Reincarnation of Belphegor   作:みりえった

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オリキャラが出てきます。おはなしを円滑に進めるには仕方ないですね。


ベルフェゴールの救済①

 

 

「そんでこないだ斗真(とうま)の女とヤったんだけど、軽そうな見た目のワリに結構な素人でさぁ。逆に燃えたよな」

「……あのさ、彼女にそんな話する普通?」

「ハハ。アレがギャップ萌えってやつかもな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

 

 部屋に入るべくノックをしようとすると、部屋の中から軽薄そうな男との声と溌剌とした女の声が聞こえてきた。

 それを耳にし、無意識に深いため息が零れる。またか。

 毎度毎度相変わらずとはいえ少し辟易としてしまう。つい先程まで要件を済ませてさっさと帰ろうと思ったのに今はこの扉を開ける事が億劫で仕方がない。

 相手は歳上なので安易に口には出来ないが、しかし人を呼んで置いて直前まで猥談に耽けるとはなかなかいい度胸である。

 

 

「というか、じゃあ智香(ともか)はなにやってんだよその時間」

「え? あたし? ……斗真くんの味見?」

「おまえもじゃねぇかよ」

 

 

 まあこうしていても仕方がないし、早く帰りたいので結局は入るのだが。

 別に猥談を聞かされるのが嫌だという訳ではなく、こうなるとただ単純にこの人らの無駄話が多くなる。出来ればやめて欲しい。長いし。

 

 

「……他のカップルの食い散らかしなんてロクな死に方しませんよ」

「ん? おお明星、待ってたぞ」

「あー明星ちゃん! 遠いとこおつかれさま。ポッキー食べる?」

「いただきます」

 

 

 意を決してカラオケボックスに入ると、そこはよくあるカップルシートタイプの部屋だった。6畳程度の部屋の壁一面に大きなディスプレイが設置され、それに対面するようにソファがおいてある。

 そこに仲睦まじくふたりの男女が座り、男の方……歳3つ上の竜胆(りんどう) 壱馬(かずま)が座っているソファをばんばんと叩く。

 

 

「いけませんよ。やっぱり」

「あん?」

 

 

 隣に座れと促されているので、女性の方からチョコレート菓子を数本貰って腰をかける。

 そして一応形だけの注意をする。

 

 

「なんだ。おまえもそういうこと言うのか」

「そういうことばかり言っているとおふたりの評判が悪くなると言っているんです」

「表立って言うわけないだろ」

「漏れますよ?」

「ない。ヤった相手もそうだ。口外するわけが無い」

「なぜ?」

「さっきカップルの食い散らかしとか言ってたから分かると思うけど、相手もパートナーがいるからなぁ」

「……はぁ、なるほど? 意外に策士ですね」

 

 

 壱馬さんはニヤリと口元を三日月上に歪ませる。それを見てある程度察してしまった。

 どうやら浮気行為にお熱なのはこの人らだけでなく相手方ものようだ。だからかたちの上では寝取りのようなことを繰り返してるのか。

 目の前のふたりのようなものではなく、本来の恋人がいる人間ならば浮気して他の異性と関係を持ったことをおおっぴらに話そうとはしないだろう。

 だから浮気を秘密の関係として保持し続けるというわけか。

 まさか自分だけなく恋人まで食われてるとは予想にもしないだろうし。

 

 

「しかし意外はこっちのセリフだよな。そんななりしておいて女遊びを否定するのか」

「あっ、それちょっと分かるかも」

「なり? そんな軽そうですかね」

「いや軽くはないだろけどさ。けどおまえ顔だけでモテるだろ」

「……そんなことはないですよ」

 

 

 編み込んでいる髪をいじりながら、言う。正直覚えが無いわけではないが。

 しかしモテるとはあくまで個人の尺度が入るだろうし、口ではそうと言っておく。

 

 

「仕組みはよく考えられてるとは思いますけど。ただもしバレたら一気に瓦解しません? まだ大学1年なのに大丈夫ですか?」

「ま、バレたらその時はその時だな」

「潔いですね」

「じたばたしたってダサいだろ。ただ人間欲望には素直なもんだ。そのためならある程度のことは我慢するだろうさ」

「そんなもんですかね」

「おまえみたいなやつは例外だけどな」

「口外しそうですか?」

「そっちじゃねぇよ。おまえは欲に素直じゃないというか……欲がないよな?」

「そうだよねー……なんならあたしとヤってみる?」

 

 

 遠慮しておきます。此方がそう言うと女性……北条(ほうじょう) 智香(ともか)は、つまんなーいと頬を膨らませた。

 いや、なんだそれは。この人、さっきのポッキー渡すみたいに誘ってくるではないか。そんなに軽いのでいいのか? となりに彼氏いるんだけど? 

