思いのほかメンバーの出番までたどり着かず頭を抱えています
「それにしてもラッキーだったよね、あそこから無傷で助かったんだから」
「あはは…そうだね、きっとコスモスが助けてくれたんだよ」
翌日の登校中、そう菜生に語り掛ける歩夢に本当の事を話すわけにもいかずそう当たり障りのない返事をする菜生。
「でもコスモスは、どうしてまた地球に来たのかな?」
「うーん…?私を助けにきた-」
「え?」
「なんてね、多分リドリアスを変化させた謎の光が関係してるんだと思う」
歩夢に聞かれたことに、菜生はすこしふざけながらも推測を述べる。あの後、コスモスは菜生には何も教えてくれなかった。きっと菜生の中に今もコスモスはいるハズなのに、何も言ってはくれない。
だから菜生は、なぜ6年越しにウルトラマンコスモスが地球に現れたのか考えていた。
「菜生ちゃん、リドリアスが大好きだもんね」
「リドリアスは大事な友達だから…だから、歩夢やみんな私の大好きな人を傷つけて欲しくなかったんだ」
そう告げる菜生を頬を歩夢は引っ張る。
「ひょっひょっとひゃにふるの?(ちょ…ちょっと何するの?)」
「あの時とっても心配したんだから、菜生ちゃんが傷ついたら私も嫌なんだからね」
そう打って変わって真剣な眼差しで告げる歩夢に、菜生は頷くと歩夢もふっと笑みをこぼすと菜生の顔から手を離す。
「約束だからね?」
「うん、わかった」
そう言って歩夢と約束する菜生だが、正直その約束は守れないのかもしれない。再び菜生もコスモスと一緒に戦わねばならなくなるかもしれないからだ。
(コスモス…あなたはどうしてまた地球へ?)
再びそう語り掛けるが、やはりコスモスは何も答えないし輝石が輝く事もなかった。きっとコスモスは力を使い果たして眠っているのかもしれない。そう思って菜生は詮索をやめ、放課後生徒会室に行って何と言って同好会を存続させるかを考えることにした。
そして放課後、菜生は一度同好会の部室へと向かった後。かすみと合流すると、ふたりで生徒会室に向かうのだった。
「もう、凄い勢いで反対方向に向かって行くからびっくりしましたよ」
「あはは…ごめんごめんから回ったかも?」
合流してよし生徒会室へ。そう言って部室から出た菜生は、色々考えていたのもあって逆方向へと向かってしまった。そんな菜生に若干呆れ気味で案内してくれたかすみに、そう言って菜生は頭をかく。
「あー…から回っちゃう事ってありますよね。そういうの、わかります……」
そんな菜生を見て、かすみはそう言って顔を伏せる。
「かすみちゃん?」
「あっ…なんでもないでーす」
そんな彼女の異変に気がついたのか、菜生はそう言って顔を覗き込むとかすみはすぐに顔を上げると知り合った時から頻繁に見せるかわいらしい笑みを浮かべる。
「さっ、着きましたよ先輩。ノックですよ、ノック。直談判するんですよね?生徒会長と」
「さすがに緊張してきたなぁ…」
そう言って菜生は首にかけた輝石に手を伸ばし握りしめる。
「わっ綺麗な石ですね」
「へっ?そう?ありがと、大事な友達に貰ったんだ。じゃあ、行こうか」
無意識にやっていた行為によって、かすみに普段制服の中に隠している輝石を見られるが菜生はあまり輝石の事には触れずにそう言って生徒会室の扉をノックする。
「どうぞ」
中からそう声が聞こえたので、意を決して菜生はかすみと共に生徒会室へと入っていく。
「失礼します、今日は生徒会長にお願いがあって…」
名乗るのも忘れてそう菜生は告げる。中にいたのは長い黒髪を三つ編みにて左右に垂らし、眼鏡をかけた真面目そうな少女だった。
「あなたは確か…情報工学科二年、高田菜生さん」
「え?私の事知ってるんですか?」
「この生徒会長、学校にいる全員の顔と名前を記憶してるんですよ」
「すご…」
菜生は生徒会長とは面識は無いつもりだったが、科と名前を言い当てられて驚く。するとかすみが菜生にそう耳打ちすると、菜生は驚くとそう小さく呟く。
「そういうところが、かすみんは苦手なんですけどぉ…ロボットっぽいっていうか……」
「はじめまして、私は生徒会長の中川菜々です。…それで?ロボットみたいな私に何か御用ですか?」
そう言って生徒会長―奈々はそんなかすみの耳打ちが聞こえていたのか、そう笑みを崩さないまま問いかけると。かすみはすぐに菜生の背後に隠れる。
「私、スクールアイドル同好会の件できました。同好会の解体、取りやめて頂けませんか?」
「スクールアイドル同好会に、あなたのような部員はいませんでしたが?」
「部員じゃないけど。それでも私は、同好会に無くなってほしくないんです」
部外者のはずの菜生がどうして、そんな事を頼みに来たのか不思議そうにする菜々だったが、すぐにそんな表情を消して冷たく答えた。
