次回から更新ペースまた週一くらいになると思います。
最近夏っぽい回書きたいな~って思ってたんだすが、作中は夏休み終わっちゃってた…
「ふ~ん。月末にライブやるんだ」
「そうなんだ~美月ちゃんも来てよ、作るの手伝ってもらった曲。聞いて欲しいんだ!」
オープンキャンパスが二日後に迫った日の放課後、菜生は美月と話していた。
話の内容は、もちろんこの前決まった。合同ライブの事だった。
「う~ん…その日は空手部も合同練習があるからなぁ…」
「そんなぁ…」
「しょうがないよ、あたしも部長だし。空手が本業なの」
「本業って…。それより、この前はありがとね、ゴンを貸してくれて」
「貸してって元々菜生のだろ?いいよ別に」
空手が本業と言い切る美月に、苦笑いする菜生だったが会話はクレバーゴンの事に移っていく。
先日クレバーゴンをかすみが連れてきてくれなければ、コスモスを見つけられなかったかもしれない。それに、この前連れ歩いたときにゴンに無理をさせてしまったので、今日はこれから修理に出していたクレバーゴンを引き取りに行くところだ。
「…まぁそれはいいとしてなんだが―」
美月はちょっとめんどくさそうに振り返る。
「なんでかすみちゃんが付いてくるワケ?家と反対方向でしょうに」
「どうしてすぐ気づくんですか!?」
「なんとな~くこそこそしてる子がいるな~って」
「美月ちゃんその辺の勘凄いんだよね…隠れて驚かすみたいなの全然できないの」
おもちゃ病院へ向かう道の途中で、急に振り向いて近くの植え込みに声をかける美月によって、かすみはこっそりついてきていたのがバレてしまう。
実は、練習の終わった後にかすみも付いていきたいと行ったのを、美月が断ったのだ。
それで、見られて困るところにでも行くのかと思ったかすみはこっそり付いてきていた。
「こっそり付いてきたってダメ!今からおもちゃ病院行ったら帰るの遅くなるだろ」
「ま、まぁまぁ…私の家なら直ぐだし私が送るよ」
「全く甘いんだからお前は…」
追い返そうとする美月に、菜生が仲裁に入るのだが美月はそれに頭を悩ませる。
「だって可愛い後輩が、こんなにゴンの事気にしてくれてるんだよ?」
「えへへ~」
「もういいよそれで…」
かすみを可愛いと言って庇う菜生と、かわいいと言われて喜ぶかすみの姿を見て美月はめんどくさそうに答える。
そうして三人はおもちゃ病院へ向かうのだった。
おもちゃ病院でゴンを受け取り、美月と別れた後菜生は住んでいるマンションの駐輪場に行って自分のバイクを準備した。
「じゃあかすみちゃん帰ろっか」
「先輩バイク乗れるんですね」
「去年取ったんだよね。道案内よろしくね」
そう言ってタンデムシートにかすみを乗せて、菜生は暗くなった街中でバイクを走らせた。
「ねぇ菜生先輩」
「ん~?」
「どうして、美月先輩はかわいいって言ってくれないんでしょう?」
「美月ちゃんから可愛いって言葉、確かにあんまし聞いたことないなぁ…」
バイクのエンジン音に負けないような声で、かすみが菜生に美月の事について相談する。
かすみの楽曲を作成する時にも、美月も関わっているしライブのパフォーマンスも見てもらっているのだが、『かわいい』と一度も言ってもらえていないのが不満だったらしい。
「やっぱり、私のパフォーマンスが足りないんですかね?」
「美月ちゃんがそう思ってたら、最初の曲以外手伝ってくれてないだろうし。性格から考えて落胆してるとかそういうのじゃないから大丈夫だよ」
菜生はそう言って、かすみに気にしないように伝える。付き合いが長いからこそ、美月の性格については菜生の方が解っているはずだ。
元々空手で結果を出している彼女は、いくら現在音楽科で作曲が多少できるからといって、わざわざ同好会を手伝うメリットはほとんどないはずだ。
それでも手伝ってくれているのは、ひとえに彼女の人のよさから来ている。
「だからかすみちゃんが気にしなくていいんだよ。かわいいって口に出すのが恥ずかしいだけだよ」
「ならいいんですケド…。あっそこ左です」
「は~い」
かすみのガイド通りに菜生はバイクを走らせる。
夜の街を走る事数十分後、『中須』と記された表札の一軒家の前にたどり着く。
「ハイ到着~。ごめんねお尻痛かったでしょ?」
「先輩ありがとうございました!でも意外でした。こんなかっこいいバイクに乗ってるなんて」
「あぁこれ?これは私が小さいころお父さんが乗ってたバイクに似てたから選んだんだよね」
かすみにとって、菜生がバイクを持っていることが意外だったらしい。
「そんな理由で選んだんだけどさ。かすみちゃんも乗ってみたからわかると思うけど二人乗りには向いてなくって、歩夢に後ろに乗らない?って聞くと嫌がられるようになっちゃって…」
「まぁ…それは解ります。結構痛いですよこれ……」
「ですよね~…。もう遅いし私も帰るね?かすみちゃんまた明日」
「菜生先輩、また明日~!」
そういって、ピンクのヘルメットを返してもらうとメットのシールドを閉めて走り始める。
かすみは菜生の乗ったバイクが曲がり角を曲がって見えなくなるまで手を振っていた。
帰りは一人な事もあって、スピードを出して帰っていた菜生は、先のかすみとのやり取りを思い出していた。
(かすみちゃんってかなり周りの人が見えてるんだね)
『菜生、止まれ』
突如聞こえたウルトラマンコスモスの声に反応し、すぐにバイクを路肩に寄せて止まる。
(コスモス、どうしたの?)
