狂わなかった「Z」の力 ~勇者王ガオガイガーif   作:睦月透火

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前話の暴露ネタは如何だったでしょうか?
クーゲルザウターの中身は女の子……
ちなみに『ウマ娘プリティダービー』に登場している“ある黒髪のウマ娘”をイメージして書きました。
読者の皆様に中身の予想アンケートを投じた結果……1位は何と『ライスシャワー』。

ウチの読者みんなしてライスちゃん好き過ぎかァ?!
ネタとしては使えそうなそうでないような……

※ この回は和鷹聖さんのネタ提供に報いる為の報酬回です。
  原作に無い展開や人物・マシンなどが登場します。
  また、演出上戦闘シーンはギャク路線気味なのでその辺りはご了承下さい。



第39話 GGG、真夏の怪談話

 ある日の夜、関東全域にて不可思議な積乱雲が発生……僅かな間に激しい雷雨に見舞われた。

 特に首都圏では落雷が集中的に発生し、東京中の家電……主にクーラー等の空調設備が軒並みショートする事態となってしまう……

 

 その翌日……宇宙開発公団とGGGでも、被害を受けた設備の復旧に追われていた。

 昨夜の落雷の影響によりショートした機器の修理は、施設規模も数もあってなかなか終わらない……一部の重要な機器類は最初から対策を講じられており特に問題はなかったが、一時的ながら各所で停電によるシステムダウンも発生しており、GGGベイタワー基地も少なくない影響を受けている。

 

 現在は重要設備を優先して復旧作業中であり、その大半は元に戻っている……が、施設内だけでも数万箇所はある空調だけは直すのに人手が足りず、完全復旧には数日を要すとの事。

 

 だが、よくよく考えれば不可解な話である……

 ピンポイントで家電類がショートするという大規模不可思議現象が起きたのに、蓋を開ければ家電の修理屋さんや、一般の皆さんが右往左往する程度の影響で済んでいるというのも……

 

──────────

 

『……暑い……』

 

 そんな中で私、稀星シオンは……暗い公団施設の電算室で、他の職員さんと一緒に作業をしていた。その理由は……

 

「……よし、こっちは終わりました。照明周りの電源も、あと30分ほどで終わるとの事です」

 

「通信の方は? あっちも相当な負荷が掛かった筈だからな……」

 

『……ここからチェックできる設備はもう少しでテストも終わります、設備全体の復旧率は52%弱……電源周りが特に酷かったですからね。特に復旧を急ぐ箇所は既にリスト化してありますので、作業班の方へ此方を渡してください』

 

 傍らに用意していた紙束を職員さんに渡すと、少しの驚きと共に受け取り一言……

 

「さすがですね、噂の女医さんが機械にもお強いとは……」

 

 直後に電算室の照明が復旧し、明るくなった事で笑顔の返事を返すと、男性職員さん達は皆して顔を赤らめる。……止めてよ、本当はまだ中学生程度しか育ってない中身不明の地球外産生機融合体よ?

 見た目は理想の成長で誤魔化してるだけ……残念だけど、見た目は大人で頭脳は子供なんだから。

 

(本当は公団施設のPC全部に『Zi-メタル』を一時感染させれば、修復も簡単なんだけどね……)

 

 あの奇跡の出会いから……私の身体はどんどんとゾンダーメタルから変質した“謎の金属細胞”に取って変わられており、徐々にその変貌は顕著になった……といっても見た目はほぼ人間と変わりなく、ゾンダーメタル由来の超人的生命力や機械融合、組成組み換え等の能力も尋常じゃない位にアップグレードされており、ゾンダリアンとほぼ同じ事が彼等よりも速い速度で行える様になっている。

 その上、表の日々のお仕事(公団関係者のメンタルケア)によりエネルギーも充実しており、端から見ればチームでもオーバーワーク染みた作業や行程を1人で同時にこなすのにも慣れ……というか余裕になっていた。

 

 この超人的な能力を私に与えてくれているこの謎の金属細胞……何時までも「謎の」では不都合になってきたので、安直だけど『Zi(ズィー)-メタル』と命名した。イミテーション、似て非なるゾンダーメタル……略してZi-メタルだ。

 

『……ッ……ふぅ……』

 

 まただ、謎の頭痛がする……ここ最近、私はかなり不定期だが頭痛に苛まれていた。

 

 勿論、自分の身体の状態は手に取る様に分かるし、生機融合体としてのスペック上「頭痛」なんて普通にしてれば起きない……そもそも私は名目上とはいえ精神科医だし、それなりに人体に関する勉強は修めている。それに普通の人間だった時も、頭痛なんてものとは無縁だった。

 

 勿論、この事は麗雄博士やスワンさんにも相談したし、博士の勧めでサイボーグ由来のボディチェックも受けた……が、その結果は全くの異常無し。

 

(……何でかな。嫌な予感はしないけど、何か色々と忘れてる様な……)

 

 そしてどうしても、精神は人間なのだから忙殺という言葉は当て嵌まるのであった……そんな折に、なんとダイキャンサーから電文(G-L◯NE)でメッセージが届く。

 

《“……友ができた”》

 

 ……は? 今なんと?

 

《“図体のわりに、料理や菓子作りが趣味だという”》

 

 図体て……人外か何か? そもそもダイキャンサー達アーマロイドは普段、亜空間で待機してるから外と相互交信(コミュニケーション)なんて、専用チャンネルでも拓かなきゃ無理だと思うんだけど……

 

《『どういう事? っていうかいつ出来たの?』》

 

《“つい、今しがた……になるな”》

 

 全然理解が追い付かない……頭が暑さでバグってる? あのダイキャンサーが? あり得ないし。

 ……それじゃ、おかしくなったのは私の方? 嘘でしょ……

 

 

「基地内の復旧状況は?」

 

 GGG本部、メインオーダールーム……水中にあるため、連日の猛暑もここには影響が無い筈だった。

 しかし、昨日の悪天候の影響で公団ビルに落雷があり、設備的に密接な関係にあるGGGベイタワー基地も、一時的とはいえ電力供給が完全ストップした場所があった……そして今、現在進行形で損害を受けた大型設備や機器類の復旧作業が進行中なのである。

 

「……ヤレヤレ、地上施設にある通信設備の最終チェック中に落雷の直撃を受けるとはのぅ」

 

「メイン動力炉や、生命維持システムは無傷だったのが不幸中の幸いですよ……各セクションの復旧状況、モニターに出します」

 

 猿頭寺オペレーターの操作により、メインモニターには本部施設内の復旧状況が表示されている……ベイタワー基地全施設のうち、稼働状態にあるのは最優先で修理させた電算システム室と休憩室、各部の通信設備など……一方で復旧が最も遅れているのは空調であった。

