Fate/Hololive Crash   作:佐々木 澄快

11 / 13
七話 そして、残るは一人。

30XX年 砂漠地帯

 

 

広大な砂漠に浮かぶ多くの影。

数にして4000超。

その大半をタケノコのようなすこん部達が占め、その大団円の中心に位置するたった二人の人物を囲み、動きを止めていた。

止められていた。

よく目を凝らして見ると、彼ら一人ひとりが蜘蛛の糸のような細い線に絡め取られ、動けずにいる。

 

驚くなかれ、この大規模な拘束は、百鬼(ひゃっき)あやめという一人の鬼によってものの数秒で行われていた。

 

 

百鬼夜行『余が、鬼に見えるか?』

 

百鬼あやめが微笑んだまま後ろに振り返り、ドット化された金髪の神父に突然問いをなげた。

 

SHINPU『あァ?どういうことだ?』

 

その問いの意図が見えずやや戸惑う神父。

百鬼あやめはそんな神父の顔を横目に見る。

 

GOmeitou☆

『.....ああ、急にごめんな?

今のは、その、忘れてもらって構わないから!

ささ、ころねんのとこ行こ!』

 

そう言って百鬼あやめはどこか取り繕うような笑顔を見せると、貼り付けにされたすこん部達の間をかき分け砂漠をすたすたと歩いていく。

その背中を、

 

SHINPU

『───まァ待てよ.......()()使い

 

GOmeitou☆『...........え?今なんて───』

 

百鬼あやめが聞き返すようにして振り返ると同時、

神父のドット化された拳が、既に攻撃を開始していた。

 

GOmeitou☆『─────っ!!』

 

SHINPU『Time alter(固有時制御)square accel(四重加速)

 

大きな衝撃を伴う神父の正拳は平たいながら百鬼あやめとの距離を一瞬で詰めてしまうほど高速で、百鬼あやめの霊格を狙い正確に放たれる。

ともすればその拳はおよそ人の域を超えた代物で、直撃は(おろ)か、掠っただけでも死につながるような刃。

純粋な英霊でさえ、不意打ちならば一瞬で決着がついてしまうだろう。

 

果たして、神父の拳は百鬼あやめの体を貫いた。

 

明らかに肉体を貫通する拳────

 

SHINPU『..........は?』

 

しかし、それ以上は何も起こらなかった。

血しぶきが上がることもなく、断末魔が響くこともない。只々(ただただ)すり抜けただけ、その拳は百鬼あやめに()()()()()()()()のだ。

 

GOmeitou☆『え.......え? えぇっ!?』

 

すり抜けるようにして貫通した拳は、またしてもすり抜けるようにして引き抜かれる。

本当ならば空洞と化しているはずの百鬼あやめの胸部には傷一つ残っていない。だが、当の本人にはそれなりに衝撃的な体験だったのか、百鬼あやめはその場にぺたりと座り込んでしまった。

 

SHINPU『これは.......オイ、ホロなんちゃら。聞こえてるか?』

 

半ば混乱した様子で神父は何もない空中に問を投げる。

それと同時、またしても空中にホログラムの巨大な画面が表示された。

 

ホロライブ仮面

『.........はいはいホロライブ仮面ですよ〜?覚えてくださ〜い

......って、あれ!?おるやんけさん達どうなっちゃってるんですかそれ!?』

 

画面に白い狐に似た容姿の、目周りに水色のハーフマスクをかけた少女が驚いた様子で前のめりになる。ものの数分で神父たちを囲む数千の軍勢(すこん部)が静まり返り、動きを止めてしまっているのだから驚くのも無理はない。

 

ホロライブ仮面

『そ、そんな....我が精鋭たちが......』

 

SHINPU

『んなコトはどうでもいい、

俺の拳が百鬼あやめ(コイツ)に当たらないんだが、これはお前の仕業か?』

 

ホロライブ仮面

『え?あ、はい、フレンドリーファイアはオフってあるんで.......

..........いまなんて言いました?』

 

GOmeitou☆

『.......え、胸触ろうとしたんじゃなかった......のか?』

 

SHINPU『お前の仕業なんだな?今すぐ元にもどs.......』

 

 

個々が思い思いの発言をする中、唐突に神父が言葉に詰まる。

 

ホロライブ仮面『.........あやめちゃん、なにか、されたんですか?』

 

GOmeitou☆

『いやぁそのー、後ろ向いたらいつの間にかね?

