Reincarnation of Belphegor 作:みりえった
評価とお気に入り登録ありがとうございます。モチベがすごく上がりました。
不定期になるかと思いますが、頑張っていきます。
さて今回は主人公の過去についての説明がメインです。ここまでがプロローグみたいなもんですね。次回からはそれぞれキャラクターと絡ませていきます。
10歳の頃だった。季節はまだ新緑が眩しくなる初夏に差しかかるくらいの時だっただろうか。
つい数ヶ月前に小学校5年生に進級したけれど、特に境遇が変わったということは無い。放課後いつも通りに暇を潰して、夜が更けた暗くなった時間帯に帰路へと着いていた。
夕刻はまだ家で父親が酒を飲んでいる頃だ。
彼と共にいると、いつも思いつきや不意の癇癪で身体を殴られる。その上父親の仕事といえる仕事をなにひとつ果たさない。
だから一緒にいるメリットなんて皆無に等しくて。故に自分は当時から歳不相応な素行の悪さを学校側に問題視されていた。
『は? 自殺?』
しかしそんな不良生活も、すぐに終わりを告げることになった。
普段通り夜の8時くらいに家に着くと、いつもは静まり返っているはずの我が家が甚だしい喧騒に包まれていた。
家の前に何台ものパトカーが止まっていた。玄関も、刑事ドラマでよく見るような黄色い帯状のテープが張られ、家の中と外とを断絶していた。
父親のいない時に、冷えた夕飯を温めてくれる母との静謐な憩い。
そんなささやかで穏やかな唯一の幸福な時間は、その母の手によって虚しい終わりを迎えた。
酒に毒を盛ったらしい。当時現場に来ていた警察に後から聞いた話だ。
母は父の酒に即効性の毒物を混ぜて、自身もその毒を服用し自殺。その死亡推定時刻から数十分後、回覧板を回しに来た近所の人に発見され通報……の流れだったという。
葬儀は行われなかった。既に両親の兄弟家族もいなかったとのことで、そして葬儀など、当時の自分で理解出来る領域の事柄ではなかったため、事後は淡々と処理された。
特にショックは受けなかった。まあ、そうだろうな、そうなっても仕方ないだろうなとは思ったけれど。
大人から聞き及んだ情報をそのまま脳が認識し、覆しようのない厳然たる事実として保存された。
それはまだ知見の浅い子供だからという訳ではなく、既にその頃には人間として歪なものへ成り下がっていたのだろう。
後に母の残した遺書が見つかり、自分へと謝罪の言葉と、これからの後見人となってくれる人の詳細や住所が書き残されていた。
母と仲のいい、華道の先生だった。
数日後、そこへ伺うと眼鏡を掛けた凛々しい風貌の男性と柔和な笑顔が印象的な女性が手厚く歓迎してくれた。
それから色々と書類を作成していたようで、その日から自分はその家の養子に入り、美竹家の一員となった。
新しい家に新しい家族。さすがに少しは困惑したが、それ以上に自分が動揺したのは前の母の事だった。
事の速やかすぎる進み具合に、母は計画的に父と自身の命を絶ったのだと察した。
流石は自分という悪魔のような子供を産んだ人間と言うべきか。なら殺すよりも前に父のことも止めてくれれば良かったのにと、僅かでも思った自分を殴り飛ばしたかった。
行動の遅かったことに対してではなく、あんなことをされておきながら、まだ父への情が残っていたことが堪らなく気持ち悪かった。
だけど、もうそんな心配はいらないのだ。
優しい夫妻に同い年の彼らの実子。美竹家の人間はごく普通の家庭として自分のことを受け入れてくれた。
記憶から前父の存在をできるだけ抹消し、第2の人生を歩んでいくのだと、そう考えていた。事実、今の父さんと母さんとも円満な関係を築けている。
だからこれからは普通の家庭で、普通の学校で、普通の友人たちと、普通の人間の暮らしが出来ると思ってた。
だけど──、そういうわけにはいかなった。
それでも、どんな環境に入ろうとも、自分が悪魔の性質を持ち合わせていることは、覆しようのない事実だったのだ。
読了感謝です。