狂わなかった「Z」の力 ~勇者王ガオガイガーif   作:睦月透火

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太陽の如き光熱の檻「グランドノヴァ」と、光さえ抗えぬ重力の牢獄「ブラックホール」……
それぞれに囚われてしまったガオガイガーとシオン。

果たして、2人の救出は叶うのだろうか……?



第32話 光と闇の向こうから(中編)

 グランドノヴァ発生から30分後……GGG機動部隊は水陸両用整備装甲車で補給と整備を受けた後、ガオガイガー救出の作戦に取り掛かる。

 ブラックホールに飲み込まれたシオンも気に掛かるが、現代科学ではブラックホールに対抗する手段は一切無く……ダイキャンサーが奇跡の如く維持している中で、下手に手出しは出来ないと判断された。

 

「イレイザーヘッド、射出ッ!」

 

 沿岸に待機させた三段飛行甲板空母と強襲揚陸補給船に、ありったけのイレイザーヘッドを積み込み……可能な限りグランドノヴァのエネルギーを消費させる。

 

 それが現状のGGGが採れる、最も有効な作戦だった……

 

『隊長、必ず救出します……! イレイザーヘッド、発射ァッ!』

 

 小型の太陽とも言うべきグランドノヴァへ向けて、イレイザーヘッドの先端部が射出される……光の中に飲み込まれた直後から明らかに反応は起き、グランドノヴァの直径が歪み……萎んでいく……

 

「……ッ!?」

 

 だが、それもつかの間……すぐに直径は最初と同じ程度に戻り、減っていたエネルギー反応そのものも回復……振り出しに戻ってしまう。

 

「クソォッ! この程度しか変わんねぇんじゃ意味が無ぇぞ!?」

 

「あれだけのエネルギー量じゃ、そう簡単には消しきれん……だが、続けるしかあるまい」

 

『諦めて堪るか……! 絶対に隊長を助け出す! 次だぁッ!!』

 

 終わりの見えない戦い……だが、超竜神は泣き言なんてクソ食らえだと言わんばかりに奮闘していた。

 

──────────

 

 同時期、ブラックホールを観測していた猿頭寺とスワン、大河長官の方は……

 

「現在、事象の地平面は直径約1.5m……本来なら質量不足から、あと5秒ほどで消失してしまう大きさです。それをダイキャンサーのコアから供給されるエネルギーと、腕部の空間干渉システムで強引に圧し留めている……そんな状態です」

 

「ブラックホールから脱出する事ハ……現代科学の如何なる方法を以てシテモ、不可能デス」

 

「我々人類は、何と無力な存在なのだ……たった一人の仲間を……未だ若き少女一人さえ、救えないとはッ!!」

 

「ブラックホールの実態すら、現代ではまだ未解明なのです……相手が悪すぎますよ」

 

「しかし……ッ! コレでは彼女があまりにも……」

 

「シオンはいつも『GGGに入ってから、何かと細かな苦労はするケド……皆が、私を仲間として扱ってくれるカラ……やっぱり入って良かったなぁ』って……言ってマシタ」

 

 スワンだけが知る、シオンの本音……プライベートを共にしているからか、スワンを姉のように慕う彼女は、スワンに対してよくそんな事などを話していた。

 

「……もう一度、何とか内部を観測する方法が無いか……論文からも徹底的に調べ直してみます」

 

「……頼む、護くんも戦っているのだ……我々大人が、此処で挫けては、子供達に笑われてしまう」

 

 大河長官の言葉に、猿頭寺とスワンも頷き……観測機器から送られてくるデータを確認しながら、それぞれの仕事を片付けていくのだった。

 

──────────

 

 その後……ガオガイガーの状態が判明、同時にグランドノヴァの内部にはゾンダーメタルプラントが存在する事も判明した。

 しかし、グランドノヴァのエネルギー量は一向に減る事無く……イレイザーヘッドを撃ち続ける超竜神の疲弊状態も深刻となっている。

 

《もういい、超竜神! これ以上続けたら、お前の身体まで……!》

 

 Zセンサーによる通信で火麻は超竜神の身を案じ止めようとするが……

 

『せめて、この一発を撃つまでは……ッ! イレイザーヘッド、第8射……グアァァッ!!』

 

 満身創痍の中、苦悶の声と共に発射された8発目のイレイザーヘッド……それまでと同じ軌道でグランドノヴァに直撃し、エネルギーを消費させていく。

 

 ……が、無情にもグランドノヴァは消滅する事なく、再びエネルギー量を増していく……

 最早、打つ手無しか……と思われた直後。

 

