狂わなかった「Z」の力 ~勇者王ガオガイガーif   作:睦月透火

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最近はだいたい執筆するか感想の返信のみだった為、多くの方から高評価(☆6以上)を頂いてる事に今更レベルで気付く……
陳謝、そして感謝の極み。

……さて、長らくお待たせしました!

今回もまた、メインストーリーに絡む回……
この一連の出来事が、この世界の行く末とシオンの未来を確定させたのでは……?

執筆に際して、本稿(報酬)用プロットの草案
及びスポット出演キャラ原案を提供してくれた
バスクケーキさんに、深く感謝。


それでは、どうぞ良き終わりを……



閑話:君に捧ぐ花言葉(1)

 GGGの本部がオービットベースへ移行してからというもの、多忙ながらも充実した毎日を送るシオン……

 

 久しぶりの休暇をGアイランドシティへで過ごす事にし、1人で郊外を散策していた……

 

 吹き抜ける風が気持ちよく肌を撫でてくれる。暦ではもう秋なのだが、まだまだ日中は残暑が厳しい……しかしこの時間帯ならまだそれほど暑くないので、けっこう過ごしやすい。

 

「……はっ……はっ……はっ……」

 

 遠目に渡河線路の橋が見える川沿いをゆっくりと歩くシオン……

 ゆったりとしたロングスカートタイプのツーピースドレスに、水色のシースルーポンチョというコーデに身を包み、シティ郊外にある公園を目指していた。

 

 その後ろから、白い服を着た小さな少女が走って来る……

 

 その少女は何か恐怖に怯えたまま、前すらも見ずに只管に走っている……前にはシオンが歩いており、少女に一切気付いていない。

 

 その間隔はどんどん狭まるが、お互いを全く認識していない……無論、その距離が0となる瞬間にぶつかるのは必然だった。

 

「はっ……はっ……はぶっ?!」

『♪〜……うわっ?!』

 

 後ろからの不意の衝撃に、振り向くシオン……非常時ではないが、他人の目に触れる可能性が高い時は大人として振る舞う為、感触的に子供が前をよく見ずに突撃してきてしまったのだろうと思い、後方の足元を見やる……

 

「っ……ぁ……」

 

 ぶつかった衝撃で尻もちをつき座り込んでいたのは、うっすらと光っているかもしれないほど綺麗な銀髪に、アメジストと思える様な瞳と、同じ色をした大きな鉱石が飾られたペンダントを身に着け、病的なほど青白い肌をした……7歳くらいの少女だった。

 

(え……何、この子すごく可愛い?! ……でも、顔色が悪そう……走ってきてたからかな?)

 

 シオンは見下ろしていた少女と目線を合わせる様に膝を折って屈み、少女の身体に手を添えて立たせる。

 ここまでずっと走ってきたからか、涼しい時間帯とはいえ汗塗れになっている少女……力なく座り込んでいたのは、もう体力が残っていなかったのだろう。シオンは持っていたポーチからハンカチを取り出し、少女の汗を拭い始めた。

 

『まだ涼しい時間帯なのに汗だくだね、怪我はない? ゴメンね、気が付かなくって……』

 

 少女の視線と意識がシオンの方へ向く……シオンは気付いていないが、これまで少女は言いしれぬ恐怖に突き動かされて走っており、既に体力は限界を超えていた。だが、不意にぶつかってしまったにも関わらず、こうやって心配され優しく声を掛けてきたシオンに対し、好意を持つのは当然のことであろう……

 

「?! ……ッ……お母……さん……?」

 

 しかし、少女の出した答えは予想のはるか斜め上……顔を見上げる見知らぬ筈の少女に、既知の感覚を感じたのか。

 

 少女はシオンを“母”と認識したのである。

 

『……??? っ……?! ……ゔぇッ?!』

 

 ……そりゃ驚くよねぇ。

 

──────────

 

 見知らぬ少女に『母』と呼ばれ困惑するシオン……

 

 ちょうどそこに、護の登校の護衛任務を終了したボルフォッグが通り掛かる。

 

『おや、稀星隊員? ……今日は非番でしたね。何処かへお出掛けですか?』

 