 それともあれか。同じノリだということは自分のナニもポッキーだとでも言うのか。心外だ。

 

 

「ていうか()()さぁ」

「それ?」

「あたしの誘い断ったことや食い散らかしやめた方がいいよ〜とか。それどういうつもりで言ってんの?」

「どういうつもり……ですか?」

「ああごめんね? 怒ってるわけじゃないよ? でも絶対月並みな理由で言ってないよね?」

 

 

 どうなの? 智香さんはちろりと蛇のように舌を出して、いたずらっぽく微笑んだ。

 クリっとした大きな蒼色の瞳が此方を捉える。見透かされているようだった。チャラそうな見た目でもさすがに人付き合いの量は尋常ではないらしい。

 正直壱馬さんとは違って頭の方はキレないと思ってたけれど、侮れない。

 無駄に勉強だけできるやつよりもコミュニケーションが得意の人間の方が怖いらしい。

 

 

「まあ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「……それは倫理的に?」

「いえ客観的に」

「……へぇ。やっぱりね」

「はっ、ならおまえも俺らのことは言えないな」

「そうかもしれないですね」

 

 

 正直に答えるとふたりは納得したように笑った。やっぱり、見透かされたいたらしい。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ことなんて。そんなにも分かりやすいだろうか。

 しかし……まあ当たり前だ。倫理的にダメだからダメなんて、俺が信じるとでも思ってるのか。

 

 全員が倫理の奴隷で理性的に行動するならば、俺は幼少期にあんな目にあってはいない。

 

 個人によってレベルや程度はあるとは思うけど、タガが外れた人間なんて何やるか分からない。

 人間は欲望に素直……その点は壱馬さんの言うことは正しいと言える。

 

 

「おまえ自身はそう思ってないんだな」

「人付き合いなんて明らかに楽ですからね。そっちの方が」

「ならあたしの誘い断ったのは〜?」

「一応彼氏の前だったので」

「それも、世間一般にか?」

「はい」

 

 

 もう隠しても無駄なので開き直って言うと、ふたりは顔を見合わせて笑う。

 

 

「……いや、俺のことはいいんですよ。そんなことよりどうして呼んだかを早く聞きたいですね」

 

 

 ポキリ。心地よい音をたてて貰った菓子の最後を食べ終える。

 そしてやっと本題を切り出した。

 

 

「壱馬さん」

「いや? 今日呼んだのは俺じゃないぞ」

「へ?」

「そうそう。呼んだのはあたし」

「智香さんですか」

 

 

 ぱちぱちと数度まばたきをして。目を丸くする。

 どうやら話があるのは呼び出した本人ではなく、その彼女のようだった。

 身を少し乗り出して壱馬さんの奥の智香さんを見る。

 

 

「あたしの後輩がね。最近悪い男に捕まっちゃったんだって」

「その男知ってますよ。竜胆 壱馬って人でしょ」

「シバくぞ」

「惜しいんだよねぇ」

「おい」

 

 

 間髪なく冗談で返すと、智香さんもカラカラ笑いながらノってくれる。

 

 

「それにしても智香さんらしからぬ相談ですね」

「まあね。あたしはこういう性格だからいいんだけどさ」

「後輩さんは違うと」

「そ」

「どうなんです? 実際の関係は」

 

 ひとしきり笑った後で1度落ち着いて改めて相談事に口を開くと、彼女はすぅっと真剣味をおびた表情に変わった。

 

 

「最初は普通になあなあで付き合ってたらしいんだけど、その男、結構束縛強いらしくて」

「へぇ」

「おい、束縛強いのかよそいつ。全然惜しくねぇじゃねぇか」

「確かに?」

「結構ひどいことされてるらしくてさ。あたしの可愛い後輩が困ってるんだと」

「別れればいいじゃないですか……で解決しませんよね」

「それで解決するなら呼んでないって」

「なるほどねぇ……」

 

 

 なるほどなるほど。正直『でしょうね』って感じだ。まあ束縛強いという話を聞いてそうだろうなとは思ったけれど。

 このふたりくらいに開放的なのはどうかと思うけど、それでも相談されるくらいに縛るのもどうかと思う。

 

 

「だからそれをなんとか解決して欲しいと」

「そ。お願い出来る?」

「イヤですね」

「え〜」

「なんでそんな面倒なことしなくちゃなんないんですか」

 

 

 彼女の問いに、即答で断じる。いやほんと面倒くさそうだな。

 だいたい束縛激しいヤツの対処法なんて俺が知りたいくらいだが?

