狂わなかった「Z」の力 ~勇者王ガオガイガーif   作:睦月透火

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ブラックホールの中で、ストレスを発散するが如く吼えたシオン……
その意思に呼応して、不思議な力が勝利の鍵を手繰り寄せる。

果たして、この後に何が起こるのだろうか……?



第33話 光と闇の向こうから(後編)

 胸の紋章……ゾンダーメタルとは違う、幾何学的な紋で描かれたZの紋章。

 

 Zマスター化した私の胸に刻まれたこの刻印は、私が超進化人類(後のエヴォリュダー)へと変貌した証でもある……その紋章から出てきたのは、あの時貸倉庫で生成していたコア・ドライヴの1つであった。

 

(な、何でZコアが……私、何もしてないのに……)

 

 しかし、召喚されたコア・ドライヴは私の知らない変異の痕跡が残されており、確実にこの前完成を見たコアとは違って見える……有り体に言えばデカい、マジでデカい……具体的には直径2mぐらい。

 この前生成したコアは直径約15cm位のサイズであり、元となる重金属の塊や発動機の様な動力システムなんかを取り込んで本来のコア・ドライヴへと変化をする筈だった。

 

 ……だが、今現在、私の目の前にあるコアは……

 

(もうドライヴ化を果たしている……何も取り込んでない筈なのに)

 

 それは既に生物の心臓の如く胎動し、早く我が身体を寄越せと胎動を続ける……何が原因なのかはサッパリだが、コレはコレでおあつらえ向きの状態でもあった。

 

(何が原因かは分かんないけど、コレならスゴいのが生まれる……!)

 

 私は早速、周囲に漂う残骸を意識して掻き集め、コア・ドライヴの周囲へと動かす……Zコア・ドライヴを持つ機体はどれだけ破損をしたとしても、心臓であるコアが無事な限り身体を再生……元になった遺伝子情報から導き出された「生まれ持つ本来の姿」を取り戻す。

 それはコアに直接埋め込まれた「生物の遺伝子情報」がコアの持つ「理の回帰」に作用して、生物の持つ自己治癒能力を引き出す為に起きる現象……

 

 ……そして()()()()()()()()()()()()()()のは、もちろん「ボディを製造する時」だ。

 

 ヴォン……ヴォン……ヴォン……ヴォン……

 

 通常より大きく、エネルギーに満ち溢れるコアは周囲の瓦礫から金属を抜き取り……自己の身体とすべく、素粒子レベルで再構成、瞬く間に身体を構成するパーツへと変換していく。

 

 コアが巨大であるぶん、その貪欲さは異常なほどに強く……既に周囲の瓦礫のうち、金属類はほぼ全て吸収を終えており、まだ足りない……とばかりに遠方の金属塊や、特殊な元素を含む合成物を銀色の触手で掻き集め、取り込んでいく。

 

(……ナニこのサイズ、デカ過ぎ……うっそぉん)

 

 やがて完成した金属の塊のサイズは直径約200mを超えており、その質量に至っては最早計測不能なレベルの代物……それがまるで生物の卵のように脈動を繰り返し、周囲に発生している重力エネルギーすらもかき集めて啜っている。

 

(ちょ……ちょっと待って、この子……このブラックホール自体のエネルギーまで吸収してる?!)

 

 我ながらこの事態には驚きを隠せなかった……こんな極限環境で金属生命が己の身体を形成し、あまつさえ周囲からエネルギーを蒐集するなど、如何に常識はずれだとしてもあり得ない。

 

 ブラックホールは基本、凄まじい質量によって空間内に発生した重力というエネルギーが周囲を巻き込んで陥没し、空間自体の支えですら耐えきれずに生まれるモノ……

 重力は素粒子物理学で最も非力ながら、元となるモノの質量に比例して加速度的に強力になり……やがて空間自体のキャパシティを超える事で重力崩壊を発生させるという「数の暴力」を体現したトンデモエネルギーだ。

 

 そんなものに晒されながら、直接その中心でエネルギーを貪る規格外の化け物っぷりに……私は何だか奇妙な焦燥感に駆られそうになった。

 

──────────

 

 ガオガイガーがグランドノヴァから脱出してから、約20分後……応急修理と補給が終わろうとしているガオガイガーは、ブラックホールに消えたシオンの救出を後回しに、グランドノヴァへの対処という無情な選択を迫られていた。

