Reincarnation of Belphegor   作:みりえった

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やっぱり読む人選びますねこれは。



ベルフェゴールの救済②

 

 

「思ったより綺麗な校舎だな」

 

 

 先輩たちと別れて半々刻ほどの時間が過ぎた。

 最寄りの駅から出てスマホで経路を探し、目的地の羽丘学園高等部前まで着くと軽く伸びをしながらひとり呟く。

 中高一貫の歴史ある進学校だという名目で聞いていたので、もう少し年季が入っているのかとおもったが……どうやらそういう訳でもないらしい。耐震工事かなにかで改装でもされたのだろうか。

 ぼーっと校舎を眺めるのもあれなのでスマホ取り出し予め連絡を取っておいた人物を待つことにする。

 女子校の敷地内に入るわけにもいかないので校門前近くに謎に設置されているベンチに座る。

 

 

「とりあえずひまりを待つか……ん?」

 

 

 短い距離とはいえ歩いて疲労した脚を落ち着かせながら未だに既読がついてないチャットアプリの画面を見ていると、しばらくしてふと周りの違和感に気がついた。

 決して近くでという訳ではいけれど、しかし確実に野次馬のような生徒が付近にちらほら散見しだしたのだ。

 

 やっぱり校門前でも目立つだろうか。

 

 それを見て事前の悪い予感が的中したことを察する。

 確かによくよく考えれば他校の男子生徒が制服姿で女子校の校門付近でスマホをいじっているというのは、恋人同士が逢い引き目的で相手を待っていると思われても不思議では無いかもしれない。

 しかも自分が通う繚桜は私立なのでこの制服はひと目でそこの生徒だとわかる。必要以上に人目を集めているのはそれを含めてだろうか。うちが文武ともに名門と謳われていることがここまで足を引っ張ることも珍しい。

 

 

「……もしもし?」

『もしもし? じゃないよ! なにやってんの!?』

 

 

 これはつぐみや巴、そして蘭に見つかるとどえらく怒られそうだなと漠然と考えていると、突如スマホの画面が切り替わる。

 切り替わった画面の右下の緑のボタンを押してスピーカーを耳に当てると悲鳴にも近い甲高い声が耳をつんざいた。

 

 

「うるさいな……キミを待っているんだけど」

『そういうこと言ってるんじゃないよっ。なんで校門前なの? めちゃくちゃ目立ってるじゃん!』

「ああ。やっぱり目立ってるのか」

『もうちょい自分のこと理解してよぉ……ほんとなんで待ち合わせが校門前なの?』

「急に呼び出すのも悪いと思ったから、迎えに来たんだけど」

『…………』

「とりあえず蘭に見つかると面倒だから早く……あれ? 聞こえてる?」

 

 

 途中からいくら話しかけても沈黙しか帰って来なくなったのでスマホを見ると、いつの間にか通話が切れていた。

 一瞬怒らせたか? と思ったが、すぐに『つぐの店』というチャットがとんできた。どうやら場所を変えるつもりらしい。

 

 

「そればいいけど……つぐみの店なのか……」

 

 

 あそこはあの子たちのたまり場みたいなものだから、出来れば行きたくないんだけど。気まずいし。あと何も言わずに通話を切るのはどうなの?

 ため息をつきながらスマホをしまい立ち上がるとちょうど此方を見ていた2人組と目が合った。適当に手を振ると、向こうの彼女たちもぎこちなく笑い小さく手を振り返してくれる。

 どうやら物珍しいというだけで不審者とは見られていなかったらしい。恐らくまた来る羽目になるし、まあそれが分かっただけでも良しとしよう。

 

 若干憂鬱になりつつも、俺は了承の返事を打った。

 

 

 

 

 

 

 

◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

 

 

「……それで? 今日はなんで来たの?」

「なんだ藪から棒に。突然だね」

 

 

 それ明星に言われたくないんだけど……対面に座るひまりは半眼に瞼を落としながら呟いた。

 また徒歩で移動して数分。俺は姉の友人の家族が経営している喫茶店へと移動していた。

 そして注文した珈琲を飲みながらしばらく待っていると、むすっとした表情のひまりが何も言わずに同席してきた。そしてそのままカフェオレと菓子類を注文した。

 しかし通話の時にも思ったけれど、どうしてこういう時に一言断ってから事を起こさないのだろうか。親しき仲にも礼儀ありという言葉を知らないのだろうか。

 

 

「何をそんなに怒ってるのかは知らないけど……聞きたいことがあって来たんだ」

「ならチャットか通話でも良かったでしょ」

「いや実際見ておきたいこともあったからね。こうやって足を運んだんだよ」

「ふーん?」

 

 

 事情を説明すると、納得のいってなさそうに唸るひまり。

 

 

「ってちょっと待って? 羽丘に来て実際見ておきたいことがあるって言った?」

「そうだけど」

「……誰のこと言ってんの?」

「話が早くて助かるな」

 

 

 そして、はっ……と何かに気づいたように身を乗り出した。

 

 