人間様の手が余の胸に埋まっていたから.......』

 

百鬼あやめの言葉とともに数秒の沈黙が訪れる。

その沈黙は情報を噛み砕くための時間であり、言葉の意味を理解するまでの時間。

 

つまり、

 

 

SHINPU 

『はァ!?』

ホロライブ仮面

『えぇ!?』

 

広大な砂漠に、二つの頓狂(とんきょう)な声が響き渡るということだ。

 

ホロライブ仮面

『変態さん....ですか.....?』

 

SHINPU

『は!?ちげェわ!!

鬼野郎テメェ!なんでそんな誤解を生むような言い方してやがんだァ!?そもそも手が埋まる程ねぇだろうがァ!!』

 

青ざめ、警戒しきった表情で神父を見つめるホロライブ仮面と、それを否しながら百鬼あやめに食い下がる神父。

カオスでしかない。

 

GOmeitou☆

『余は胸あるもん!!着痩せするタイプだもん!!』

 

SHINPU

『知るかァ!!やはりテメェは今すぐ────ッ!!』

 

神父が再び拳を構えようとするが、途端に手が止まる。

 

GOmeitou☆『う.......どした?』

 

ホロライブ仮面『あやめちゃん今のうちにその人から離れた方が───』

 

彼女らの反応を無視し、神父はホロライブ仮面の方へ向く。

 

SHINPU『.....オイ、ホロなんちゃら。テメェ何かしたか?』

 

神父はホロライブ仮面に鋭い視線を向け、威嚇気味に聞く。

 

ホロライブ仮面

『........え? 何かって....今は特に何もしてないですけど』

 

SHINPU『────なら、』

 

次に神父の目線は百鬼あやめのはるか後方、すこん部達が拘束されている(なか)ほんの少しだけ空いている大団円の隙間に向けられ────

 

SHINPU『.........アレは、なんだ───?』

 

 

 

そこには、

サーヴァントの召喚陣が()()出現していた。

 

 

 

 

 

───────

 

 

 

 

 

2020年 12月20日午前9時

 

青堂市 中央市街地 中心部

 

 

 

つい先程まで戦争が行われていたビル群の中の戦場。

だが今は途端に静まり返り、残るは倒壊した建物の残骸や大少様々のクレーター等。

 

そんな場所に、まるで思い出したかのようにゾロゾロと人だかりができ始めた。

一人ひとりが一般人のようで、荒れた元戦場に動揺を隠せずにいた。

 

「お、おい、なんか地震でもあったっけか?」

 

「すご、何これ。写真撮っとこ」

 

「ココ地面に穴空いてるwやばすぎだろww」

 

やがて道行く人が現れ、市街地は通勤ラッシュ時にふさわしい喧騒(けんそう)となってきた。

ついには警察や消防団すら倒壊した建物付近に集合し、現場の処理を始めている。

 

そんな中、誰の目も届かない路地裏で表通りを観察する二つの影があった。

 

「.......」

 

一人は褐色肌と黒い髪の少年。背丈は140センチ程度で小学生程の年齢に見える。

ボロく、薄汚れた長ズボンとピンク迷彩柄のパーカーを身に着けており、この季節にしては薄着といえるが、本人は慣れているのか寒そうな素振りを一切見せない。

 

「う〜ん、なんだか急に人がでてきたなー。これじゃ外歩けないや」

 

もう一人は黒縁の眼鏡をかけた黒髪の少女で、こちらの背丈は150センチ程度。

少年よりも少し大人びているが童顔で、首あたりまで伸ばした黒い髪の毛は前髪も長く鼻頭あたりまで伸ばしている。

服装はこちらもまた寒そうな格好で黒い迷彩柄の半袖ジャージに、革ベルトのようなショルダーハーネス。首元あたりにナイフを装備していて時折邪魔そうにしている。

 

また、ジャージの袖から黒い外皮に覆われている機械の腕が露出していて、腰から下も衣類は身に着けておらず内股から足にかけて黒い外皮で覆われている。

 

つまり彼女は、下半身を一切隠していないロボットだった。表を歩くのも(はばか)られる訳である。

 

「フブキちゃんも急に走ってどっか行っちゃうしー、追いかけてきたら周りめっちゃ壊れてるしー、フブキちゃんも見失っちゃうしー、

何があったんだろうね」

 

ゆったりとした口調のロボ子と名乗るサーヴァントは、どこか不安そうな面持ちで路地裏から表通りを観察する。

 

そして、マスターたる黒髪の少年、アマルもロボ子の方をあまり見ないようにしながら表通りを観察する。している事は同じであるが、ロボ子とは全く違う見解だった。

 

(結界が張ってある...魔力消費が激しい.....まさか狐の人の、宝具?)

