。

 

コスモス自身も菜生と同じで、迷っていた。またコロナモードになっても同じことを繰り返すのではないかと。

 

カオスエリガルはこちらを威嚇するかのように、両腕の鎌を振りながらじりじりと歩み寄ってくる。逆にコスモスは、後ずさって距離を保とうとする。

 

(救うって決めたんだ!絶対に!!)

 

首を振って、迷いを振り払って今度は両腕を天に掲げて再びエネルギーを集める。

 

そして、さっきと同じく右の掌底でそのエネルギーを押し出すようにして放つと今度は黄金の光がカオスエリガルへと向かっていく。

 

今回放たれた技は、フルムーンレクトだった。ルナエキストラクトとは違って、カオスヘッダーを切り離す効果はないが、あちらと違って興奮抑制効果を持つ。

 

これでなんとかカオスエリガルを大人しくしたい。そんな思いで放たれたフルムーンレクトは通常より長く照射された。

 

しかしそれは、コスモスのエネルギーを使って放たれている。長時間照射し続けるという事は、それだけ多くの力を使う。

 

コスモスは青く発光していたカラータイマーが、エネルギーの残量が少ないことを知らせる赤い明滅に変わっても構わず放ち続ける。

 

やがて、カオスエリガルが大人しくなったことでフルムーンレクトの照射が終わる。かなりのエネルギーを使用したのか、カラータイマーの赤の明滅はかなり早くなっていた。

 

だが、これでカオスエリガルが大人しくなってくれればここでの戦闘はこれで終わる。

 

 

 

 

 

―はずだった。

 

カオスエリガルの全身が青く発光。その姿は、元のエリガルとも大きくかけ離れたものへと変貌を遂げていく。

 

(…な、なにこれ……?)

 

動揺する菜生の視線の先で、悪魔は真の姿を現す。

 

カオスヘッダー・メビュート

 

夏休みの終わりに戦ったカオスヘッダー・イブリースと同じように黒い人型の巨体。

 

違うのは、以前は全身から生えていた棘は左右非対称だったものが左右対称に変化。まるで背中から左右に伸びている棘は黒い翼のよう。

 

メビュートは腕を振り上げると、以前より巨大な念動弾(デストログビーム)を発射。不意を突かれたコスモスを襲う。

 

「ぐぁああっ!?」

 

その場に踏ん張ろうとしたコスモスだったが、そのまま大地を脚で削りながら吹き飛んでいき海へと落ちる。

 

なんとか埋め立て地へと戻ってきたコスモスだったが、フルムーンレクトの長時間の照射によって既に限界を迎えつつあった。

 

それでも、目の前に現れた悪魔を倒す為に右の拳を天に掲げて燃える太陽の光を開放する!

 

(なんで…?)

 

コロナモードへと変化したコスモスだったが、コロナモードを維持するだけの力はすでになく。即ルナモードへと引き戻されてしまった。

 

カラータイマーの明滅も、ずっと真っ赤に光っていると錯覚するほどに早くなる。

 

全ては、カオスヘッダー・メビュートの罠だった。

 

まず先日救うことができずに絶命させてしまったエリガルの姿に化けることで、コスモスと菜生の良心に訴えかけてエネルギーの無駄遣いをさせてコロナモードへの変身を封じる。

 

そして、攻撃能力が低く防御技も満足に出せなくなるほど弱ったルナモードのコスモスと戦う。

 

この戦いは、人間を学習したカオスヘッダーによって仕組まれたものだったのだ。

 

再び放たれたデストログビームを、ムーンライトバリアで防ごうとするが既にそんなエネルギーは無く。両腕を突き出したのも虚しく、念動弾の直撃を食らって地に伏せる。

 

「ゴォォォオオオッ!!」

 

「デェヤァアアアア!!」

 

コスモスにとどめを刺すべく、メビュートは駆けだした。コスモスもふらふらしながら立ち上がると、右腕を前に突き出し最後の力を振り絞って突撃する。

 

激しい爆発と、光のスパークが周囲を包みこみ何も見えなくなる。

 

 

 

 

 

 

光と爆発が収まった後、カオスヘッダー・メビュートだけがその場に立っていた。

 

悪魔は勝ち誇ったように咆哮を上げると、その身を虹色の光に帰ると天に昇っていく。

 

「う…あ……」

 

近くの公園まで吹き飛ばされた菜生は、全身を打ち付けて地を転がった。全身には何かで切ったような傷があり、血がにじんでいる。

 

そんな菜生が薄れゆく意識の中で最後に見たものは、初めて出会った時の様に全身色を失い半透明な姿で横たわるコスモスと地面に転がっているコスモプラック。

 

そして、菜生の視界の隅でコスモプラックが薄く光ると、輝石へと戻ってしまう。

 

それは、コスモスと菜生の一体化が解けてしまったことを示していた。

 

『菜生…』

 

「コスモス…なんで、私と…はな…れ……」

 

何とか輝石へと伸ばそうとした手は、それを掴むことなく。菜生の意識は闇に沈んだ。

 

 

 

 

 

 

ウルトラマンコスモスは、敗北した――




次回「忘却のメロディー」
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