「それはそうでしょ。はっきり言ってうちに何か見に来るようなモノがあるとは思えないし。なら女の子でしょ」

「間違ってないね」

「……誰?」

「この人なんだけど、多分部活の先輩だろう?」

 

 

 そう言ってスマホの画面を見せる。先程渡されたプリクラだ。

 ひまりは結構な量を注文していたけれど、申し訳ないが長居はするつもりはない。俺はとっととこの人の概要だけ聞いて店を出るつもりだ。

 モカに見つかるのもそうだが……面倒なことになっても困る。出来れば手短に済ませたい。

 

 

「って……リサさん!? なんで?」

 

 

 すると画面を見たひまりは目を見開いて驚き、大きな声を上げた。むせた勢いでカフェオレが少量飛び散る。

 

 

「ちょっと?」

「ご、ごめん……けど、え? なんで?」

「なんか面倒なことになってるらしくてね。この人の概要が知りたいわけよ」

「なんで……! り、リサさんなの……?」

「ちょっと人に色々頼まれてね」

「……人って誰?」

「内緒だ」

 

 

 まあその隣に写ってる女だけども。

 

 

「……色々ってなに?」

「……キミそんなめんどうなやつだったか?」

「り、理由もなく他人の話なんて出来ないでしょっ」

「ならあれだ。俺も年頃の男だから、見た目がいい女子については興味があるんだよ」

「嘘。明星がそんな……」

「キミは俺の何を知ってるんだよ」

「それにもしそれが本当なら絶対に教えて上げないから……!」

「……ふぅん?」

 

 

 依頼主や理由の追求をのらりくらりと躱していると、ひまりがキッと強い目で睨んできた。

 俺はそれを冷静に受け止める。これは……もしかすると理由の方は隠さなくてもいいかもしれないな。

 

 

「なるほど? もしかして結構有名な話なのか」

「な、なにが?」

「この人と彼氏の話が」

「!?」

「図星っぽいね」

 

 

 試しに平坦な口調でサラリと言うと、またひまりは露骨に表情を変えた。

 形容しがたいが、良い反応とは思えない。

 しかし彼氏という単語だけでそこまでとは、やはりそういうことなのだろう。

 

 

「だとしたら別にひまりじゃなくても良かったな。テニス部繋がりだから詳しいと思ったから選んだんだけど」

「…………」

「けどまあまた別の人に当たるのもだるいからここで教えてくれる助かるんだけど」

「……やだ」

「なんで」

「別に明星を信用してない訳じゃないけど、どこから漏れるかなんてわかんないじゃん……」

「なら蘭に聞くけど」

「……っ」

「あいつは俺が聞いたら多分全部言うぞ。だからどの道バレるけど。どうする?」

 

 

 正直ずるいことを言っている気がしなくもないが……しかし此方も1度請け負った以上中途半端なこともしたくはない。

 蘭がこの話を絶対知っているという保証はない。それにこういう噂話は蘭よりひまりの方が詳しいだろう。

 しかし蘭も確かバンド活動をしているはずだし、であるならば同じバンド活動をしているらしい今井リサという人間の事情なら知っていてもおかしくは無い。

 

 

「えっと……」

 

 

 ただやはり蘭はこういった話などに興味を示さないので知らない可能性も勿論ある。なので、ひまりにここで聞くのが1番安牌だろう。

 蘭が知らないという可能性を気付かぬまま(もしくはもう蘭が知っているのを知っているのかもしれないが)、ひまりは諦めたようにゆっくりと言葉を紡ぎ出す。

 

 

「実は──」

「話さなくていいわよ上原さん」

「──え?」

「……あ?」

 

 

 しかしそれは……ひまりの言葉は、唐突な背後からのひとことによって遮られた。

 思わず素っ頓狂な声が出る。びっくりしたというのもあるけれど、ないだろうとは思っていた予感が当たってしまったことに、だ。

 

 

「…………」

「あなたたち……いったいなんの話をしているのかしら」

 

 

 いやまさか……本当に面倒なことになるとは。これだから時間はかけたくなかったのに。

 しかし誰だろうか。おおよそ今井リサの友人か何かだと思うが。当たり前だが聞いたことの無い声だ。

 蘭やつぐみ、巴とも違う。決して大きな声ではなかったが、凛とした力強い声だった。

 

 

「……えっと?」

 

 

 振り向くとそこには流麗な銀髪を揺らすひとりの女子生徒が。一瞬モカかとも思ったが、違う。彼女はひまりや蘭と同じく羽丘の制服に身を包んでいた。

 

 

「……どなたでしょう」

「私は湊友希那。リサのクラスメイトよ」

 

 

 湊友希那? やっぱり聞き慣れない名前だった。

 そう名乗った彼女は声だけでなく両眼にも力強さが宿っている。

 

 冷徹ながらも、しかし確かに怒気を含むその瞳。

 

 何処か既視感を覚える金色が、静かに此方を見下ろしていた。

 

 

 

 

 





原作者(?)にめちゃくちゃ手直しするのだるいからもうこれでいいよって言われます。曰く『終わりの方がなんかヤダ』だそうです。ぴえん。
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