『ボルフォッグ?! ちょうど良かったわ。近くの警察署まで乗せてってくれる? この娘、迷子みたいで……』

 

 シオンはボルフォッグに少女を見せた……シオンに世話を焼かれる見知らぬ少女を見て、ボルフォッグもシオンの説明に納得する。

 

『分かりました、どうぞ』

 

 ボルフォッグの声と共に助手席のドアが開かれる……反対側の運転席には誰も乗っていない事に少女はびっくり、更にシオンに抱えられ助手席に座らされると途端に寂しそうな顔をするが、運転席側にシオンが乗った事で少し安心した。

 

 ボルフォッグも、2人がシートベルトを着用したのを確認してから再発進する……

 

 ……その様子を遠目から見ていたフード姿の大男。

 

「……チッ、手間を掛かけさせてくれる」

 

 ソイツは何やら不穏な言葉を残し、その場から消え去るのだった……

 

 

 ……結論から言うと、警察に行った事は徒労に終わる。

 

「やっ! お母さん、一緒! やぁっ!!」

 

 簡単に言えば、少女がシオンと離れる事を頑なに拒否……

 

「あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!!」

 

 何処かの泣き虫駄女神(こ◯すばのアクア)の如く、涙ながらにシオンの事を母だと主張し続けたのもあるが、警察側から提供された情報……所謂迷子等の捜索願いに、該当者は全く居なかったのである。

 

『……これは……困りましたね』

 

 警察署から出た後、広々とした駐車場の一角でボルフォッグとシオンは話す。

 少女は泣き疲れて眠っているが、シオンの服の袖を離さないのでそのまま抱かれていた。

 

『ごめん、ボルフォッグ……何だか変な事に巻き込んじゃったみたいで』

 

『いえ、お気になさらず……しかし、捜索願に該当者がいないとなると……彼女は何者なのでしょうか?』

 

 ボルフォッグから出た小さな疑問……

 

 確かに、警察の管轄内で起きた事件などの関係者なら、既に情報等は出回っている筈だし、迷子であれば捜索願などが出ている……しかし、少女の情報は何処にも無く、これだけ目立つ外見だというのに、この地域の公的情報には何処にも登録すらされていなかったのである。

 

『謎過ぎるわね……それに、この子の顔色もあまり良くない。このままだと病院もダメだろうから、私、この子を1度オービットベースへ連れて行くわ』

 

『その方が懸命かもしれませんね……私からも、先んじて報告を上げておきましょう』

 

『助かるわ、お願いね』

 

 その後、シオンはクーゲルを呼び出して迎えに来てもらい……謎の少女と共に一路、オービットベースへ向かう事にした。

 

──────────

 

 少女を連れ、オービットベースへ舞い戻ったシオン……

 

『……と、いう訳なんです』

 

 ボルフォッグからの先行報告を受け、既にオービットベースでも少女に関する情報が無いかを捜索し始めていた……

 

「……ダメですね。国内はおろかの世界中の公的データベースの何処にも彼女に該当する情報がありません」

 

「此方も同様です。迷子捜索願、行方不明者、児童保護施設……どの情報にもヒットがありません」

 

 シオンは帰還後、メインクルー等に改めて状況を説明……

 

 説明中も猿頭寺や牛山は少女の情報捜索を続けたが、該当はおろか掠りもしないという結果に終わった事に、大河と麗雄は怪訝に感じていた。

 

「うぅむ……こうも手掛かりすら掴めないとは……」

 

「あらゆる情報が(ひしめ)く現代のネットワークに、一切情報の無い少女……ともすれば、稀星くんを“自分の母親だと思っている”事に、何かヒントがあるのやもしれん……」

 

 残る可能性は、シオンと同じ、()()()()()()()()()()……

 

 異星文明に関するほとんどの情報には(転生前の記憶型ある為)、何かしらの既知があったシオン……しかし、シオンにすら初めて見る少女の情報には何1つ思い当たるフシがない。

 

(原作でもこんな出来事は無かったし、異星文明と言っても星の数ほどある……一体この娘は、何なの?)