 

アマルの息遣いはどこか荒く、汗をダラダラと流している。急激な魔力の低下による発作だった。

 

「........う......あ」

 

力無く、アマルがその場に座り込んでしまう。

 

「........あれ.....」

 

「え、アマルくん大丈夫?顔色凄く悪いよ?」

 

異変に気づいたロボ子が心配そうにアマルの顔を覗き込む。

 

「......熱がある、昨日の夜寒かったからからかなー?

どこか休める所に」

 

ロボ子の瞳が小さく機械音を立てて変動し、暗く光る。その瞳でアマルのある程度の情報を取り入れているようだった。

 

「......だいじょうぶ.....べつに、()()()()()()

 

悠長とは言えない日本語でアマルがロボ子を制すると再び、表通りの方に目を向ける。

 

「慣れてるからって.....

そんなに苦しそうなんだから、休まないとだめだよー」

 

「......べつに、休まなくていい。てきの、サーヴァントが近くにいる。はず。

休んでなんて、いられない。」

 

フラフラと建物の壁に手を付き立ち上がる。

汗は止まらない。発熱はみるみる酷くなり、激しく息を切らしている。だが立ち上がる。

少年の焦りに似た体の酷使は、見る者に、どのような感情を与えるのだろう。

 

同情だろうか。軽蔑だろうか。哀れみだろうか。

 

「そうなんだ......」

 

何を思ったのかロボ子が少年の一本前に出てその場に座り込み、自身の背中を差し出す。

 

「ほら、乗ってー?」

 

「なに、それ......」

 

「ボクがアマル君をおぶってあげるー。それで、少しは楽になるよね」

 

アマルが疑念を浮かべ、一瞬の間が空く。

 

(........無理やり、移動させようとしてるのか......?)

 

ロボ子の思惑がわからずにいるのだ。表情から読み取ろうにも、彼女は前を向いているのでわからない。

 

「.........?」

 

「ほら、はやくはやくー」

 

アマルが急かされるようにしてその背中におぶさると。

 

「立つよ?よい──しょ」

 

声掛けをしてロボ子は立ち上がった。そうして立ち上がったままに、再び表通りの方をじっと見つめはじめる。

移動したりだとか、そのような様子は一切ない。

 

「....? あれ.....」

 

おぶさったアマルがロボ子の背中に違和感を感じる。

ロボ子と名乗る彼女は機械だ。本来ならば冷たく、岩乗な鉄の塊である筈で。

 

なのに。

 

(.......あったかい.....)

 

なのに、彼女にはそのような要素が全く無かった。

ロボ子の背中はとても暖かく、柔い。

そして、

 

「フブキちゃん、どこ行ったんだろうなー」

 

やはり、どこかに連れて行くといった様子はない。それどころか、アマルに協力しているようだ。

 

「........なんで?」

 

アマルが不思議そうに聞くと、ロボ子は少しはにかむ。

 

「本当なら、このまま君をどこか、

無理やりにでも、休める場所に連れていくべきなんだろうねー」

 

「............連れてくの?」

 

「連れていったほうがいいんだろうね。

病院とかにいって、お薬もらったりしてちゃんと休まないといけないと思うんだー。

それに、ボクは君と知り合ってまだ数時間程度だし、アマル君がなにをしたいかだってよくわかってないんだー」

 

 そう言って、ロボ子は再び表通りの方を観察する。

 とは言え彼女には魔術についての知識はない。

 彼女が表通りを見ていたってそれ以上何が分かる訳でもない。

 

 そもそも、彼女はサーヴァントであるにも関わらず聖杯戦争について何も知らなかったのだ。

 今までにさりげなく聖杯戦争について質問したりもしたのだが、わかったことはホロライブとかいう謎の集団の一員だという事だけ。

 

 つまり彼女は、儀式に巻き込まれた謎のロボットであり、彼女にとってアマルに協力する義理などない筈なのだ。

 

 けれど。

 

「それでもさ───

がんばってる人はボク、応援したくなっちゃうんだよねー」

 

そう言ってロボ子は、おぶさるアマルに微笑みを返した。

彼女の背中よりも、なによりも温かみを感じる微笑みだった。

 

「.......がん、ばる?」

 

「うん、君はよくがんばってるよ。

そんなになっても、手をつきながらでも、立ち上がったんだからさ」

 

「........」

 

アマルは、ただ不思議でたまらなかったのだろう。驚きを隠せずにいた。

なにせいままでそんな言葉、かけてもらったこともない。そんなことには慣れきっていた。それがアマルという少年の定まった所なのだと割り切っていた。

 

