COSMOS The Rainbow   作:カズオ

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先週二話更新した結果、今週ちょっと苦しかったですw
ここ一年、ウルトラマンカードゲームの新弾が出るたびにひと箱購入してカードと箱をコレクションしています。
そろそろコスモスはまだですか…?ってなってます。
ではどうぞ


43話 忘却のメロディー

ウルトラマンコスモスが、カオスヘッダー・メビュートに敗北した。

 

その日の夜から、ニュースではその話題で持ち切りだった。

 

そして高田菜生は、戦闘が行われていた場所のすぐ近くの公園の木陰で倒れているところを、運よくSRCの隊員に発見された。

 

すぐにSRCの医療センターに搬送された菜生は、全身に浅くはあるが切り傷と打撲を負っており特に、額にも切ったような傷があり頭を打っている可能性があるとして、すぐに集中治療室へと送り込まれる。幸い、命に別状はなかったが見つかった場所が場所である為毒ガスの影響を受けていないかなど、多くの検査を受けることとなった。

 

菜生の全身に付いた切傷は、コスモスがカオスエリガルの鎌によって付けられた傷と位置が一致するのだがそんな事に気が付く余裕のある人間はいなかった。

 

そして、菜生が目覚めたのは翌日の金曜日の夕方だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後に同好会の練習に参加していた歩夢は、菜生の目が覚めたという知らせを聞いてすぐに医療センターにやってきた。

 

「菜生ちゃんの目が覚めたって本当ですか?」

 

「歩夢ちゃん落ち着いて、もう面会できる病室に移したから。会ってあげて」

 

練習着のまま学校を飛び出して、バス停から走ってきた歩夢は肩で息をしていたが、しのぶは優しく歩夢に菜生のいる病室を教える。

 

「菜生ちゃんっ!」

 

「あっ歩夢だ。おはよう」

 

病室のドアを開けるのと同時に、幼馴染の名前を呼ぶ。すると、ベッドに腰掛けたまま病室の窓から外を眺めていた少女は、ゆっくり振り向くとほほ笑んだ。

 

「菜生ちゃん、本当に大丈夫なの?」

 

「うん、心配かけたみたいでごめん。もう大丈夫だから」

 

そう言って菜生は手を振ってみせる。薄い水色の病衣から出ている腕や額に包帯に巻かれていて痛々しい。

「にしても汗びっしょりじゃん、拭かないと風邪ひくよ。ここエアコン効いてるしさ」

 

そう言って菜生は、本来自分用に準備されていたであろうタオルを歩夢に渡す。

 

「う、うん。ありがとう」

 

そう言って歩夢はタオルを受け取る。歩夢も、この前の事もあって菜生とどう接していいのか悩んでいた。そして、菜生の反応にも違和感を感じていた。

 

そしてその違和感の正体を、すぐに理解させられることとなった。

 

「菜生さん!大丈夫ですか!?」

 

「愛さんたちみんな心配してたんだよ?」

 

学校を飛び出していった歩夢を追いかけて、せつ菜と愛が病室に入ってくる。ほなのみんなも居たが、九人で押しかけてはいけないと思い、ひとまず同級生の愛とせつ菜が病室に来たのだ。

 

「うん!私は大丈夫―って…」

 

歩夢に向けていた視線を、新たに病室に入ってきた二人に向けると最初は笑っていた菜生だったが二人の顔を見た途端に首を傾げる。

 

「ごめんなさい。誰でしたっけ…」

 

「え?」

 

「ちょっとちょっと、冗談辞めてよ~」

 

キョトンとした態度をとる菜生に、せつ菜は面食らった様子で愛も最初は冗談だと思って笑っていたが本気で言っていると解った途端に何を言ったらいいのかわからなくなった。

 

「菜生ちゃん何言ってるの!?せつ菜ちゃんと愛ちゃんだよ!」

 

「愛ちゃんって…あぁ隣のクラスの宮下さん?歩夢仲いいんだ?」

 

「じょ…冗談が下手ですね…スクールアイドル同好会の仲間じゃないですか!」

 

歩夢に説明されて、愛の名前には聞き覚えのあるという反応を示したがせつ菜が理解できない。そんな様子な菜生を見て、せつ菜は震える声でなんとか告げる。

 

