狂わなかった「Z」の力 ~勇者王ガオガイガーif   作:睦月透火

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勇者王には、涙なしでは語れないシーンも多々ある。
今回はそんなシーンを目指して描いてみた……

……でも多分、一番近いのはTV版エヴァのゼルエル捕食シーンかも。



第116話 天へと還るものたち

 絶望を見せつけられ、それでもなお抗うシオンとリュシオ……

 

 だが突然、Zマスターは表情を一変させ「これは……想定外だ……!」と焦りだし、身体の隅から自己崩壊し始めた。

 

『……これって……!?』

 

《凱さん達が……やったんだ……!!》

 

 しかし、懸念事項はある。まずはリベレイターズ……

 

 彼らは私達と同じイレギュラー的な存在であり、GGGには荷が重過ぎる。

 

 次に、来るであろう機界新種……

 命さんから奴の“芽”は、ついぞ切り離す事は出来なかった。

 よっていずれ“機界新種”は動き出すだろう。

 

 ……しかし今、必ず解決すべきものは目の前に迫って来ていた。

 

 ガギィン!

 

 重力を纏った鋏と、長大な尾の先にある刃が火花を散らす。

 一方は『重天魔蠍』グラヴィスコルードの大鋏……もう一方は『極蛇王機』アビストレイデスの尾だ。

 

《くっ……グラヴィス、元に戻ってっ!》

 

 シオンは接触からの逆ハックでグラヴィスの制御を元に戻そうと奮起するも、一向に自己制御を取り戻す気配はない。

 

 グォオォォォンッ!!

 

 咆哮と共に突撃してくる『六装獅機』ストラトスライガー。リュシオは爪を盾でいなし、身を翻して突撃を躱す。

 

『ライガー! 私が分からないの?!』

 

 非戦闘時には時々撫でられたい一心で甘えてくる事もあった獅子も、今は敵意剥き出しの猛獣と化しており、不用意な接近は“死”を意味するほど危険極まりない存在になっていた。

 

『……宇宙の摂理……静寂なる世界……悲しいですの……』

 

 突然大量の水……のように見える“何か”がアビストレイデスを囲み、締め上げ、硬化する。

 

『レヴィア……貴女まで……!?』

 

 アストライザーの手にレイピアを握らせ、硬化した“何か”を破砕してアビストレイデスを救助するリュシオ。

 尋常ならざるパワーと巨体を誇るアビストレイデスをいとも簡単に拘束した“何か”を操っていたのは『霊鏡水援』レヴィアルフィ・リヒカイト……

 

 虚空に浮かぶ銀色の水瓶に座った小柄な少女は、その憂いた目線をアビストレイデスとアストライザー……シオンとリュシオに向け、溜め息とともに「悲しい」と呟いた。

 

『……その物言い、まさか貴女……』

 

『……はい。“私”は、変わってなどいませんですの……この世界を……“本来の流れ”に戻す……それがこの“宇宙”の意志……ですの』

 

 水瓶の少女から直接「自分たちは狂っていない……世界の本来の流れに気付いたから戻すのだ」と言った。

 

《リベレイターズみたいな事を……何で……!?》

 

 シオンは何が何だか分からない。リュシオも眼前に居る青髪の少女……レヴィアの様子はいつもと同じなのに、行動だけがおかしい事実に理解が追いつかない。

 

『レヴィア! この世界が無くなったら、あなたの好きな作品も、あの人達も、みんな消えてしまうのに……』

 

『……それは……とても悲しい事ですの……でも、()()()()()()()()()()()()()()ですの……』

 

 それはあまりにも決定的な言葉だった……かつてあった人間らしい倫理すら捻じ曲げられ、“滅びこそ自然の摂理”と受け入れ、それを享受せよと宣う。

 

 本来のアーマロイド達ならば、“絶対に”口にしないハズの言葉……

 

(コレがZマスターの……いえ、“奴ら”の真の目的……!)