 

 どれほど動き続けていたのだろうか、疲れ果てシオンの腕に抱かれたまま眠る少女……

 

 まだ誰も、この少女の正体には気付いてないのであった……

 

 

 その日の午後……突如、Gアイランドシティにゾンダーが出現。

 

 地上で警戒に当たっていた氷竜と炎竜は現場に急行し、待機中だった風龍と雷龍……そしてガオガイガーも、イザナギにて緊急発進。

 

 私用で地球に降りていたシュトゥルムボルグとアイゼンナシュティアが現場に急行し、ゾンダーの足止めを敢行。ガオガイガーの到着後直ちにコアの救出が為され、シティの被害は最小限に抑えられたのであった。

 

《こちら凱。ゾンダー核の救出完了……浄解を確認後、オービットベースへ帰還する》

 

「オービットベース了解。凱、お疲れさま」

 

 凱からの連絡に命は労いの詞を掛ける……そのタイミングで、少女はようやく目を覚ました。

 

『……あ、目が覚めた? だいぶ疲れてたみたいね……』

 

 シオンの言葉に、少し俯き加減から頭を上げシオンを見上げた少女……しかし、少女の目がメインモニターに映るガオガイガーを映した途端、少女の頭の中に幾つもの場面がフラッシュバックし始める……

 

 ……その中には、大人でも目を覆いたくなるような凄惨な場面や、傷付き倒れる幾多のマシン達……そして、シオンに似た大人の女性が少女の眼の前で事切れる瞬間もあった。

 

「……あ……あぁ……みんな……ダメ……嫌ァァァ……ッ!?」

 

 少女が急に狼狽え始めた事に騒然となるメインオーダールーム。

 シオンもこの急変には一瞬驚いたが、さすがは元精神科医なだけあり、人体に悪影響の極めて少なく、鎮静効果のある気化薬剤を瞬間的に調合し、緊急処置として少女を再び眠らせた。

 

『今の豹変具合……この娘はもしかしたら、過去にとても酷い目に遭って、ずっと逃げて来たのかもしれません。でなければ、あんな顔は……』

 

 シオンには、豹変した少女の顔が“絶望に染まりきった”様な表情に見えた……その場に居合わせた全員も、シオンの言葉に納得し、大河はこう司令を出す。

 

「彼女の正体または出身が判明するまでの間、彼女をGGGのの保護観察下に置く事とする。勿論、彼女に関する情報の捜索は続けるが、現状では手掛かり1つ掴めない故に、彼女の精神の安定を待ってから、直に問い正した方が判明する可能性が高い……」

 

 大河司令の英断により、謎の少女はGGGの監視下にて保護観察措置を取られる事になった……もし、彼女が異星文明の出身と確定し、今後同種ないしは関係者とのコンタクトに対して、穏便に備える事も出来るからだ。

 

 長官の判断に(さっすが出来た大人代表!)と心の中で太鼓判を押すシオン……だが次の一言で、彼女は素っ頓狂な声を上げる事になった。

 

「……よって、彼女の精神が安定するまでの間、最もこの子に信頼されている稀星くんを保護責任者に任命する!」

 

『……ぇ……? ……えぇぇぇぇぇぇッ?!』

 

 この特命により、シオンは未婚(実年齢14歳)のまま(形式上だが)一児の母となったのである。

 

 

 それからというもの、シオンの居る所……件の少女、リラは傍に居続けた……

 

 この“リラ”という名は、持っていたペンダントに(恐らく)持ち主の名前として掘られていたものだ。

 

 彼女の来歴を調査する為、発見した地域を中心に大捜索が行われ、発見地点から約数kmほど離れた海岸に小型の宇宙船が破損状態のまま不時着していたのを発見……

 既に何者かによって荒らされた船内を探索した結果、リラが乗ってきた事が判明。これにより事実上リラも地球外人類種と確定……

 

 宇宙船の航行システムや仕様から、大本は三重連太陽系……しかもあの“紫の星”から来たものと判明したのである。

 

 それ故か(半分被造物とはいえ)同郷の存在であるシオンへ信頼を置くのも(少しだけ)納得できた。

 

(これもイレギュラーなのかな……“私”が此処に在る皺寄せなのか、それとも“見習い管理者さん”或いは“原作外の敵”の策略なのか……)

 

 あの時、見習い管理者から告げられた謎の存在……

 