「スクールアイドル…?あぁ、そうだ!あの時一緒にいたかすみちゃんは元気?巻き込まれてないの?」

 

「な…何言ってるの?」

 

会話が成立しない菜生に対して、歩夢たちは恐怖を感じ始めた。そんな三人の様子に気が付かないのか、菜生は続ける。

 

「だってほら!リドリアスが街で暴れちゃって…それで私ここに運ばれたんでしょう?」

 

菜生の記憶は、ウルトラマンコスモスと再会する直前までのものしかなかった。

 

この約二か月間の事は、何も覚えていなかった。

 

今の菜生はあの日、カオスリドリアスの攻撃に巻き込まれたせいでずっと病室で寝ていたと思っているのだ。

 

だが、それはスクールアイドル同好会のみんなとの思い出を失ってしまった事を指していた。

 

「本当に、覚えてないの…?」

 

「うん、ごめん。私も何が何だかわかんなくて…」

 

最初は心配させないようにと笑っていた菜生だったが、既に二学期が始まっていることや歩夢達の話を聞いて徐々に表情が暗くなっていく。

 

「大丈夫ですよ!思い出も、また新しく作っていけます!!」

 

「せつ菜ちゃん…そうだね。ありがとう!」

 

ここにいる三人の中で、自分の事だけ全く覚えていないというのに。

 

また新しく始めればいい、今一番不安なのは菜生だから。そう思いせつ菜は菜生の手をもって励ます。

 

覚えていなくても、菜生は大事な仲間だから。

 

 

 

 

目が覚めたばかりで、記憶も失くしてしまっている菜生に全員と会わせるのは負担になってしまうかもしれない。

 

そう医師にも判断されてしまったことと、もう日が暮れてしまう事もあってみんなは帰路に着く。

 

それでも、歩夢だけはまだ菜生と一緒にいた。

 

「早く、思い出さないとね」

 

「無理しないでいいんだよ?」

 

病院から帰っていく同好会のみんなを病室の窓から見ながら、菜生はそう呟く。しかし、そんな菜生が無理をしないように、歩夢は優しく語り掛ける。

 

(あの時、菜生ちゃんが持っていたものは…あの日バルタン星人の子供が菜生ちゃんから奪ったものに似ていた)

 

あの日菜生が持っていたコスモプラックが、何なのか歩夢は考えていた。菜生があの後見つかった場所落ちていたものは、菜生のスマホと昔コスモスに貰った輝石だけだった。他に何かあったとすれば、菜生が着ていたあちこち切られた制服だけ。

 

でも、そのことを今の菜生に聞いても解らないだろう。

 

「あ~ゆむ!」

 

「な、なに?」

 

「暗い顔してる。私は大丈夫だから!ケガも見た目だけで傷口は浅いからすぐキレイに治るって先生も言ってたから。だから、心配しないで?」

 

違う―今私が気になっていることは、それだけじゃない。そう言いたかった。でも、言えなかった。

 

「明日には包帯も取って良いって言われてるし、明日の検査次第だけど月曜日から学校に行けるって言われたからさ」

 

この二か月間で、何回こうやって病室で寝ていたのかもこの菜生は覚えていない。

 

本当はこの二カ月間一緒にいた菜生は別人だったんじゃないかとも思えてしまう。

 

いや、別人だったのであれば辻褄が合うのかもしれない。つまり、昨日までの二カ月間一緒にいた菜生こそが―

 

そこまで考えてから、歩夢は頭を振ってそれを振り払ってから立ち上がる。

 

「そうだね。もう遅い時間だし、私も帰るね」

 

「うん、今日はありがとう。来てくれてすっごく嬉しかった!」

 

「また明日来るから」

 

バイバイと手を振って病室を後にする。

 

「この二カ月間の私って、何やってたんだろう?」

 

自分が知らない自分がいる―

 

その事を、菜生は不安に感じていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、土曜日の午後にも再び同好会の二年生三人は菜生の病室を訪れていた。

 

「これ、同好会のみんなで今日撮ったんです。」

 

「これは…?」

 

せつ菜が菜生にミュージックプレイヤーを手渡した。新曲を録ったというのだ。

 