 地上部の施設内だけでも数万箇所はあるし、ベイタワー基地の大半は地下にある為、内部循環に用いられている空調設備の総数はとんでもない数な(地上施設よりも遥かに多い)のだからしょうがない。

 

「とりあえずは通信や電算設備と、食事が止まっていないだけマシという事か……」

 

 長官である大河幸太郎は、この状況に歯噛みするしかなかった……こんな時にゾンダーに襲われたら、撃退こそ出来ても事後処理や、勇者達のメンテナンスに更なる時間を取られるのは目に見えている。波状攻撃や伏兵などの策を用いられようものなら、僅かな時間で防衛線も瓦解してしまう可能性があるからだ。

 

「各メンテナンス設備への電力供給は、1時間後に完全復旧の予定です」

 

「それまでに襲撃さえ無ければ、御の字なんじゃがのぅ……」

 

 フラグめいた麗雄の発言に、大河・猿頭寺・牛山の3人は苦笑いを返すしかなかった。

 

──────────

 

「……あっつい~、シオンさん……その格好で暑くないの?」

 

『……? 大丈夫よ、流行りの冷感素材だから』

 

「私も中に着てくれば良かった~」

 

 もちろん冷感素材というのは嘘で、実際は冷却媒体で構成した膜状の放熱シート……巻いておけば内部の熱量をコントロールし、中身を設定した温度に保ってくれる……所謂「着るエアコン」のようなものである。

 元がゾンダー由来の生機融合体とはいえ、私は生身の人間と変わり無い感覚を持つボディなので、冷却は必須であり体温が高過ぎると思考や活動に酷く影響する……その為、こういう冷却機能は必須なのだ。

 

 自宅地域も落雷で送電停止してしまった事で避暑しようと護くんが本部に来たけど、本部も空調設備が復旧作業中である事に落胆……

 空調は本部だけでも数万箇所あるため、復旧作業はかなり忙しそうだ……そこで命さんが「暑さで皆参ってるもんね……外でアイスでも買って差し入れしよう!」とナイスアイデアを閃き、護くんと外出許可を貰ってスワンさんと命さん、そして用心棒として家からテリー(【猟犬座】)を呼んで連れ歩いている。

 ちなみにテリーは護くん達小学生ズと大の仲良しであり、華ちゃんが自分の家の飼い犬「よーぜふ」と色々比べては羨ましがってたっけ……

 

『ヴォンッ!』

 

 頭上に屯している鳩の群れを一吠えで散らし、鳩の糞爆撃を阻止……チョット優秀過ぎませんかねこの子。……そんな事を考えていると、何やら腕時計らしきものを覗き込みながら1人で口論している少女を見つけた。

 

 見た目は私(の精神年齢)と同い年(14歳)か、1~2つくらい下かな? ライトブルーのワンピースに麦わら帽子、そしてアレは……もしかしてグラディエーターサンダル? 初めて生で見たわ……

 

(赤い瞳……アルビノか。何処かのお嬢様っぽい感じがするわね)

 

 白い髪が夏の太陽で銀のように光り、まるで人形みたいな雰囲気を醸し出していた。その少女が此方に気付いて軽く会釈をすると、誰かに監視されている様な視線を感じた。

 

「あ、あの……何かトラブルですか?」

 

 アレ? おーい護くん、命さんまで……何でもうそっち行ってるの? え、困ってそうだったから? そう……

 

 どうやら彼女はフランスからの旅行者で、連れが何人か居るらしく……今はそれぞれ自由行動中。 合流するまでお手製のウェアラブル端末(腕時計型スマートフォン、らしい)で東京観光に繰り出そうとしたのだが、肝心の端末に不具合が出たらしく途方に暮れていたのだそう……

 

「……失礼、私はカルナ・ミステールグラスロノメと申します」

 

 何故か付けていた飛行気乗り向けデザインの男性用グラサンを頭の上に上げ、自己紹介をする少女……ワンピースと麦わら帽子に何故そんなグラサンまで? 清楚な格好にはあまりにも不釣り合いなので胡散臭さが半端ない……

 

『私は稀星シオンよ……カルナさん、ね』

 

「What? フランス語で“謎の食通”とハ、どういう事デース?」

 

 ツッコんじゃったよこの人?! 私、敢えて避けたのに……スワンさぁ~ん!!

 

「そう難しい事じゃ無いわ、ただのポーズ……面倒を避ける為の偽名ですもの」

 

 ってぇ?! コッチもアッサリし過ぎだし、自分から偽名って言っちゃう?! 言わないよね普通は?!

 

「……シオンさん?」

 

「……? どうしたのシオン?」

 

『……何でもないわ、何でも……』

 

 命さんと護くんが見てるけど愛想笑いで誤魔化すしか……って、カルナさんの視線が痛いっ! 彼女の言動に1人ツッコミをオーバーアクションでやってたんだから何か誤解されてるっぽい?!

 

 

 出会いはそんな感じだったが、カルナさんと話す内に……何と言うか、漠然とした感覚が頭を(よぎ)る……単なる転生者だった時の、まだ今の運命を知らなかった頃の私に似ている気がした。

 直接()れさえすれば、多分精神分析(メンタルサーチ)で確証も持てるだろう……今は雰囲気的な予想でしかないし、もし間違いだったら超失礼なんだけどね。

 

──────────

 

「ねぇ、シオン……この街でオススメのスイーツを教えてくれない?」

 

『スイーツ? そうね……私がオススメするなら、まずは……』

 

 話す内に、私と彼女は素で名前を呼び合う様になっていた。何となくだけど、彼女からは“気兼ねしないで”っていう雰囲気を持っている風に感じる。

 それに、時々怪しむ事もあるけど……何処か労る様な優しい眼も向けてくるのだ。

 

「ワタシからもオススメのスイーツ、有りますヨ?」

 

「だったら、私も……秘密のお店、教えちゃおうかな~?」

 

「ッ?! 是非、お願いします!!」

 

(うわぁ、食い付きが半端ない……嬉々としてるなぁ。もしかしてスイーツ好き? いや私もだけど)

 

 そんな風に感じるのも、やはり彼女も“転生者”……? いや、確証が持てないのに疑うのは失礼だ……

 

 

 

 

 

 この時は本当にそう思っていた。

 

 

 そんな話をしながら歩き、私たちは本部で頑張ってるみんなの為にアイスや冷感グッズを購入……カルナは理由を問うて来たが、私達がGGGの職員だと話すと妙に驚いていた。

 

「……貴女もGGGに!? 所属部署は?!」

 

(フランスにもGGGの支部はあるし、シャッセールという外部協力組織もある……GGGの存在を知らない筈はない。じゃあ何に驚いたというの? 彼女は……)

 

『え? あ、部署ね……技術開発部の所属だけど、医療特務官も兼任してるわ』

 