 世界は既に大きく歪み、自分を受け入れながらもほぼ原作通りに進んでいる……それはあの“見習い管理者”の絶え間ない尽力……“私”の存在を“世界”に認めさせ、存続させようとしているからだろう。

 

(それはさておき……この娘はどんな時でも、私の側を離れない……大勢の奇異の目に晒されても、私の傍の方が安全なんだと信じているのね……)

 

 シオンはその立場上、オービットベースを出て地球に降り、諸外国の研究者等とも会う機会は多い……が、その度傍らの少女の存在に驚かれ、難儀な説明をその都度行う羽目になったのは言うまでもない。

 

 勿論、“超”が付く程の有名人が()()()()()()()()()()()()()()()()()()()という絵面は、すぐにスキャンダラスな話題の如く取り上げられ、世間を大いに騒がせた……

 ……が、GGG諜報部やシオンの事をよく知る知人等の働きにより、徹底的かつ早々に鎮圧されている。

 

(対外要件は全て大人モードで対応していた所為か……初見・既知に問わずもれなく親子認定されるのは、ちょっと憂鬱だわ……)

 

 髪色や目の色など多少の違いはあるものの、シオンをグッと幼くしたような少女は、尽く誤解を生むのに役立っている……

 説明を受けて初めて赤の他人という事に驚かれる手前、暫定とはいえ“親代わり”となっている事に、大河への恨み事が出そうになるシオン。

 

 モニターに映ったガオガイガーを見て、()()()()()()()()()()()()()()()の方は分からない……

 

 しかしシオンは、彼女に頼られている……必要とされている事自体には、不思議と嫌な気持ちは持たなかった。

 

──────────

 

 その頃……とある倉庫街の一角では……

 

『あれ以来、奴等も慎重に行動している様だな。“鍵を“彼奴”の下に置いている……やはり侮れん』

 

 暗闇の支配するその人気のない所で、金髪で筋骨隆々の男は独り言を喋っていた……

 

《……ならば、何故あの時に“彼奴”ごと消さなかった?》

 

 ……いや、1人ではない。影に潜む“何か”と会話していた。

 

『あのタイミングで“彼奴”に手を出し、GGGに勘付かれれば、我々の計画もご破産となる可能性が高かった……それだけの事』

 

 男の言葉に、影は何やら胡散臭さを感じるも敢えて問わない。

 

《……ふん……そういう事にしておこう。しかし、これ以上の遅延は許されぬ……早々に“アレ”を始末しろ。でなければ、我々の望む終末の到来は……》

 

『分かっている、心配するな……我々は機界31原種。地球の文明如きに遅れは取らん。すぐにあの忌々しき小娘を引き剥がし、“鍵”とやらを始末してくれよう』

 

──────────

 

 リラを保護してから数日後の夜、東京湾の沿岸部に再びゾンダーが襲来……海岸線の夜景を楽しむ観光客らを襲っているとの急報が入り、GGGは再び緊急出動となる。

 

「ガオガイガー、横須賀市の沿岸沿いにて敵ゾンダーと接触! 

交戦状態に入ります!」

 

 命が敵ゾンダーとガオガイガーが交戦に入った事を報告……その直後、スワンが血相を変えてたった今入った追加情報を報告する。

 

「No!? 千葉市、船橋市にもゾンダーが出現シマシタ!!」

 

 なんと、横須賀からGアイランドシティを挟んで反対側の千葉と船橋にもそれぞれゾンダーが出現したのだ。

 

「千葉のゾンダーは市街地から海岸線に向かって侵攻中!」

 

「船橋市のゾンダーは上空にて、哨戒中のクーゲルザウター、シュトゥルムボルグと交戦状態に突入しました!」

 

「こうも離れた場所に3体も出現するとは……恐らくこのゾンダーは潜伏中の原種によって生み出された可能性が高い! 奴等の目的が地球の機界昇華にある以上、我々の目を欺く為の囮かもしれん。油断するでないぞ!?」

 

 3つの位置関係から順番に対応するには少しばかり遠く、戦力を分散させ同時に対応しなくてはならない……この絶妙な距離感でほぼ同時に3体ものゾンダー出現に、麗雄はこのゾンダー達が潜伏中の原種によって生み出された可能性が高いと睨んだ。