「.........あれ」

 

だというのに、今になって、いまさら、なぜ、

 

「......なんで......だめだ──」

 

ポロポロと、涙が出てきてしまうのだろう。

 

「いいんだよ、泣いても。君はいい子だね」

 

ロボ子は前に向きなおり、そんなことを言う。

再び前を向いたのはアマルに気を遣ったからだろうか。

なんにせよ、少年の涙が止まることはなかった。

 

その筈だった。

 

 

 

「うおお!!綺麗だッ!!!」

 

路地裏の静寂は、途端に破られた。

 

「────っ!!」

 

ロボ子がアマルを背負ったまま後ろに、路地裏の奥の方に振り向く。

 

「.......だーれー?」

 

人気のない薄暗い路地裏、そんな場所でいきなり知らない人間に声をかけられたからだろう。

ロボ子の声は警戒心に満ちていた。

 

「あっ失礼しました!!あまりにも尊い言葉の数々に胸を打たれ、挨拶より先に感想が出てきてしまいました」

 

路地裏の奥から声高な男性の声とともに、学制服を思わせる服装の青年が歩いてくる。

背丈170センチ程の赤髪の青年。青年は空気を読む素振りなど一切見せず明るすぎるほどの笑顔で二人に近づいてくる。

 

一定の距離を保って青年が止まると軽くお辞儀をする。

 

「どうもこんにちは!!はじめまして!!自分は胡桃沢(くるみざわ)(いつき)って言います!!今回の聖杯戦争に飛び入り参加しました!!

よろしくお願いしますッッ!!!」

 

青年はとにかく大きな声で自己紹介と、魔術師にとってとんでもないカミングアウトをした。

 

「───マスター.......」

 

アマルが小さく呟くとロボ子の背中から降りる。

 

「......アマル君?」

 

「君が彼女のマスターか!!いやぁ!いいサーヴァントを持ったね!!俺も彼女のようなサーヴァントに出逢えるといいなぁ!!」

 

青年は、そう言うと、

 

 

 

「ねぇ!!君が()()()()()()()から来たマスターなんでしょ!?」

 

黒い笑みを浮かべ、笑い、(ワラ)った。

 

 

 

 

──────

 

 

 

 

30XX年 砂漠地帯

 

 

 

 

神父達の前に突如として現れた三つの召喚陣に、膨大な魔力が収束する。

 

SHINPU『ホロなんちゃら、アレはなんだ?』

 

ホロライブ仮面『なんですかあの魔法陣!? かっこいいっ!!』

 

GOmeitou☆『なんかあんな感じのヤツ、人間様の家でも見た気がする余!!

.....人間様もなかなかこじらせてる余なー』

 

SHINPU『クソ共が!!』

 

神父が叫んだ一瞬の後、雷鳴のような爆発音とともに三つの人影が召喚陣の上に現れる。

 

 

 

???『どぉーもどぉーもどぉーもー!!』

 

耳を突くような甲高い声と、

 

 

???『ahoy!!出航の時がきましたよー!!』

 

いろいろとキツい、昭和を感じる振る舞いの声、

 

 

???『みんなー!!元気ッスかー!!?』

 

そして、明るく活発な雰囲気のある声。

 

 

三人が三人とも、声だけで個性を主張する。

異様なサーヴァント。

 

兎田ぺこら

『ホロライブ3期生のー!?

うさだぁ──ぺこらペコー!!』

 

宝鐘マリン

『同じくホロライブ3期生!!

宝鐘(ほうしょう)海賊団船長の──宝鐘(ほうしょう)マリンですぅー!!』

 

大空スバル

『ちわーっす!!

ホロライブ2期生!!大空(おおぞら)スバルっすー!!!』

 

 

軽快で、爽快。

 

サーヴァント、クラス:ポイズナーがここに顕現した。

 

 

 




あとがき

お待たせしました、佐々木です。

本当にお待たせしました。
何週間ぶりですかね?2週間くらい?
なんにせよ、小説を書く大変さを身にしみて痛感した2週間になりました。
でも、これからは結構更新頻度高めになる予定です。予定です。(大事なコトなので2回言いました。)
なにせプロットが5割程度完成したので、作業がめっちゃスムーズなのです。小説を書く者として少し成長した気がしました。
......やっぱ気のせいかもです。

続きを書いてほしいですか?

  • 書いてもろて
  • いや、まぁ、書いてもろて
  • 知らんがな
  • う〜ん
  • お前は敗北者じゃけぇ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。