Fate/Hololive Crash   作:佐々木 澄快

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其は可憐なる鬼の少女、其は胸筋のメイス使い也て

2020年 12月19日

 

冬 日本 

 

 

 

北日本に位置するとある街 青堂(せいどう)

街は都会というほど近代化されている訳ではないが、細長いビル群が目立ち、街は喧騒で賑わっている。

人や物で溢れたその街の人口は100万人を優に超えている。

 

そんな街の中心地である、中央市街地。さらにその中心、ビル群の中にひっそりと佇む小さな赤い屋根の家。ビル群の中に紛れるにはいささか目立つ建物だ。

 

見た目は普通の民家である。しかしそれは表向きの風貌。

本質はその家の地下にあり、その地下施設はまさに教会といった構造になっていた。

 

 

青堂市(ココ)で聖杯戦争って、マジかァ!?」

 

 

カリカリとペンの動く音と、若い男の声が地下教会に響く。

男は石造りの床に座り込み石床の上で紙にペンを走らせている。

 

男は果たして教会の主であり、神父だった。

 

見た目はなんとも俗世に染まった格好で、

下半身はダメージジーンズ、上半身は筋肉質な裸体の上に黒と白のジャケット。

首にはいくつもの十字架のネックレスをジャラジャラと身につけ、耳にもこれまたいくつもの十字架のピアスを着用している。

髪は金色に染め上げ、オールバックにしていた。

 

これが、この教会の神父の姿であった。

 

「...しかも、本来の聖杯戦争とはだいぶルールが違うじゃねェか!これ、教会が介入できんのか?」

 

神父が言うと再びペンがカリカリと動き出す。

 

「....ほーん、聖杯は既に顕現してんのか。じゃあこれは、本当に聖杯戦争なんだなァ」

 

神父は言うとペンを持って立ち上がり、教会の主祭壇、その後ろのマリア像に向かって歩きだす。

 

「なぜ、この地に聖杯が顕現した?戦争の場はずっと冬木市だったろ」

 

神父が言うと、神父に握られたペンは神父の胸部に突き立てられ、肌を削る形で文字を彫り始めた。

 

「...なるほど、霊脈に乗って聖杯の欠片がこっちに流れてきたわけか。それを何者かが回収したと」

 

神父の胸に血が滲む。が、神父は痛む素振りを見せず、むしろ、どこか嬉しそうだった。

 

「キタ....キタキタキタキタァっ!!監督役は俺だァ!これでわざわざ冬木に出向く必要もなくなったってわけだァなァ!」

 

神父はマリア像の前にて母なるその御顔を眺める。

 

「神ってのは、本当にいるんだなァ!信じてやってもいいぜ!」

 

マリア像に向かって神父は神父らしからぬことを言うとマリア像に向かって拳を固める。

 

「邪魔だなテメェ!!!!」

 

神父はマリア像に掌底を放ち、像を爆砕した。

すると、像の在った所、その壁に描かれた魔法陣が現れる。

同時に、神父の右手の甲に以下の文字郡が浮かび上がる。

 

 

我は杯を求める狂酔者也、

命を賭して開孔せよ。

 

 

「これは、令呪? 主催者はどうも御三家の関係者っぽいな。

令呪のシステムさえも向こうから持ってくるとかよォ!」

 

神父は壁に描かれた魔法陣の前に跪ひざまずく。

 

 

「さぁ、始めるか───

 

 

 

素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。

 

降り立つ風には壁を。

 

四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ。

 

閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。

 

だが、満たすことはない。

 

俺は、ただ破却する。

 

 

 

───俺が告げる。

 

汝の身は俺の下に、俺の命運は汝の剣に。

 

聖杯の寄るべに従い、この俺に従うならば応えよ。

 

貴様が誓え。

 

俺は常世総ての善を執行する者、

 

俺は常世総ての悪をも善と成する者。

 

汝、三大の言霊を纏う七天、

 

 

 

天秤の守り手よ──俺の袂に来い──!!!」

 

 

 

 

魔法陣が起動する。

 

聖杯の魔力が満ちていく。

 

 

 

だが、それは()()()()()

 

 

 

「....は? おいマジかよ、これは──()()()()!?」

 

 

 

神父は立ち上がり、背後に振り向く。

 

教会の石床に二つの人影。

 

 

 

既に、召喚は完了した。

 

サーヴァント、

 

