狂わなかった「Z」の力 ~勇者王ガオガイガーif   作:睦月透火

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年末までには間に合わせたい……
その一心でした。

※ ご都合展開に注意(笑)



第106話 GGG、木星遠征(3)

オービットベース・休憩ラウンジ

 

 リュシオの頭の中は完全にグチャグチャだった……

 

 目覚める前に聞かされた事……それまで見ていたもの、過去の自分が選んだ結果と、その選択によって歪められた未来……

 それら全てが“変えられない運命だった”という事を知り、リュシオは自分すらも信じられなくなっている。

 

 その上で理由すらも分からないまま、最も信頼していた筈のグラヴィスから突き離され……

 

『………………』

 

(……リュシオちゃん)

 

 エクセレンは傍で付き添っているが、彼女自身、双方の心境を理解できているが故に、下手に言葉を掛けられない……

 

(私の選択は……最初から間違っていたの……? 緑の星の遺児の力を宛てにした事も、この青の星の予測不可能性に賭けた事も……)

 

 幾ら最強無比の生機融合体……マスタープログラムと言えども、己に比肩し得る存在を止めるには相応の代償が必須。

 そして、相手は一切の慈悲もない……

 

 そんな相手に被害を出す事なく勝つなど、皆無に等しい……

 同一の条件、双方が全力であれば尚更、対消滅が関の山である。

 

 そんな相手を前に、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()が対抗し得るだろうか……答えは“否”。

 

 それ故彼女は“死”を恐れた。“消えてなくなる”事を……また、己が味方としている眷属、アーマロイド達が消える事も。

 

 ……だから彼女は、誰も死なず死なせず、生き延びる為の道を探した。

 

 その結果……己と同時期に落ち延び、青の星地球へと向かった“緑の星の遺児”ラティオ……天海 護を鍵として紡がれる未来に希望を託し、さらにその力添えをすべく様々な工作を施し、その結果、原種の「地球への侵攻」を原作よりも遅らせるに至る。

 

 そして()()()()()()()()()()()()()()()、己ではない誰かの記憶……その中にあった、起こり得るであろう“未来の知識”に縋った。

 

 その中にあった“青き星の輝き”に導かれるまま……

 

 ……しかし、そうして訪れた未来はどうだ?

 

 地球の文明は急速に発達し、勝利の為の光明こそ見えながらも、件の原種の完全討滅にはついぞ至らず。当初の“予測”よりも大幅に事態は悪化し、新たな敵すらも見え隠れしている……

 

 事此処に至れど、好転は望めず……況してや今は悪化の一途。

 

 GGGは想定よりも強くなったが、それよりも敵の方が厄介過ぎるのだ……

 

(やはり私には……貴女の代わりは勤まらない……私には、無理です……シオン……)

 

──────────

 

 一方その頃、展望スペースでは……

 

『……貴様、あの態度は何だ?!』

 

 開口一番。そんな一喝と共に、振り向きざまのグラヴィスの顔へ拳が入る。盛大に吹き飛ばされ、壁に叩き付けられるグラヴィス……座り込んだままの彼の瞳が捉えたのは、殴り飛ばした張本人である牡羊座……アクセルだった。

 

『全権委任者としての、私の意思表示ですよ……』

 

『あんな態度がか?! 今の貴様こそ、全権委任者に相応しくない!! 一時の感情に流され、冷静な判断も下せん愚か者が、俺達を率いるなど言語道断だ!!』

 

 アクセルの指摘は当然であった……今のグラヴィスはリュシオへ対するゴチャ混ぜの感情が邪魔をしており、マトモな判断が出来ていない。しかも自分自身、感情の整理が出来ていないせいでその事にすら気付けていないのである。

 

『何を……』

 

『昔の貴様は、アイツに進言する事はあれども、個人的な感情を出す事など無かったぞ?!』

 

 その発言にグラヴィス以外のアーマロイド達がハッとなって気付く。

 

『……言われてみればおかしな話だ。蠍座(おまえ)が仲間を毛嫌いするなど……』

 

『……そうですの。お説教はすれど、本気で怒った事……ないですの』

 

 グラヴィスと付き合いの長いキョウスケらがこう言うのだ。何かがおかしい……

 

『……もしかして、貴方は……』

 

『……? どういう意味です……?』

 

 ジョルノの言葉に、グラヴィスは真顔で返す……だが、その事が却ってジョルノに確信を持たせる結果になっていた。

 

『全くの自覚なしとはまた……難儀なモノですね』

 

『……どういう意味だ……?』

 

 ジョルノの呟きを全く理解できていない他のアーマロイド達……だが、ココでいつの間にか来ていた護が話に割って入ってくる。

 

