狂わなかった「Z」の力 ~勇者王ガオガイガーif   作:睦月透火

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……“刻は来たれり”。

真の力を開放した護と、新たな進化を遂げようとしているシオン……
その先に待つのは、未来か? 終焉か?



第75話 運命の声(3)

 グラヴィスは“直接跳ぶ”と言い放った……それは敵の戦術行動の1つ「空間転移」を行う、と麗雄と凱には聞こえたのである。

 

「馬鹿な?! いったいどうやって!?」

 

《敵の空間転移能力は理論上未だ説明不可能な現象としか認識できていない! 同じ方法で我々にどんな影響があるのかも分からんのだ……おいそれとそんな手は使えん!》

 

 凱は未知の技術による強硬手段に対して驚愕し、麗雄も技術的問題を把握しているからこその反論を述べ、反対を表明する……しかし、グラヴィスはこう切り返した。

 

『心配はご尤もです。ですが、間に合わなければ超竜神達(彼ら)が先に潰される……手段を選んでいる余裕など、無いのではありませんか?』

 

 その言葉に押し黙る獅子王親子……その光景を尻目に、グラヴィスは自身の腕部にある重力制御機構(グラビコンシステム)を使って空間を歪ませ、更に全身のグラビコンブレードを展開、共振させて物理法則をも纏めて捻じ曲げ、直径100m程の黒い穴を開けて(ワープゲートを形成して)しまう……

 

《……確かに、我々には手段を選ぶ余裕は無い。猿頭寺くん、やってくれたまえ》

 

《……分かりました。宙域の座標データを取得……グラヴィスコルードへ転送します》

 

 大河も渋々といった感じで指示を出し、猿頭寺が座標データをマークして確認……グラヴィスへと転送する。

 受け取った座標データを元にグラヴィスは空間の歪み(ワープゲート)を微調整し、目標宙域付近へと繋げる。

 

『オービットベースより、移動先の空間座標を取得。座標地点へ、ゲート接続……完了。目標宙域に障害物反応ナシ……跳躍準備、完了。……いつでもどうぞ?』

 

 ガオガイガーに背を向けたまま、グラヴィスはそう告げる。少し躊躇う凱を尻目に、アイゼンナシュティアとシュトゥルムボルグは躊躇なく前に進み、ゲートへと入っていく……

 

《……彼らによる常識破壊には慣れたつもりだったが、まだまだじゃったのぅ》

 

 ココに来て更に過激さを増すアーマロイド達の非常識っぷりに、通信で頭を掻きながらヤレヤレと嘆息する麗雄……

 

『心配無用です、敵の使うESウィンドウとは違い、コレは“転送先の空間へと直接移動する”……言わば空間跳躍ゲートです。理論上、別空間を経由する訳ではありませんし、1度繋げてさえしまえば大体は安全です』

 

 グラヴィスの説明によると、ESウィンドウとは別空間……いわゆるワームホールを経由した超空間移動による“空間転移”なのに対して、グラヴィスの開けたゲートは“空間座標同士を直接繋ぐ”事による“空間跳躍”……例えるなら、ESウィンドウによる「空間転移」が“小川に掛かる橋を渡る事”ならば、このゲートによる「空間跳躍」は“自分の足で小川を飛び越える行為そのもの”であるという。

 

『……よし、行くぞ!』

 

 意を決し、ガオガイガーもゲートを潜る……その先には既に遠目ながら敵である原種が見えており、地球外縁軌道の途轍もない距離*1を秒で移動した事となった。

 

──────────

 

─ ??? ─

 

 落ちていく────

 

 小さな光が落ちていく。

 

 無限の彼方のその先へ

 

 黒よりも黒い深淵の奥底へ

 

 小さな魂が落ちていく

 

 ────それはやがて、深淵の深奥

 

 黄金の湖へと沈んでいく……

 

 

 ♪PIPIPIPI……ガチャン

 

「い"っ……ったぁ……」

 

 柔らかな日差しが少女の顔に差し込んでいる……そこに目覚まし時計の電子音が響き始め、その音に寝惚け眼のままながら少女は目覚まし時計のある頭上の方へ手を伸ばし……止めようとした拍子に自らの頭へと落としてしまった。

 

「……んっ……ふぁ……」

 

 痛みに覚醒を促され、少女は大きな欠伸をしながらベッドから起き上がり、ボサボサの頭を櫛で梳かし始める……その時、少女の居る部屋の扉が外から開かれ、大人の女性が顔を覗かせた。

 

「アンタそろそろ……って、ちゃんと起きてたか」

 

「おふぁよぉ……お母さん」

 

 少女に“母”と呼ばれた人物……緩めの袖なしシャツを豊満な胸部装甲(意味深)が押し上げ、ヘソ出しルックスにも見える様な軽装の上からフリル付きのエプロンをしており、まだまだ新妻感が滲み出る様な格好をしたスポーティな金髪の女性だった。

