なんて思いながらも、9人揃うのを楽しみにしながら書いてる筆者です。
翌日の放課後、菜生はさっそく同好会の部室に向かった後、かすみを引き連れて教室棟へと向かった。
「先輩!どこ行くんですか?前同好会にいた人たちを説得しに行くんじゃないんですか?」
「うん、まぁでもその前にちょっと実績を積んでおこうかと思ってさ?」
「実績?」
そう告げる菜生の言葉を反芻するかすみを余所に、菜生は2年の普通科の教室へと向かって行く。
「戻ってきてほしいって説得するだけより、今度は以前とは違う。みんなで頑張っていけるんだってわかってもらわなきゃ」
「一体どんな実績を積むんですか?」
「頑張っていける人に入ってもらうの」
「…頑張って……いける人……?」
そう告げる菜生に、かすみは余計に謎が深まったと言いたげな顔をしているが。そんなこと菜生はお構いなしにある教室の前で立ち止まる。
「あれ?先輩って普通科でしたっけ?」
「ううん、違うよ」
普通化2年の教室の前で立ち止まった菜生に、かすみはそう聞くと菜生は首を横に振る。
「あれ?菜生ちゃんだ」
「やっほー、歩夢居る?」
「いるよ、呼んでこよっか?」
普通科の生徒が菜生に気がつくと駆け寄ってくる。普段からよくその歩夢という生徒に用があって来ているらしい。
その生徒をこれから勧誘するつもりなのだろうか?などとかすみがそんな菜生の様子を見ているとその生徒がやってくる。
「ええっ!?私がスクールアイドル同好会に!?」
かすみの予想通り、菜生は歩夢をいきなり同好会に入らないかと勧誘し始めた。だがやはり、歩夢はその突然の誘いにあまりいい顔をしなかった。
「お願い!他に頼めるの歩夢だけなんだ!」
そう言って菜生は手を合わせて頼み込むが、歩夢は困った顔を浮かべるだけだった。
「あ、あんな風に歌ったり踊ったりするの、私には無理だよ!私なんかとは世界が違う感じだったし…」
「先輩、先輩」
そんなやりとりをいていると、かすみが菜生の袖を引っ張る。
「どしたの?かすみちゃん」
「頑張って行ける人って、この人ですか?」
「そうだけど?そっか、この前会ってたけどお互いの事知らなかったね。紹介するよ、上原歩夢。私の幼馴染なんだ」
「幼馴染ーッ!?」
急に大声で驚く彼女に、「そんな驚く事…?」と菜生も困惑するような表情を浮かべる。
「だって先輩、その人とそんなながーいお付き合いなんですね…」
「まあそう言う事になるのかな?そうだ歩夢、この子はスクールアイドル同好会の中須かすみちゃん、一年生なんだって」
そう言って菜生は歩夢にもかすみを紹介する。先日会ってはいるが、お互いの名前を知る暇もなかっただろうしと。
「歩夢はどんな時も頑張れる子で、私凄いなって。だから、歩夢がいいてくれればもっと頑張ろうって思えるし…かすみちゃん?」
「かすみんだって頑張れますけど」
「それは解ってるよ、それに私一人が助っ人じゃちょっと心もとないしさ?」
歩夢を勧誘しようとした理由を告げると、なぜか拗ねるような態度をとるかすみに菜生はそう付け足す。すると「先輩がそう言うなら…」と納得してくれた。
「やっぱり菜生ちゃん、凄い行動力だよね」
そんなやり取りを見ていた歩夢がふふっと笑うとそう告げる。「そうかな?」と首を傾げる。
「だって菜生ちゃん、スクールアイドル部を探しに行ったと思ったら。同好会を存続させるために頑張ってて、出会ったばっかりの後輩ちゃんにこんなに頼りにされてるなんてすごいよ」
「後輩ちゃんっていうの、かすみんのことですよね?先輩とはちょー仲良しなんですよぉ」
「ふふっそうなんだ」
そう言われてなぜかかすみの方が嬉しそうにそう答える。
「ねえ?幼稚園の時の事覚えてる?」
「幼稚園?…なんかあったっけ?」
不意にそう聞かれるも菜生は咄嗟に思い出せず、そう言ってほほをかく。咄嗟に思い出せるほど大きな事なんてあったかなぁと。すぐに思いつくのは、嫌な思い出だけ。
「私にとっては大事な思い出なんだけどなぁ…菜生ちゃん、お遊戯会のステージに立つのを恥ずかしがってた私に『ステージの上で頑張れば、お客さんみんな笑顔になってくれる』って」