「病院に運ばれた菜生ちゃんに何かできないかって、同好会のみんなで歌ったの」

 

「私の…ため?」

 

「アタシたちで作ったんだ!」

 

過去にソロで歌った曲には菜生が関わっていたが、今回の曲は菜生以外の9人で準備したものだという。本当は、別の機会でステージ上で見せたかったがこの際そんなことは言っていられない。

 

同好会の再結成のきっかけを作り、ここまでサポートしてくれた菜生に何かしたいという気持ちで作られた曲だった。

 

そして、これが菜生の記憶の戻るきっかけになってくれればいいと。

 

「病室に全員は入れないからって、他のみんなは下にいるんだよね?」

 

「そうだよ。やっぱり全員で病室には入れないから」

 

歩夢が言うには、今日も二年生以外は、談話室まで来てくれているらしい。

 

「今日は、皆に会ってみたいな」

 

「え?大丈夫なの?」

 

「うん。今日は病室から出てもいいってさ」

 

許可は取っているから、談話室まで行こう。そう菜生が提案したことで、記憶を失くしている菜生にとってははじめましての面会になった。

 

「菜生先輩、怪我は大丈夫なんですか?」

 

「せんぱ~い!心配したんですよ」

 

「うん、私は大丈夫。来てくれてありがとうね」

 

談話室に行くと、菜生の顔を見るなりすぐにしずくとかすみが声をかけてくる。

 

大丈夫と言っても、包帯の数は昨日から変わっていない。見た目は痛々しいままだった。

 

「怪我は痛くない?」

 

「はい!まだ包帯は取れてないけど、痛みはないし痕も残らないみたいです」

 

「包帯だらけだったからびっくりしたけれど、キレイに治るなら良かったわ」

 

彼方と果林にも聞かれるのはケガの事。菜生は、多分普段の自分はこんな感じで受け答えしていただろうというイメージで話していたのだが、周りはやはり自分の事を覚えていないのだと寂しい気持ちになる。

 

それに、菜生自身も薄々感付いておりそのことに申し訳なさを感じる。

 

「これ、菜生さんが作った同好会のプロモーションビデオ。今の菜生さんにも見て欲しい」

 

「私が…動画を?」

 

「菜生ちゃん、璃奈ちゃんに教えてもらいながら頑張ってたんだよ」

 

璃奈からタブレットを渡され、菜生自身が作っていたプロモーションビデオが再生できるようになっていた。もちろん菜生にそんな覚えはなかったのだが、エマにも動画を作っていた様子を説明される。

 

「このタブレット、私が前使ってたやつだから菜生さんが持ってて」

 

「ありがとう。じゃあ今夜にでも見せてもらうよ」

 

璃奈から暫く使っていいと言われたので、菜生は今すぐに観る事はせずに今はみんなとの交流を優先した。

 

「そうだ菜生ちゃん。これ…紐無くなってたから私が家にあったやつで作ったの」

 

「ありがとう歩夢!どこに落ちてたの?」

 

歩夢がそう言って菜生に差し出したのは、輝石だった。以前は黒い紐に結ばれて菜生の首にかかっていたのだが、コスモプラックに変化していたものが元に戻った関係で紐が無くなってしまっていた。

 

それを、歩夢が自分の家にあった紐でまた首に掛けれるように直してくれていた。

 

「菜生ちゃんが倒れてた場所の近くにあったって、菜生ちゃんのお母さんが」

 

しのぶが拾っておいてくれた事、また地球外の物質でできている事もあって他の人間に勝手に調べられないようにと歩夢に一時的に預けてくれていたらしい。

 

「大事な友達に貰ったって言ってましたもんね」

 

「うん…これはね、小学生の頃にウルトラマンコスモスに貰った物なんだ」

 

以前、かすみにはそう教えていたので、輝石を見たかすみはそう言ったのだが。それはコスモスと一体化してすぐの事だったので菜生事態は覚えていない。

 

菜生は、コスモスに貰ったとそう説明した。

 

コスモスの名前を聞いて、全員の顔に陰りが見えた。今まで何度も助けてくれたウルトラマンコスモスが、敗北する様を見せつけられたばかりだったからだ。

 

