COSMOS The Rainbow   作:カズオ

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過去最長文字数かもしれません。(追記:同じ文章が繰り返されてたせいでした。修正しました)
これでも削りました。
でも二話に分けることはしませんでした。
長めだけど、読んでいただければ幸いです。


44話 ECLIPSE

検査結果上、体には問題ないと判断された菜生は退院し家に帰っていた。

 

普段通りの生活に戻れば、記憶が戻るキッカケが得られるかもしれない。

 

そういった事情もあって、最後の検査は朝一に行わて昼過ぎには家に帰り付いていた。

 

実際、家に帰ってみれば作曲用の電子ピアノや合宿の時の写真などといった。同好会に入る前の菜生だったら家に自室になかったものが視界に入る。

 

「なんだか、知らない人の部屋に来ちゃったみたいだ…」

 

そういったものに、記憶の無い二カ月という期間の長さを感じてしまう。

 

「この写真…」

 

そんな時に、菜生は一枚の写真が目に入った。

 

ジェルミナⅢの建設メンバーの写真。菜生にとっては全然知らない人たちが写っている写真だ。でも、菜生はその写真から目が離せなかった。

 

「う…あぁっ!」

 

突如頭痛に襲われてふらつく。頭を押さえて蹲ると、脳裏に断片的に浮かび上がっては消える夏の日の思い出。

 

 

 

 

―私は夢を継いでいく、この星の命を守る夢を、私はあなたに貰ったから。

 

 

 

 

 

思い浮かぶのは漆黒の体を持つ宇宙人を赤き太陽の巨人が倒し、初恋の相手を宇宙に還したあの夜の記憶。

 

そして、その記憶は赤い巨人の視点だった。まるで、自分がその赤い巨人だと言わんばかりに。

 

「はぁ…はぁ…何今の?気持ち悪い……」

 

吐き気がする。無意識の内に、脳が自分を守る為に封じ込めていた記憶。それが一気に流れ込もうとしているのだ。平気でいられるはずもなかった。

 

思い出せなくて悔しいと感じていたモノが、今脳内に溢れようとすると強い吐き気に見舞われる。まるで、菜生の体が思い出させまいとしているかのようだった。

 

「私は、コスモスが怪獣に負けた場所に倒れていた…なら―」

 

ならばそこに行けば、何かがわかるかもしれない。そう思った菜生は、パソコンを付けるとニュースはその件で持ち切りだった。そのお陰で、戦闘の様子や場所が良く分かった。

 

菜生はスマホと財布だけ持って、家を飛び出した。

 

 

 

 

 

 

ニュースで調べた位置を元に、菜生は学校から更に海の方へと進んで埋め立て地にある公園まで来ていた。

 

今日は日曜日だが、先日会った事が事なのもあって辺りに人影は見えない。

 

「ウルトラマンコスモス!いるの?」

 

周囲を見渡しながら、菜生は何度もコスモスに呼びかける。

 

だが、返事は無く。人気のない公園に菜生の声が響くばかりだった。

 

暫くコスモスの名前を呼びながら、公園の中を歩き回っていたのだが巨大な生命体同士が戦った影響か。周囲はひどく荒れていた。

 

数日寝たきりだった体で動きまわることは難しく、すぐに疲れてしまう。周囲を見渡すと、状態のいいベンチを偶然見つけることができたのでそれに腰掛ける。

 

(なんでだろ?学校の近くだけど、ここには初めて来たはずなのに…)

 

ずっと感じていた違和感。今まで一度も来たことのない場所のはずなのに、公園に入るまでの道のりで全く迷うことがなかった。

 

まるで来たことがあるかのように、体は歩みを進めていったことに何とも言えない不気味さを感じてしまう。

 

記憶の無い二カ月間、自分は何をしていたのか?