 

 事実、中国の一件でも観光客を次々とゾンダー化させてる原種を確認しており、そのプロセスはゾンダリアンによるゾンダー化よりも圧倒的に速い事も認識済みであった。

 

《了解! 氷竜、炎竜! 要救助者の救出に並行して、原種の警戒も頼む!》

 

《お任せ下さい、隊長殿!》

 

《怪しい奴は見逃さないぜ!》

 

「風龍、雷龍は千葉市に出現したゾンダーを迎撃! 稀星くん、アーマロイドの中でゾンダーコアの摘出を行える者は?」

 

『ストラトスライガーとグラヴィスコルードなら可能です……ですが、グラヴィスがコアを抜き取るには繊細な操縦を行う為の搭乗員が必要で……』

 

「……ならば、ストラトスライガーを船橋に送ってくれ給え。合流次第、アーマロイド隊で船橋市上空のゾンダー撃破。グラヴィスには風龍・雷龍の援護の方を頼む」

 

『分かりました。クーゲル達は市街地への被害を抑えつつ足止めよ、ライガーを向かわせるわ!』

 

《了解っ!》

《おーけー、お姉さんに任せなさぁい♪》

 

《船橋の相手は飛行型か……ならば我らも千葉の加勢に向かおう》

 

《分担作業だな……しくじるなよ? 山羊座》

 

 状況に応じて即出撃こそ可能なアーマロイド達ではあるが、ダイキャンサーは飛行能力を持たず、ナシュティアも空中での行動時間は極端に短い為、必然的に船橋戦域への参戦は難しく、彼らも千葉の増援へと向かう事に……

 

《ダーリンこそ、力み過ぎてヘマしないでよね?》

 

 斯くして、東京湾一帯を舞台にした三面同時作戦が幕を開けるのであった。

 

──────────

 

『ライガー、インストレーションシステムコール……“イェーガー”!!』

 

 イザナギに乗せられたストラトスライガーを空戦に対応させるため、予てから製作されていたライガー用の新装備……“イェーガー”ユニットを呼び出すシオン。

 

 このイェーガー装備は、高度な空力性能と姿勢制御能力を追求した高高度対空戦闘用の追加装備で、通常では飛行能力を持たないストラトスライガーに飛翔能力を付与する事が出来る専用パーツ群である。

 

 他の物より装甲厚や防御面こそ劣るものの、元来の反応速度や近接戦闘能力をそのままに、高度な飛翔能力を本体に付与する空戦用アーマー……

 武装は最低限ながら、精密射撃も可能な4門の頭部バルカン砲。背部の大型ブースターユニット基部に超高初速レールガン2門。ブースター付属の展開式ウイングや、整流板にもなるテイルユニットそのものも鋭い切れ味を持つブレードとなる為、射撃能力こそ低いが戦闘能力自体は他に見劣りしない物となっている。

 

─ Stratos Jaeger. C.A.S.Complited ─

 

 換装終了と同時にイザナギのミラーカタパルトを利用して加速、船橋地区へ向けて射出されるストラトスイェーガー。

 

 グオォォォンッ!!

 

 頼もしい咆哮ではあったが、何か言いしれぬ不安を感じたシオン……その時、何故かリラが傍に居ない事に気付く。

 

『……? リラが居ない?! 長官!! リラが……』

 

《オイオイ、どういう事だよ……何でアイツがあんな所に?!》

 

 その時、イザナギの艦橋から伝わった火麻の驚きの声……イザナギのメインモニターに映し出されたのは、シオンの傍を片時も離れなかった筈のリラが、千葉のゾンダーに追われている光景であった。

 

──────────

 

 ゾォォォンダァァァ……!

