GWあたりまでに今やってるところは決着付けてしまいたいなと思っています。
シンと争ってから数日が経ち、他校との合同ライブを翌日に控えていた。
幸いあれ以降、スコーピスはおろか地球の怪獣もカオスヘッダーも現れることはなく。平和な日々を過ごしていた。
そのお陰で同好会のメンバーたちとの練習時間をしっかり確保することができたし、久しぶりに平和な日常を過ごせていた。
しかしあの日以降、シンはおろかサラとも会っていない。栞子は同じ学校の後輩という事もあって何度か言葉を交わす機会はあった。
その時に―
「高田さん、どうしたんですかその怪我?」
「あぁこれ?あの後転んじゃってさ」
「そんな怪我には見えませんが…」
本当のことを彼女に言うのは気が引けたために、そう言ってごまかそうとしたのだがそれでは栞子は納得してくれなさそうだった。
「本当に!本ッッ当に転んだだけだから!私は大丈夫だから、じゃあね!!」
そう言って走ってその場を振り切ったのだが、もしかしたら彼女と一緒にいるウルトラマンはそれに気が付いてしまったかもしれない。
それ以降、学校で栞子がこちらを見かけると心配そうな視線を向けているのは気づいていた。でも、向こうもどう話しかけていいのか困っている様子だった。
そして、同好会のみんなにも怪我の心配をされたのだが栞子の時同様に転んだといってごまかした。
しかし、せつ菜だけはスコーピスと戦った直後に会っているのできっとそれが嘘である事に気が付かないはずがないのだが、特に指摘することなく。普段通り接してくれていることがありがたかった。
そんなあれからの数日間を思い出しながら、菜生は練習に打ち込むみんなを眺めながらグラウンドの隅に座り込んでいた。
「いよいよ明日ですね!」
「そうだね。夏休み終わって一発目だけど、何度かライブを経験したし。今回はみんなリラックスしてそうだよね」
少しボ~っとしていると、気が付けばせつ菜が隣に立っており声をかけてきた。彼女も明日のライブを楽しみにしているようだった。
「大丈夫ですか?疲れているのだったら、部室に戻っても―」
「いや、ちょっと考え事してただけ。大丈夫だよ」
「ですが…」
「ライブが終わったら、皆にもコスモスの事明かそうかなって考えてただけ」
そう言って菜生は立ち上がると、グラウンドの方へと駆けだしていく。
もう同好会のメンバーの半分が菜生とコスモスの秘密を知っている以上、これ以上隠すべきではないと考えていた。
そんな菜生の様子を、せつ菜は見送る事しかできなかった。
菜生は今、大事な決断をした。そこに、言葉を挟む事は出来なかった。
そうして練習を行っている最中、同好会に来客が訪れた。
「こんにちは」
「あなたは―」
せつ菜の背後から声をかけてきたのは加奈だった。
「明日はよろしくねって言うついでに、見に来ちゃった」
「こちらこそです」
立ち上がって、加奈にそう返すがそこで加奈が一人で来ている事に気が付いた。
「今日はサラさんと一緒じゃないんですね」
「ヤだな~いっつも一緒に居るわけないじゃないよ。恋人じゃないんだから」
そう言っておどける加奈だったが、すぐに深刻そうな表情になる。
「ホントは誘ったんだけどね~。ちょっとサラちゃん今日は都合が悪いんだって」
「そ、そうだったんですね」
「でもなんか避けてるような感じしたなぁ…菜生ちゃんと喧嘩したのかなって思ってたんだけど、何か知らない?」
「いえ、私は何も―」
どうやら、サラもここ数日様子がおかしかったようで合同ライブの相談をするのに虹ヶ咲の名前。特にマネージャーと思っていた菜生の名前を出すと余計にそれが顕著だったのだという。
「でも菜生ちゃんも喧嘩するタイプに見えないし、気のせいだよね」
そう告げる加奈は、まるで自分に言い聞かせているようだった。