「医療、特務官……」

 

「シオンは、ワタシ達の健康を守ってくれる()()()()()()()()デース♪」

 

「専攻は精神科だけど、一般的な医療行為も習得はしてるし、簡単な外科治療……あ、薬剤師と調理師免許も持ってるから、薬膳料理や調剤も出来るわよ」

 

「……そうですか……まさかの身内とはね……」

 

 最後の方は聞き取れなかったけど、一瞬だけ見えたカルナの……心底安堵した表情、どうやら私は何か疑われていたらしい……確かに(今の)見た目は大人なのに、カルナのタメ口を普通に受け入れている私も、内心カルナを転生者と疑ってるからお相子なんだけどね。

 

──────────

 

「コレ……はあっちの棚かな?」

 

「う~ん……あ、そうそうこの先!」

 

 命さんは手に持った買い物メモを、護くんと覗き込んでいる……量販店の店内で私は買い物カートを担当し、命さんとスワンさんと護くんがメモを頼りに商品を持ってくる。ちなみにテリーは店の入り口でお行儀良く待機中だ。

 

「そういえばさっき……別行動中だったの私の連れの1人から『今日は良き友と出会えた。』って言ってたけど……どんな子かしら?」

 

 唐突に此方を見てそんな質問をしてくるカルナ……へぇ、連れの1人に友達ができたんだ……で? 何で今それを聞いてきたのかな? というか何で私を見てるのかな……?

 

 

 ズズゥゥゥン……!

 

 店から出て少し歩いた頃……突如、遠くで何かが崩壊する音が響く。

 

 私と護くん、そして何故かカルナも音より少しだけ早く何かを関知して音の方向を振り向いていた……アレ? 私と護くんはともかく、カルナは何に気付いたというの……?

 

「シオンさん……!」

 

『ええ、間違い無いわね……全く間の悪い……!』

 

 ゾンダーの事は伏せて事情を説明し、私達はカルナと別れて急ぎ本部に戻る……護くんは途中でボルフォッグに拾って貰い、スワンさんと命さんにはピスケガレオンを使わせて本部へ……私は自主鍛練中だったクーゲルザウターを呼び出して現場に向かう事にした。

 

──────────

 

 シオン達の姿が見えなくなった後、彼女の後ろにはいつの間にか6人の男女の黒服が現れていた……そして不具合を起こしていた筈の腕時計(端末)から声がする。

 

《ただいま戻りました……地下遠征は中々楽しめましたよ》

 

「ほんっとに羨ましいわね……で、お土産は?」

 

《色々と詳細なデータがコピー出来ました……ついでですが、極秘資料も幾つか》

 

 端末の画面に表示された内容を見て、カルナは驚愕する。

 

「な……コレって?!」

 

《その際に『マモン』が“良き友ができた”とはしゃいでいましたが……》

 

「ああ、『蟹』(カニ)というのには少々驚いたが、健剛で剣豪……実に頼もしい。まさしく“友”と呼ぶに相応しい漢だった」

 

 稲◯ボイスでウンウンと感慨深く頷く、ゴツイ男の黒服……

 

「私は側にいたイルカとサメに懐かれたわよ♪」

 

 隣の小柄な少女も、釘◯ボイスで嬉しそうに語る。

 

『蠍』(サソリ)からは当初、思いきり怪しまれましたがね……理解が早くて助かりましたよ」

 

 3人目の男は、ダンディで優しそうな速◯ボイス……

 

「そう言えば……もう1人、女の子(?)が居るって話してたけど……その子だけは会えなかったんだよね……」

 

 4人目に口を開いた男性は花◯ボイスで、残念そうに付け加えてきた。

 

 黒服の男女は口々に己の感想を話し、一喜一憂するその姿を微笑ましく思いながら、カルナは資料にも目を通しつつ思案する……

 

「……カニ、イルカにサメ……そしてサソリ、ねぇ。こっちもゾンダー関連で非常に興味深い人と会ったわ……っていうかGGG職員(ほぼ身内)だったし、その子達は恐らく《彼女》の関連なのでしょう……」

 

《……であれば、タイミングが悪かったですね……私も、出来れば直にお会いしたかったです》

 

 端末からの声は、意外にも残念そうだった。

 

「それって彼女が、アナタが以前に言ってた『究極の到達点』って事かしら?」

 

《そうですね、データ上では似て非なる……ですが現在(いま)の処、一番近しい存在ではないかと》

 

「そういう事……か。お菓子の取材をしに来たついでで張ってたけど……正解だったわね。彼女の潜在能力をもってすれば、いずれはエヴォリュダーをも超えるでしょう……さすがは紫の星の、って処かな」

 

《仰る通りです……ちなみに、この後はどうなさるおつもりですか?》

 

「そうね……ひとまず先回りして、とりあえずは傍観かしら」

 

《了解しました、出歯亀(デバガメ)ですね♪》

 

「……言い方」

 

 黒服を連れて東京の街を歩くカルナはそう言いながら、自身の腕に付いている端末を小突いた。

 

「ところでお嬢。一応、私物なので……いい加減ソレ(グラサン)は返して貰いますよ?」(稲○ボイス)

 

「……もう少し楽しみたかったのに」

 

──────────

 

 伊豆方面の上空に漂う謎の超巨大積乱雲……そしてそれから放たれた雷撃で、先程の崩壊は起きたらしい。

 

《三段飛行甲板空母、伊豆方面に向けて飛行中!》

 

《稀星くん! 敵の詳細が知りたい、すぐに合流できるかね?》

 

『クーゲルザウターを呼びましたが、合流にはまだ……合流でき次第急行します! 分析に使えそうな映像をコッチに転送(まわ)して下さい!』

 

 G-USBを緊急モードで展開、6面に増えたホロモニターのうち4面に現場の映像が転送されて来る……映し出されているのは、巨大な積乱雲。周囲には強力な電磁波と強風でバリアーを作っており、大気状態が非常に不安定……なるほど、昨日の嵐の原因もコイツだったって訳ね。

 

『巨大積乱雲……何時ぞやの黒雲ゾンダーに酷似してますが、規模が半端なく巨大ですね。それに……ッ?! この素粒子Z0の発生パターン……まさか、拡散用の胞子がもう完成しているとでも言うの?!』

 

《な、なんだって?!》

 

 冗談じゃない!! 現在位置は伊豆の上空高高度だけど、コレがもし市街地まで降下してきたら、確実にゾンダー胞子が撒かれて逃げ遅れた人は一瞬でゾンダー化するし、そこからねずみ算式で増えていく。

 

『最悪過ぎます……もう一刻の猶予もない。アレを今すぐ止めないと、伊豆が一瞬でゾンダーメタルプラント化されます!! クーゲル、最大速度で伊豆方面へ!!』

 

 文字通り飛んで来たクーゲルザウターに飛び乗ってすぐに指示、最高速度マッハ8.5を叩き出せるクーゲルザウターなら、此処からでも数分で行ける。

 

《?! 待って下さい! 雷雲が……!》

 

 その直後だった。牛山さんの声と共にホロモニターの一面が切り替わり、三段飛行甲板空母の外を映す偵察カメラの映像。そこに映し出された光景は、巨大積乱雲から伸びた腕のような形の雲が伸び……ちょうど三段飛行甲板空母を飲み込むように覆い隠した所であった。

 

《え……そ、そんな?! 三段飛行甲板空母との通信途絶!?》

 

《氷竜・炎竜、ガイガーとも交信不能です!?》

 

(まさか、あの積乱雲が囮……もしくは罠だとでも言うの?!)