 

「おふぁよぉ……じゃなくて、今日は予定あるから早く起きなきゃって自分で言ったんでしょ? 朝ご飯出来てるから、その頭何とかしたら降りて来なさい」

 

「ふぁ……ぁ〜い……」

 

 端から見れば、何とも日常感溢れる光景……

 

 しかし、何処かが何かおかしい風景……

 

 ……だが少女はその違和感に気付く事も無い。

 

 部屋の壁に掛けられた姿見……そこに写った、部屋の主と同じ顔で髪の色だけ違う少女……シオンが何かを訴え、鏡の表面を拳で叩きながら、何度も声を張り上げる様な動きをしているのに。

 

 

「おはよ〜クロ。シロもおはよ♪」

 

 にゃ〜ん

 

 な~ん

 

 階段の途中にある踊り場で寛ぐ猫2匹を少女は挨拶と共に頭を撫でる……少女に撫でられ、鳴き声を返す白黒2匹の猫。

 少女が通り過ぎるとその後を追いかけ始め、少女がダイニングの椅子に座ると、猫達も行儀良く食事用の定位置に着いた。

 

「父さん帰ってくるの、今日だよね?!」

 

 少女はその位置からカレンダーを見やり、日付を確認すると嬉しそうに母親へと問う。

 

「そうよ、父さんもアンタに会うの楽しみにしてたから、今日は早めに帰って来なさい」

 

「もちろん♪」

 

 少女の母親は席についた少女の前に、用意していた朝食を並べつつ問いに答えると、その後猫達にも餌を与え始める……手にしたのは黒地に高級っぽい柄が描かれた標準サイズのネコ缶だ。

 

 黒い方の猫はちゃんと缶から出し終えるのを待っているが、白い方の猫は目を輝かせて足踏みし、今にも待ち切れない様子……

 

「いただきます!」なぁん!

 

 にゃん!

 

 少女の声に合わせる様に黒い猫は一声鳴いてから食べ始める……白い猫も慌てて鳴いてから餌を食べ始めた。

 

「……本当、無事によく育ったわね……」

 

 母親はそう溢しながら、飾ってある写真を手に取る……そこには幼い頃の少女が病院の入院着を着て、両親と共に写っていた。

 その両親……母親は写真を見る彼女自身で、彼女の夫であり、少女の父親と思われる人物は緑色の髪で両肩に白と黒の猫、少女を膝に乗せて笑って写っている。

 

「……?」

 

 母親の小さな一言に、疑問符を浮かべる少女……同じく猫達もその声に頭を上げるが、猫同士顔を見合わせた後食事を再開するのだった。

 

──────────

 

 突然目の前が真っ暗になり、意識が朦朧とする……辛うじて踏み留まった凱だったが、気付いた直後に目にした光景は先程まで戦闘をしていた宇宙空間ではなかった。

 

「……?! 何だ……ココは……俺は、いったい……」

 

「気が付いたか、凱……!」

 

 声のした方を向くと、そこには父である麗雄が驚きと安堵の表情で凱の顔を覗き込んできた……

 

「良かった……ずっと目を覚まさないから、本当は死んでるんじゃないかって……」

 

 反対側には、幼馴染みの命が涙を流しながら立っている……

 

(どうなっているんだココは……?!)

 

「……っく……父さん、ガオガイガーは?! 原種はどうなったんだ?!」

 

 ベッドに寝かされていた凱……身体が何故か異様に重たかったが何とか起き上がり、麗雄に先程まで行っていた戦闘や作戦の事を問いただそうとした……のだが……

 

「な……何を言っとるんじゃ?」

 

「凱、貴方……2年間も眠ったままだったのよ? それに、ガオガイガーって……何なの?」

 

(な……っ、冗談だろ命……それに父さんまで、ガオガイガーを知らないなんて……!?)

 

 父達の返答に驚愕する凱。この2年間、苦楽を共にしてきた2人からの耳を疑う返答……しかし、反論しようと伸ばした腕を見て、凱は更に驚愕する。

 

(これが……俺の腕……?! サイボーグじゃない、人間の腕だ……!!)

*1
地球の直径は12,742 km、大気圏を離脱して更にある程度離れた座標の宇宙空間から地球の反対側へと到達するのに、普通の移動では絶対に何時間も掛かってしまう。




……はい、奇しくも原作どおりの展開に……

途中のナニカは賛否両論あるかと思いますが、“既に分岐が確定している”ので続行です。

感想お待ちしてます。

唐突に現れた少女の両親、見覚えある?

  • ある。メッチャある!
  • 何処かで見た気が……
  • う~ん……無いなぁ。
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