気が付けば春が終わり、こちらは梅雨も明けてしまいました。
なんとか夏が終わるまでに今やっている話は終わりまでこぎつけたいなと思っています。
そして可能ならば映画の最終章が出るまでにこちらも最終章近くまでいけたらいいなという目標を掲げて頑張ります。
―今から数年前の話
まだ惑星ギャシーが健在だったころ、ギャシー星人達は自然豊かな環境のこの星で平和な日々を過ごしていた。
「シンってさ、不器用だよね」
「…喧嘩売ってるのか?」
「まさか。でもさ気を使って言ってるつもりだろけど、あんなにトゲのある言い方したら嫌われちゃうと思うよ?」
隣に腰掛けてきた、腰まで伸ばした黒髪が特徴的な少女は笑う。
「だってそうじゃん。いくら里から遠くて原生生物もいる区画に入っちゃったからって、年下の子供相手に『食われたかったら行けばいい』なんて言っちゃうんだもん」
危ない場所に入ろうとした子供に、キツい言い方をして泣かせてしまったらしい。シンの隣の少女がそれをなだめて、今ここにいる。
「サラには悪かったと伝えてくれ」
「私には素直なんだね」
「ヨナ、揶揄うな」
そう言ってシンは立ち上がると、その場を後にした。
今シンと話していた『ヨナ』と呼ばれた少女はかつて、シンの恋人だった。
口下手なシンを気遣い、妹のサラや両親と幸せに暮らしていた。
そう、サンドロスが惑星ギャシーを滅ぼすあの日までは―
「シン!サラを…みんなをお願い!!」
(俺は守って見せる。ブルーエリアを、命の源を!そのために、どんな犠牲も厭わずに進んできたんだ!)
シンは、自身と融合したレイジャと共に空を駆け、スコーピスの群れと戦う。
かつて守れなかった、故郷を蘇らせるためにも。
その為にも、スコーピスとの戦いを繰り広げていく。一対一では分が悪くとも、他のギャシー星人達とレイジャの力を借りて確実に一匹ずつ―。
倒しても、倒してもキリがないスコーピスの群れ。
徐々に撃墜されて数を減らしていく防衛軍機。やがて救援にSRCの飛行メカが3機も現れたが、状況が好転していいっているようには見えなかった。
避難所はすでに人で溢れている有り様だったが、いつまでこの場所が安全かも判らない。
―このままじゃここだって危険だ!
―外に出して頂戴!!
そんな中で、周囲からはそんな声も聞こえ始める。
その時、栞子の目に避難所の中で危険を訴える人たちの暴動に押し出されて転ぶ5歳くらいの少年が目に留まった。
「大丈夫ですか?」
咄嗟に駆けだした栞子は、その子を支えて立ち上がるのを手伝う。
「ウルトラマンコスモス、来てくれるよね?」
その言葉に、栞子は直ぐに答えられなかった。
菜生の身体が傷付いている事も知っていたからだ。だから、気安く来るなどとはいえなかった。
「ねぇ、コスモス来てくれるよね?」
「はい。ウルトラマンは、必ず来ますよ」
再度問いかけてくる少年に、栞子は優しい声色でそう告げる。やがて少年を探していた母親が現れ、少年は母に手を引かれて避難所の端の方へと歩いて行った。
栞子は、自身の左胸に付いているバッジに視線を落とす。
自身の中にも、ウルトラマンがいる。しかし、傷が癒えていないこの状況で出て行っても思うように戦えない事は理解していた。
そして、彼女の中にいるウルトラマンは栞子を戦わせることを拒んでいた。
いや、栞子が戦いを恐れている事も見抜いた上での事なのだろう。今までに数度だけ変身したが、命がけの戦いは経験していない。それでも、宇宙人たちと相対するのに恐怖を感じていたことを見抜いていたのだ。
だから、栞子に戦う事を求めなかった。だが、菜生とコスモスがしているように栞子と一体化していないと本来の姿を保つことが出来ない。
それもすべてわかった上で、今はギャシー星人や菜生とコスモスに任せているかの様に今は何も言ってはくれなかった。
そんな中、菜生も迷っていた。制服のポケットの中のコスモプラックへと手を伸ばも、先日の戦闘でコスモスもダメージを負っている上に、菜生はシンの攻撃でさらに傷ついている。
先ほどサラの言っていたには、スコーピスではなく。サンドロス本人が現れた時を考えて、コスモスがなるべく万全に近い状態でサンドロスと相対して欲しいからだという事も理解しているつもりだ。
だからこそ、直ぐに飛び出していく事を躊躇していたのだ。
そしてコスモスは、菜生に判断を任せるかのように変身することを急かすようなことはしなかった。
地球を、惑星ギャシーの二の舞にはしたくない。
それに、この星にギャシー星人がいると知られてしまった原因は菜生の行動にもあるのだから。
(サラちゃんには来るなって言われたけれど…。でも行かなくちゃ)
こっそり外へ出ようとした所、腕を掴んで引き留められた。
「どこ行くの?」
腕の正体は果林だった。
「どこって…」
「今一人で行動するのは危険よ。それに怪我してるんだから」
諭すように言われて、菜生は何と答えるか悩んだ。
「さっきのサラちゃんの様子から想像はつくけれど、そんな体で行かせる訳にはいかないわ」
「でも…」
「ねぇ」
それでも言いよどむ菜生の横には、加奈が立っていた。
「サラちゃんが宇宙人だって事、菜生ちゃんは知ってたの?