 

《サテライトリンク、回復しません……レーダー波も全く応答なし、強力な磁場と電磁波で内部の解析も不可能です》

 

 だが私には、巨大積乱雲の内部に確かにゾンダー反応とプラントの反応、そして空間の乱れを感知できている……敵の狙いは巨大な囮兼プラントに機動部隊を閉じ込め、その間に成長しきったゾンダーが胞子をバラ撒き……伊豆方面全域をゾンダーメタルプラントにするつもりだったって事?!

 

『……長官、ゲートの開封許可を! 私の戦力だけで、どこまでやれるか分かりませんが……』

 

《うむ、これは正しく緊急事態だ……ゲートの開封を許可するッ!!》

 

 万が一に備えて、私の戦力は亜空間内に待機させており……ゲートを使用して任意の場所に呼べる様にしている。背に腹は代えられない事態……こういう事に対する心構えや、策による慢心を避ける為にも、私は自ら大河長官に使用許可の可否を委ねる事にしていた。

 

『はい! 天を結びし黄金の航路(みち)、遍く虚空(そら)に輝くものよ……我が祈りを聞き届け、その御業(みわざ)を以て()の地へ(いざな)え!

 

 コラそこ、中二病いうな! この呪文には空間先の座標の演算とゲートの生成、安全対策その他の情報の算出プログラムを乗せてるんだから! コッチだって本当は言うの恥ずかしいんだってのに!!

 

 全ての演算が終了し、私を乗せたクーゲルザウターは眼前の穴へと突入……

 それから数秒後に見えた光景……そこは件の現場上空だった。

 

──────────

 

 しかし、シオンの持つ戦力で大っぴらに空中戦が出来るのはクーゲルザウターのみ。ピスケガレオン、ダイキャンサーは勿論飛べないし、最大戦力であるグラヴィスコルードなら射程圏内ではあるが、相手が巨大過ぎるのでコアの位置は不明……万が一、コア諸共ゾンダー被害者を消し飛ばしでもしたら間違いなくアウトだ。

 歯噛みする様にダイキャンサーは鋏を打ち鳴らし、ピスケガレオン達も声を上げて巨大積乱雲へ向けて猛抗議……グラヴィスは最初から手が出せない事を理解しており、自分で開けた穴(ワームホール)からジッと見ているだけだった。

 

(本部との通信もダメになってる……奴の防壁は空間的にも閉鎖できるという訳ね。……こんなヤツ相手に、クーゲル1人だけじゃ荷が重すぎるわ!)

 

 これではせっかく来たのに手も足も出せない……だがその時、私の超感覚が巨大積乱雲よりも上にエネルギーの発生を感知した。

 

「ギリギリまで手出しはしないつもりだったけど、状況が状況ね……仕方ない。『ヘル・アンド・ヘヴン』ッ!!」

 

 そして急に発生した、ガオガイガーよりも強力なEMトルネード……それが巨大積乱雲へと突き刺さり、急速に積乱雲は拡散。みるみる内に積乱雲を操っていたゾンダーと、内部に居たであろう風神と雷神を模したゾンダーロボが姿を表し……

 

『────ウィータァァァッ!!』

 

 空に轟くのは、聞き覚えのある声……そしてそれは間違いなく、完全版ヘル・アンド・ヘヴンにしか無い、最後の一文だった。

 

 それが巻き起こす緑色の竜巻は積乱雲を残らず消し飛ばし、丸裸になった積乱雲ゾンダーの本体を拘束……余波で風神・雷神ゾンダーロボを吹き飛ばし、その間をガオガイガーにも似た()()()が駆け抜ける……標的となった積乱雲ゾンダーは強力なエネルギーの奔流に成す術なく消し飛ばされ、拡散しようとしていた素粒子Z0諸共あっと言う間に消え去った。

 

(……黒い……ジェネシック……いや、違う?! 結構、似てはいるけど……)

 

 黒い巨体……その両手には、消し去った敵のゾンダーコアが確保されている。一見すれば黒いジェネシックガオガイガーだが、よく見れば似ているのは大まかなシルエットのみ……

 

(アレは趣味のデザインね……両足は(ドラゴン)、両肩は……右が一角狼(ガルム)に、左は一角馬(アリコーン)……背中は多分不死鳥(フェニックス)かな?)

 

 聖書に記された黙示録の獣、それを象ったガオーマシンらしき物と合体しているギャレオンの顔も、何処となくジェネシックと違う……大体は似ているが、主観的な調整か……何らかの都合で泣く泣く変えるしかなかったという意図が読めてしまった。

 

 アレ? 私なんでそんなの分かったの……?

 

 そして、ギャレオンであろう胸の獅子の口がゆっくりと開き、人影が出てくる……背には白い鳥の翼と黒い蝙蝠の翼、凱さんと同じ炎のようなオレンジ色の髪に、太陽の如き白銀に輝く装具。

 

 その人物はゾンダーコアを護くんと同じ様に浄解……コアにされた人物を元に戻すと、簡易ゲートのようなものを開いて私の所へ飛ばしてきたのだ。

 

 多少シルエット的な違いはあれど、あの目が持つ雰囲気はそうそう間違える筈がない……第一、私の直感が言っている。『あのガオガイガーは個人的な趣味でアレンジっぽい事がされたもの……()()()()()()()()()的なヤツ』だと……

 

『……カルナさん、ですよね……?』

 

 衝動的に口にした名前に、過剰反応(オーバーなほどビクッと)した人影……今、確信に変わった……アレは絶対カルナだ。

 

『……いえ、私は星の彼方より遣わされた宇宙警察機構の……』

 

『ハイハイ、見え見えの嘘ね……私に嘘は通じないわよ? 声紋分析すれば一発なんだから……』

 

『ン"ン"ッ……見ての通り、ただの食通ですが何か?』

 

(#゚Д゚)『そんな格好でロボット操る食通が居るかァッ!!』

 

 煙に撒こうったってそうは行かない。この世界の情報は前に一度洗い浚い調べ尽くしている……私以外に地球製ガオガイガーを超越する技術を使った(ジェネシックと同等レベル)のロボットが造れる存在はあり得ないのだ。なのにココには、ジェネシックと同等の強さを誇れるロボットがあり、それをカルナが操っていた……つまりカルナは違う世界から来た転生者、しかも自力で世界を超えてきた可能性が高い。

 

(もしかしたら、バッドエンド回避のヒントか何かを得られるかもしれない……! 絶対に逃がすもんですか!!)

