狂わなかった「Z」の力 ~勇者王ガオガイガーif   作:睦月透火

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前回からの続き……

奇妙な空間でシオンが再会したのは、麗雄博士とあの“絆さん”。
この時点で死んだはずの2人に再会したシオンは、現状とこの場所に合点がいく……

そして、逆転の目を狙う為に行った事とは……?



第111話 座より外されしもの(2)

「……えっ……絆さん……?!」

 

 シオンは初見だけど既知の人物と会った事に驚愕した。

 

 それもそのハズ……本来なら彼女は自身と会うはずのない存在。既に故人であり、原作では木星圏の戦いで麗雄が死んだ時に再会できた人物……

 

「あら、私の事も知ってるのね。貴方が話したのかしら?」

 

「あ、その……出自がアレなので、色々と調べもののついでに……」

 

 若干シドロモドロになりながらもシオンは絆に説明する、まぁ既に絆はシオンの事をほぼ全て知っているので単なる確認以上の意図はないのだが……

 

「……と言うか、博士がココにいるって事は……っ」

 

「コレは僕自身の不注意が招いた結果だ、君が気に病む事は無いよ」

 

「聞いていた通りの優しい娘ね……大丈夫よ。この人も私も、こうして肉体が無くても精神はこの場で生きていられるのだから」

 

 シオンは麗雄が予想通り木星圏で死んだ事を察知し、救えなかった事に涙を流す。しかし麗雄自身は“己の不注意だ”と諭し、絆はシオンを抱き寄せ頭を撫でながら子供をあやす様に言い聞かせる。

 

 絆の思わぬ行動にシオンはビックリしたが、幼い内に肉親を失って久しい彼女の心は、まるで我が子に接するかのような対応に、今まで堪えてきた感情を洗い流すかのように泣き始めたのだった。

 

──────────

 

 絆の温かな腕に包まれ、その与えられた優しさに泣き崩れたシオン……

 

 一頻り泣いた後体裁を整え直し、改めて麗雄と絆を交えて現状の把握を始めた。

 

「博士がココに居る。なら木星圏では既にZマスターが完全体になって活動している……」

 

「うむ。だがどういう訳か地球への侵攻を後回しにしてGGG艦隊への対応を優先していた。それが何を意味するかは分からずじまいじゃったが……」

 

「多分、Zマスターはガオガイガーと護くんを最大の障害と捉えているから……だと思います。少なくとも、現状でZマスターをどうにか出来るのは、これまで思い付く限りの強化を施したスターガオガイガーだけですし、護くん達の力なら、Zマスターのコアも完全浄解が出来ますし……」

 

「……でも、他の勇者達は……」

 

 現状を把握するシオン……その後、麗雄が抱いていた疑問に答えたが、絆はGGGの他の勇者達やシオンの眷属であるアーマロイド等の事を心配した。

 

「……性能的に厳しいでしょうね。さすがに私の眷属(アーマロイド)達でも、Zマスター本体が相手となると……」

 

 シオンは冷静に勇者ロボ軍団とアーマロイド達の現状を鑑み、さすがに荷が重すぎると判断した。

 

 そもそもアーマロイド達はゾンダーとGGGの戦力差を埋める為の補助役であり、本質的には未だ類似性の高い存在である為、敵の最高戦力であるZマスターを打倒するには及ばない……

 

 性質的に似た者であるが故、完全な討滅には至らない……と言ったほうが正しいか。

 

 時間を掛けて順当に進化を続けていければ、アーマロイドとゾンダーの間に決定的な差を生む事も可能だし、そこまで行けばアーマロイド達だけでもZマスターを討滅し得る……だが、彼らがそこまでに至るには情報も時間も、何もかもが足りないのだ。

 

 現状のまま下手に手を出せば、アーマロイド等の能力を逆利用され、GGG共々敗走する可能性の方が高いのである。

 

「でも、貴女はこのまま終わらせる事を考えていないわね……どうするつもりですか?」

 

「……奥の手……出来れば使わずに居たかったですけど、切り札を切ります」

 

 絆の問いにシオンは少し逡巡した後、既に致し方なしと判断……使わずに居たかった“奥の手”を使う、と打ち明けた。

 

 その時、すぐ近くに新たな反応……木星に落ちつつあるスターガオガイガーの中で意識を失った凱の精神が流れ着いたのであった──

 

──────────

 

「と、父さん……!? 母さんまで……?!」

 

 スターガオガイガーの中で意識を失い、“ザ・パワー”の影響で精神だけがこの場に流れ着いた凱……

 

 シオンがすぐに見つけて引き寄せた後、目が覚めた凱は目の前にシオンと故人であるはずの2人が居た事に驚きを隠せなかった。

 

「……凱さん」

 

