狂わなかった「Z」の力 ~勇者王ガオガイガーif 作:睦月透火
キングジェイダー対アーマロイド【牡羊座】。
互いに譲れぬものがあるから、ヒトは戦う。
たとえそれが、
『ならば、今度は俺の相手をして貰おう……羊光霊機、この牡羊座のな!』
牡羊座は自身に秘められた異能により“多様な幻想”を現実へと引き出し、その身に宿して戦う……とグラヴィスから聞いている。
最初は何が何だか分からなかったが、今……それがようやく解った。
牡羊座が両腕をクロスさせたその瞬間、激しい光と共に空間が歪み、異なる世界を繋ぐ門が開口。同時にその門から牡羊座の本体が引き出され、本人と重なる事で実体化していく……
どことなく、入院中に見ていた特撮番組の変身ヒーローが巨大化していく描写にも似ていて、強く印象に残る光景だった。
そうして姿を変えた牡羊座は……青と白のツートンカラーに、丸い翡翠の宝玉を埋め込んだ装甲で身体を覆い、巻き角の様な冠を被った軽装鎧の戦士と化した。
その手に武器は無く、得物は鎧の両肘から伸びる
拳打や足技を以て相手を制する……所謂、格闘家をロボットにしたらこんな感じなのだろう。
体格もかなり良いが、さすがに100m級のキングジェイダーとはまだ大きな差がある……戦闘モードとなった牡羊座の全高は、凡そ40m……といったところか。
『いざ、尋常に……勝負ッ!!』
ゆらゆらと流れる様な構えから一転、電撃の如き俊足の踏み込みでキングジェイダーの懐に潜り込む牡羊座。
キングジェイダーも、サイズ差を逆手に取られた事に一瞬反応が遅れるが、そこは歴戦のカンというヤツか……肘打ち、裏拳、正拳突きという神速の3連撃を紙一重で連続防御。
しかし、牡羊座も防御された事に動じず、一瞬の溜めから両掌を獣の口の様にして重ね、防御の反動で無防備となった下半身へ圧縮されたエネルギー弾(?)を撃ち込んだ。
『破ァッ!!』
『ぐ……ッ?!』
普通ならば、キングジェイダーのジェネレイティングアーマーが作動し、ダメージなど発生しない……のだが、何の手品か。攻撃を受けたキングジェイダーの装甲部分には小さいながらもポッカリと穴が空き、周囲に焦げ跡や凹み、そして幾つか罅も入っていた……明らかに物理的ダメージが入っている。
「Jッ!?」
《何だ、今の攻撃は? ジェネレイティングアーマーが機能していない。ダメージは見た目ほど高くないが、奴は此方の防御を抜ける……であれば、巨体では不利。此方も速度で対抗するしか無いぞ?》
さすがにジェイアークのメインコンピューターは分析が早い……トモロの言う通り、キングジェイダーの状態ではサイズ差を逆手に小回りの効く牡羊座の方が優位。それをJも直ぐ様理解し、分離してジェイダーとなった。
サイズ差も逆転し、今度は牡羊座の方が大きくなる……
『さっきの様な手はもう通じんぞ?』
『……あの程度で、俺の底を知ったつもりか』
牡羊座はどことなく口が悪い……いや、悪気は無いんだろうけど表現が刺々しいんだ。今のは多分「今のは序の口、ここからが本番だ」という感じだと思う……私も、牡羊座と長時間話した事無いから当たってるかは分かんないけど。
『プラズマソードッ!』
『この切っ先……触れれば切れるぞ!』
次はジェイダーの先攻……音を置き去りにする程の神速を以てプラズマソードで斬り掛かるが、牡羊座は肘に付いたブレードで対抗し、圧倒的なジェイダーの速度に初手から反応している。
『なかなか良い反応だ!』
『フン、貴様の速度はその程度か?』
『舐めるなッ!!』
更に鋭く、速度を増すジェイダーの連撃。既にその連撃数は100を超え、速度も初手からなんと5倍以上に増している……しかし、両肘の刃を使い始めた程度で牡羊座は涼しい顔をしており、ただの一撃すらマトモに入っていない。
『……俺はこのまま続けても構わんが、貴様はどうだ? 速度を上げるだけで、俺が根負けするとは思わん事だ。……いずれ貴様の体力の方が先に尽きる』