 

『第一、仮に身体が宇宙人だとしても精神分析(メンタルサーチ)すれば分かるわ……そもそも格好以前に地球人類と同じ倫理・思考的な行動をしてたからその時点で人類だと分かる。それに今、貴女の身体をスキャンした結果は完全に人類と同じ骨格に身体構造。同時に宇宙人の擬態じゃない事も確認済み……さらに言えば、声紋分析の結果、該当者1名……《カルナ・ミステールグラスロノメ》だっけ……? あぁそうそう、喩え機械で変声してたとしても私には分かるから意味が無いわよ? 敢えて私の前で他人のフリをするなら、喋らず・何にも触れず、X線とかで透視出来ない素材で体型を隠せる全身鎧でも着込んで精神防壁とか全開にして挑む事ね?』

 

『うぐぅ……バレバレな所もデフォルトですわ!!』

 

(何かめっちゃ悔しがってるなぁ……もしかして自信満々だった? その格好してれば絶対バレないって思ってたんだ……うん……なんかゴメン……)

 

 そんなやり取りをしていると、先程積乱雲ゾンダー破壊の余波で吹っ飛んでいた風神・雷神ゾンダーロボが再び浮上してくる。どうやら罠自体は彼らの方が担当であり、現実に凱さん達機動部隊との通信は回復していない……空間的な断絶状態は続いているという訳か。

 

《機動部隊との通信、途絶したままです!》

 

《やはり、あの2体のゾンダーロボが鍵なのじゃろう……恐らく、敵の能力は空間操作だけではあるまい》

 

 麗雄博士の指摘は正解だった……風神・雷神ゾンダーロボは連携しながら風と雷を駆使して此方を牽制……黒いガオガイガーも応戦するが、直撃だった筈の攻撃……一撃で体力を削り切れる筈のダメージが全く通用していない。

 

『このエネルギーの流れと、次元遷移のパターン……コイツ等もしかして、同時に同じ部位へ攻撃しないと損傷しないって訳?!』

 

 私の眼が捉えたのは、特殊な空間エネルギーの防壁と局所的事象改変によって起きる次元の歪み……そしてそれがもう片方とお互いに影響し合っており、異なる次元の流れは強制的に否定され元側の事象までキャンセルされたのだろう。

 

『……圧倒的に手が足りないわね、こうなったら()()()()の力もお借りしますか。ラファエル、サタン!』

 

 カルナの声を皮切りに、黒いジェネシックもどきはフュージョンアウト……ガイガーと5体のガオーマシンへと分離する。そしてその内の2体、1対のドラゴン型ガオーマシンが最速で地上へと降下していった。

 

『……何を始めるつもり?』

 

()()()()の力をお借りするだけですわ、でもそれには少し……下準備が必要ですの。……来ますわよ!?』

 

 風神・雷神ゾンダーロボは再び連携攻撃で此方を狙う……クーゲルザウターは両方を射程内に収めて「レヴ・クレイモア」を放つが、どうしてもヒットのタイミングをずらされてダメージを負わせる事が出来ない。

 

(フュージョンアウトしたのは、何か理由がある筈……でも聞いてる余裕がない!)

 

 私はクーゲルザウターに指示を出しながら、地上のピスケガレオン達にさっきのガオーマシンの捜索を伝えるが、何故か“その必要はない”と返答……そして飛べない筈のピスケガレオンとダイキャンサーの反応が空中に表示され、そのまま接近してきていた。

 

(……あのさ……キミ達、何をしてるのかなぁ?)

 

 何故かさっきの竜型ガオーマシン2体の背中に、ピスケガレオン2体と、巨刃形態のダイキャンサーが乗っかって飛んでいるのだ。

 

《“フフフ……では行くぞ、友よ!”》

 

《“承知ッ!”》

 

 ダイキャンサーを乗せたドラゴン型ガオーマシンが速度を上げ、風神・雷神ゾンダーロボに迫る。風神ゾンダーが風を発するが、ダイキャンサーは蟹の巨刃(タイタンカルキノス)を一閃……放たれた風そのものをぶった斬った。

 

『『……はぁぁぁ~~~っ??!!』』

 

 私とカルナは、この意味不明な光景に同時に驚く声を上げた……竜に跨る武者はそのまま風神ゾンダーロボに肉薄しようとするが、雷神側が攻撃して邪魔をしてくる。だが、クーゲルザウターが独自判断で雷神の持っている武器を撃ち落とし、足止めするように加勢し始めた。

 

 もう1体の竜型に乗ったピスケガレオンは、足場となっている竜と3体同時に空間干渉の波動を雲へと送り、強引に空間障壁を抉じ開けようとしていた……

 

(もしかしてこの子達……勝機を確信してる? なら、任せるわよ!)

 

 やっちゃえ! とクーゲル達の判断を後押しし、私はゾンダー被害者を連れて邪魔にならないようにクーゲルから離れる。黒騎士が両手の銃で追い込み、竜に乗った武者が迫る……すると風神・雷神はなんと超竜神が如くシンメトリカル・ドッキング染みた合体をして両手から風と雷を放ってきた。

 

(これは……焦ってるとでも言うの?)

 

 このタイミングで合体するのは何かの意図があったんだろうけど、あの3体は動揺してないみたい……「さっきよりも楽になった」とでも言わんばかりにキレが増し、追い込みも確実に効いている。しかも合体時はさっきのダメージ無効が使えないのか、損傷しては再生する姿も見えていた。

 

《“友よ、今が駆け抜ける時……!”》

 

《“応ッ!!”》

 

 僅かな隙が見えた直後、武者を乗せた竜は最速で突撃……武者もそれに呼応する様に咆哮。

 

《“刮目せよッ!!”》

 

《“これぞ我らの……!”》

 

《“乾坤一擲の一撃なりぃぃぃッ!!”》

 

 タイミングを合わせ、構えた武者を乗せた竜が上昇気味に突っ込む。迎え撃つ合体ゾンダーロボだが、肘関節を不意のタイミングで撃ち貫かれて両腕を失い、再生に時間を取られてしまう……勿論、関節を狙い撃ったのはクーゲルザウターだ。

 

《奥義ッ!! 斬蟹刀・竜騎翔閃(りゅうきしょうせん)ッッッ!!!》

 