 

不安を抱えたまま、ここに来れば失われた記憶について何かわかるはず。そう自分を鼓舞してもう一度立ち上がる。

 

「菜生せんぱ~い!」

 

「あれ?どうしたの?」

 

「『どうしたの?』じゃないですよ~!」

 

現れたのはかすみだった。菜生は、なんでかすみが走ってきたのかわからなかったが、彼女は少し怒ったような様子だった。

 

「えぇと…」

 

「菜生せんぱいは、ケガして入院してたんですよ!なのに退院したその日の内からふらっと出てったら心配するじゃないですか」

 

退院したことも、家に戻ったことも誰にも伝えていなかった事を思い出す。家には医療センターの職員が送ってくれて、母親にも退院したことは伝わっている筈だが菜生は自分で誰かに連絡するという事をしていなかったことを思い出す。

 

「ごめんごめん。すっかり忘れちゃってたよ」

 

「全く~みんなに連絡するから、もう動き回らないでくださいよ」

 

そういうとかすみはスマホを操作して、他に菜生を探しに来た面々にメッセージを送る。菜生も自分のスマホを確認すると、メッセージアプリが更新されておらず。メッセージが読めなくなっていた。

 

「病院の中にいた時は通信切ってたからか…」

 

悪いことをしたと、バツの悪い顔をしてベンチで座っていると。暫くして、歩夢がクレバーゴンを抱えて現れる。

 

「歩夢!ゴンまで…」

 

「菜生ちゃんを探そうと思ったら、美月ちゃんと彩月ちゃんに会って。ゴンちゃんなら居場所わかるかもって…」

 

ゴンを抱えたまま走ったせいか、歩夢は息が上がっていた。

 

「ごめん…」

 

悪気はなかったとはいえ、周りに心配かけてしまったことに申し訳なさを感じる菜生だったが、記憶の事もあって今の菜生に余裕がないのだろうとこれ以上歩夢も何も追及することは無かった。

 

見つかったし、帰ろうかという話になりかけたタイミングでゴンの頭部カバーが展開してアンテナが出現。腹部のカバーも開いてモニターが現れる。

 

モニターには『1420mhz』の文字と強度を示すオーディオスペクトラムのようなものが表示されている。

 

「ETの交信信号ってことは…」

 

「どうしたんですか?」

 

「ウルトラマンコスモスもこの信号を使ってるんだ。きっと近くに…」

 

画面を食い入るように見つめる菜生を見て、かすみは不思議そうにしていたが菜生がそう教える。すると菜生はゴンの腹部のモニターの情報を元に歩き始める。

 

『菜生―菜生―』

 

「コスモス!」

 

自分を呼ぶ声が聞こえた。間違いなくコスモスのものだと思った菜生は、声の方に駆けだす。

 

公園の奥の木々を抜けると、初めて出会った時の様に半透明の姿で横たわるコスモスの姿が目に入る。

 

「歩夢、かすみちゃん。光ある?」

 

「スマホのライトくらいしか…」

 

「わたしもです」

 

光をあげないと、コスモスを助けないと。コスモスが視界に入った瞬間、菜生はその事しか考えられなくなり。すぐに歩夢とかすみに声をかけるが、菜生も含めて三人ともスマホのライトくらいしかコスモスを照らせるものは無かった。

 

「そうだ、ゴンにライトユニットが付いてたはず…」

 

彩月がクレバーゴンを夜連れて歩けるようにする為に、ゴンを最初に修理してくれた木元博士に仕込んでもらったライトユニットを展開する。

 

木々が茂っている事もあり、昼間でも辺りは少し暗かった。それでも、少しでもコスモスの力になるならと菜生たちはコスモスの額に目掛けて光を照射する。

 

「ゴン、もうちょっと右に。かすみちゃんはちょっと下げて、歩夢はちょい上げね」

 

光を当てながら、菜生はみんなに指示を飛ばす。きっとまた、自分にしか見えていないからと」

 

「えっと、おでこのまるいトコですか?」

 

「そうそ…え?かすみちゃん見えるの!?」

 

「私も見える。なんで?子供の時は見えなかったのに…」

 

なんと、かすみと歩夢にもコスモスの姿が見えていたのだ。あの時は菜生にしか見えなかったのに、なぜ今回は皆に見えているのか?そんなことを少し菜生は考えるが、足元から聞こえるゴンの声にその思考は中断させられる。

 

「ナオ!更新信号ガ弱マッテル!!」

 

「そんな、光が足りないってこと?」

 

ゴンの腹部のモニターを見ると、どんどん更新信号の強度が弱まっていっていることがよくわかる。

 

「今日って日食の日でしたよね?なんか暗くなってきたし…」

 

かすみに言われて菜生も気が付いたが、太陽に月が重なり始めたことで周囲は昼間にしては薄暗くなっていく。

 

「よりによって今日が日食だったなんて…」

 

菜生はそう歯噛みする。記憶を失っていなければ気が付くことができたかもしれないが、今の菜生に日食の日なんて把握する余裕はなかった。

 

更に、事態は徐々に悪い方へと向かっていく。

 

菜生たちが、コスモスの更新信号を見つけたように。カオスヘッダーもコスモスが生きている事に気が付いたのだ!