「そういえば…言った気がするなあ…」
「頑張る私の事応援するからって、私の両手をぎゅって掴んで凄い笑顔で言ってくれたよね」
なんとなく恥ずかしくなって菜生はそっぽを向いてしまう。
「菜生ちゃんがいたから、色んなこと頑張ってこられたんだ。…だからね、菜生ちゃんとスクールアイドル頑張りたい!」
「ホントに!?」
「いいんですかぁ!?」
正直最初の反応を見た時断られることも覚悟していた。思わぬ返事に菜生もかすみも誘っておいてなんだが思わず驚いてしまう。
「うん、これからよろしくね。後輩ちゃん…ええっとかすみさん?」
「歩夢先輩は先輩なんだから、かすみんって呼んでくれていいですよ?」
「でも、部活はかすみさんの方が先輩だし…」
「もっとフレンドリーにしてくださいよ!これから同好会の仲間になるんですし~!」
「フレンドリー?…あだ名とか?えっと、中須かすみちゃんだから…かすかす?」
そう聞いてみると、かすみはさきほどまで浮かべてきた無邪気な笑顔が消えた。
「ぎゃーーーー!なんで昔のあだ名知ってるんですか!?かすかすはダメです!禁止禁止!!」
「か、かすみちゃんでいいよね?ね?」
咄嗟にそう言って菜生が割って入ると「そっそれでお願いします!」とかすみも言ってくれたので歩夢もかすみちゃん呼びで合わせてくれるだろう。
「私まだ、スクールアイドルの事とか全然わからないからこれから教えてね?精一杯頑張るから」
こうしてまずはメンバーを2人に増やすことが出来た。この調子で10人目指して頑張って行こう。幸先のいいスタートが切れたと菜生は思っていた。
「ふわぁ~」
数日後の朝、まだ眠気が抜けきっていないまま寝起きのラフな格好でリビングへと入っていくと。彼女に似た黒髪を腰まで真っ直ぐ伸ばした女性と目が合う。
「おはよう、菜生」
「お母さん、おはよう。そっか今日はお休みだっけ?」
母が休みの日は、母親と挨拶を交わして、対面に座って朝食を摂る。もう10年以上続いている、いつもと変わらぬ朝の光景。
SRC関連の医療施設で働く母親とは、その仕事の関係であまり家で顔を合わせる時間は多くないが、母も菜生との時間をずっと大事にしてくれている。
「菜生聞いたわよ、この前リドリアスが街に来た時、近くまで行ったんですって?」
「へ?あーええっと…」
やっぱり無茶やったよなあと少し反省しつつ視線を泳がせる菜生に、母は続ける。
「菜生は昔っから無茶したがるんだから、気を付けなさいよ?まだお父さんの所に行くのは早いんだから…」
「ごめん…」
そう母親に告げられ、菜生はそう短く答えると顔を伏せる。父親を亡くしてからずっと女手一つで菜生を育ててくれた母親に、心配はかけられない。そんな事、菜生は解っていた筈なのにと。
「ほんと、そんなところはお父さんに似ちゃったんだから」
「あはは……」
「そうだ、歩夢ちゃんと新しい事始めるんでしょ?スクールアイドルだっけ?」
しんみりした空気になったところで、母がそう話題を変える。
「うん、私と変わらない普通の高校生が、歌と踊りで人を感動させられるのってすごいなって…そんな人たちを応援したい。支えたいって思ったんだ」
そう答える菜生にうんうんと母は頷く。
「歩夢ちゃんも一緒なら安心ね。最近色々物騒だから、気を付けるのよ?」
「それって…あの光のウイルスの事?」
光のウイルス―大人しいリドリアスの身体を恐ろしい姿へと変え、街を破壊させた存在。コスモスのお陰で事なきを得たが、その存在は未だ謎に包まれている。
「科学技術部じゃ『カオスヘッダー』って呼ばれてるんだけど、取り付かなくても街を壊滅状態にするだけにエネルギーは持ってるし…用心はするべきよ?」
「わかった」
「そうだ、こんどそのコスモスに貰った石を結ぶ紐。新しいの買わないとね」
そう言って菜生の首にかかった輝石を結ぶ紐を指さす。母は知らないがリドリアスの前で振り回したりしていたので、最近少し痛んできていた。
「また結んでくれるの?ありがとう!」
「どういたしまして。ほら、早くしないと遅れるわよ」