『……ぉぉぉぉおおおッ!!』

 

 借り受けた巨刃の腕をそのままに、緑色の輝きを纏ったガオガイガーが疲労困憊ながらほぼ無傷でグランドノヴァを強行突破し、超竜神のすぐ側へと脱出して来たのである。

 

「「凱……ッ!」」

 

 命と麗雄の声が重なり、クルーの誰もが奇跡の脱出成功に湧く。

 

 ガオガイガーの全身はエメラルドグリーンに輝いていたが、着地と同時に変化が戻り……甚大なエネルギー消費と疲労で膝を折る。

その後、借り物の腕に幾つもの亀裂が発生、ジワジワと色が抜けていき……やがて岩が風化していくように消滅していったのだった。

 

「……そうか……あの内部状況で無事だったのは、プロテクトエネルギーを利用してギガンティックアームズが形成するエメラルドプロテクターの効果か! ……コレも、稀星くんに助けられた形じゃな……」

 

 麗雄の慧眼は、ガオガイガーが無事だった理由を一瞥で突き止め、シオンの協力があった事に心から感謝した。

 

 原作ではギャレオンの独自判断でプロテクトシェードを全身に張り巡らせて防御していたが、今回は腕がダイキャンサーから借りている「ギガンティックアームズ」……つまり、元から全身防御を可能にしており、如何なる衝撃をも防ぎ鉄壁の防御を誇るエメラルドプロテクター……あのグランドノヴァの強力なエネルギー放射の中でも耐えきれたのは必然であった。

 

「この野郎、さんざん心配掛けやがって……!」

 

『ははっ、悪かったよ参謀……父さん、命……何とか、帰ってきたぜ……はぁっ……はぁっ』

 

「すぐにガオガイガーを回収するんじゃ! 凱、お前も兎に角すぐに戻って休め」

 

「……良かった……凱……っ」

 

『なぁ、命……シオンは……?』

 

 ふと口にした言葉に場の雰囲気が変わった事を敏感に察知した凱……参謀と命が沈黙を貫く中、父親である麗雄が息子に現実を伝えた。

 

「……稀星くんはあの時、間に合わず発射された重力子爆弾の空中処理中、何者かの妨害に遇い……人工ブラックホールに飲み込まれた……今、彼女が飲まれた穴を閉じさせまいとダイキャンサーが必死に留めておる」

 

『……な……何だって……?!』

 

──────────

 

 光も音も、全て何もない……ただ静寂だけが全ての世界に、件の少女(シオン)は放り込まれていた。

 

 ブラックホールの内部を観測する方法は如何なる知識や技術を以てしても不可能であり、また脱出も出来ない……一度取り込まれたら最後、死すら許されず、永遠を彷徨う運命にある。

 そしてその永遠は現実とは切り離された、偽りの永遠であり……物質世界と定義される現実では消滅に等しい現象で本来の死というものを迎えているのである……

 

 だが、偽りの永遠だとしても……一秒を永遠に引き延ばされたこの虚無の世界において、彼女はまだ生きていた。

 

 

 途方も無い程の虚無が支配する世界……その中で周囲の静寂を知らぬまま一人、少女は思考を巡らせる。

 この虚無の空間は行動するエネルギーの消費すら無意味な世界であり、現時点での脱出は絶対不可能であると分かりきっている為、余計な消費を抑える意味で思考のみを巡らせている。

 

(ブラックホール……か、この時点で罠に掛かる事は想定内だったけど……まさかグランドノヴァと同時にコッチまで仕掛けてくるなんて……)

 

 一度嵌まれば二度と脱出不可能、光の速度を以てしても逃げる事すら敵わない……絶対不可避の敗北。

 いずれ仕掛けられるだろうとは思っていたし、対策も講じる予定ではあった。しかしこのタイミングだとは夢にも思わなかった……

 

(こんな事なら、もうちょっと必死に色々勉強しとくんだった……)

 

 シオンは記憶復活前の時点から自身の可能性を模索し続け、強化された力に任せて貪欲に知識を吸収していた……その中に、量子力学や素粒子物理学、医学、宇宙科学も入っている。

 その知識は数々な装備開発や、アーマロイドの作成の一助になっていた……が、幅広く得ていたが故にその応用は机上の空論や独学であり、先人の知恵によって確立されたよりディープな理論や構想までには意識が向いていなかったのである。

 

(光の速度でも脱出できないとなると、移動じゃ無理……恐らくココは特異点、常識なんて通じない場所のはず。なら、常識なんてかなぐり捨てて考えないと……)

 