「それはできかねます」
「どうして?部員は少ないのかもしれないけど…それでも、真剣にスクールアイドルを目指している生徒が居るというのに!」
そんな奈々に、菜生はそう食って掛かるように声を大きくする。だがそんな菜生の様子に眉一つ動かさず目の前の少女は続ける。
「我が校の生徒はあなた達だけではありません。虹ヶ咲学園は生徒の自主性を重んじ、あらゆる部活動を推奨しています」
「だったら…!」
「ですから、本校においてもスクールアイドル活動を盛り上げるべく同好会を立ち上げ、スクールアイドル活動を希望する生徒は他校からの編入も受け入れました」
菜々からその事実を告げられ、菜生は余計に解らなくなった。そこまで力を入れていたのに、どうして解散するのかが。
「本校としては、スクールアイドル活動を推奨したつもりです。そういう背景もあり、同好会の活動は最初の内は順調に進んでいたようですね」
「そうですよ!実際、せつ菜先輩はスクールアイドルとして活躍だってしてたじゃないですか!」
そこでそれまで菜生の後ろで話を聞いていたかすみが口を開く。そのせつ菜という部員が、一番活躍していた生徒なのだろう。だがその名を聞くと奈々は顔を伏せると、後ろを向いて窓の外へと視線を移してしまう。
「ええ…実績を作った生徒も…いましたね……」
そう告げる菜々の声は、どこか悲しげだった。
「それなら、何の問題もないんじゃ…?どうして今解散だなんてことになったんですか?」
「それは…そのぉ……今はちょっとみんなお休みしてるだけで、また戻ってくるはずなんです」
菜生がそう問いかけると、かすみがそう答える。
「じゃあそのせつ菜って人が戻ってくれば、みんな戻ってくるんだよね?だったらそのせつ菜って人にお願いしに行こうよ」
「ええっと先輩…その話は……」
だったら一番実績を残していたであろう人物に戻ってきてもらい。同好会をまとめてもらうのはどうかと提案するのだが、それを聞いてかすみは目に涙を浮かべながら何かをいいかける。
「あなたの言う、そのせつ菜という部員が同好会に亀裂を入れたんですよ」
かすみが言い澱んでいるのをよそに、菜々がそう冷たく言い放つ。それを聞いて菜生は言葉を失ってしまう。
「違います!亀裂なんて入ってないです!誰も怒ったりなんかしてなかったですもん!わかったような事言わないでください!」
そこにかすみがそう泣きながらも強く訴える。
「さっきも言った通り、今はちょっとみんなお休みしているだけなんです。きっと戻ってきます!」
「それはいつですか?中須さん。虹ヶ咲学園には沢山の部活、同好会があります。部室の空き待ちをしているところもあるんです」
だが菜々は、そんなかすみに淡々と事実を告げる。
「人もいない、活動もしていない同好会ではなく。きちんと活動しているところに部室をあてがうのは、間違っていますか?」
そう告げる菜々の言い分はもっともだった。いつ活動を再開するか解らない同好会に部室を割くわけにはいかない。だがだからといってここで、かすみの夢が潰えてしまうのを菜生は許せなかった。
「…でも、まだ退部したわけではないんでしょ?」
「そうです!」
そう問いかける菜生に、かすみはそう答える。
「退部していないなら…」
「それは詭弁では?」
だったらと口を開く菜生を、そう言って菜々は遮る。
「じゃあ、ちゃんと人数が居て活動すれば同好会の存続を認めてくれるんですか?」
「それはもちろんです」
ここから先は賭けになる、勝算も解らない。でれでも菜生はここで引き下がりたくなかった。
「なら、今月中に同好会が活動するのに必要な人数を集めます。それならいいでしょ?」
そう告げる菜生に、菜々は一瞬驚いたような顔をするが。すぐに笑みを浮かべる。
「わかりました。ただし、一つ条件を出させてください」
「…なんですか?」
「10人、10人の部員を集めることが出来たら、同好会の存続を認めましょう」
現在菜生と面識のある部員はかすみのみ、元々何人いたかは把握しきれていないがせつ菜という生徒が戻ることを拒んだ場合。菜生が入部してもあと8人必要になる。そう考えているとかすみが口を挟む。
「なんで10人なんですか!?同好会は5人いれば成立じゃないんですか?」
「今現実に5人が1人になっているのです、また同じ人数では二の舞になるのではないですか?」
またかすみ以外が来なくなる。そんな事態を繰り返さないための措置で10人いれば5人抜けてもまだ5人残る。そういう判断なのだ。
「無茶言わないでくださいよぉ…」
そうかすみが泣きそうな声を上げる。
「わかりました、10人集めればいいんですね?」
「先輩!?」
その条件を呑んだ菜生に、かすみは振り返って驚きの声を上げる。