 動揺している凱に、どう声をかけて良いか迷うシオン……しかしせっかくの親子3人の対面に野暮を入れる訳にはいかないと成り行きを見守り続けた。

 

 ……やがて原作通りに両親からの激励を受けた後、凱はシオンに向き直り、手を取って現実世界に戻ろうと声を掛けた。

 

「戻ろう、俺達にはまだやらなきゃいけない事がある……!」

 

「ええ、勿論です!」

 

 凱はガオガイガーに、シオンは手にした最後のZコアへと意識を集中させる……

 

「凱……頑張ってらっしゃい!」

 

「稀星くんも、無茶はせんようにな!」

 

 麗雄と絆の2人に改めて激励され、戦意を高めながら2人は意識が現実へと浮上していく……

 

「行くぞシオン、必ずこの戦いを終わらせる為に……!」

 

「はいっ!」

 

 いつの間にか凱の姿はスターガオガイガーへと変わり、シオンの手にした最後のコアからは眩いほどの光が溢れ始めていた。

 

──────────

 

『スサノオ、メインエンジンに被弾により航行不能! しかし、リフレクタービームはまだ使用可能。援護を続行します!』

 

 原作よりも強化され、かつ新たな合体も手にしたビッグバンボルフォッグは、そのパワーアップした演算能力による遠隔操作でスサノオを巧みに操作*1し、リフレクタービームによる援護射撃を行なっていた。

 

 それまではZマスターの範囲攻撃も何とか避け続けていたが、とうとうエンジン部に被弾し航行のための推力を失ってしまう……しかし、ジェネレーターと攻撃機能はまだ無事なため、その場からの援護攻撃を続行させた。

 

『うぉぉぉりゃぁぁぁぁッ!!』

 

『やらせないッ!!』

 

『ぬぅんッ!!』

 

 撃龍神を先頭に、クーゲルザウターとダイキャンサーが艦隊の正面に陣取り、Zマスターの猛攻を凌いでいる。

 

 Zマスターのピアスミサイルは数こそ大量だが、その大きさ*2故に小回りが利かない……そこを逆手に取り、撃龍神とダイキャンサーの広範囲攻撃で数を減らし、クーゲルの援護射撃が撃ち漏らしを防ぐ。

 

『隊長は必ず戻って来る! それまで誰も落ちるなよ!?』

 

 クーゲルの傍に移動しつつ援護射撃に混ざり、超竜神は両腕とトンファーのウルテクビームを全て違う的に合わせ、同時に撃ち落とす。

 

『我らが主も必ず事を起こします、今は耐える時です……!』

 

 内蔵された火器類を乱れ撃ちながら、グラヴィスもGGG艦隊の直掩を迂回してきたミサイル群を迎撃。必ずチャンスは巡って来ると奮起していた。

 

「Zマスターの攻撃は更に苛烈さを増しています、このままでは、幾ら彼らでも……!?」

 

 GGG艦隊の旗艦であるイザナギの艦橋で、命は戦況の変化を報告する。大河も想いは同じだが、グラヴィスの言う通り、今は耐えるしかない……

 

「……クッ、スサノオやアーマロイド隊のお陰で、此方まで届くミサイルは少ないが……」

 

「ミサイル群の大半はアーマロイド隊が引き付け、その残りを勇者ロボ軍団が撃ち落としていますが……」

 

「幾ら彼らでも、コレだけのミサイルを永遠には捌けん。何処かで流れが変わらねば……いずれ……」

 

 そう話す雷牙の頭に、最悪の事態が過ぎる……猛攻を凌ぎ切れなくなった途端に防衛線は崩壊し、艦隊は完全に足を止められ、アーマロイド隊と勇者達は各個撃破。艦隊自体もジワジワと嬲られ全滅するだろう。

 

 雷牙(凱、無事なら早く来てくれ……!)

 

 命(凱……っ!)

 

 大河(彼が本当の勇者ならば、必ず来る……!!)

 

 誰もが彼の……勇者王の帰還を待ち侘びていた、その時だった──

 

「木星表面、大赤斑付近に高密度のエネルギー収束を確認!!」

 

 牛山の驚愕した報告に、大河と雷牙は目を見張る。

 

「な……何が起きているのだ……?!」

 

「分からん……が、アレは……あのカタチは……!?」

 

 大赤斑とは、木星の表面に見える直径約20,000km*3…………近い巨大なマーブル模様の楕円形で、木星の大気が高速で絶えず撹拌されている事から発生している巨大な嵐だ。

 その中心部分から、“何か”が頭を出していた……

 

『ん? 何だ……あの影は……?』

 

 戦闘部隊でいち早く気付いたのはアイゼンナシュティア……内蔵武装の再装填を済ませ、再びZマスターに肉薄しようと推進機関を吹かそうとした直前である。

 