それは恐らく、この場にいた全員が思っていた事だろう。
「私は…私は知ってたよ。サラちゃんと加奈ちゃんに初めて会った日の夜に、本人からね」
「なんで私にも教えてくれなかったことを、初対面の菜生ちゃんには教えたの!?あなたは何者なの?」
加奈は声を荒げるが、それはきっとサラがずっと一緒に居た自分には言わなかった秘密を菜生が知っている事に対して様々な感情が入り乱れているのだろう。
「ここだと知らない人にも聞かれちゃうかもだから、あっちの隅でもいい?」
避難所の片隅に集まって、部外者に会話が聞こえないようにしてから菜生は話し始めた。
サラ達ギャシー星人の事、そして惑星ギャシーを滅ぼしたサンドロスとその配下の怪獣であるスコーピスの事を。
そして最後に―
「そしてなんでサラちゃんが、私にだけそれを教えたかだよね」
加奈だけでなく、ニジガクの皆の視線が菜生に突き刺さるのを感じた。
「―私が、ウルトラマンコスモスだからだよ」
「―ッ」
その言葉に、この事実を知らなかったメンバーと加奈は息を呑んだ。
「じゃあ…転んだって言ってたその怪我って」
「これは、サラちゃんと同じギャシー星人の人と揉めた時にね。だからサラちゃんは、さっき私に来るなって言ったんだと思う」
普段なら多少のケガは、コスモスと同化している事による恩恵か。以前より治りが早くなっていた。だが、先日の戦闘のダメージが深くコスモスもかなり消耗している。
そこにシンとの一件で、更に傷を負ってしまったせいで菜生の身体は文字通り傷ついていた。
「それで、この怪我をしたときに言っちゃったんだ。『あなた達と一緒には戦えない』って」
「怪我までさせられたんだから、菜生ちゃんがそう思うのは仕方ないよ」
「菜生ちゃんとサラちゃんの間にそんなことがあったなんて…」
菜生の怪我を見てエマは仕方がないと言うが、加奈はそれでもサラを大事に思っている。だから彼女は、菜生に次の様に告げた。
「それでも、サラちゃんを助けて!無茶なお願いなのは解ってる。でも、それでもサラちゃんは友達なの!」
「そうだね、行ってくるよ」
その言葉に、菜生は笑って答えた。
スコーピスの群れを相手に、シンとサラは賭けに出た。
二人は空高く舞い上がり、二体のスコーピスを誘導する。そして雲の中に入り込むことで攪乱しようというのだ。
「シン、今だ!!」
サラの掛け声に合わせて、シンと一体化したレイジャは口からは波動弾を放つ。
放たれた一撃は、雲の中を突っ切り。サラと一体化したレイジャを追いかけまわしていたスコーピスに直撃。
動きが止まったところを今度は二人で集中砲火を浴びせてとどめを刺した。
「サラ、もう一体は?」
「シン、右だッ!!」
一体撃破して気が緩んだ一瞬の隙をついて、二人の死角になっていた雲の中からもう一体のスコーピスが現れる。
そして死角から強襲してきたスコーピスの攻撃を、シンは気が付いた時には避けられない距離にいた。
(や…やられるッ!?)