「サラちゃんって一年生の時に海外から留学してきたんだけどね。普段無口だしちょっと怖いところもあったけど、でも笑うとかわいくて私の歌を好きって言ってくれたの。だからわたしは今スクールアイドルができてるんだ」
それを聞いて、性格こそ全く違うが菜生みたいだなと思った。
「そういえば、どうして加奈さんはソロ活動を?」
「グループ名じゃなくて、私の名前を残したいから…かな?」
「それは―」
「私ね、物心ついた時から孤児院で育ったの。だから本当の親を知らない。解ってるのは、私に名前をくれたって事だけ」
加奈の言葉に、せつ菜は黙って耳を傾けた。
「小さい頃からスクールアイドルに憧れてて、有名になれれば見つけてくれるんじゃないかって思って今までやってきたの」
夏休みの初対面時の印象の強い彼女からは想像できない暗い過去を明した加奈は、暫く下を向いていて表情が見えなかったがそこまで言うと顔を上げた。
「ごめんね変なこと言って」
そう言って加奈はバツが悪そうに笑うと立ち上がり、他のメンバーにも挨拶してくると言って逃げるようにその場を去っていった。
そんな加奈の背中をせつ菜は見送るしかなかった。
「良かったのか?人間の友達と会わなくて」
「余計なお世話だ。今はサンドロスを警戒するのが優先だ」
一方で、ブルーエリアではギャシー星人達はサンドロスへの警戒を強めていた。
「あの加奈とかいう地球人になぜ拘る?まさかお前―」
「黙れ。加奈に近づいたのは、この星を知る為だ。それ以上は、何もない」
シンの言いかけた言葉を遮ったサラはかなりイラついている様子だったが、手元の装置を操作する手には一切の迷いはなく。地球の衛星上に配備したソナーを使って、スコーピス達の動向を探っている様子だった。
「それに、菜生に襲い掛かった事も私は許していない」
そういてサラはシンを睨むと、そのまま場を後にする。
「お前はやっぱりあの人間に、セナを重ねているのか…?」
シンがそう呟いた言葉に、誰かが答える事は無かったが、他のギャシー星人の研究者たちの対応に追われていた。
命の源も、彼らはまだ作り上げることは出来ないでいた。
一人になったサラは、着ていた背服の中に隠すようにして首に掛けていたロケットペンダントを取り出すと、中の写真を見つめ、憂うような表情を浮かべていた。
その時、スコーピスの接近を知らせる警報が鳴り響いた。
ギャシー星人達だけが、もう残された時間がわずかである事を知っていた。
そして地球には無数のスコーピスと思われる生命体の影と、巨大なガス状のエネルギー体が迫っていた。
舞台は戻って虹ヶ咲学園へ。加奈と菜生が、グラウンドの隅で明日の最後の打ち合わせを行っていた。
「―じゃあ明日は10時に会場に来てくれれば、すぐ中に入れるから」
「やっぱり、私達も手伝うよ?」
「いいのいいの!たまに練習でも使わせてもらってるホールだから、気を使わないで」
加奈と菜生が、明日に向けて最後の打ち合わせをしていた。
「それより、その怪我どうしたの?」
「ちょっと転んじゃってね…」
やはりというか、加奈も菜生の包帯は気になるらしい。菜生自身も何度目になったかわからない、転んだという嘘を言ってごまかす事に毎回心を痛めながらも、最後までこれは貫き通そうとした。
「明日はサラちゃんもいるから、もしライブ中に手伝いが必要になったらお願いね」
「任せて!」
「じゃあ、私は帰るから」
そう言って加奈が立ち上がった時、街中にけたたましい音量で警報が鳴り響いた。
「何、この音―?」
「まさか、スコーピスが!?」
つい最近、街を襲ったスコーピスが今度は10体以上の大群で飛来し空を覆いつくした。
すぐさま発進した防衛軍機がこれに対処すべく飛来するが、スコーピスの甲殻に阻まれて有効打を与えられずにいた。
「加奈ちゃん、直ぐに避難しよう!」
菜生は加奈の手を引いて、直ぐに同好会の皆と合流すると避難所へと急ぐ。
(数が多い、ギャシー星人とレイジャもきっとこの数は相手にしきれない…!)