「……ど、どういう事ですか?」
「牡羊座の方が圧倒的に不利なのに。何故、あれ程の余裕を……」
牛山と猿頭寺は揃って不可解を口にする……それに対し、シオンはこう語った。
『……そこが、私達との決定的な差。最初から人工生命として創造されたアーマロイドと、あなた方との差でもあります』
『いつまでも防戦一方だと思わん事だ……
『……チッ、予想よりも速い……!』
「?! そうか、アーマロイドとは“生物に似せて造られた”人工生命……いうなれば生きた機械だ。活動に必要なエネルギーさえ十全なら疲労もせず、損傷も自らで治せる。生命体を核として必要とする下級のゾンダーをはじめ、我々や彼ら異星文明の戦士にも存在する活動限界の概念も……彼らアーマロイド達には適応されないという事か!」
麗雄博士の説明で、全員がアーマロイド達が持つ“優位性”を知る……
低級のゾンダーには、由来や様々な関連性の問題から残されたままである“活動限界の概念”……だがアーマロイド達や、ゾンダーの上位存在である原種やZマスターには、そんな概念など存在しない。
喩えどれだけ強い生命体だとしても、年単位ほどの時間ずっと絶え間ない攻撃はできないし、動けば疲労……戦えば破損する。でも、最初から人工生命としてデザインされ、最初から整えられた能力・性能を有する原種や、アーマロイド達には最初からないのだ。
……無論、その反面としての
『想像してみて下さい……このアーマロイド達を超えるかもしれない強さを持つ31体。それがもし、地球全土で同時に活動を開始したら? 今でこそ残り27体とはいえ、私達は後手に回って一つ一つ対処するのが関の山なのに、全世界同時複数箇所で暴れ始めたら……? 原種はたった1体でも、惑星1つを機械昇華するのにさほど時間を掛けません……ガン細胞のようにその侵蝕速度は圧倒的です。それなのに、一丸として纏まらない我々が果たして勝てるでしょうか?』
原作でも序盤は囮作戦が如く、原種の攻勢はGGGの限界ギリギリを狙ったかの様な展開の連続だったし、“最強7原種”に至っては「同時侵攻」も行っている。
当時は物語として見ていた事もあり、シナリオ的な都合やら何やらで思考にフィルターが掛かっていたが、もしこの攻勢の変化が最初から仕組まれた罠であり、都合よく計算された運命だとしたら……?
ギュイィィィ……!『受けろ……
ガギィンッ!『チィッ……反中間子砲ッ!』
『“それ”は既に見切った!
バシュゥゥゥ……ドパァンッ!!
(仮に原作から乖離したとして、私や他の何かを要因に運命的な流れが破綻し、今度の変遷が変わる……もし、残りの原種が一斉に蜂起でもして来たら、今のGGGと私達では絶対に対処が遅れるし、何より連携しきれずに各個撃破される可能性が高い。……ただでさえ、キングジェイダーは原種に対して加減しなくてはいけない状況なのに……!)
『原種には、僅かな綻びさえ見られてはならないのです! ……赤の星は、彼ら最強の戦士たちが集う大艦隊を擁しても、勝てなかった……!』
赤の星は、ジェイアーク級を主戦力とするアーク艦隊を擁しても……メインコンピュータであるトモロをゾンダー化されて無力化された。
アーク艦隊は、トモロタイプの生体コンピュータによる大規模な連携が最大の強みだった……だが生体コンピュータであるという事は、ゾンダー化もできるという事。
原種は、生体コンピュータ・トモロが最新鋭艦に搭載される直前を奇襲し、ゾンダー化された戦艦は味方を撃ち始め、乱戦の混乱に乗じてアルマやソルダートまでゾンダー化させていき……最強の艦隊は、その殆どを討たなければならない敵にされてしまい、赤の星は為す術なく陥落したのである。
『……そこまで知っている貴様は……やはり、あの星の……奴らと同じ……!』
『……そうです、私は……私は“Zオリジン”。三重連太陽系を滅亡させた張本人……その同類です……!』
ゴォウ……ッ!!