「……あれ? 確か、アーマロイド同士ってネットワークで繋がってて、色々と共有してるんじゃなかったっけ……?」

 

 その指摘に、アーマロイド達は騒然となった。

 

『……確かに、だが今の蠍座の意図が俺には読めん』

 

『アナタ……何か……隠している……ですの?』

 

 アーマロイド達は自身が得たほとんどの情報を無意識的にネットワークを使い、他の仲間へと共有し、可能な限り相互補完し合っている。それは客観的なデータだけでなく、個人的な感情も含まれていた……だが今のグラヴィスからは一切の意図が読めない。

 

 まるで何かをひた隠しにしている様な……

 

『……貴様。アイツに説教をしておいて、己は隠し事か……?』

 

『………………ですよ……』

 

 ボソリと何かを口にしたグラヴィス……

 

『……? なに……?』

 

『分からないのですよ……! 今の私は彼女に、自分でも分からない感情を向けている……この感情はいったい何なのですか?! 彼女は我々を率いる者であり、主の傍に立ち、主に我々の意思を捧げ、主の命を我らに伝える者……それは良い……だが今、私が彼女に向けているこの感情が分からない!! 何故私は彼女の過ちを許せない?! 単なる失敗ならば、挽回の機会と謝罪、誠意があれば良い。先程の彼女はそうしていた……だが何故私はそれを許せなかった!? 何故なのです……今までならば、こんな事は一度も無かった……っ!!』

 

 ついに口火を切ったグラヴィスの独白は、怒涛の如く溢れ出した。

 それは己でも制御できない感情の昂り……未知の感覚に踊らされ、上手く言葉に表せない己の心の内……

 

 己の中の“既知”の部分が、再び“未知”へと塗り替えられていく、そこに初めて感じた“恐怖”……

 

(……コイツだけじゃない……今のアイツの考えは、俺にも読めん。戸惑っているのはコイツだけじゃない筈だ……)

 

 アクセルにも、他のアーマロイド達の感情や思考はほとんど掴めていない。それは人間からすれば正常なのだが、造られた存在であるアーマロイド達にとっては“初めての事”であった。

 

「……それって、多分……皆が()()()()()()()()()んじゃないかな?」

 

 暫くの間、アーマロイド達の様子を見ながら考えを巡らせていた護は、思い至った事を口にする。

 

 護の考えを聞いたキョウスケは思考を巡らせ、仮説を整理する。

 

『今の護の思い付きが真実なら……この混乱は、俺達の精神的成長段階が新たなステージに入った事で、必然的に起きたもの……ということになる。これまでは感情の“共有”を重視し、人間の思考を模倣してきたが、これからは“自らに湧き出る”感情を直接己で御する段階……という事になる』

 

 アーマロイドは、初期段階から知的生命体と同等の精神構造を模して造られ、多様な情報をネットワークで共有する事で認識を深め高速成長し続けている。

 しかし今までは感情の発露も、他からの受動的なモノがほとんどであったし、命令や指示には基本的に忠実であった。

 

 しかし、精神的な成長が一定の段階に入った事で情報共有のネットワークが封鎖され、それまで受け流していた感情の奔流を全て自らで御さなければならない。

 

『……ならグラヴィスとリュシオは、この後どうすれば良いんだってばよ?』

 

『それが分かれば、今こうして苦労してないわよ……』

 

 展望スペースの外壁から頭だけを出し、様子を伺っていたピスケガレオンの2体が向き合って考えるも、初めての感情の発露に戸惑う2人の解決策を考えつく事は出来なかった。

 

「……その前にアレ、何とかしないといけないんじゃないかなぁ……?」

 

 護の指摘に振り向くアーマロイド達、その視線の先では……

 

──────────

 

『……感情に従えば良いではないか!』

 

『何を馬鹿な事を……!?』

 

 既に手遅れ……一触即発の状態で睨み合うアクセルとグラヴィス。2人とも短気ではない方なのだが、如何せん互いの煽りが予想以上に効いているのか、柄にもなく熱くなっている。

 

『馬鹿は貴様だ! 今の貴様は一人で立てず、ただ泣き叫ぶばかりの子供と同じだ! 俺の知る貴様は、そんな泣き言など垂れる様な奴では無かった筈だ!』

 

『……知った風な口を……!』

 

『あぁ、分からんな? 今の貴様の考えなど、理解したくとも出来んッ!!』

 

 ついに実力行使を始めるアクセル、無論、されるがままにはならずグラヴィスも反撃に出る。

 

『グ……ッ、頭の硬い人ですね! 貴方は……ッ!』

 

『その言葉、そのまま貴様に返してやるッ!!』

 