 

「……?! ひっ!? ……ッ……?!」

 

 突如として戦地に迷い込んだリラ……

 

 ライガーの換装後、シオンとリラはストラトスイェーガーを見送るべくイザナギの展望デッキに居た。その際イザナギは風龍・雷龍とアイゼンナシュティアを先行して射出した後、グラヴィスを下ろす為に千葉のゾンダー付近……つまり敵の近くに来ていた。

 

 その時ゾンダーは“誰か”の指示を受けており、イザナギの展望デッキに見えていたリラと、近くにあった小さな瓦礫との()()()()()()()するという“異能力”を行使し、イザナギの展望デッキに居たリラを、自らの近くに引き寄せたのである。

 

「……ぁ……あぁ……ッ……!?」

 

『ッ?! いけません! ……なッ?! ぐあァァァッ!!』

 

 戦域フォローのため、同じくゾンダーの近くに来ていたボルフォッグ……

 事態にいち早く気付きリラを救助しようとするも、ゾンダーの能力で現在位置をメチャクチャに変えられ、ゾンダーに対して攻勢に出た瞬間の動きを逆に利用される形で自ら瓦礫の山に突っ込まされてしまった。

 

『ボルフォッグ!? よくもやったな!!』

 

風導弾(フォンダオダン)っ!!』

 

 ボルフォッグを一蹴した事に激昂した雷龍も風龍と共に猛攻を加えるが、ゾンダーは自らの位置をその“入れ替え能力”でランダムに立ち位置を変える事で直撃を1つも受けず全て回避、更に風龍と雷龍の位置までをも入れ替えて、お互いの攻撃を直撃させたのである。

 

『『ぐあァァァ……!!』』

 

『手強い……! しかもあの能力、範囲内の対象を一瞥するだけで使える様ですね。これでは包囲しても、逆に全てを利用されかねません……どうすれば……?』

 

 ダメージは少なかった様子で立ち上がるボルフォッグ……しかし、ゾンダーの行使する異次元の能力故に、迂闊に攻勢を掛けれなくなっていた……

 

──────────

 

 その少し前……

 

「ファントムリング、プラスッ! ブロウクン・ファントムッ!!」

 

 エネルギーリングを生成し、その中央へ右腕を通しながら射出……従来の数倍の貫通力と攻撃力を持つに至った【ブロウクンファントム】が、ゾンダーロボの左脇腹を抉り破砕し尽くす……

 

 しかし、予めサーチしていた位置にコアは見えず、それ処か損傷を数秒で全回復してしまうゾンダーロボ。

 

「何っ……まだ再生するのか?!」

 

 既に戦闘開始からゾンダーへの攻撃は都合6回に及んでおり、最初は一撃で完全に動きを止められると誰もが予測していた……

 

 だが、現実は6度の直撃を受けながらもゾンダーロボは健在……

 

 反撃こそガオガイガーを討つには力不足ではあったが、その異様な持久力と、体内のコアの位置を変えるという搦手に迂闊な真似は出来ない……強化されたガオガイガーの、対ゾンダー戦に特化した能力故に、通常の攻撃ではコアを傷付けてしまう恐れがあるからだ。

 

《奴の体内のコアの位置は一定の時間か、ダメージを受ける度にランダムに変わっておる!このままでは、時間とエネルギーを浪費してしまうだけだぞ!?》

 

「クソッ……奴とコアの動きを、同時に抑え込む方法は無いのか……!?」

 

『お困りの様ですね……そういう事ならば、“僕”の出番です……!』

 

 横須賀の沿岸部で睨み合うゾンダーロボとガオガイガー……その間に、「自分の出番だ」と口にしながら紫色のスーツ姿の男が現れる。

 

「お前は……確か、天秤座の……!」

 

 凱は男の姿を見て記憶を辿り、行き着いた者の冠名を呼ぶ。

 

『はい。天秤座のジョルノ……今よりガオガイガー(アナタ)の援護に! そして今、披露しましょう、僕の新たな幻影(チカラ)……(いで)よ、【刃銀の戦車(シルバー・チャリオッツ)】ッ!!』

 

 声を張り上げながら自身の本体である黄金の天秤を握り、天高く掲げる天秤座……その声に呼応して黄金の天秤は光り輝き、台座に埋め込まれた銀の装飾や皿を釣る鎖が消え、その代わりに人影が実体化してくる。

 

「以前に見た幻影と違う……」

 

《これは……銀鎧の騎士……か?》

 

《天秤座の守護幻影は、あの時の拳闘士だけではないという事か……》

 

