狂わなかった「Z」の力 ~勇者王ガオガイガーif 作:睦月透火
必然的に前シリーズの勇者が出ます。
木星での激戦が繰り広げられるまで、シオンは……
その答え的な回です。
稀星シオンは何もない、白い空間にただ1人……虚ろな目で漂っていた。
それまでシオンは、この世界の異変の元凶……いや、混乱の元ともいえる相手と闘っていた。
勿論、相手も本気で来たので結果は惨敗であり、シオン個人の力では敵わない事は明白だった。
……しかし、精神を疲弊しきり力無く漂うシオンに、何者かが語り掛けている。
(だれ……だろ……う。誰かが……私に、語り掛けて……)
何も無い空間……実はココ、稀星シオン本来の精神世界であり、本当は豊かな自然と人々の営みが共存し合う理想的な空間が広がっていたのだが、先の元凶との戦いの影響で破壊されていき、シオンが精神的に限界を迎えた事で全てが砕け散ってしまい、白一色の空間に変わってしまっている。
シオン自身も精神的な衰弱が激しく、動く気力も残っていない……
(星……の記憶……?)
身に覚えのない指摘に、疑問を感じるシオン……しかし、相手は構わず続ける。
シオンはその口調に聞き覚えはあった。かつて敵対し、滅ぼす事を宣言した相手……パスダーだ。
その事に気付いたシオン……疲弊しきっていた筈の精神は敵対者を感知してボロボロになりながらも感情を顕にし、声の主を睨む。
シオンの眼前には色の抜けたパスダーの顔の幻影が浮かび上がり、毎度の如くな不遜な笑みなど一切無しにシオンを見ていた。
全てのエネルギーも底をつき、動くのも億劫になったシオンだが、相手がパスダーだと知り敵対心剥き出しに幻影を睨み付けた……が当の謎の顔幻影は無反応。
何を言っているのか、シオンにはさっぱり分からない。
── 汝は時の狭間を垣間見る者 ──
── 故に汝は、星の記憶へと至った ──
謎の顔幻影の言葉を額面通りに取れば、
“記憶とは、時空や境界を超え得る”……
“シオンは「時の狭間」を見る事が出来る”……
その事で“星の記憶”を得ている……と言うのだ。
(私の力じゃ……敵わなかった……あんなのが相手なんて……)
シオンは先の戦いを思い返す……
それは、砂粒一つの希望を手に、大海へと挑むようなものだった──
《お前がどう足掻こうと、この世界の消滅は避けられぬ》
《それでもなお、惨めに抗うのか?》
『抗う事の何が悪いの? 理不尽に対して感情を出すのは知的生命の本質……それの何が悪いのさ!?』
周囲を取り囲む圧倒的な殺意と敵意……その只中で、謎の幻影と問答を繰り広げるシオン。
《感情はマイナス思念の源……故に消去すべき》
『感情が無ければ、ヒトの良識も善悪の判断も、
《それ故に、知的生命は消さねばならん》
『(駄目だ……話にならない!)元凶を消せばハイ終わりなんて、創作物や物語の中だけ……現実にそんな都合の良い結末なんて生み出せやしないわ!!』
《それはお前達の勝手な思い込みだ、我に不可能はない》
『それこそ勝手な思い込みよ! 万能なら何をしても良いの? そんなに都合良く物事を解決出来るなら、なぜ貴方はこの騒動を引き起こしたの?』
《この結果は、お前達知的生命の傲慢さ故だ》
『都合が悪くなるとすぐに責任転嫁……悪い大人の見本ね、全く……』
《お前はこの世界で最も傲慢だ……己の力で、世界を変えられると本気で信じている。最も傲慢で危険な思想だ》
『理想を掲げて何が悪い! 共感できる目標が見つかれば、争い合う関係も変えていける……そうやって一歩ずつ、前を見て歩ける事が人類の良さよ。貴方はどうあっても否定したいんでしょうけどね!!』
《……お前の存在は、この世界に災いを齎す。やはり消去すべき》
『上等だわ、最後の一欠片になっても抗ってやるんだから!』
意気込むまでは良かったし、その後も驚異的な反応で敵の策の尽くを潰し、善戦はしていた……
しかし、敵の無限ともいえる物量にはさすがのシオンも限界となってしまったのだ。
(諦めきれない……でも、ココから逆転の目を出すには……何もかもが足りない)
敵は既にあの“ザ・パワー”を制御し、外のGGG艦隊と眷属たちを一網打尽にしようと罠を張っている。
(コッチも手一杯……というか手も足も出ない。本格的に詰んじゃったかも)
一抹の不安……それが心の中で広がり、思ってもみなかった思考が頭の中を過ぎる。
(ダメよ駄目! 弱気になったらそれこそ敵の思う壺……!!)