 

カオスヘッダー・メビュートが大地を轟かせ、東京の地に再び降り立った。幸い、詳細な場所までは解っていない様子でここからは少しだけ離れていたが、ここに居ればすぐに見つかって踏みつぶされてしまうだろう。

 

「あ…あぁ…」

 

地響きで、カオスヘッダーの出現に気が付いた菜生は視界に入った黒い悪魔の姿に恐怖した。

 

覚えていない、初めて見たハズなのに体の震えが収まらず動悸がする。

 

「菜生ちゃん大丈夫?」

 

「いや…!嫌だ…来ないで!」

 

歩夢が菜生の異変に気が付いて駆け寄るが、菜生は頭を抱えたまましゃがみ込んでしまう。

 

「菜生ちゃん大丈夫だから。早くここを離れよう?」

 

「う…うん」

 

震える手で幼馴染の腕を掴んだ菜生は、歩夢のお陰で何とか立ち上がる。

 

「かすみちゃんも!」

 

「で…でも、ウルトラマンを助けないと!今まで助けてもらって、見捨てて逃げるなんて!」

 

かすみは、コスモスに光をあげ続けていた。足は震えていたし、確かに怖い。でも、今まで何度も命を救ってくれたコスモスを置いて逃げることをしたくなかった。

 

「もう間に合わないよ!」

 

「でも…!」

 

周囲に爆発音が響く中、それでも三人は逃げることを選べなかった。

 

絶対に逃げるべき。頭では解っていた。それでも心はそれを許さなかった。

 

しかし、少しずつこちらへと歩いてきたメビュートが足で倒した木が菜生と歩夢の上に倒れてきた。

 

「危ないッ!」

 

咄嗟に反応できた菜生は、歩夢の体を抱えて横に飛ぶ。しかし、受け身が取れずに頭を打ってしまう。

 

「うぅ…」

 

頭を打って呻く菜生に歩夢と、駆け寄ってきたかすみが声をかける。

 

「菜生ちゃん!」

 

「先輩、大丈夫ですか?」

 

「だいじょぶ…にげ…て……」

 

このままだと全員助からない。菜生は擦れる声で二人にそう呼びかけるが、始まった防衛軍やSRCの攻撃で発生する爆発音で届かない。

 

二人は、何とか菜生を連れてこの場を離れる決意をする。

 

ゴンも、アームを駆使して少しでも二人の負担を減らそうと頑張ってくれていた。

 

しかし、カオスヘッダーはもう目の前まで迫っていた。

 

日食によって、完全に太陽が見えなくなった今。コスモスに光を与えるものは何もなく、赤い目の悪魔はもうすぐそこまで迫っていた。

 

だが、菜生のピンチを救う為に一つの巨影が、空から飛来してカオスヘッダーを蹴り飛ばした。

 

甲高い鳴き声で威嚇するようにして現れたのは、リドリアスだった。

 

「あの怪獣って…」

 

「リドリアス、シールドを破っったんだ…」

 

見覚えのある怪獣の飛来に、今のうちにと歩を進めようとすると。菜生もダメージから復帰したのか、自分の足で歩き始める。

 

しかし、リドリアスの翼を見て菜生は苦しそうに呟いた。

 

リドリアスは、普段は鏑矢諸島の外に出ないように張られたバリアの下で生活している。そのバリアを力づくで破ったせいで、翼は大きく傷つき飛行能力が著しく下がっていた。

 

それも災いし、リドリアスはカオスヘッダーに一方的に攻撃され傷ついていく。翼は折れ曲がり飛べなくなっても、力では遠く及ばなくても。

 

それでも、リドリアスは菜生たちを守る為に遠く離れたお台場までやってきた。菜生を守りたい一心で

 

(リドリアスも、みんなも私の為に…私は、何もできてないのに!)

 

少しずつ離れながら、菜生は悔しかった。みんなに貰ってばかりで、何もできない自分が。記憶を失くして、そんな自分にこれから思い出を作ればいいと言ってもらい。曲も貰い。今日も助けてもらって、自分は何もできていない。

 

(みんなに勇気を貰ったのに…私は、何もあげられてない!)