《“切り裂くッ!”》

《“チェストォォォッ!!”》

 

 こうなるともはや止める術など有りはしない……合体ゾンダーロボはダイキャンサーの持つ巨大な刃によって縦に一閃、僅かに遅れて発生した炎と雷の追撃で外装のほとんどを焼かれて大ダメージを被る。

 更に損傷から内部回路もショートして何度も爆発を起こし、それによって合体を強制的に解除させられる風神・雷神ロボ。その光景を、武者を乗せた竜が上から見下ろす様に眺めていた……

 

《“……フッ、我らに”》

 

《“断てぬモノ無しッ!!”》

 

 更にその影響で空間に巨大な歪みが生じ、ピスケガレオン達が干渉していた雲の壁の向こう側に三段飛行甲板空母が姿を表し始めていた。

 

《レーダーに反応あり! 雲の向こうに三段飛行甲板空母を確認しました! 機動部隊も健在です!!》

 

 合体ゾンダーロボは受けたダメージを回復しきれずに合体も解除され、その際に謎の防御システムの中枢が破損したらしく、クーゲルザウターの追撃に風神ロボは堪らず凱達の方へと逃走……雷神ロボは反対に死に物狂いで向かってきた。

 

《凱! 聞こえる? ゾンダーロボが2体居るわ、そのうちの1体がそっちに!》

 

 凱への通信が届いたのかは分からないが、空間的な隔たりに穴は空いたものの……まだ完全には解除されていないため返答は来なかった……しかし、コンソールに座る命の手元……ファイナル・フュージョン要請シグナルが音を立てて光り始めたのだ。

 

《あっ……ファイナル・フュージョン要請シグナルが……!》

 

《うむ! ファイナル・フュージョン、承認ッ!!》

 

《了解! ファイナル・フュージョン……プログラム、ドラァァァイブッ!!》 ガシャン!!

 

──────────

 

 

-< FINAL FUSION >-

 

 

CYBOG GUY      ------   DRIVE

MECHANOID GAIGAR  ------   DRIVE

G.M LINAR-GAO    ------   DRIVE

G.M STEALTH-GAO   ------   DRIVE

G.M DRILL-GAO    ------   DRIVE

 

 

-< FINAL FUSION >-

 

 

 

MASTER ???      ------   DRIVE

MECHANOID M.GAIGAR  ------  DRIVE

M.M ALICORN-GAO   ------   DRIVE

M.M GARM-GAO     ------   DRIVE

M.M PHENIX-GAO    ------   DRIVE

M.M DRAGON-GAO    ------   DRIVE

M.M DRAKE-GAO    ------   DRIVE

 

 

 

──────────

 

 

 

 

 

-< FINAL FUSION >-

 

- GAOGAIGAR -

- MAGIUS GAOGAIGAR -

 

 

 

 

 

──────────

 

《『ファイナルッ・フュ――ジョンッ!!』》

 

 風に乗って聞こえる声……カルナの操るガイガーが、ガオーマシンと合体を開始……発生する銀の電磁竜巻(EMトルネード)……私はセンサー類を駆使して内部をスキャン、電磁防御フィールドを貫通して視認だけはできるようにする。

 

※ ココからは是非、ジェネシック・ガオガイガーの合体BGMを頭に思い浮かべながらどうぞ。

 

 渦巻く銀色の電磁竜巻(シルバリオン・トルネード)の壁の左右から、頭部(ドラゴンヘッド)にGバリアを展開して突入するドラゴンガオー(雄飛竜)ドレイクガオー(雌飛竜)……

 一角にGパワー集束させながら銀の竜巻を突き破り、空を駆けるガルムガオー(一角狼)アリコーンガオー(一角馬)……

 渦の真下から突き上げて急速上昇するフェニックスガオー(不死鳥)……

 

 ガイガーを中心に旋回運動をする5機のマギウスマシンが、ギャレオンの咆哮と共に放たれた閃光を受けてその眼を光らせ、一斉にその動きを変える。

 

 ……そして始まった、(シオン)の知らない「未知なるファイナル・フュージョン」。

 

 下半身を反転し、腰部の黒いスカートパーツを表にしたガイガーの下に、駆体をひねって急速降下するドラゴンガオーとドレイクガオーがガイガーの脚の下で両翼を拡げて静止……更に逆さのままで翼を動かすと同時に、下側となった竜頭の上下の(あぎと)がそれぞれ90度展開し、首の関節も収納されて足を象ると、上を向いてドリルと化した尻尾の根元が前方へ倒れてガイガーの足を収納する挿入口へと変わり、その両足を受け入れて翼を含めた全身が可動……余剰スペースを収縮させ、全体が脚部装甲としてロックされる。

 

 次にガイガーの両腕が肩の基部ごと後方へ開かれ、現れた開口部の右側にガルムガオー、左側にアリコーンガオーが接近……両機とも変形し、前脚は肘を突き出すように固定。後脚が開口部からガイガーの内部へと侵入した後、脚に仕込まれた連結機によってそのまま内部で連結される。

 

 その後、首下から胴体にかけての下部装甲が開放されると、中から上腕部となるパーツが出現……直後にガイガーの背部の下方からフェニックスガオーがガイガーの背に折り畳まれた両腕をレールのように伝って固定位置に停止、両肩の基部をその足で掴むと同時に機体そのものも完全固定(パーフェクトロック)

 

 ギャレオンの首周りへ、ジェネシックと同じようにスライド展開する(たてがみ)が装着され、ギャレオンの双眼に強く鋭い眼光が漲る……その後フェニックスガオーの魔導噴流推進器(マギウスジェットスラスタ)が本体のアームユニットからスライドして上腕部へと接続され、ジェット部のフィルターが解放されると、そこから漆黒の両拳が高速回転しながら飛び出す。

 

 フェニックスガオーの頭部が長く白い無数の尾(エネルギーアキュメーター)を引きながら上へと持ち上がり、その(くちばし)が左右に開かれると同時に全体の形状も変化……ジェネシックに酷似したヘッドカバーへと変わってガイガーの頭部に装着されると、地球製ガオガイガーと同じデザインのフェイスカバーが展開、白銀に光るエネルギーアキュメーターが風に靡く白い髪のように解き放たれる。

 

 最後にヘッドカバーの額の窪みから迫り出した『Gストーン』が光り、左手甲に『G』、右手甲には『J』の紋章……そしてギャレオンの瞳にも『V』の光が煌めき……ついに全てのプロセスを終え、異世界の勇者王が顕現したのであった。

 

『ガオッ! ガイッ!! ガァァァッ!!!』

 

 

 

──それは、数多の可能性の集合体。

 

──それは、ある少女が誓った勇気の証。

 

──それは、魔法と科学の融合にして、勇者王の次なる姿。

 

──我々の想像を超えて顕現した、異世界の勇者王……

 

 

 

 

 

 ……その名は、勇者王 マギウス・ガオガイガー。

 

 シュゥゥゥ……!