この状況でシオンは、自身にトドメを刺さない敵の思惑に何かあると直感で感じ取っていた。
(この状況でも私を生かす理由……思い当たらないわ。何かが邪魔をしているとでもいうの? でも何で? どういう理屈なの?)
ふと、シオンの脳裏にあの顔幻影の言葉が浮かび上がる。
さっきまでの思考の間に、あの顔幻影は消えているが、その言葉はシオンの頭にこびりついて離れない。
(アイツの言っていた“星の記憶”……もしそれが本当なら、私を消す事こそが世界の消滅を意味するんじゃないの? それなら、奴の知的生命消去は方便って事……?)
単に煽るだけなら、別にやりようはあった筈だし、煽るには些か話が大き過ぎる気もする……
(本当に私が、その“星の記憶”を持つんなら……解決の糸口を見つけられるかもしれない)
嘘か誠か……確証なんて無い。あるのは一縷の望みだけ……
しかし、今は他に出来る事もない……
(一か八か……なんて言葉、私には似合わないけど……!)
何も出来ずに終わるくらいなら、最後まで望みを捨てない……GGG憲章にもそう書かれている。
(……だったら! 本当に何も出来なくなるまで、足掻くだけよ!!)
シオンは己の内側……半信半疑ではありつつも、己の奥底に眠っているであろう“星の記憶”を呼び覚ますべく、意識を向ける。
それは覚醒していた意識が急に落ちる……気絶にも似た様な、微妙な感覚だった──
「よぅし! 火鳥勇太郎、出動じゃ!」
唐突に聞こえた老齢の男の声……少し軽薄そうなイメージもするが、平和を望む心は誰にも負けていない自称天才、天野博士の声だ。
そこから繰り広げられたのは、何度も何度も見直し、しっかりと心に刻みつけている、あの懐かしい一幕……
天野平和科学研究所の地下部分……そこはどんな組織の追求をも素知らぬ顔で受け流せるほど巧妙に隠された、秘密基地がある。
博士の作成したアンドロイドに乗り移り、博士やその孫、その他多くの人々の協力を受けながら、地球をドライアスの魔の手から守る、宇宙警備隊ファイバードの拠点だ。
半自動で基地内を移動するリニアシートに飛び乗り、移動を開始する火鳥勇太郎。
序盤こそほとんど野次馬根性丸出しだったが、中盤からその立場の重要性や機転の良さが滲み出てくる博士の孫、天野ケンタがそれに続く。
途中でヘルメットを手に取った2人は、リニアシートに乗ったまま基地施設内を高速移動……垂直状態で待機している大型万能戦闘機、ファイヤージェットへと移送され、それほど間を置かずシートごと2人は機体のコクピットへ。
2人が乗り込んだのを確認するのとほぼ同じタイミングで外部のカムフラージュが一部解除され、研究所のすぐ傍にある灯台の根元の崖が大きく動き出し、あっという間に滑走路を形成する。
これほどの地下設備を独力で創り上げた地球人は、他の勇者シリーズ含めても彼……天野博士だけなのだから、自称天才というのも頷ける。
そうこうしている間に滑走路の根元部分に機体は移動し、エンジンユニットの後方にフラップが展開、メインエンジンに火が入りゆっくりと前進し始める。
ココで一つ、発進離脱時の加速をスロットル全開でやるというあまりにも“アレ”な暴挙が行われる……
アニメだから軽く流せてるけど、同性能の機体を使ってリアルでやれば、確実に内臓破裂とか物凄く悲惨な事態になる。
……アナタ、
そんなボヤキはさておき……あっという間に研究所地下設備を離陸して空中へと舞い上がるファイヤージェット。
この光景は最早私の魂に焼き付いて離れない……それもそうだ、この光景こそ親友に勧められ、一目見て圧倒され、その後の展開も設定も含め、何もかもが私の全てを作り替えたもの……
(懐かしいわね。……今の世界でも無理言って再現して貰って、今でも大人気だっけ……)
太陽の勇者ファイバード……私の運命を大きく変えた作品。
(さすがに声優さんやらその他の細かい監修までは無理だったけど、実際中を見たら何もかもがそっくりで逆に驚いたっけ……)
実はパスダー戦後のある折、ある民放の番組制作チームが「長期に渡って視聴率を取れる番組を作れ」と無茶振りをされてしまい悩んでいる所に出くわし、「原案者を明かさない事」「著作権等で発生する個人利益は全てGGG管理下の支援団体に寄付する事」を条件に、ガオガイガー以前の勇者シリーズの設定データと、記憶にある限りのシーン(中抜けはナシだけどぶつ切りの*1)を映像化した記録媒体を手渡し、支援した事で始まったこの世界での勇者シリーズ……
麗雄博士だけには既に映像を見せてしまっているので入れ知恵した事はバレているが、世間には全く広まっていない。
しかし、この世界でも勇者シリーズ第一作として順当に始まったエクスカイザーは空前の大ヒットとなり、今や相当な数のファンがいるとの事……
(そういえば……この作戦が終わった頃が、確かファイバードの放送開始なんだっけ?)