『バルタンラッヘと戦った後にすれ違った生徒の事を覚えているか?あの時と同じ気配を感じる』
(それってうちのガッコの制服着てたおっきい宝石みたいなのが付いたバッジしてた子の事?)
「うちの学校は、バイク通学は許可されていませんよ」
「一回帰ってるし、解んないように上着は着替えたんだけどな」
咎めるような少女の声に、菜生は警戒しつつもヘルメットのシールドをあげてそう返す。
コスモスがわざわざ呼び止めたという事は何かあるはずだ。多分普通の生徒ではないはずだ。コスモプラックは上着の内ポケットに入っている。変な動きが見えたら、菜生はすぐにそれを取り出すつもりで両手はハンドルから離していた。
「少しお時間よろしいですか?あなたに、伝えなければいけないことがあります」
「君は…?」
「私は一年の三船栞子です。高田菜生先輩」
そう名乗った少女は菜生に一歩歩み寄ると街頭に照らされて菜生の方からも、彼女がどんな顔をしているかが見える。
緑っぽい黒髪のボブカットに左側に髪飾りを付けた、綺麗な子。それが菜生の感想だった。でも、この子はコスモスも警戒する何かがある。
「解った。少しお話ししようか」
そう言ってバイクから降りる菜生だが、彼女に対する警戒は解くことはしなかった。
「虹ヶ咲学園に、宇宙人がいます」
「宇宙人?」
「ええ、惑星の侵略を行っている宇宙船団の先兵です」
「なんでそんな事を知ってるの?」
目の前の少女の様子からして、嘘を言っているようには見えない。
だがそれだけで彼女を信用するのは危険だと思い、この栞子という少女が本当は何者なのかを菜生は知る必要があった。
「私もあなたと同じです。私の中にも宇宙人がいます」
「その宇宙人が、君に情報を渡しているって事だね?」
菜生と同じ。ならば、バルタンラッヘの一件の時に援護してくれたのが、この少女と同化している宇宙人なのだろう。それでも、まだまだ菜生にはわからないことだらけだった。
栞子は頷くと、言葉を続けた。
「私と同化している方は、現在本来の姿を維持できないんです。なので、あの人だけでは事件を解決できない。だから、あなたに情報を共有しています」
「私達に、その宇宙人を倒してほしいって事だね?」
「…そうですね。恐らく現在それを可能とするのは、ウルトラマンコスモスだけですから」
自分じゃできないからやってくれ。そういう事なのかと菜生が問いかけると、栞子はかなり苦い顔をし頷いた。自分たちで解決することができないことに対する悔しさと、菜生とコスモスを頼る事に負い目を感じているようだった。
「解った。皆に危害を加えるような宇宙人なら、対処するよ。でも―」
「解っています。私の事が信用出来ないのでしょう?それは仕方のない事です。でもこれは、あなたにしか頼めない事です」
「信じるよ。栞子ちゃんは、悪い人には思えないから」
「ありがとうございます。では」
菜生は、ひとまずこの少女を信じてみる事にした。嘘だったときは、その時だと思って。
すると、栞子は会釈をするとそのまま夜の闇の中に消えていった。
一方その頃―
「あんのクソ親父~!彩月が今晩検査入院するってんならあたしにも教えろってんだ!」
美月はおもちゃ病院でクレバーゴンを受け取った後、家に帰っても誰もおらず。スマホで父親に連絡したら、彩月がまた検査のために一晩だけ入院することを伝えられた。
しかも運の悪いことに、家に夕飯の材料すらない。美月は家にゴンを連れ帰った後に、再び買い物に行くために外に出ていた。
―見ツケター
「ッ!?」
ぼそっと呟くような声が聞こえたと同時に、背筋がぞわっとする感覚が走り振り返る。
「…なんだ今の?」
周囲を見渡しても仕事帰りのサラリーマンや、買い物帰りの大人や部活帰りの学生といった普段通りの光景。怪しいものは何もない。
「気のせいか―」
「こんばんわお嬢さん」
違和感の正体が目の前にいた。血のように真っ赤なライダージャケットとに漆黒のズボンに身を包み、夜の暗闇に溶け込むような真っ黒い長髪を真っ直ぐ伸ばした成人女性と思われるが、何とも言えない不気味さが漂っていた。
「こ、こんばんは……」
「やっと見つけたわ。私の可愛いギリ」
「ギリ…?人違いじゃないですか?」
まるで美月を自分の子供かのように言うが、美月とは全く似ていない。