『シオン! 下がれっ!!』
ハッキリと、シオンはJ達に己の正体を打ち明けた。その直後、ジェイダーはプラズマウィングを起動……その神速を以てシオンへと迫る。
ガオガイガーもシオンに迫る危機に踏み出そうと動く、がそれよりも早く牡羊座が反応……全身を白いオーラで包み、一足の踏み込みでジェイダーへと急接近。
『やらせんッ! リミット解除……“
主を守るべく牡羊座はジェイダーに追いつき、機体のフルスペックを発揮させた最大の大技を放つ。この僅かな間とはいえ、自身と同等の速度で動く牡羊座に、ジェイダーは僅かながら動揺し、防御が間に合ったとはいえ、牡羊座の怒涛の攻勢に大きく吹き飛ばされた。
『ぐ……ッ……貴様は何故、この星を機械昇華せず、
『……そうですね。狂っているのでしょう……アレ等も。そして私も……』
赤の星の戦士であるJからすれば、シオンは故郷を奪い、戦士としての矜持さえも奪った怨敵の同類……しかし自身が怒りをぶつける
あまりにも想定外の態度に「狂ったか?!」と断じるJ……しかし。
『バカを言うなシオン! 君は狂ってなんかいない!!』
『そうです! 先生が本当に狂っているのなら、私達と共に、ゾンダーの脅威に立ち向かう事などしていない筈です!』
『先生は何度も、俺達が為すべき事や……“勇者とはどういう者か”を教えてくれた! そんな貴女が狂ってるなんて、どう考えてもおかしいぜ!!』
『我々と共に、この星を守りたいと……そう心から願う貴女が、自分の故郷を滅ぼした原種と同じ様に狂っているなど、断じてありませんッ!!』
「我々地球人類は、彼女によって多くの苦難と危機を乗り越え、共に歩む力を身につける事ができた……その多くは、彼女が自身すら顧みない純粋な献身から来たもの。彼女が敵と同類である事は百も承知! しかし、彼女は奴らとは違う!! 我々GGGの仲間であり、地球人類の良き隣人なのだ!!」
本来ならば蹂躙されている側の……地球人類からの猛反発。
『……ッ……』
一瞬、何故だと疑問を浮かべるJ……しかし、戒道少年から聞いていた事を思い出し、合点がいくと同時に彼女の真意……
この
かつての過ちで滅んだ
……心からそう願う存在として、初めてシオンを認識できた。
『……。……それが貴様の選んだ道か……』
それまでの剣呑な雰囲気から一転……ジェイダーはゆっくりと構えを解き、後ろを向く。
「……ピッツァ……いや、ソルダートJ……」
《……J、アルマ。彼女の態度からは、人間特有の不合理さと感情が感じられる。そして彼女の予測……原種が連携をする事で、我々が不利になる可能性は確かに捨てきれない。本当の意味で、我々と敵対しないというのならば……私は彼女の提案を、受け入れても良いと思う》
『……トモロ。お前がそこまで言うとはな』
生体コンピューターとして、トモロはシオンの真摯な言葉と態度をそう評価した……ゾンダーではなく、ヒトとしての想い。トモロはシオンの全てに“自分はヒトである事を辞めてない”という事を感じていたのである。
「僅かな間だけど、僕も彼女の事を知る機会はあった……僕も、彼女を信じても良いと思う」
護の周囲にシオンが居り、共に動いている事で、護の近くに居た戒道幾巳もまた……直にシオンを見て、知り得た事で、彼女の想いは本物であると感じている。
仲間である2人から、意外な答えが返ってきた事に少し驚くJ……しかし彼が信頼を寄せる2人が、“信頼しても良い”と評するシオンを受け入れるには、いま暫くの時間を必要としていた。
『……私は、貴様を信じきれん……だが、貴様がそいつ等と共に、原種と戦うというその意気は買ってやる』
そう言い残してジェイダーを飛翔させ、ジェイバードに変形。そのまま上空で待機していたジェイキャリアーと合体し、ジェイアークとなって極北の空に赤い軌跡を残しながら飛び去っていった……
『……アイツは、シオンを認めてくれた……のだろうか?』
飛び去ったジェイアークの軌跡を眺めながら、ガオガイガーは呟く。
《それは分からん……しかし、彼らが稀星くんを悪と断じるのを止めた事だけは確かのようだ》
麗雄は息子の呟きにそう返しながら、勇者たちを映し出すモニターを見続けるのだった。
完全に認められた訳ではないだろう……しかし彼らにとっても、GGGと共闘する事で大きなメリットはある筈だ。
(とりあえずは……丸く収まった……のかな?)
内心鳥肌モノ(ルート的にも、命の危機的な意味でも)だった状況は脱し、仮にとはいえ赤の星の戦士に“敵対しない”事を認めさせたシオン……
信頼を勝ち取る為には、まだ多くの理解と時間が必要なのだと思い……この場は“コレでよし”と考えるのだった。
もう少しシオンに対する理解が進まないと、味方としては見られない……Jからすればそんな感じ。
でも、とりあえず敵ではないし、敵対もしないという事は分かってくれたと思う……ちと強引だけど。
さて、次回は原作展開に戻り……
ついに出演する新型ビークルロボ。
中国で生まれた第二の兄弟が登場します!
お楽しみに!!
君達に、最新情報を公開しよう!
中国で造られた、新たなる勇者……
戦闘用ビークルロボ、風龍と雷龍。
その実践稼働テストに招かれたGGGの面々は、
彼らの人格に大きな問題を感じる。
シオンも原作通りの展開を予想していた……
そこに原種も現れ、原作通りの展開を想起させるが
イレギュラーにより、事態は予想外の展開を迎える事となった。
次回、勇者王ガオガイガーif NEXT...
第68話『疾風迅雷』
次回もこの小説で、ファイナルフュージョン承認!!
コレが(次回の)勝利の鍵だ!!
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原作と違う原種の戦略
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アーマロイド達の存在
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シオンと楊博士の関係