一体は赤と黒を基調とした和服をはだけさせた白髪で腰辺りまで届く長髪の少女。

腰に二本の刀を携えている。

少女の頭には小さな般若のお面、少し大きめの鈴、そして、

二本の(ツノ)。まるで、鬼のような角。そんなものが着いていた。

 

 

 

()さんは、眠いので、寝ます───スピー」

 

 

 

ソイツはそう言って床に倒れ伏した。ちなみに今は午前2時であった。

 

もう一体は白を基調とした聖騎士のような服と、左肩、前腕部、左胸部、足部に黒い鎧を身につけ、腰のベルトにはメイスのようなものを携えている。

 

こちらも白髪の少女。だが鬼の少女よりも背は高く、髪は首辺りまで伸ばし、鬼の少女よりも大人じみた風格がある。

 

 

 

「え?───え!?───ええ!!?」

 

 

 

そいつは周りを見るなりパニックに陥っていた。

 

.......

何故だろう、彼女らは英霊の座に就いた者のはず。

その上二人もいるのに、頼り甲斐と神聖感を全く感じなかった。

 

「....あ──、お前らは、俺のサーヴァントか?」

 

不安になって、彼女達に声をかける。

 

聖騎士っぽい少女は俺の方を見るやいなやビクリとして、座り込んだ。その後もビクビクとこちら睨み、警戒している。

 

鬼の少女にはピクリとも反応がなく静かな寝息だけが聞こえる。まるで屍のようだ。

 

数秒の沈黙の後、聖騎士の彼女が口を開く。

 

「ここは....どこですか....」

 

「は?」

 

「団長達を攫ってどうする気ですか!ヘンタイ!」

 

 

.......

あーこれは、難儀だなぁオイ。

 

 

「アァ!?どうする気って、お前ら、サーヴァントだろ?何をするかなんて、お前らは知ってるはずじゃあねェのか?」

 

「さ、さーゔぁんと? 知りませんよそんなの!団長達を解放してください!」

 

「........はァ?」

 

聖騎士は鬼の少女を抱き上げると自らの身で護るようにしてその胸に抱え込む。嫌悪と警戒に満ちた目で俺を睨んでいる。

 

サーヴァントを、知らない?

 

おかしい。

英霊は聖杯に託す願いをもって呼び出される筈。

聖杯戦争のルールも聖杯によって知らされているはずだし、この世に顕現した時点である程度の情報はその身に取り込んでいるはず。

 

なのに、彼女の反応はまるで儀式に巻き込まれた一般人のようだ。

 

だが、彼女らは英霊だ。彼女らの魔力量を見れば一目瞭然で、それはおよそ人の域を超えている。

 

これは、もうめんどくさいから、令呪で自我を奪ってしまうか。

彼女らは俺の手駒でさえあればいい。

 

 

 

「はぁ、令呪をもって命ずる────」

 

 

 

令呪が鼓動する。

 

令呪とは、マスターが持つ3つの絶対命令権だ。この令呪を使うことでサーヴァントには自身の限界さえも突破してその命令に従わせることができる。単一の命令だと効き目が強くなり、広く効果が出るような命令だと効き目が薄くなるものだ。

 

今回の場合は、"自我を忘れろ"と令呪を使って命令するだけで、彼女らに意思はなくなる。

 

「な、何する気───!?」

 

聖騎士は何かを察した様で、鬼の少女を護るようにして抱擁する。なにか鬼の少女が苦しそうにしているが、そんなことはどうでもいい。

 

「お前らの自我を消す。これにてお前らに意思は無くなり、俺の傀儡としての能力だけを果たさせるんだよ。

───どうも、人の意思を持った人間はめんどくさいんでな」

 

聖騎士は、鬼の少女を胸に抱擁したまま立ち上がる。

鬼の少女の体は赤くなり、とても、かなり苦しそうではあるがそんなことはどうでもいい。

 

「逃げても無駄だぜ。令呪の効果範囲に限界は無い」

 

「─────」

 

聖騎士は右手で鬼の少女を抱えたまま、腰に携えていたレイスを左手に装備する。

鬼の少女は、なぜかもう動かなくなっているがそんなことはどうでもいい───ん?

 

 

 

「....オイ、ソイツ、大丈夫か?」

 

「団長達に手を出さないでください!」

 

「いや、そうじゃなくて、あー、ソイツ死にかけてんじゃねェか?」

 

「団長は、最後まで抵抗やめませんから!」

 

鬼の少女はビクビクと痙攣し、肌が段々と青ざめていった。

 

「ちょ、まっ!最後ってかソイツ最期迎えそうだから!死んだらまじで傀儡の意味ないから!