そんな事を考えている間に場面は移り変わり、彼がドライアスの手下共に見栄を切るシーン……
「やいやい! テメェら悪党どもの浅知恵なんてのは、お天道様とこの俺が全てお見通しでぃ!!」
そうそう、この妙に時代劇っぽい言い回し……コレが聞こえたら反撃のターンの始まりだって、よく分かるよね。
「ファイヤァァァジェェェット!!」
そして彼の声に反応し、無人のまま飛来するファイヤージェット……その機体はただの万能戦闘機ではなく、宇宙警備隊として活動する彼……火鳥勇太郎のもう一つの姿、ファイバードそのものだ。
戦闘機形態からごく短時間で人型形態へと変形、その胸部エンブレム中央に火鳥勇太郎が本来の……アンドロイドの姿へと戻って合体。
「フレイィィィムブレスタァァァッ!!」
間を置かずに追加武装ユニット「フレイムブレスター」を召喚して更に合体し、火力・機動力・装甲とバランスの取れた形態へとパワーアップする。
「武装合体、ファイバードッ!!」
子供向けの番組かつ、放送枠が30分なので起承転結もはっきりしており、勇者達が出てきた時点で大体のお話としては大詰めなのでもうここからは怒涛の展開だ。
「フレイムソード……チャージ・アァァァップ!!」
背中から取り出した剣……その剣先を天に向け、刀身に炎のエネルギーを漲らせるファイバード。そのまま剣先を標的に向ける様に構え直し、大地を滑る様に超接近……
「でぃやぁぁぁあっ!!」
直前の構えから再び刀身を振り上げ、その反動を利用しての袈裟斬りですれ違いざまに一刀両断し、敵メカはもれなく大爆発……直後、お約束のように敵メカのパイロットは小型艇で脱出しているが、その辺の野暮なツッコミはしないで頂きたい。
残心から構えを解くタイミングで刀身の炎も先端から徐々に霧散していき、剣を収納してキメポーズを取る……
(何度見てもカッコいい……)
もはやお約束……結局は定番だし、使い回しと言われればそうではあるが、私と当時の子供達にはそんな事など全く関係ない。
善と悪の対立関係……そんな難しい問題を極力分かりやすく描いているシリーズの2作目。当時の子供達の心を鷲掴みにした秘密基地の存在や、より現実味を帯びた周囲との人間関係……
ファイバードは外国でも高い評価を受け、その後の勇者シリーズの方向性をも決めた傑作の一つだ。
懐かしさと相まって、忘れかけていたもの……その一つを思い出したシオン。
その気持ちを思い出した直後、彼女の心……あの真っ白だった空間。
その中に失ったはずのものが一つ……再び構築されている事には、シオン自身も気付いていなかった──
シオンちゃん転生前の秘匿情報……
シリーズ初視聴作品は“太陽の勇者ファイバード”!!
本当ならエクスカイザーから始めたかったんですが、シナリオの流れ的になんかしっくり来なくて……なので敢えて2作目からの導入です。
ああっ止めて、石投げないでぇ!?
……え、ウチ?
勿論エクスカイザーからに決まってるじゃないですかーやだ〜(笑)
当時の合体玩具の記憶もありますよ~?
そういえば最近続々とシリーズの大型玩具がリニューアルされてますし、それの紹介動画とか当時のヤツと比較されてる方もいらっしゃるので、技術の進歩をしっかりと感じています。
当時だと変形機構から全形態のプロポーション両立なんて無理難題でしたからねぇ……
あ、ヤバい……そんな事言ってたらあの時手に入れ損ねたRGガオガイガーを思い出して……
(´・ω・`)ショボーン(自業自得)