 少女は諦めてなかった……なにか方法はある筈だと、GGG憲章に則り、少女は足掻く。夢見た明日を見る為に……

 

──────────

 

 全く……イレギュラーを潰すならイレギュラーしかないってのは当然の帰結よね。

 ブラックホールから脱出しろとかいう無理ゲー、まさか自分がやらなきゃならないなんて誰が思う? 私はゴメンだよ? 現在進行系でやらされてるけど……

 

 こんな事なら偶然GO◯TUBEで見つけた「白河博士の重力講座」……ちゃんと最終回まで見とくんだったわ……

 アレ、他愛無い会話の中にメチャメチャ重要な単語とか構造を理解するためのキーワードとか散りばめられてて、お陰でかなり物理学の勉強捗ったし、あと2~3回って処に「アレ」で記憶戻っちゃうんだもん。マジで勿体無かったなぁ……

 

 ……と、愚痴ってもしょうが無い。

 

 この超重獄から脱出するには最悪、空間ごと破壊するしか無い……

 

 しかし、そんな事は普通できない。多分最高の状態に戻った私でも無理ゲー……そもそも空間に干渉を起こす程のエネルギーは私の身体じゃ精製不可能である。それに加え、地球上では何らかのネットワークを通じてゾンダーメタルプラントならぬ、エネルギー精製プラント……要はGGG本部に置かせて貰っているメンタルケア施設からのエネルギー供給も断たれているのだ。仮に地上であっても、私じゃそれだけのエネルギーを扱う事が出来ない……幾ら超進化人類と言っても、そんな頑丈じゃないのだから。

 

 じゃあ、一体どうすれば良いのか……

 

(タダでさえ薄氷の運命だったのを、ようやく細い一本道ながら道を造れたのに……ココで終わりとかないわー。だってグランドノヴァ回よ? この後絶対ハンマー使うし、多分プライヤーズの補助で半壊になりつつもグランドノヴァ消し去ってゴルディ完成を待つじゃん? 私が協力してたから完成は速いだろうけど、重力ゾンダーはどうせもう使ってくるだろうからゴルディの強さ強調回になるのは目に見えてる。そんでその後マイクが登場して合体ゾンダーと音波対決……それを制したら多分その後東京大決戦……四天王が直接襲ってくる)

 

 私はこれまで、自分の運命に抗いながらもGGGという組織や護くん(ゾンダーにとっての天敵)に対して、可能な限りの援助をしてきた……それは単なる生存戦略、というだけではない。自分がこの世界に生まれたが故、大切にしたい存在(GGGの人達)や……彼ら(勇者)の仲間になれたからだ。

 

(パスダーを屠っても、その先には原種がいるし……本来の私の派生、Zマスターもいる。

 どう足掻いても危険極まりない運命だし……それすら倒せても、更に未来にはソール11遊星主が控えてる)

 

 転生前の自分が、この世界として知る最後の記憶……希望の灯火を2つ、生き残らせる為に選んだ残酷な運命、何としてもこのクソッタレENDに希望を挟み込みたい。

 

 ※シオンは『覇界王』を知らないので、例のアレ(FINAL)の結末が気に入らないご様子。

 

(何が何でも、生き残って、遊星主も全員ブチのめすって決めたのに……運命って残酷……)

 

 孤独に生きるしか無いと当初は思っていた……でも、仲間が出来た。そうなれば、志半ばで倒れるのは非常に不本意だし、それはかなりのストレスである。

 

(でもさ、よくよく考えたらこの直後にも重要イベントあるけどそれも全部見逃す事になる訳よね……やっぱ不愉快超えて完全にプッツン案件だわコレ、もし誰かに仕組まれた結果ならソイツ絶対許さない、絶許よ絶許!!)

 

 その意識のお陰であろう……いまだかつて無い出力でエネルギーを蓄積している己の身体が、周囲に存在しているであろう、このブラックホールがそれまでに吸い込んだ全てを引き寄せ、何かを形成してく。

 

 ……そして芽生えたやり場のない怒りと理不尽さに、少女は猛然と吠えた。

 

『とりあえず此処から出れたら、元凶()徹底的に叩き()めすッ!!』

 

 その咆哮に応えるかの様に……自身の胸に浮かぶ「Z」の紋章から、閃光と共に1つの球体が生成されたのであった。




すみません続きます、脱出自体は次話に……長いわ!

感想お待ちしてます。

シオンの不思議な知人たち……登場期待度は?

  • 要らない。そもそも気にしてない
  • 少しは欲しい。気にはしないけど
  • 少し楽しみ。色々と少し気になる
  • 実を言うと、かなり気になってる
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