美月は髪も瞳の色も水色だが、目の前の女性の目は髪で最初は見えなかったが赤い瞳をしていた。親子というには、あまりにも似ていない。
「いいえ、間違ってなんていないわ。だってあなた―」
――ニンゲンじゃないもの――
「な、何言ってんだアンタ?警察呼びますよ!」
『人間じゃない』そう言われた美月は咄嗟に後ずさりしつつも。そう語気を強める。そして左手をポケットに入っているスマホに手を伸ばす。
「アハハ!面白い事を言うのね。ニンゲンに助けを求めるなんて」
「冗談じゃない!ホントに呼びますから―」
スマホを取り出して、通報しようとする美月。その彼女の動きより早く、目の前の女性は美月の目の前まで接近して、右手で美月の手首を掴んでその動作を阻止する。
美月は振りほどこうとしたが、どれだけ左腕に力を込めてもビクともせず。右手で、女性の腕を掴んで引き離そうとしても全く効果がない。
「くっ…この…」
目の前の女性は徐々に腕の力を強めていき、美月はスマホを落としてしまう。
美月の表情には焦りと、恐怖の色が浮かび上がる。腕力が全く通じない相手に掴まれている。今まで一度も感じたことのない恐怖に目尻に涙も浮かぶ。
「ねぇ。バネスはどこ…?」
「知らない!そんなもんあたしは知らないッ!!」
女性の問いかけに美月は虚勢を張ろうと声を荒げる。それに、大声を出せば誰かが気づいてくれるかもしれない。そう考えての事もあった。
「そう?じゃあ―」
不気味な笑みを浮かべて美月に顔を近づける。
「くっ…」
咄嗟に顔を背けて目を瞑った美月。しかし何も起こらす恐る恐る目を開けると、もう誰もいなかった。
「なんなんだよ…一体?」
美月自身、その後の事は覚えていない。気が付いたら、肩で息をしていて汗びっしょりの状態で玄関に立ち尽くしていた。
あれから数日が経過し、オープンキャンパス当日を迎えていた。
「今年も沢山来てるね」
「ホントだね。来年の春には、今日来てる子らが後輩になるのかもしれないしね」
オープンキャンパスでの部活紹介の為の資料を運びながら、すれ違う中学生達を見ながら歩夢と菜生は言葉を交わす。
「ウチの学校大きいし科も多いから、見て回るのも大変そうだよね」
「菜生ちゃん迷子になりかけてなかった?」
「違うよ~あれは美月ちゃんとトイレ行ったらさぁ~…」
中学生の頃にオープンキャンパスでこの学校を訪れた際に、広い校舎の中で迷ってしまった。
その時の事を歩夢に持ち出されて、菜生は頬を膨らませて顔を背けた。すると、視線の先に見覚えのある顔を見つける。
「彩月ちゃん?」
「菜生さん、歩夢さん。こんにちは!」
「こんにちは。彩月ちゃんも来てたんだ」
「はい!同級生の子と一緒に来てて、今は私一人でスクールアイドル同好会の展示を探してたところなんです」
菜生が見つけたのは、美月の妹の彩月だった。
彩月は、虹ヶ咲学園を受験するつもりらしく、先日会った時に言っていたように美月が作曲に協力しているということで、スクールアイドル同好会に興味を持ってくれているようだった。
「そうなんだ。今ちょうど皆のところに向かってるトコだから一緒に行こうか」
「いいんですか?」
菜生が、折角だからと彩月を誘い一緒に他のメンバーがいる。同好会の展示をやっている場所へと向かう。
「彩月ちゃん、二学期は学校行ってるんだね」
「はい、お父さんももう大丈夫だろうって」
「良かったね」
産まれつき体が弱い彼女は、昔から入退院を繰り返したいたことは、歩夢も知っていた。学年は二つ下だから小学校も中学校も同じだった事もあり会話をしたことも何度もある。
やはり道中の会話は、彼女自身の事になった。
そして、同好会のメンバーと合流した時の彩月の目はキラキラしていた。
「美月先輩に、こ…こんなかわいい妹がいたなんて……」
「ほ…本物だぁ~」
「一緒に写真撮ってあげてよ。彩月ちゃん、喜ぶから」
そう菜生が提案して、彩月はその場にいた彼方とエマ、愛にかすみと歩夢らと一緒に写真を撮ってもらう。
「そういえば他の皆は?」
「しず子とりな子は、今日公開するビデオの編集やってますよ。やっぱり気になるからって」
「私も手伝いに戻んないとな~…」
「ダメです!もう時間ないんですから、菜生先輩が行ったら間に合わなくなっちゃいます!!