「かすみちゃん、やってみようよ。夢は諦めなきゃ、絶対叶う。奇跡だってなんだって起きる!」
だがそんなかすみの不安などいざ知らず、菜生はそう言って笑いかける。絶対になんとかすると、彼女の表情が物語っていた。
「せ、先輩…!わかりました、10人集めましょう!」
生徒会長の出した条件を呑むことでその場は収まり、部室へと戻ったのだが―
「はぁ~…」
「どうしたのかすみちゃん?」
部室に戻るや否や大きなため息を漏らすかすみに、菜生はそう首を傾げる。
「だって今まで5人で活動していた同好会に10人集めろって言われても…勢いでやるって言っちゃったけど、どうしましょう…」
「とにかく、まずはこの同好会の事を教えてくれない?とりあえず元々いたメンバーがみんな戻ってきてくれれば、新しく勧誘するのはとりあえず5人で済むし。期限もあるし、なるべく最短で行こう」
「わかりました、何でもかすみんに聞いてください!」
彼女の口から語られたのは、元々5人で活動していた同好会のメンバーは。先程話題に上がった優木せつ菜、それに他校からスクールアイドル活動の為に転校してきた。
近江彼方、桜坂しずく、エマ・ヴェルデに目の前にいる少女、中須かすみの5人で今まで活動していたのだという。
菜生自身、このメンバーの誰とも面識がないのでどのような人物かは知らないが、亀裂云々と生徒会長は語っていたがかすみ自身そうは思っていないらしく。
単純に、メンバーそれぞれの個性がバラバラだった結果、目指したい方向性の違いで上手くいかなかったと言う事らしい。
「部活動発表会ってあったじゃないですか?」
「あぁ、あれね。でもスクールアイドル同好会って…」
「出れなかったんですよ」
そうだろうとは思った。菜生も部活動発表会は見ていた、だがスクールアイドル同好会の発表は無かった。
「私達ももちろん、グループでライブを開こうとしたんです。初めてのステージだったから、みんなすごく楽しみにしてて…」
そう告げるかすみは、目を伏せると「でも…」と言葉を続ける。
「やりたいことがバラバラ過ぎて、うまくまとまらなかったんです」
「そう…なんだ……」
纏らなかった結果、ライブを行うことが出来なかった。みんなやりたかっただろうに、菜生はその事に何と言って良いか解らなかった。
「それで気がついちゃったんですよね。かすみんたちって一緒の方向には行けないんだなって、だからお互い遠慮するようになっちゃったっていうか…」
「せつ菜さんは、その時はまとめてくれなかったの?」
ずっと中心で動いていたのなら、その時彼女はどうしたのだろう。そう思い、菜生は問いかける。
「せつ菜先輩が一番遠慮してたような気がするなぁ…元気なかったですし……」
「それで、自然消滅みたいな形に?」
「みんな段々来なくなっちゃいました。情熱があればなんでもできる訳じゃないってわかったのはいい勉強になりましたよ、ほんと…」
そう自嘲気味に笑うかすみに、菜生はなんと声をかけるべきか迷っていた。こんな時、自分に勇気をくれた人たちならなんと声をかけてくれるだろうかと。
「…でも、情熱って大切だと思うな。情熱がなかったら、頑張ろうって思えないもん」
「先輩…」
「やっぱり、元々いた人たちに最初は声をかけるべきだよ。大丈夫、きっと戻ってくる!」
「どうしてそう思うんですか?」
そう言い切った菜生に、かすみはそう問いかける。菜生も絶対的な自信があった訳では無い。ただそれで彼女を勇気づけることが出来ればと思っていったことだった。
「直感…かな?まあとにかく!明日から声かけてみよう?夢を諦めちゃいけないんだよ」
そう誤魔化すように告げる菜生は、どこか自分に言い聞かせているようだった。
「先輩…?」
「とにかく明日から、今日はもう遅いし帰ろう」
そんな菜生の様子に気がついたのか、かすみが菜生の顔を覗き込むと菜生はそう誤魔化すと自分のカバンを持つ。
「じゃあまた明日ね」
そう言って菜生はそのまま帰ってしまった。
(私の…夢……)
アストロノーツになる事、亡き父のように宇宙に行く事。でも今は、違う夢を追いたいと思っている自分がいる。
スクールアイドルを応援したい。あのステージの上で輝く少女たちを、もっと近くで。
そして宇宙へ行く事が、本当に自分の夢なのか?空手を辞めたあの日から、菜生の心の中でしこりのように残っていた。
一方その頃、虹色の光の集合体が地底へと光線を撃ち込んだ。そしてその結果、地底深くで眠っていた存在が目覚め地上へと上がってこようとしていた。
あれ…?歩夢よりかすみの方が出番多い…?
9人揃うまでの道のりは長いかもしれません、前作より話数多くなるのはほぼ間違いないと思います。
ゆっくり待っていてもらえれば幸いです。それではまた次回で