 本来ならシオンは居ないのでスムーズにグランドノヴァの対処へと赴き、Gツールの発動を以てこの戦闘は終了する筈なのだが……今回ばかりは話が違う。

 

《グランドノヴァの影響により、周辺の気温は既に2度も上昇しています……幸い、気温変動は周囲5キロ圏内に留まっており、それ以上の距離ではほぼ影響は及んでいません……ですが、日本政府から早急な対処を……と打診が来ています》

 

《クソッ、シオンは無事なのか……確認さえも出来ないなんて》

 

「ブラックホールの内側……事象の地平面より先は全てを圧し潰し落とし込む井戸の底のような世界、その上内側へと引き込む力は光の速度ですら歪めて取り込もうとする程だ。現代の技術では観測など……」

 

《……隊長……》

 

 超竜神もまた、自ら師と仰ぐ彼女の安否を気に掛けている……だが自分達は「勇者である」という強い責任感からか、後ろ髪を引かれる思いでグランドノヴァ対処のため、破損箇所の応急修理を黙って受けていた。

 

「超竜神の応急修理、あと20分で完了します……」

 

「ガオガイガーの応急修理は完了……補給作業の終了までは、あと15分です……」

 

 それぞれのオペレート作業を黙々と進める命と牛山隊員も、シオンの安否が気になるのか……声のトーンに元気がない。

 

「ブラックホール、依然として変わらず……直径1.5mのまま、沈黙を保っています。ダイキャンサーのエネルギー残量、概算で残り約20%……時間換算であと約30分で限界です」

 

 ギギッ……ギギギ……ギィィ……

 

 それは苦悶の声か、はたまた彼の悔し涙か……己が主を守り切れなかった自責の念が混じった様な独特な音が周囲に響く……ブラックホールの消滅を必死に防ぐダイキャンサーの各部には微細なヒビが生じており、目にあたる突き出したセンサーからは、まるで涙を流す様にオイルが漏れている……それがこの状態を維持し続けるという難易度の高さと、彼自身の必死さを物語っていた。

 

「……作業が完了し次第、グランドノヴァの消去作戦に移行する……プライヤーズ全機、ウォームアップ終了後にGツールを運搬し、その後現場で待機。ガオガイガー及び、超竜神の整備作業が終了し次第、作戦を実行する……!」

 

 大河長官も、拳を握り締め……涙で震えそうになる声を必死に隠しながら、振り絞るように指令を出す……

 

 

 それからもうまもなく、プライヤーズがGツールを携え現場に到着する……その時、異変は起こった。

 

「ブラックホールに変化あり! 異常重力場に急激な変動……シュヴァルツシルト半径が、内側から押し広げられています!!」

 

(; ・`д・´) ナ、ナンダッテー!!

 

 猿頭寺の報告に、現場クルーの全員が驚愕する……それも当然、重力場の異常変動に呼応しての、シュヴァルツシルト半径の再拡大……通常なら消えゆくはずのブラックホールの直径が再び拡大し始めるなど、理論上有り得ない現象なのだ。

 

「猿頭寺くん! 重力場の乱れは何処を起点にしておる?!」

 

「それが……ダイキャンサーの腕の先……ブラックホールの内部からです!」

 

「What?! ブラックホール表面に亀裂発生! 中カラ……Oh my god……!!」

 

 スワンの言葉に、ブラックホールの表面を全員が注視する……そこには、白いヒビ割れの様な1つの亀裂と、そこから生えている2つの金属の刃の如き物体だった。

 

《な……何が起こっているというのだ……?!》

 

「分からん……しかし、この状況は我々の理解を超えておる!」

 

《シュヴァルツシルト半径、更に拡大……直径4mを超えました。尚も拡大中、加えて異常重力場も拡大。周囲の物体を押し退けて……これは……斥力場?》

 

 重力の異常な乱れ、そしてブラックホールの周囲に発生する斥力場……斥力とは引力、つまり引き寄せる力の対極であり、物体を押し退ける力である。

 

「斥力場、直径100mを超えましタ! 尚も拡大中デス!」

 

《重力変動値、乱数が目まぐるしくて計測不能です……! このままシュヴァルツシルト半径が拡大を続けたら……!》

 

「……何だ、この音は……?」

 

 ビキッ……ビキッ……ビキビキッ……!