くっそ!令呪をもって命ずる今すぐソイツを離せェェェェ!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや〜、()、死ぬかと思った()〜」

 

あはは、と笑いながら鬼の少女は石床に座り込み、額の汗を拭う。そしてその隣には正座して俯いている聖騎士の少女。そして異様に疲れ切った俺がその場には居た。

 

 

 

しくじった。

こんなことで、令呪を一画消費するなんて、何たる不覚。

ここで、更に自我を無くせと命令したら、令呪は残りたったの一画になってしまう。

そんなもったいないことは、今更できない。

 

「....あやめ先輩、すみませんでした....」

 

聖騎士は深く鬼の少女に謝罪した。

 

「いや〜いい余〜よくあることだし」

 

よくあるのかよ。怖いなマジで。

 

「?.....先輩?よくある? お前ら知り合いなのか?」

 

「そうだ余〜。私がホロライブ2期生で〜、団長がホロライブ3期生なんだ余〜!」

 

「団長?」

 

「私です...白銀聖騎士団団長、白銀ノエルです。さっきは先輩を助けてくれて、本当にありがとうございました」

 

「お、おう。」

 

「余は百鬼(なきり)あやめだ余〜よろしくな!」

 

 

 

.....あー、くそ。

 

意味がわからないな。ホロライブってなんだ?彼女らは英霊じゃないのか?

 

「あー、一つだけ聞いておくぞ。お前らは聖杯に託す願いを持っていて、聖杯を求めて、聖杯の呼び出しに応じたんだよな?」

 

聞くと彼女らは顔を見合わせ、その後こちらを向いて。

 

「ん〜聖杯?」

 

「なんのことですか?」

 

「.........」

 

彼女らは、本当に何も知らないようだ。

これは召喚をミスったか?

いや、違う。詠唱も完璧だったし魔法陣だってミスってない。

 

つまり、

 

「お前ら、ここに来る前、一番最後の記憶はあるか?」

 

「ん〜そだな〜....あ!そういえば!余はなんか覚えてる余!」

 

「何だ?」

 

「たしか〜、『力が、ほしいか──?』みたいなことを誰かに言われた気がするぞ!」

 

「あ、団長もそんな感じですね。何か、頭の中に語りかけてきた感じで!」

 

なんだそれ。聖杯の呼び出しってそんな感じなのかよ。

 

「ほ〜ん、で、お前らそれに何て(こた)えたんだ?」

 

「余はおもしろそうだったから、うん!て答えた余!」

 

「団長も、つよつよな騎士になりたかったので、はいって言いました...」

 

まじか。

こいつら理由がなんか適当っぽいぞ。

やはり、これは聖杯に何らかの異常が起きている。

本来の聖杯による召喚が、そんないい加減なものであるはずがない。

これは主催者を是非ともビンタしたいな。

 

だが、起きてしまったことは仕方がない。超めんどくさいが、この聖杯戦争の趣旨を説明しなくては。

その後反応は想像できるが。彼女らにはなんとしても、俺の駒としてこの戦争に参加して貰わなくてはならない。

 

でなければ、俺の願いを叶えることはできない。

 

くそ、やってやる、自らのサーヴァントを(ぎょ)しえなくてなにがマスターか。

 

やってやる、必ず、彼女らを説き伏せ、聖杯戦争に参加させてみせる──────

 

 

 

 

──────

 

 

 

 

「余は、殺し合いとかは犯罪なのでちょっと....」

 

「団長も人と、その、戦うのは....」

 

こいつら鬼と騎士じゃないんか。

なんでそんな殺し合いをためらってんだよ。

 

「...でも、力がほしくて呼び出しに応じたんだろ?なら、それ相応のことしないとだめだろ。」

 

「それはさ〜力ほしいかって言われちゃったらさ〜欲しいって言わなきゃだめじゃんか余〜」

 

いや、そんなことはない。

 

「団長も、そういうノリで....」

 

いや、ノリとかじゃないんだわコレ。

 

くっそ、これは主催者をコンクリートで固めて海に沈めるしかないかな☆

ここはもう、彼女らの良心に訴えかけるしかない。

 

「....さっきも説明したが、この聖杯戦争には七人のマスターと、それぞれにサーヴァントが就いている。そいつらはこの町で、暴虐の限りを尽くして戦争を行うんだ」

 

「七人て、そんなちょっとした喧嘩みたいな感じじゃないんですか?」

 