 

その時、首に掛けていた輝石が光始める。

 

「これは…?」

 

光り輝く輝石を胸元から取り出した菜生は、それを掌に乗せる。

 

その光と共に、菜生の脳内には失われていた二カ月間の記憶が蘇った。

 

「歩夢、かすみちゃん。先に行ってて」

 

「できないよ!」

 

「そうですよ、菜生先輩を置いてくなんてできません!」

 

菜生の先に行ってという言葉に、二人は強く反発した。しかし菜生は、穏やかな表情で二人を見つめる。

 

「ありがとう。でも大丈夫、皆に勇気を貰ったから」

 

そう告げると、コスモスの方へと振り返る。

 

「コスモス、今の私は光をあげられない。でも、それでもあげられるものがあるとしたら―」

 

その言葉が続きは、二人には聞こえなかった。

 

日食で月と太陽が完全に重なり合い。外側に太陽がはみ出して細い光輪状となる。そこから溢れた光が周囲に降り注いだ。

 

まっすぐ前を向いたまま、背後にいる歩夢とかすみに声をかける。

 

「この戦いが終わったら、二人には全部説明する。だから、行ってくるね。私がやりたいことを、やり遂げたいんだ」

 

そう告げると、輝石を天から降り注ぐ光に翳す。

 

そうすると、菜生の身体は光となってコスモスの身体に入っていき巨人の身体は再び色を取り戻しながら立ち上がる。

 

「菜生先輩が、ウルトラマンと…」

 

「やっぱり、菜生ちゃんだったんだ」

 

二人の視線の先には、こちらに背を向けて悪魔向かっていく青い巨人の姿があった。

 

カオスヘッダー・メビュートは、復活したコスモスに気が付くとリドリアスの巨体を持ち上げて、コスモスの足元目掛けて投げつけた。

 

コスモスはゆっくりリドリアスに歩み寄ると、右掌をかざしてコスモフォースという虹色の回復光線をリドリアスに照射する。

 

そしてメビュートを睨み付けると、右の拳を空に突き上げて燃える太陽の巨人へと姿を変える。

 

「ダァアアアッ!!」

 

両者駆けだすと、その巨体が激突し周囲に激しい地響きや突風をまき散らす。

 

今回は以前とは違う。

 

コスモスが同時に放った左右の拳は真っ直ぐ胴体を突き、返す刀で回し蹴りを食らわせる。コスモスを振りほどこうと我武者羅になって左右の腕を振り回すメビュートの攻撃も、正確に回避して更に蹴りでダメージを負わせる。

 

コロナモードへとチェンジした事で跳ね上がった攻撃能力によって、一方的にコスモスが攻め立てる。

 

実際に肉弾戦では、コスモスが圧倒的に有利なのは誰の目にも明らかだった。

 

しかし、メビュートの攻撃の回避ざまに放った蹴りによって両者の距離が開いてしまう。

 

攻めを継続させるために駆けだしたコスモス目掛けて、目から怪光弾と腕からは念動弾を放つ。怪光弾は体で弾き飛ばしながら走り続けるコスモスだったが、念動弾を受けるとその足は止まってしまう。

 

以前の様に弾き飛ばされる事は無かったが、体を絡めとられて身動きが取れない。

 

「ぐっ…おぉ…」

 

しかし、メビュートにとってはその場で耐えられている事自体が想定外だった。

 

更に数発追加で攻撃を放ち、コスモスを斃そうと躍起になる。

 

この念動弾を弾いて、メビュートを倒さなければ。そう焦るコスモスの脳裏に過ったのは、さっきの菜生の言葉。

 

―コスモス、今の私は光をあげられない。でも、それでもあげられるものがあるとしたら

 

―それは、みんなから貰った『()()()』と『()()

 

―そして

 

 

 

『勇気』

 

 

 

「ウォォォオオッ!!」

 

念動弾を弾き飛ばし、コスモスの身体から黄金の光が放たれた。

 

その輝きを全身に纏うと共に、日食が終わり周囲が明るさを取り戻す。

 

その瞬間、ウルトラマンコスモスは新たな姿を現した。




次回「無敵級のその勇気で」


始めて文字デカくしました。今日やっとやり方覚えたよ…(ハメ歴約5.5年の人)
この五年間ずっとやりたかったことの一つがやっと出来て良かったです。
次回お会いしましょう。
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