 

 ヘッドカバーの両頬にある排気口から熱を含む空気が強制排気され、合体による熱量負荷の上昇に対応する……

 悪魔の如き顔と牙、元は鳥の顔だったモノのどこをどう動かしたらこんな悪役面になるのか、常人には理解できないだろう……だが、この悪魔の如き強面であればこそガオガイガーと言える。

 究極の破壊神ことジェネシックもこんな面構えだし、ガオガイガーと名乗るならばコレ位の悪役顔でなければいけないとまで思っている。彼女もそんな風に思ってくれてたらいいなぁ……

 じゃないっての!? マジかよ……凱さんも一緒に向こうでF・F(ファイナル・フュージョン)してたし、同時に合体とかロマンかよ!! 混ざりてぇ!!(合体するマシン持って無いけど)

 

(……っていうか、さすが長官ね。通信は回復してないけどFF要請シグナルだけで意図を理解して合体を承認するなんて……!)

 

 実はこの要性シグナル……凱ではなくカルナの操る『マギウス・ガイガー』から発されたものであるが、偶然とはいえ凱も同タイミングで発信しており、全くの偶然であるが認証ドライブによって凱のファイナルフュージョンにサポートプログラムが適用された状態となり、いつもより無駄なく合体が完了していたという事実が、後の調査で判明したという。

 

 ……なお、その時のログを元に合体プログラムも大幅な改善が見込める事が分かった。

 

『《ブロウクンマグナム》ッ!!』

 

 カルナの機体……その右腕が唸りを上げ、赤熱化した右の拳が腕から飛び出し、雷神ゾンダーロボを打ち据える。直撃を受けた雷神ゾンダーロボは大きくノックバックし、 突き抜けた拳はそのまま風神ロボの方へ……しかし、風神ロボは風を使って何とか弾き飛ばし、そのままマギウスへと狙いを定め、雷神ロボも体勢を立て直して雷撃を放って来た……だが。

 

『《プロテクトシェード》ッ!!』

 

 右腕を戻したマギウスが今度は左腕を前にかざし、袖部分が僅かに変形すると同時に魔術紋様の陣と強力な空間障壁が展開され、風と雷撃を受け止めると同時にフィールド内で圧縮……凝縮されたエネルギーは光弾と化し、尚も向かって来る雷神ロボへと返されまたしても直撃……その光景に風神ロボの方は雲の向こうへと逃げ去ろうとする。

 

 雷神ロボが落下していくが、両方とも逃す訳には行かない……下で待っているグラヴィスに2体のロボの位置を報せると、凄まじい数の不気味な黒い『穴』が周囲に展開され、その穴から次々と飛び出す黒い帯の様な攻撃でまずは雷神ロボを打ち上げてきた。

 

 ……え? コレ撃ち込んでも大丈夫なヤツ? ……手加減はしてる? ……なら良いけど。

 

 無数の黒い帯で再び上空へ打ち上げられた雷神ロボに対し、マギウスは何やら下方へと目配せ……何とそれで意図が伝わったのか、転送陣を開きダイキャンサーの背部マウントからシザーアームが射出され、マギウスはそれと両腕を換装……そのまま【シザース・H&H(ヘルアンドヘヴン)】の構えを取ったのである。

 

『システムコネクト……調整、終了。行くわよ、《ヘルッ! アンド! ヘヴンッ!!》』

 

 雷神ロボは既にフラフラ……逃げようとしていた風神ロボにも、グラヴィスのあの黒い帯攻撃が差し向けられており、分厚い雲の向こう側からも戦闘音がしている……というか、実はグラヴィスが自分のセンサーで捉えている敵の映像を、わざわざG-USB経由で見せ付けていた。

 

 ……あぁ、こりゃ絶対に逃げられんわ。

 

『ハンマーコネクトォッ! ……ゴルディオンッ、ハンマァァァッ!!』

 

 更にG-USB経由で届く映像を見ると、しっかりとガオガイガーも風神ロボを捕捉しており、ゴルディオンハンマーを発動……ガオガイガーの右腕がマーグハンドに置き換わり、金色の光が全身を包む。

 

(ヴェッ?! まさかコッチも同時?!)

 

 マギウスがどうやったのかは分からないが、基礎システムとコネクターはガオガイガー用なので規格的にはそのまま合うのだろう……機体の制御システムをどうにかしてリンクさせたらしく、マギウスはEMトルネードを放出。紫電を迸らせる銀色の竜巻に打ち上げられた雷神ロボは中空に拘束され……

 

『ゲム・ギル・ガン・ゴー・グフォ……ウィータァァァッ!!』

 

『ハンマー・ヘルッ! ……ハンマー・ヘヴンッ!!』

 

 映像では風神ロボを取っ捕まえて弄ぶグラヴィスのお膳立て攻撃が決まり、ガオガイガーがゴルディオンハンマーを振り翳す……そしてほぼ同時に、両者の必殺技が相手に炸裂したのだった。

 

『ハァァァッ!!』

『光になれぇぇぇッ!!』

 

 双方がほぼ同じタイミングでコアを摘出……止めを刺し終え、凱さんの方は護くんが。マギウスの方は再びカルナが出て来て浄解……

 

 今回のゾンダー化被害者は3人……風神・雷神ロボだった2人は浅草観光をしていた外国人観光客、そしてもう1人は普段からTVで見る現役の気象予報士だった。

 

(まさかの石原◯純……!?)

 

──────────

 

《シオン! 無事だったか?!》

 

『それはコチラの台詞です……凱さん達こそ、よく無事で』

 

 全てのゾンダーロボを倒せたので通信も回復……凱さんが早速心配してくれている。けどどう見たって凱さん達の方がヤバそうな成り行きだったからそっくり言葉を返しておいた。

 

『あ、そうです! ピンチの所を助けてくれた娘が居て……あれ?』

 

《……? どうしたの、シオン?》

 

 クーゲルの掌には、いつの間にかカルナが浄解した被害者が追加され……変わりにカルナとあの機体が忽然と姿を消していた。

 あの巨体だから幾ら高速移動しても金属反応くらいすぐに分かる筈なのに、そんな素振りすら無くいきなり消えていたのである……

 

『博士! さっきの黒いガオガイガーは……?!』

 

 一応、戦闘の一部始終は録画しており、同時に本部へも転送していたのだが……

 

《済まない、稀星くん……中継を此方でも録画していたのじゃが、何故かあの機体は映っとらんかった。送られてきた生の映像で確かに僕らも見た筈なんじゃがのぅ……》

 