そう思った瞬間、シンは一体化しているレイジャ越しに強い衝撃と共に吹き飛ばされた。
だが、それがスコーピスの攻撃によるものではない事は直ぐにわかった。
自分が墜ちていく感覚の中で、視界の隅に見えたのは―サラと一体化しているレイジャが、シンのいた場所でスコーピスに囲まれている所だった。
『サラ、なぜだ!?』
シンを庇ったレイジャは、スコーピスの爪が腹部に突き刺さり青い血が噴き出し腹部を青く染めていた。
「やめろぉおおおおお!!」
避難所から駆けだした菜生はそう叫びながらコスモプラックに手を伸ばす。
しかし無情にも、生き残っていたスコーピスがレイジャを取り囲みサラ目掛けて光弾を発射。
空中で大爆発が起こると、その中から燃え盛る巨体が海面へと激突した―。
シンは地上に墜落すると、レイジャとの一体化が解除されそのまま空き地に叩きつけられるようにして転がった。全身に痛みが走ったが、まだあきらめるわけにはいかない。
再びレイジャとの一体化を図ろうとしたが、レイジャにはもう戦う力は残っておらず地上で呻いていた。
そして、邪魔者を片付けたスコーピス達の次なる標的は、目下の街だ。
スコーピス達は地上を見据えると、再び破壊活動を開始する。
そしてそのうちの一匹が狙ったのは、他でもない避難所だった。
「皆さん外へ!ここは危険です!!」
避難所の防衛についていた職員たちの声に促され、全員が外へ逃げ始める。
だが、外へ逃げてもこのままでは助からない。皆がそう諦めかけていた。
「どうして…どうして夢を奪うの!?」
菜生は空を睨んで吠える。その目尻には涙が流れていた。
「あなた達にそんな資格があるの?誰かの夢を奪う資格なんて誰にもないハズだよ!」
自分たちの生まれ育った星を復活させる。そんな彼女の夢を、彼女の命ごと奪う非道な行いに強い憤りを感じ、それをぶつけるように叫んだ。
「これ以上、夢は奪わせない!私が―『私達』が守って見せるッ!!」
サラ達の為にも、そして―菜生自身の夢を護る為に、菜生はコスモプラックを天に掲げて光を纏う。
「コスモース!!」
菜生を包み込んだ光は、まるで太陽のプロミネンスのような灼熱のエネルギーへと変化し空を舞う。
そして、その光がこちらへ向かってくるスコーピスのうちの一体を焼き尽すと一層その大きさを増した。
「菜生ちゃん…」
歩夢の視界の先で大きさを増していく灼熱の光球は、自身の周囲に小さい光球がいくつも飛び交っており。それらが全て中心へと収束していく。
その光の収束が収まった時、光の中から
『一瞬で、ケリを付けるよ!』
避難所を守るように立ち上がったコスモスに向かって、二体のスコーピスが飛翔しつつ次々に光球を放ちながら肉薄する。
前回の戦闘では、せつ菜を守る為に防御態勢を取らなかったとはいえ、かなりのダメージを負った攻撃だった。
「フッ!ハァッ!」
だが、エクリプスとなったコスモスはその光球を次々と両腕を振り下ろし全て破壊していった。
光球が逸れるなどという事もなく。全てコスモスの腕に触れると火花を散らして消滅していく。スコーピス達も、躍起になってさらに光球を放ったがコスモスには傷一つ付かない。
「ハァァァアアアア――」
すると今度は、コスモスが右の拳を振りかぶりエネルギーを収束させる。
スコーピスの内の一体は、攻撃することに夢中になり、自分がそんなコスモスの真正面から突撃している事をしっかり認識できていなかった。
「KYURUUUUUUU!?」
コスモスの目の前まで接近してようやく気が付いたのか、奇声を上げながら身を捩ったがもう遅い。スコーピスは真っ直ぐ吸い込まれるようにコスモスへと突っ込んでいった。
ダイヤモンドクラッシュを放とうとしている、ウルトラマンコスモスへ向かって一直線に。
「セイィィヤ!!」
高出力のエネルギーを纏った右拳は、一直線にスコーピスの顔面へと撃ち込まれ。顔面を無残にも潰されたスコーピスの体は粉々に吹き飛んだ。
ダイヤモンドクラッシュで同胞が粉微塵に吹き飛んだのを見て、スコーピス達は恐怖したのか。コスモスから逃げようとする。
それを追おうとした時だった。
「ウルトラマーン!!」
その声にコスモスは振り返る。声の主は、加奈だった。
「守って!サラちゃんの…みんなの夢を!!」
その言葉に、コスモスは頷くと空を見上げ、飛び去っていったスコーピスを追うべく空へと飛び立った。
だが、そんなコスモスの様子を宇宙から見ている存在の事など、この時は誰も考える余裕はなかった。
次回『決意の光』