 

 現時点では“管理者”以外の全員が知らない事ではあるが、“ザ・パワー”の大元たるエネルギーの奔流には「意志」が存在しており、精神的なフィルターが存在しないシオンとリュシオ以外*1のアーマロイド達を、Zマスターの“ザ・パワー”を利用してハッキング。その大元たる「意志」を直に流し込む事で狂わせ、離反させたのである。

 

『シオン! あの子達は……!』

 

《……やられたわ、完全に……敵は最初からコレが目的だった。

自分達の尖兵(リベレイターズ)だけでなく、私達の採った対策も最初から想定内だった訳ね……》

 

 完全に裏をかかれた。シオン達が原作改変の為に用意したアーマロイド達の存在すら、敵には想定内……いや、いかなる手段も奴等には通用しないのか。

 

 此方の主要戦力であるアーマロイド達を離反させ、GGGとの戦力均衡を崩す……だけでなく、私達との“情”を利用して封じ込め、ないしは足止めする。

 

(私達の思惑なんて、最初から通じてなどいなかった……)

 

 精神的にも、戦力的にも、管理者たちから仄めかされた“奴ら”には遠く及ばない……

 

(コレが、改変拒絶派……“原典絶対教団(オリジナル・ドグマ)”……)

 

 枠外の強さを誇るであろうアビストレイデスがあるとしても、シオンとリュシオには、仲間であるアーマロイド達を攻撃する意思を持てない。ましてや、2人にとって彼らは仲間以上の存在でもあるのだから……

 

『(どうすれば……あの子達は私達の……ううん、弱気になっちゃダメ! でも、取り戻す方法が思い付かない……)』

 

 唯一残った『乙女座』アストライザーを駆るリュシオは、アーマロイド達のリンクが切れている事に焦りを感じるが、半身たるシオンの手前なんとか平静を保とうと必死になっている。

 

 そのシオンもまた、リュシオの前でみっともない醜態を晒すまいと冷静に包囲戦に対応していた。

 

(“ザ・パワー”によるハッキングだけなら、私の逆ハッキングで対応出来るはず……でも此方の強制アクセスを()()()()()()弾かれた。自己成長の影響が裏目に出たかな……)

 

 反省の色を含みつつ、シオンは対策の思考を止めない。しかし、今打てる手では何も進展しない事にすぐ行き当たってしまい、悪態が口をつく。

 

《全く、理不尽にも程があるでしょ……!》

 

 聞けば誰もが同意するであろう、あまりにも理不尽な展開……だがこの困難には、歯を食いしばってでも立ち向かうしかない。

 身内を人質に取られ、挙げ句顎で使われているのだ。許せるはずもない。

 

『ナシュティア! ボルグも! 2人とも変な意識に騙されないで……っ!』

 

『所詮は消える生命、どうして守る必要があるか……?』

 

『そーゆーこと、自分すら守れないなら消えたほうがマシでしょ?』

 

 狂気に汚染されたアーマロイド達は口々に“知的生命不要説”を唱え、世界ごと消えるのは道理だと声を揃える。

 だがそれは当事者である地球人をはじめ、シオンとリュシオには到底看過できない言葉だ。

 

《だから滅ぼすというの?! より良い未来を創れるかもしれない、その可能性すら消し去るというの?!》

 

『あなた達は……もう……どうして……っ』

 

 涙が止め処なく溢れるリュシオ。シオンはアーマロイド達にこんな事を言わせる“意志”に対して怒りを抑えきれない。

 

(このままだと、GGGにも平然と攻撃してしまう……それだけはダメだ! ……なら、残る手は……っ!)

 

 迷いは世界の破滅を早める……ならば、やるしかない。

 

《リュシオ、貴女はGGGと共に此処を去りなさい!》

 

 シオンはアビストレイデスに仕込んだ枷を全て解き放ち、リュシオには逃げるように言い放つ。

 

『え……? じゃあシオン、貴女は……?!』

 

《私は、後始末をしてから戻るわ……!》

 

 シオンは、今まで抑制していたアビストレイデスの本能を完全に解放し、握っていた全ての手綱から手を離す。

 

 ギィィィイュオォォォ……ッ!!

 

 響くはずのない虚空に響く咆哮、そして強烈な圧迫感……

 それは此方の異変を察知したGGGにも波及していく。

 

「な、何なのだ……この凄まじい圧迫感は……?!」

 

「エネルギー放射とも違う、得体の知れない圧力がこの宙域全体を覆っているようです……!」

 

『こ、この気配……?!』

 

『何なんだ、この圧力は……!』

 

『どうなってんだよ?!』

 

『Oh my god……ヤバいオーラをビンビン感じるっZE!?』

 

 顕現した極限生命……その本来の闘争本能に任せ、シオンは敢えて手綱を解き放った。

 

 その目的はただ一つ……

 

(……彼らの存在が、地球の未来を閉ざすなら……!!)