「やばっ…」
時間を見ると既にいつもより時間に余裕がない。慌てて残りの朝食を口に押し込むと立ち上がり、自室に戻って制服に着替えて歯を磨く。なんとか間に合いそうだなと思いつつカバンをもって玄関へと向かう。
「それじゃあ行ってきます!」
「いってらっしゃい」
右手の人差し指と中指だけをくっつけてピンと伸ばして額の前に持ってきて敬礼のようなポーズをとる菜生に、母はそう手を振って送り出す。
「おはよう菜生ちゃん」
「おっはよー」
菜生と歩夢の家は、同じマンションの隣同士だからこうして同時に玄関から出てくると言う事もよくあった。待ち合わせしている訳では無いけど、こうして一緒に通学するのが恒例となっている。
「今日も演劇部に?」
「うん、やっぱり演劇部として活動している時の桜坂さんに声をかけるべきかなって」
菜生はここ数日、演劇部を見に講堂に放課後は通っていた。まずかすみの同級生である、桜坂しずくに同好会に戻ってくる気はないかと誘う事にしたのだが、なかなか話しかけるきっかけがつかめなかった。
演劇部として活動していて、それでもまだスクールアイドルへの熱意があるのなら。きっと戻ってきてくれるだろうという発想だったのだが、演劇を見ながら菜生は少し迷っていたのかもしてない。
そして放課後、かすみも交えた3人で演劇部の講演を講堂で観させてもらった後菜生は意を決して演劇部の部室へと向かった。
「桜坂しずくさんいますか?」
「私に何か用ですか?」
そう言って菜生の前に立ったのは、ダークブラウンの髪をお嬢様結びにし大きなリボンで結んだ少女だった。
「ちょっと今一緒に来てもらえない?スクールアイドル同好会の事なんだけど…」
その言葉を聞いて、目の前の少女は目を見開くが「大丈夫ですよ」と了承してくれた。
かすみから聞いた話によれば、元々女優志望でスクールアイドルとての活動も演劇に活かしたいという意図があったらしい。そんな彼女が戻ってきてくれるか賭けな部分もあったが、今のところ好感触だ。
「おまたせ~桜坂さんに来てもらったよ」
そう言って菜生は歩夢とかすみの方へとしずくと共に歩み寄る。
「あ、あの…初めまして、桜坂しずくです」
そう落ち着いた声であいさつする彼女に「はじめまして」と頭を下げる。
「かすみさんは久しぶりっていうか…ごめんなさい、ですね……」
「しずくさんのお芝居、すごくよかったです!何回観ても泣いちゃいます」
何も答えないかすみに、気まずさを感じたのか歩夢がそう語り掛ける。
「ありがとうございます。何度も見てくださったみたいで、うれしいです」
「しず子、どうして同好会に来なくなっちゃったの?」
そうやり取りをしていると、かすみが口を開く。
「かすみちゃん!?そんないきなり…」
「いえ、大丈夫です。本当は、ちゃんとお話ししておかなきゃいけなかった事ですから」
そう気遣ってくれた歩夢にそう告げると、しずくは語り始めた。
「私は昔からお芝居が好きでした。でもそれと同じくらい、スクールアイドルという存在にも憧れがあって…だからスクールアイドル活動が出来る間はそれに集中したくて、この学校に入りました」
「じゃあ…どうして?」
「私自身、スクールアイドルとしての経験をゆくゆくは演技に活かしたいなって思ってました。みなさんの目指すもの、表現の仕方を見るのは楽しくて刺激的でした」
そう告げる彼女は本当に嬉しそうだった。だから余計に菜生は解らなくなっていた。
「中でもやっぱり、せつ菜さんは凄かったです。彼女について行けばみんなが望むスクールアイドル像に近づけるって思いました。」
「でも、違和感があった?」
おずおずと聞いてみると、彼女はゆっくりと頷いた。
「せつ菜さんが導いてくれる方向は確かに正しいんですけど、私はこっちの方向を目指したいっていう表現が、上手くできなかったんです。それが悔しくて、未熟だなって思って…せつ菜さんに感じ取ってもらえるだけの表現力を磨きたくて、ここで修行させてもらってました」
「…え?」
もしかして自分達は、とんでもない勘違いをしていたのではないだろうか?