この前、菜生が作成していた動画をベースにもっと良くできるんじゃないかとしずくと璃奈にも手伝ってもらい、再編集をしていたのだが一度始めてしまうとなかなか止まらなくなってしまっていた。
「私が行きます!」
そう言ってかすみが飛び出していった。菜生に行かせると、再度編集をやり始めてしまう可能性がある。そうなってしまっては公開時間に間に合わない。
そうなってしまっては大変なことになる。そういった考えによって、かすみは菜生にはこの場に残るように言ったのだ。
「行っちゃった…」
「まあ元はといえば菜生ちゃんが拘り始めちゃって、璃奈ちゃんとしずくちゃんも影響されちゃった感じだったからね」
「それはまぁ…耳が痛いというか…」
追いかけようかと迷っていると、彼方にそういわれてしまい返す言葉もなくここはかすみに任せることにする。
しかし、暫く待ってもかすみは戻ってこなかった。
「かすみちゃん遅いね」
「やっぱり私見てきます!彩月ちゃんもここにいて、みんなとビデオ見てよ!」
流石に部室に行って戻ってくるにしては時間がかかりすぎている。そう思った菜生は、皆を残して部室の方へと駆けだした。
「廊下は走らないでください!」とオープンキャンパスの実行委員か生徒会の生徒の注意する声が聞こえたが、構っていられないと言わんばかりに菜生は駆け抜けていく。
「きゃぁぁあああ!!」
中庭を突っ切って部室棟へと急いでいると、不意に悲鳴が聞こえ菜生は立ち止まる。
「かすみちゃんの声だ!」
菜生は、その悲鳴をかすみのものと判断。声のした方向へと今度は全速力で駆けだした。
中庭の生徒たちが居る個所からは死角となる場所に、かすみは居た。
「あ…あぁ……」
涙目で後ずさりするかすみに、人影がじりじりと歩みよって行く。
「かすみちゃん!!」
「先輩…」
菜生は咄嗟に、かすみとその人影の間に割って入り相手を睨みつける。
かすみに襲い掛かろうとしていた相手が校舎の陰から、日差しの差し込む場所まで出てくるとその姿が明らかになる。
女性的なボディラインに黒い体色、赤銅色の鎧のようなパーツが腕と足に付いているそれは光る眼をこちらへと向けていた。
「お前は何者なんだ…?」
菜生はかすみを庇う様にして立つと、制服のポケットにしのばせているコスモプラックを取り出す。
一触即発のピリピリした雰囲気の中、菜生はコスモスに変身しようとする。
「先輩待ってください!」
「かすみちゃん!?なんで?」
だが、菜生が右手に持ったコスモプラックを天に掲げようとした瞬間に、かすみが菜生の腕を掴んで引き留める。菜生はかすみの行動に驚き、動きが止まると目の前の異星人は後ろを振り返ると駆けだして姿を消した。
「はぁ…はぁ…」
それを見て、緊張の糸が切れてしまったのかへたり込んで肩で呼吸をしているかすみを、菜生は責めることは出来なかった。
次回 『空の魔女』
キャラクタープロフィール
・高田菜生
誕生日7月7日
身長156cm
好きなもの:クレープ・フライドポテト
嫌いなもの:暴力
搭乗バイクモチーフ車両:HONDA CBR250R
・遠山美月
誕生日5月25日
身長160cm
好きなもの:筋トレ、ピアノ演奏
嫌いなもの:幽霊・お化け
・遠山彩月
誕生日8月20日
身長145cm
好きなもの:可愛いもの全般
嫌いなもの:血