 

 歯を食いしばり、来るであろう精神的な負荷に耐える……シオンにとってアーマロイド達を失うのは、『家族』を失うに等しい。

 だがそれでも、彼らが道を踏み外し……地球の存亡に関わるなら、この結末は最初から決めていた事。

 

(身勝手な私でゴメンね、みんな……それでも、私は……)

 

 アビストレイデス──その巨体に秘められた本来の力で縦横無尽に暴れ回り、今まで歯牙にも掛けなかったアーマロイド達を相手取り、蹂躙を始める。

 

 最初(まず)はダイキャンサー……大太刀を振り翳し、何度もその牙をいなすが、そんなもので止められるはずもなく……

 

『ぐ……っ、しかし我らは……ッ!?』

 

 完全な死角から尾をムチのようにしならせ、背後から致命傷を与え、怯んだ隙に頭から齧り付き……腰から上下を泣き別れさせ、咀嚼。

 自身の支配下に置いた“ザ・パワー”で再生能力に封印を施し、さらにフィジカルリアクターで体内に作った重力場へと釘付けにする。

 

 次に襲ったのは厄介な能力持ちの『天秤座』ファーティスタティーラ。

 単体では身動き1つ取れないが、その戦闘用幻影(スタンド)である存在を召喚し、迎撃……しかしながら呆れるほどに巨大なアビストレイデスには如何なる技も通じず、丸呑みから同様に処理される。

 

──────────

 

 それからアビストレイデスは、グラヴィスコルードを超重獄対決でアッサリと下し、レヴィアルフィ・リヒカイト諸共重力場で囲い込んで丸呑み、アリエスゲイン、アイゼンナシュテイアを同時に締め上げて粉砕して平らげ、シュトゥルムボルグとストラトスライガーを消し炭にしてから喰らい、最後にクーゲルザウターの首へと喰らい付いて絶命させる。

 

 そうやってこの場に居た全てのアーマロイド達を一体一体確実に追い詰め、地獄絵図を作り出し続けた……

 

(ごめんなさい……本当にごめんなさい……)

 

 せめて、魂は安らかに……その想い1つで必死に祈り、その身に罪を背負うシオン。

 生み出したが故に起きた過ちを、自身で精算する……因果応報を己で享受し、恨まれるならそれは自業自得。

 

 全てを受け止める覚悟を持ちつつ、その瞳からは止め処なく涙が溢れた。

 

 ……やがてアーマロイド達と共に、リベレイターズも纏めて駆逐し終えたアビストレイデスは、低い唸り声を断続的に上げ続けながらも、シオンの手綱に自ら戻る。

 

 第三者から見れば、制御不能の化け物……気まぐれの如く埒外の力で暴れ、全てを無へと帰す災禍の黒蛇。

 

 アストライザーで合流したリュシオの様子から、全てを察知してGGG艦隊が辿り着いた頃には、無数の小さな残骸と長大な影がただ一つだけ……

 

 木星をバックに淋しく存在しているだけであった──

*1
シオンには“原作知識”と“外次元の精神体”という強力な2重防壁があり、精神汚染に対して絶対的な防御を誇っている。

ちなみにリュシオにも派生系として“改変された精神”という防壁がある為、シオンほどではないが精神汚染にはかなりの耐性があった。




これにて木星遠征は任務完了。

我らがGGGは損害軽微ながらも、頼もしかった仲間のアーマロイド達は壊滅状態……
シオンとリュシオに、深い心傷を残すという結果に。

……で、今回大暴れしたアビス君ですが……
まだ全力ではないです。本当ならZマスターを単騎で完封出来るくらいですから……ね?(元ネタ的にw

とりあえずTVシリーズ最後のシナリオはこの後!
果たして一体どうなってしまうのか?!

──────────


次回予告




君達に、最新情報を公開しよう!

ついにZマスターを打倒し
宇宙の平和を取り戻した我らがGGG。

その裏でシオン達は
深い心の傷を負ってしまう。

だが嘆く暇もなく、シオンは最後の戦いのため
卯都木命の前に立つ。

だがその選択は、巧妙に仕掛けられた“罠”であった!



次回、勇者王ガオガイガーif NEXT...
第117話『物質昇華/存在変質』

次回もこの小説で、ファイナルフュージョン承認!!

コレが(次回の)勝利の鍵だ!!

  • 獅子王 凱
  • 天海 護
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