 言い争いはついに殴り合いへと発展……これはさすがにマズイとジョルノは2人を止めようとしたが、腕っぷしの強いアクセルに軽くあしらわれ、熱くなりすぎて周りが見えていないグラヴィスにも『邪魔だ』と言わんばかりに殴られ、敢え無く弾かれてしまう……

 

『……なら、どうすれば良いのです……! このままでは無遠慮に彼女を傷付け、不必要な悪感情を抱き、さらに苦しめてしまう! 私にはどうすれば良いのか……理解できません……!』

 

 数分間続いた“殴り合い宇宙”の後、唐突に壁ドンされたグラヴィスはついに手を止め、己の胸の内……「これからどうすれば良いのか」と迷う心を吐露する。

 

『……フン。……やはり貴様は馬鹿だ。迷うならば素直に感情に従えば良いものを……』

 

 グラヴィスの吐露を聞き、アクセルはため息一つ……そして「やはり馬鹿はお前だ」と悪態をつくと共に、「深く考えるな、素直になれ」とグラヴィスに告げた。

 

『え……?』

 

 いきなりの言葉に理解が追いつかないグラヴィス。

 

『簡単な事だ、今の貴様は湧き出る感情をややこしく捉え過ぎているに過ぎん。ウダウダ余計な事を考えず、感情のままに行動すれば良いだけの話だろう……今の様にな?』

 

 アクセルの言葉に、ジョルノやキョウスケもキョトンとしている。グラヴィスはまだ理解が追い付いておらず、殴られた頬に手を当てたままアクセルを見上げて呆けていた。

 

『……確かに、人間は感情のままに動く事も多い。状況にもよるが、結果が悪化する様な事はそう無かった様に思えるな……』

 

 言われてみれば……とキョウスケは過去に見たGGGスタッフやGアイランドシティでの日常のやり取りを思い起こし、分析し始める。

 

『……そうですね。結果はどうあれ、(わだかま)りを残すよりは遥かに健全だと僕も思いますよ』

 

 殴られ損だとアクセル達をひと睨みしつつも、キョウスケの言葉に賛同するジョルノ。そして元々からほとんど感情のままに行動し続けている2人……

 

『オレ達はとっくにそうしてるってばよ?』

 

『アンタはもう少し考えて行動しなさい……』

 

 ピスケガレオン達も反対意見ではない。そんな提案を聞き、少しずつ理解が及んできたグラヴィス……だがそうは言っても、グラヴィスは理詰め思考を軸にしてきた為、はいそうですかとは行かない。

 

『……そんな事をして……余計に彼女を傷付ける事になったら、どうする気ですか?』

 

 その言葉に、グラヴィスなりの優しさとその奥に潜む“何か”を察した護は、グラヴィスの側に寄って自分なりのエールを送った。

 

「貴方がそう考えてるなら、リュシオさんが貴方を嫌う事はないと思う……そうやって他の人を思いやれるなら、他人を傷付ける様な事は言わないし、リュシオさんも受け入れてくれる筈ですよ」

 

 守るべき存在である護にも諭され、グラヴィスは座り込んだまま俯き、抱えた不安を吐き出した。

 

『……感情のままに行動して、良いのでしょうか……これまでの私とは、あまりにもかけ離れていますし……』

 

『……少なくとも俺の知っているアイツは、その程度で貴様を嫌うなどせん筈だ。いい加減腹を括れ』

 

 アクセルの物言いにはまだトゲがあるが、そんな事を言いつつもグラヴィスに手を差し伸べる辺り、彼なりに発破を掛けるつもりで発しているのは誰の目にも明らかであった。

 

『……貴様がどんな事を言おうが、アイツは逃げはしない。それくらいは保証してやる』

 

 僅かな逡巡の後、手を掴んだグラヴィスを引っ張って立たせながらアクセルはそう付け足し、グラヴィスはようやく心の整理を付け、リュシオに対して素直になる事を決意するのであった──

 

 

 

To be continued...

 




殴り合いやその後のシーンは
私的2024年の最高傑作……“例の”話題作をオマージュしました。

しかも殴られ役が……スミマセン(笑)

なお、アーマロイド達の持つネットワークは、彼らが思っている以上に精神へ深く関わっており、実は彼らの精神そのものは形こそ別人格となっているものの、固有の悪影響を他に受け流す事で互いに補完処理し、状態を最適化する……という隠し設定があります。
今回はその効力が何らかの理由で無くなっている、または停止させられたのが原因です。

──────────


年内更新は恐らくこれで最後だと思います。
間に合うなら続けたいけど、今回の流れで次回の細かい部分が練り直しになったので……(自業自得)

それでは皆様、良いお年を。
来年もご愛読よろしくお願い致します!

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