確かに、普通なら七人の闘争なんて、ただの喧嘩とかそういうレベルの話かもしれない。だが、

 

「これは魔術師と英霊、倫理の輪から外れた者たちの戦争なんだ。ときにそれは何百、何千もの人間を巻き込んだ災害にさえなり得るんだぜ」

 

百鬼あやめというサーヴァントは首をかしげる。

 

「そうなのか?警察とかに任せとけばなんとかなるんじゃないのか?」

 

うわー、英霊の口から警察とかいう単語が出てきやがった。

 

「この戦争は魔術協会と教会によって牛耳られている。警察や政府、公式の団体が関与することはまずない。通報とかしても、教会にカバーストーリーを付与されて表に出ることはないだろうな」

 

後半の事は俺の仕事だったりする。

本当にめんどくさい、魔術師共の尻拭いだ。

 

「君らがこの戦いに参加しないということ、それは、善良な市民を非情に巻き込んでいく奴らを野放しにするってことなんだぜ?」

 

「それは──」

 

「........」

 

二人は考え込む。

迷っているな。

その迷いは人として、とても正しい。

 

「でも、団長達にその人達から市民を守ることなんて....」

 

「できないことはないだろ。お前らは仮にも英霊として呼ばれた。聖杯の選定が正しければ、それなりの力が有る筈だ。

それに────」

 

「それに?」

 

「英霊を倒す事は殺しにはならないんだぜ」

 

二人とも首を傾げる。

意味が理解できないのは当然だ。彼女らはこちら側の人間ではないんだから。

 

「そもそも英霊、サーヴァントってのは、人々に祀りあげられ、輪廻の輪から外れた存在だ。この戦争で死んだとしても、その後は元居た場所に戻るだけなんだよ。つまり、」

 

「サーヴァントってのを倒せば人殺しにはならないし、マスターって人達も何もしなくなるわけなのだな?」

 

「.....ああ、そうゆうことだ」

 

正確にはマスターを完全に無力化しないとマスターが敗退したことにはならないが、都合がいいのでそういうことにしておこう。

サーヴァントのいないマスターの処理は、裏で俺がやればいい。

 

「....じゃあ、うん、サーヴァントを倒すってことなら余は手伝う余〜!」

 

「ちょっと待ってください!あなたの言っていることが真実かどうか、証拠がありません!」

 

チッ、めんどくさいなノエルとかいうコイツは。

 

「───何をすれば信じるんだ?」

 

「証拠を出してください!」

 

「証拠、か。お前らは魔術を知らないだろ?証拠を提示しようがないんだが。」

 

魔術師とは超常現象を扱う者。

言っても常人には理解されないだろう。

 

「....そうですね。そもそも、魔術ってなんですか厨二病ですかって今も思ってますし!」

 

「( ゜д゜)ハッ!!!!確かに余もそれ思った!」

 

ああ、そういえばそうだったな。コイツらは本当に何も知らなかった。

ちくしょう今の本音を聞いて無駄に傷ついたぞ。

 

「魔術ってのがなかったらお前らもここに来ていないんだが、まぁ魔術の存在なら今ここで見せてやるよぉ」

 

言って神父はマリア像だったものの破片に近ずき、それに触れる。

 

 

「俺が触れた。其方は形を取り戻せ。」

 

 

すると、とたんにマリア像の破片は浮かび上がり、元の形に戻っていく。

幾秒の間にマリア像は元の姿に戻った。

無機物の形を還すなど、基礎の基礎ではあるが魔術を知らないものから見れば、

 

「どうだ?魔術ってのは本当にあるんだぜ?」

 

振り返ると少女二人は目を丸くして驚いていた。

ふっ、神父でありながら魔術を使うとか、外道でしかないが、この高揚感はいいものだ。

 

「厨二病もそこまでいけば凄いものですね....」

 

「今のマジックどうやったんだ!?余もできるか!?」

 

はー、泣きそう。

 

「ど、どうだ?これで信用できるだろ?」

 

「....魔術の件は1回置いておいて、まだ団長は信用できるほど貴方に心を許してません....」

 

めんどくさすぎるなコイツ。頭筋肉かよ。

 

「クッソ、じゃあどうしろってんだよ」

 

「..........ください....」

 

「あ?」

 

「団長?」

 

 

 

 

 

「───牛丼を、奢ってください」

 

こうして神父は()()()()()()()()()()()

百鬼あやめと白銀ノエルに牛丼を奢ることになった。

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