 

《シュヴァルツシルト半径の内部に、高エネルギー反応……まさか、あり得ません!? 内側からのエネルギー放射を観測するだなんて……!》

 

 牛山オペレーターの通信が、更に常識を覆す事態を報告してくる。物理的なアクセス手段を閉じ込める筈のシュヴァルツシルト半径の内側から反応が返ってくる事など、物理学的にあり得ないのだ。光すらも閉じ込めてしまうブラックホールから、何かが出てくるなど……

 

 ビキビキッ……ビキッ……!

 

「重力異常、尚も変動……止まりませン、加えて内部からの反応ト……金属反応ガ……!」

 

 ギギギッ……ギィィィ……!!

 

 ダイキャンサーの発する声とはまた違う……独特の響きで聞こえてくる、謎の音。

 同時に、黒い穴の表面に発生したヒビがどんどんと拡大をしていく……

 

「事象の地平面に、謎の亀裂を確認! どんどん拡大していますッ……重力異常、更に拡大!」

 

《シュヴァルツシルト半径、150mを突破……尚も拡大中、斥力場も200m域に達しています》

 

「……アレは、何……?」

 

 命が気付いたのは、ついに物理的に認識できる範囲で姿を現した……ブラックホールの表面から突き出した刃のような金属塊……僅かながら震え、根本に発生しているヒビを拡大させていっている。

 

「まさか……ブラックホールから、何かが這い出て来ておるのか……?!」

 

 麗雄は尚も異常拡大を続けるブラックホールから、何かが此方へと侵入……いや、這い出して来ていると推測……事態はその予測を裏付けるかの様に、尚も異常を訴えてきた。

 

ギギギッ……ギィィィ……ィィィィイッ!!

 

 まるでガラスが割れる様に、ブラックホールの表面が内側から空間そのものが壊され……巨大な腕……いや、ダイキャンサーの物とは違う形状の……一対の巨大な鋏が飛び出した。

 

「……ッ?!」

 

『隊長……!』

 

『……何なんだ、あの腕は……?!』

 

 ガオガイガーと超竜神が整備を終え、ようやく水陸両用整備装甲車から降りてくる……通信の会話から外が異常事態だというのは既に把握していたが、降りてきた矢先に空間を割って現れた鋏腕を目撃し、改めて事態の異常さを噛み締める。

 

 重力場異常の拡大は収まったが、依然として変動値は異常を示し続け……薄ぼんやりと光る鋏腕が動き出す。

 

 ガチャガチャ……ガチャガチャ……

 

 巨大な複数の足が規則的に動き、独特な駆動音を奏でる……巨大な鋏腕の持ち主は、深海の様に青黒い装甲で全身を覆った……超巨大な蠍の如き生物型マシン。

 両腕の機構により、重力場を操り……あろう事かブラックホールを中から抉じ開け、強引に這い出てきたのだ。

 

「……な、何という……超重力のブラックホールを、まるで空間を繋ぐゲートの様に潜り抜けて来るとは……」

 

 蠍型メカがその全身を現し、ブラックホールを完全に潜り抜けて来た直後……ダイキャンサーの干渉と斥力場、そしてブラックホールそのものまで同時に消滅、ダイキャンサーが力尽きる様に崩れ落ちる。

 

 ……ギィッ、ギギギッ

 

 ギギギッ……キシャアッ!

 

 崩れ落ち、もう1歩も動けない……そんな表情が見て取れる程疲弊したダイキャンサーを、振り向いて己の鋏で支え、まるで仲間を支える様な体勢になる蠍型メカ……青黒い蠍と、緑の蟹……同じ鋏腕持ち故の仲間意識なのか。

 

『……何が……どうなってるんだ……?』

 

 途中から生で見てはいたが、何が繰り広げられたのか理解に困る状況を……凱は辛うじて言葉にする。

 その時、蠍型メカの頭部装甲が音を立ててスライド展開され……中から体躯相応の複眼と、コクピットらしき構造物……そして、そこに収まっていた人影が現れた。

 

『……え、此所……まさか、ホントに出てこれた……?』

 

『……せ、先生……?!』

「『シオン……?!』」

「「「稀星(くん)……?!」」」

 

 混乱極まる状況を一切理解していない、呆気に取られた一言……驚愕するGGGな面々。

 

 ……ワケガワカラナイヨー。(by.全員)




もう化けモン通り越してます……ネタは知る人ぞ知るアレ。
シオンの星座は蠍座ですヨ。

進行に合わせて情報は資料に追加されてます。

なお、次回予告はもう少しお預け……

立て続けのシリアス展開に疲れました……閑話、または日常回を挟んでも良い?

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