『どしたのダーリン? え、何アレ……?!』

 

 相方のシュトゥルムボルグも砲撃の手が鈍り、動揺は次々に味方全員に伝播していく……

 

「……? 何だ……アレは……?」

 

 Zマスターも異変に気付き、頭上にある木星の表面へ視線と意識を向けていた。

 

 その間、大赤斑から現れた影は徐々に長く……その巨躯を伸ばし、既に太さは大赤斑の直径にも匹敵し、尚も長く伸びる。

 

 木星大赤斑と接する部分からは眩い光が漏れ、伸び続ける体躯の色彩を隠しているが、その体躯そのものはZマスターに勝るとも劣らない巨大なものだ。

 

「……この違和感、まさか……」

 

『ブロウクンッ、ファントムッ!!!』

 

 Zマスターの反応に被さる、咆哮の如き掛け声……撃ち出された鋼鉄の拳と二重の輪環が、三度Zマスターの頬を捉え、打ち据えた。

 

「……まさか……あり得ぬ」

 

 ココに来て、初めてZマスターは驚愕していた……

 

 木星に落ちて無事なハズはない、幾ら緑の星の科学を参考に開発されたとしても、所詮は技術的に劣る地球の産物……

 たとえ本家であろうとも、あの状態から無傷で戻る事は無い……そう踏んでいた。

 

『待たせたな、皆! さぁ、反撃開始だ!!』

 

「あ、あぁ……良かった……凱っ!!」

 

「さすがは我が甥、待っとったぞィ!!」

 

「それでこそ、地球を守る勇者だ!!」

 

 大赤斑から伸びる巨躯の先端……その上に仁王立ちし、戻って来た右腕を再装着する我らが勇者王。

 

 表面に多少の罅や損傷こそあれど、木星に落ちる寸前の姿そのままでスターガオガイガーは戻って来たのだった。

 

 そしてその足元……木星大赤斑から伸びるその巨躯が、徐々にその体躯を顕にする。

 

 それは余りにも、余りにも巨大な蛇の様に見えた──

 

 途方もなく長大な黒銀の体躯、その直径は大赤斑とほぼ同等で、頭以外の体表には山脈にも見紛う程幾つもの刃が出揃い、その双眼は真紅。そして体躯に釣り合わぬ小さな前肢と、胸に相当するであろう部分の装甲……その隙間から漏れる紅い光。

 

 咆哮し、伸びたその体躯は、最早木星の体積を優に超え……尚も長く伸び続ける。

 

 スターガオガイガーを頭上に乗せ、ようやくその双眸がZマスターを捉えた。

 

「……お前は、何者だ……?」

 

 Zマスターは大蛇に問うが……大蛇は舌を虚空に這わせ、無言を貫いていた。

 

「お前から“ザ・パワー”の片鱗が感じられる……だがお前は我の意図せぬモノ。答えよ、お前は何者だ?」

 

 再度Zマスターは問い質すが、その答えを出したのは大蛇ではなかった。

 

『コイツはお前に対抗する俺達の仲間だ! そうシオンが教えてくれたからな!!』

 

 凱のその言葉に、呼応するかの様に再び咆哮を始める大蛇……

 

 黒銀の体躯をくねらせ、“我、此処に在り”と言わんばかりの大音響……宇宙では音が伝わらない筈なのに、その咆哮は衝撃波を伴い、この場にいる全ての存在へと届いていた──

*1
本作のスサノオは最終決戦に向けて大幅な改造を施されており、艦そのものの演算能力と魚座達のサポートシステムを利用した精密遠隔操作機能を実装。ビッグバンボルフォッグ単体でスサノオの全機能を完全に操れる様になっている。因みにその凄さは地上から(月の裏側を含む)地球圏の全領域をカバー出来る広さと、静止軌道上から海で遭難している人間1人を個人特定でき、尚且つその目標に対する座標誤差もコンマ二桁まで狂いなしというアタオカっぷりを誇る。

*2
Zマスターの攻撃そのものは本体のサイズに比例して巨大化している。

その大きさは確かに厄介ではあるが、対処・攻略法はちゃんとある。

*3
大きさは変動があり、大きいときでは40,000km×14,000km程度と、おおよそ地球2、3個分の大きさがあったが、21世紀初頭時点では18,000km×12,000kmとなっている。(Wikipediaより抜粋)




はい、出ました。
本作(いろんな意味で)最大の出し物……

元ネタは分かる人には分かると思いますが……
当時、あまりにもデカすぎて界隈の話題を掻っ攫ったであろうアイツです。

この時点でまだ詳細は明かせませんが、元ネタからして何もかもが規格外なので期待度は高いはず……w

では、また次回!!

大蛇の元ネタ、何か分かった?

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