 中継の生映像では確かに、マギウスが戦闘をしていたのを本部の全員が見ていた筈なのだが、記録媒体には一切残っていないのだという。

 そんな馬鹿な……じゃあ、あの機体は幻だとでも言うの?! 三段飛行甲板空母の方は……

 

《悪いが稀星、こっちも空間干渉のせいでロクな戦闘データが取れてねぇ……その所為でさっきのゾンダーロボに認定ナンバーも振れねぇときた》

 

 前の事件もあり、磁気嵐対策までバッチリだった筈の甲板空母でも、何らかの干渉で記録映像やデータには、何も書き込まれていないらしい……マジかぁ……

 

《そうか……戦闘データは確かに惜しい事ではあるが、ゾンダーメタルプラント化というリスクを背負ってまで、今回の戦闘データを求めるのは本末転倒過ぎる。まぁ、良いじゃないか? 全員が無事に戻り、事件も解決したのだから……》

 

 まぁ、今回は危うくゾンダーメタルプラントの完成直前で阻止……しかも胞子拡散も秒読み段階だったものを止められたのだ。危険すぎる土壇場の賭けに、辛うじて勝った様なものだ……

 

(そう言えば……カルナは街にもいた。そっちなら映像が残っているんじゃ……)

 

 急ぎ回線を確保し、街の防犯カメラの履歴も全て洗い直す……しかし結局、カルナが映ってる映像は何一つ残ってなかったのである。

 

──────────

 

 事後処理も終わり、私は夕暮れの帰り道で1人……昼間の出来事を思い返していた。

 

(結局、カルナが居たという証拠は何一つ出て来なかった……護くんやスワンさんにも記憶はあるのに、映像には残ってないって……一体何なのよ、あの子(カルナ)は……)

 

 戦闘データ、サテライトリンクやサーチにも痕跡無し……ガオガイガー程のロボットがサテライトサーチにも引っ掛からずに戦場を好き勝手動ける訳が無いし……第一、映像に残ってないというのが一番不可解だ。

 

(それにあの機体、Gストーンだけじゃない……Jジュエルの他にも、謎のエネルギー反応が2つあった。……白銀化(シルバリオン)現象はGとJの共振作用とみて間違いないけど、残る2つのエネルギー反応……全く覚えがない………それに、機体のエネルギー経路には未知の金属反応と文字が見えた。見間違えでなければ、アレって()()よね……所謂、魔法的な……)

 

 記録には全く残ってないが、私の脳内には残っている……機体に施された幾つかの紋様と、びっしりとエネルギー経路に刻まれた術式……その詳細は不明ながら、『何かの為』であるかは分かる。

 あの術式と紋様には、あの機体にとって『重要な何か』を高める意味があるのだろう……

 

(確か、Gストーンにはリンクシステムがあるって話だったわよね……もしかしたら、あの機体のGストーンともリンク出来るかもしれない……)

 

 無論、その方法は全くといって不明だが……もし可能になったら、いつかはやってみたい。

 

 

 家に帰り着き、お風呂や夕食で一息いれた後……テリーを撫でながらソファーで寛ぐ。ふと、G-USBにメールが入っているのに気付いた。

 

(差出人は……無記名? 誰よ一体………………ッ?!)

 


 

『紫の星の人々が望み、臨んだ、究極の到達点へ唯一、到達しうる可能性を持つ貴女へ。

 いつか直接の会合を願います。

by:紫の星の中枢だったものより 

 

 追伸:先程、冷蔵庫に試作したお菓子を入れています。

 ファイナル・フュージョンの誤発信のお詫びです。

 賞味期限が短いものなので、皆さんで早めに召し上がって下さい。』

 


 

 無記名メールの内容、この差出人は紫の星の関係者……というか中枢だったものって何?!

 

 “だったもの”という過去形とは言え、この相手は私の過去が『Zマスター』だという正確な認識を持っている……私の端末の連絡先はGGGの関係者か、一馬さんくらいしか教えてないし、カルナは知る由もない筈なのだが、ファイナルフュージョンの誤発信……つまり直近の関係者しか知り得ない事も書かれている。

 

 ……忽然と姿を消した相手からの、再会の約束とお詫びメール……一瞬だけゾッとしたのをテリーが気付き、甲斐甲斐しく私の身体を暖めようと乗っかって来るのを手で制しながら立ち上がる。

 

 こんな不可解過ぎる出来事が続くなんて……今日の蠍座、運勢は最悪だったのかも知れない。

 

 ともかく、沸き上がる衝動を抑えきれず……私は日が暮れて涼しくなったベランダに出て、思いの丈をぶつけるが如く……この混乱をどうにかしたい一心で叫ぶのだった。

 

『……もう……ワケワカンナイヨー!!』

 

PS. 後でダイスを振ったら、SAN値-2でした…… 

 




閑話は此にて終幕……如何だったでしょうか?

プチコラボとはいえこんな長編になっちゃうとは思っても見ませんでした……
しかし、書いててメッチャ爆上がりテンションになったし、色々とシーンを想像しながら台詞を書き込んでいる時はニヤケ顔が止まらなかったですねw

また、即興とは言え双方のオリジナルメカが協力して合体技を披露するという激アツ展開を設けましたが……ちゃんとネタ元のスパロボ風味になってましたでしょうか?
その辺りは是非とも感想を頂きたいものです。

なお、マギウス・ガオガイガーの合体プロセスや解説その他は、ネタ提供者である和鷹聖さんの執筆作品「公爵令嬢はファイナル・フュージョンしたい。」から少し私風にアレンジして流用。もちろん、その勇姿と活躍は推して知るべし……つまり向こうも読んでねって事です! マジ楽しいですよ~♪

公開済みの各話含め、感想よろしくお待ちしてます!

──────────

次回予告


君達に最新情報を公開しよう!

アメリカから送られて来たCR「マイク・サウンダース」……
無邪気な子供の様な彼は、とても戦闘に耐えられるとは思えない。

だが、残り少なくなったゾンダーメタルを複数用いて
ゾンダリアン達は過去最悪の非道な作戦を開始。

次々と勇者達が倒れる中、突如響くノリノリのサウンド……
「COME ON! バリバリーン!!」
ギターを掻き鳴らし空に舞う、謎のロボットの正体とは……?!


次回、勇者王ガオガイガーif NEXT...
第40話『滅びを呼ぶ声』

次回もこの小説で、ファイナルフュージョン承認!!

この回で、一番印象に残ったのは何ですか?

  • 謎の食通と名乗る「カルナ」お嬢
  • 黒服集団を演じる豪華な声優さん達
  • バレバレだと言われ悔しがるカルナ
  • ダイキャンサーの合体技(今回のみ)
  • マギウス・ガオガイガーの登場
  • ゾンダー化被害者となった実在人物
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