その事を菜生に言うべきか全員が迷った。

 

そして、誰も言い出すことができなかった。

 

 

 

 

 

 

「今日はみんなありがとう!気を付けて帰ってね~」

 

時間が下がってきたこともあって、今日はこれで解散になった。菜生も明日朝の検査次第では、明日には家に帰れるはずだが今夜も病室で過ごすことになる。

 

「さて…見てみますか!」

 

先に璃奈に借りたタブレットで自分が作ったらしい動画を観てみる事にした。未完成品ではあったが、それでも会話した皆のステージで歌って踊る姿には心惹かれるものがあった。

 

特に、幼馴染である歩夢の姿からは目が離せなかった。

 

もっと気になる。そう思った菜生がったが、璃奈も想定していてくれたのか元になった録画データも入れておいてくれていた。

 

気が付いたら、消灯時間近くまで見入ってしまっていた。

 

だがこれを見たことで、何故自分がこの二カ月間スクールアイドル同好会の活動を応援していたのかわかった気がした。

 

そして、みんなが自分の為に歌ってくれたという曲も聴いてみる。

 

優しく、心に歌声が響いていく―

 

気が付いたら涙を流していた。

 

「こんな大切なものを思い出せないなんて…悔しいよ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、菜生は検査を受けていた。

 

結果は異状なし。まだケガは治りきっておらず、半袖を着ると包帯が痛々しい。

 

「身体は異状なし。エリガルの毒の影響も受けてないし、明日からは普通に学校に行って大丈夫」

 

「ありがとうございました!ところで、お母さんは?」

 

検査結果を女医に伝えられた菜生は、SRCの医療施設にいるのに一度もしのぶに会わなかったので、母はどうしているのか聞いてみる。

 

女医は、少し伝えるか迷うような仕草を見せたがやがて口を開いた。

 

「しのぶさんは今ね、SRCの本部のトレジャーベースに出向しているわ」

 

トレジャーベースは日本の領海内の太平洋上に存在する人工島の名前だ。

 

その中には、最新の技術の粋を結集させた様々な研究施設や医療施設に工場があると言われている。

 

更には防衛軍の戦闘機よりも高性能な航空機もあるという話だ。

 

「どうしてそんなところに?」

 

「ウルトラマンが負けて、防衛軍と共同戦線を張る事になってね。パイロットに復帰することになったの」

 

「パイロット!?」

 

菜生の母親は、菜生の父親が亡くなるまでは防衛軍に籍を置いていて腕の立つパイロットだったという話は聞いたことがある。

 

だが菜生が物心ついてからは航空機の操縦をしていたという話は知らない。

 

「防衛軍に戻ってほしいって話もあったみたい。それを断る代わりにってことなのかもね」

 

「そうなんですか…」

 

ウルトラマンが負けるような相手に、人間の兵器が通用するのか?そもそも戦いになるのか?

 

かつてバルタン星人と戦った時に見せた。圧倒的な強さを持つウルトラマンより、人間の武力の方が強いなんてことはあり得ない。菜生はこのときそう思った。

 

「ともかく、これで退院よ。記憶はまた、何かキッカケがあれば戻ると思うわ」

 

「そうですか。でも大丈夫です!思い出は、また一から作っていきます」

 

記憶はここでの治療で取り戻すことは叶わなかった。女医はその事に対して申し訳なさを感じていたが、菜生はそう力強く返した。

 

「菜生ちゃんは強いんだね」

 

「いえ、友達がそう言ってくれたお陰です」

 

皆、自分の事を覚えていない菜生に優しく接してくれた。菜生を勇気付けようとしてくれた。

 

だから、私も前を向いて進もう。




そういえば、今年の春に出た虹ちゃんのゲームでもあなたちゃんが記憶喪失になったらしいですね…
またネタ被っちゃいました…(前作の最後に出したキャラクターの名前も確認不足で被ってるのにそんまま出した)
一応今回の菜生ちゃんの記憶喪失は、初代ウルトラマンの最終回のオマージュのつもりだったのですが、なかなかままならないですねw
そしてもうすぐ、あのモードが解禁されます。お楽しみに!

次回「ECLIPSE」
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