「それならそうと言ってよ!かすみん凄い心配したんだよ?」
「余裕がなくて…ごめんなさい」
「よかった~じゃあ戻ってきてくれるよね?今解散の危機でさ」
「戻らせていただけるなら…!えっ今そんな事になってるんですか?」
やはり知らなかったらしい彼女に、事の顛末を説明した。何はともあれ、これで3人だ。
そう安心していたが、そんな時だった地響きが周囲に鳴り響いたのは。
「じっ地震!?」
「外に出よう!」
咄嗟に外へと出ると、街中には地中から怪獣が飛び出していた。二本足で立つトカゲのような姿に頭部から背中にかけて堅い殻、さらに頭部の先端で角のように尖っておりかなり獰猛そうな印象を受ける。
「また怪獣…」
「あれはたしか…」
今まで滅多になかった街中での怪獣の出現に思わずそう呟く声はがした。そんな中菜生は怪獣に見覚えがあるのか記憶を漁っていた。
「ゴルメデ…SRCが前捕獲に失敗してる怪獣だ…」
「乱暴なの?」
「力はかなり強いって聞いた…でも、自分から人間を襲う事は無いって…」
またあのカオスヘッダーとかいう存在の仕業だろうか?
「そんな事より逃げましょうよ~」
そんなかすみの言葉で4人は怪獣とは反対方向へ逃げる。
すると防衛軍が現れ、攻撃を開始するがまるで歯が立たず口から吐く火球で戦闘機は撃ち落とされ不時着する。
「おかあさんどこ?」
声のする方を見ると、幼い少女が母を探して彷徨っていた。だがそんな少女の方にゴルメデは向かっていた。そして最悪な事に、防衛軍機が墜落した時ビルの破片が少女へと降り注ぐ。
(まに…あえぇっ!)
咄嗟に飛び出した菜生は少女に駆け寄ると、少女を抱きかかえて降り注ぐ瓦礫から逃げるがこのままでは避けきれないと直感してそのまま横に飛んで自身を少女の下敷きにする。
「ふうっ…大丈夫?」
そう聞いても返事がないのでドキッとしたが、気を失っているだけで目立った怪我もなく呼吸もしていたのでひとまず安心する菜生だったが、いきなり駆け出した菜生の方へと駆け寄ろうとする歩夢たちの顔が青ざめる。
「危ない!」
その歩夢の声に、背後を振り返るとゴルメデが菜生と少女を踏みつぶそうと足を上げたところだった。
「くっ…!」
咄嗟に菜生は少女に覆いかぶさる。だがそんなことに意味がない事は解っていた。もう自分も少女も助からない、そう思った。
しかし、その時は来なかった。恐る恐る目を開けると、ゴルメデの足が落ちてくることなく止まっていた。まるで時が止まっているかのように。
いや、実際止まっていたのだ。そして菜生の制服の中で輝石が輝いていた。
それに気がついて輝石を手に取ると、輝石は一層輝きを増しスティック状のアイテムへとその姿を変えた。
「これは…?」
『菜生、諦めるな…!』
コスモスの声がした。そして菜生は、この状況を脱するために。目の前の少女を、歩夢もかすみもしずくも、みんなを守るためにそのアイテム―コスモプラックを天に掲げる。
「ウルトラマン…コスモース!!」
すると先端についていたつぼみが花開き、中から輝石が飛び出す。そして菜生の身体は青と金の光に包まれていった。
「シュワ!」
ゴルメデに立ちはだかるように、再び青い巨人―ウルトラマンコスモスが現れた。
今回はここまでです。
次回は遂に、太陽のように熱き戦士が登場します。
お楽しみに