 

 

「それに智香さん出身高校羽丘ですよね? 女子校じゃないですか。そこの生徒にどうやって介入して男女関係解消しろって言うんですか」

「それはーそのぉ……気合いで」

「壱馬さん、帰っていいですか」

「おう、おつかれ」

「待って待って待って」

「いや智香、女子校の生徒はさすがにキツくないか? いくらこいつでも無理だろ」

「ううっ」

「だいたいどうして自分でやんないんですか。後輩なんでしょう。俺よりも楽じゃないですか」

「だってあたし一応女子だし……ううっ」

 

 

 壱馬さんともっともな正論をぶつけると、智香さんは耳を塞いで唸る。

 

 

「いや、一応女子ならなお自分でいくべきでしょ」

「だって怖いじゃん」

「まあ……」

「テニス部の後輩だったんだけどさぁ。ちょっとね」

「それは分かったが。……明星」

「なんですか?」

「無理は承知だが、一旦やってみてくれないか?」

「マジですか……?」

 

 

 そう申し訳なさそうな表情で言う壱馬さん。

 それを見て、ええ……と辟易とした顔を作る。

 

 

「無理そうならやめてもいいからよ」

「そう言われましても……」

「もちろん礼はするから。するよな?」

「する。絶対するから。お願い」

「…………」

 

 

 壱馬さんの言葉に、智香さんが頭を下げた。

 

 

「……分かりましたよ」

「……!」

「そこまで言うのなら、とりあえずやれるだけのことはやってみます」

「ほんと!? やったー!」

 

 

 渋々。これ以上歳上に頭を下げられてもいい気がしないので渋々と了承すると、彼女ガバッと顔を上げて目を輝かせた。

 そう言えばこの人、ウザイくらいに押しが強いと壱馬さんが言っていた気がする。もしかするとそれを加味して先程壱馬さんも提案したのかもしれない。

 

 

「約束!」

「はいはい」

「うーん、明星ちゃん可愛い! 大好きっ!」

「はいはい」

 

 

 そして当の本人はソファを飛び出してぴょんぴょん跳ねて、挙げ句の果てに絡まれる。現金だなこの人。

 

 

「とりあえずまだ早いので……ちょっと羽丘の近くにまで行ってきますか」

「え、ほんと? そんなに律儀にやってくれるの?」

「とりあえず簡単な状況だけでも把握しておかないと。明日に回しても面倒ですからね」

「部活とかないのか?」

「あったら今日も来れてないですよ。しばらくはテスト期間なので休みです」

 

 

 もう既に勉強は終えているというか、普段からある程度やってるので大丈夫だろう。今回はあまり範囲も広くはないし。

 羽丘は繚桜と自宅の間に位置している。

 繚桜から自宅までは結構な距離があるが、繚桜から羽丘はその距離のちょうど半分くらいの距離しかない。

 午後3時くらいに授業は終わる。現に蘭も通えているし、それくらいなら放課後でもある程度時間は確保出来るだろう。

 

 

「だったら特徴教えてあげないとね。待ってて、今から写真送るから……」

 

 

 未だ首に両腕を絡めている状態で器用にスマホを操作する。数秒後、制服のポケットから軽快な機械音が鳴った。

 スマホを取り出すと案の定すぐ隣の彼女からの新着メッセージが1件。

 

 

「へぇ? さすが智香さんの後輩ですね。雰囲気がそっくりです」

「まあ見た目だけね。あたしもいろいろ教えてあげたからね〜」

「……へぇ。見た目だけ、ですか」

 

 

 送られてきた写真は智香さんと例の女子と共に写ったプリクラだった。

 見比べると隙間なく並んでいるふたりは本当によく似ている。髪の色や瞳の色は違うが、見た目の雰囲気だけなら姉妹と言われても違和感は無いかもしれない。

 

 

「……ギターですか? これ」

「いや? 本人曰くベースだって。わかんないよね」

「ええ。姉が似たようなものを持っていますが、正直わかんないですね」

 

 

 そしてもっとも目を引くのは背中に背負っている大きなハードケース。その鈍く光る黒い箱だった。

 既視感があった。何回も見たことがある。

 ときたま実家に帰ったときに嫌でも目にするものだ。

 

 

「え? 明星ちゃんってお姉ちゃんいるの?」

「まあ名義上は。……で? 高校の後輩ってことは今2年か3年ですよね。名前はなんて言うんですか?」

 

 

 この人、どうやら姉と同じような趣味を嗜むらしい。であるならば、彼女が足重なく通うあの場所にももしかするといるかもしれない。

 俺は1番肝心な部分問うと智香さんははくるりと回ってスマホを共に覗きこむ。

 

 

「えっとね──」

 

 

 すると、彼女は懐かしいなぁと一昔を懐古した様子で、その名前を口にした。

 明るいウェーブのかかったハニーブラウンの髪色をアップに纏め、耳にはよく分からないセンスのピアスをしている……その少女の名を。

 

 

「この子の名前は今井リサちゃん。 最近友達と一緒にバンド活動始めたらしい羽丘女子学園高等部2年生だよ」

 

 

 

 

 

 

 





このおはなしは私が考えてる訳じゃなくて、代理なんですよね。なのでその原作者(?)みたいな人曰く、 このおはなしは『募って毒になるタイプの話』らしいです。
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