全員で逃げている最中、菜生は立ち止まった。
「みんな先に行って!私―」
「そんな事できないよ!菜生ちゃん、二学期始まった時に巻き込まれて入院したんだよ?今回は私達と一緒に逃げよう」
「そうだよ、菜生ちゃんにまた何かあってからじゃ遅いんだよ?」
菜生を制止したのはエマと彼方だった。菜生がコスモスだという事を知らないメンバーからすれば、ここで菜生を置いて行くという判断ができるわけがなかった。
「でも、私行かないと…」
「行かないとって…今危ないんだよ?」
他校の生徒である加奈もいる目の前で、コスモスの事を打ち明けることができない菜生が言い淀んでいるとそこにサラが現れた。
「菜生、ここにいたか」
「サラちゃん!?家の用事だって…」
突如現れたサラに、加奈は驚いた様子だったが彼女は構わず続けた。
「よく聞け、今サンドロスがすぐそこまで迫っている。お前たちは逃げろ!お前のケガは私達のせいだ。お前に助けを求める資格なんてないのは解ってる。でも、もしもの時は…加奈を、人間たちだけでも守って欲しい!」
周囲の様子は無視して、サラは菜生の方を持って顔を近づけてそう告げる。
「我々だけではサンドロスには勝てない…でも皆を連れて、お前達だけでも無事に逃げ延びて」
そう言うと、サラは菜生の返事を待たずに彼女から離れる。
「加奈、今まで騙してごめん。でも、私はスコーピスと戦わねばならない!」
「…何言ってるの?わかんないよ―」
菜生から加奈へと視線を移したサラは、加奈にそう告げると動揺する加奈をそのままに右手を空に掲げる。
「レイジャ!」
サラの声に呼応するように、海底怪獣レイジャが学園近くの海面から勢いよく飛び出すと、サラの体はピンク色の光に包まれてレイジャの額へと入っていく。
そしてレイジャはサラを連れて、スコーピスへと戦いを挑んでいった。
そして、海底からはレイジャがさらに複数体飛翔しギャシー星人とスコーピスの総力戦が始まるのだった。
「サラちゃんってまさか…宇宙人、だったの?」
加奈は暫く放心していたが、ようやくその事実を飲み込んだ。
彼女がちょっと変わった人だと感じる事は、今までもあったがまさか宇宙人だなどとは全く思っていなかったのだ。
そんな加奈の手を引いて、同好会の皆は学園近くの避難所へと何とか辿り付いた。
避難所のモニターに映し出された外の様子は凄惨なものだった。
地上へとたどり着いたスコーピスによって、街は火の海になっていた。
「こんなことって…」
「街が、壊されていく」
愛と果林も、モニターをみて言葉を失っていた。
そんな時、菜生のスマホが着信音を奏でた。電話の相手は、母親のしのぶだった。
「もしもし、お母さん?」
『菜生、今どこにいるの?』
「皆と一緒に、学校の避難所だよ」
『良かった。あなたたちはそこに居なさい。何かあったら、避難所の指示に従うのよ』
「お母さんは?」
『私達も、あの怪獣と戦うわ。あなたの事は、絶対守るから。また後でね』
そう言って、しのぶは電話を切った。
しのぶの所属は防衛軍ではない。だが、そんなしのぶ達ですらも防衛に当たらねばならない程事態は良くないという事を示していた。
モニターには、防衛軍機とは違う。見たことない飛行メカが映され。同じく防衛軍機と共闘してスコーピスとの戦闘を行っていたが、やはり足止め程度にしかなっておらず。致命傷を与えるのは不可能なように見えた。
そんな中、レイジャも市街地に突入してスコーピスとの戦闘を行っていた。
レイジャ達は、複数体で一体のスコーピスを攻撃していた。
一体が囮となってスコーピスを誘い出し、残りが死角からスコーピスを攻撃して確実に仕留めようというのだ。
何度かの攻撃の末に、数いたスコーピスのうちの一体がついに撃破される。
その様子を中継で見た人々の心には、希望の光が見えた。
この調子なら、なんとかなるのかもしれないと。
だが、人々は忘れてしまっていた。
スコーピスの数が、前回とは比較にならない程多い事。
一体倒したことに喜んでいる間にも、街は破壊されて行っているのだ。
次回「守るべきものの為に」
余談ですが、山形りんごをたべるんご様作「RAINBOW X STORY」に以前私が書いた。「ラブライブ!サンシャイン!!〜大地と海の巨人〜」の主人公二人が登場し、強化形態を披露してくれました。
RAINBOW X STORY: https://syosetu.org/novel/224442/
ラブライブ!サンシャイン!!〜大地と海の巨人〜: https://syosetu.org/novel/219062/
ご興味ありましたら是非に