 それは以前に見た【白銀の煌星(スタープラチナ)】とも違う、銀色の全身鎧を身に纏う騎士……現出後、己の鎧と同じ銀のレイピアを眼前で垂直に立てた後、その切っ先をユラリと敵ゾンダーロボに向け直して構える。

 

《敵ゾンダーのコアの位置を特定! 今度は左の太腿です!!》

 

『……ッ! シャアァァァ!!』

 

 ガオガイガーのセンサーから得た情報は随時オービットベースで解析されており、判明したコアの現在位置を命は通信で叫んだ……その直後、天秤座は意を決して吠え、同時に銀の騎士も動く。

 

 銀鎧の騎士が繰り出した剣戟の速度たるや、肩から先は残像で酷くぶれ、腕の先へ向かう程にその残像すらも薄くなり、刃を持つ手などに至ってはもはや完全に見えなかった……

 しかし、その切っ先は確実にゾンダーロボの右腕を捉え、手首から先を根本から分離させてしまう。

 

 ゾ、ゾ、ゾ、ゾ……ッ?!

 

 攻撃でダメージを負い、ゾンダーロボのコアの位置が変わると、銀鎧の騎士は次の攻撃部位を即座に変更……今までコアのあった左足を狙い今度は足首から切り離す。更にダメージでコアが再び移動するとまたさっきまでコアのあった左腕を狙って肘関節から切除。

 そうやってみるみるゾンダーロボの四肢……つまりコアの移動先を端から狭めて奪い続け、ついにはゾンダーロボを剣戟の嵐で空中に縫い止めたまま胴体のみの状態と化したのである。

 

『そらそらそらそらそらそらァッ!!』

 

 無論、常にコアの位置を把握しつつ再生をも阻害し続け、ゾンダーロボの胴体を空中に縫い止め続ける攻撃の速度は最早光の速さに達しており、銀鎧の騎士の酷くブレた右腕の先に縫い留められたゾンダーロボの胴体は、まるで銀色の板の上で転がされている様にも見えた……

 

『今です、ガオガイガー! この状態なら、奴はコアを移動できない!』

 

 速すぎて最早レイピアの軌道すら全く見えない剣戟の嵐の中、再生しようとする傍から身体を削り取られ、なおも宙に浮かされ続けているゾンダーロボには、ここから逆転する方法など完全に無い。

 

「応! ゴルディオンッ、ハンマァァァッ!!」

 

 もちろんこの流れを止められる術など、ゾンダーロボにある筈もなく……高速再生とコア移動の法則を逆手に取られ、ハンマーヘルアンドヘブンによってコアを抜かれ撃破されたのであった。

 

──────────

 

 同時刻、船橋市街上空……

 

『はいは~い、そのままそのまま〜♪』

 

 シュトゥルムボルグが狙いを定め、構えたライフルが火を吹く……いつもなら狙い能わず次の瞬間ゾンダーロボの胴体に着弾し、ダメージとなるはずだったが……

 

『……?! 避けたっ?!』

 

 クーゲルとシュトゥルムに挟み撃ちにされ、十字砲火を浴びそうになった筈のコウモリ型ゾンダーロボ……しかし、一瞬でその身を翻し、コンマ秒の弾丸の隙間を縫う様なアクロバット飛行で完全に避けたのだ。

 

『これならどうッ?!』

 

 クーゲルは腰の【ナーデランツェ】と同時に両手のボウガンにも散弾を装填し、逃げ場のない広域面制圧攻撃を放つ……しかし、コウモリ型ゾンダーロボはそれすらもヒラリと躱し、更に闇夜に掻き消えるが如く姿を消してしまう。

 

『ステルス能力?! でも、消えた訳じゃないなら……っ!』

 

 静止位置から大気を踏み付け、クーゲルはインパクトによる急加速。シュトゥルムボルグもその動きに追従し、2機でコウモリ型ゾンダーロボの移動ルートごと囲い込む。

 

『包囲殲滅は数的優位側の基本戦術よん♪』

 

 たった2機で一対多*1の状況を作り出し、猛烈な弾幕を形成……さすがのコウモリ型ゾンダーロボも堪らず姿を表して回避行動に専念。

 

 無論、それこそがクーゲルの思惑通り……

 

 シュトゥルムボルグが包囲を狭め始めると、クーゲルは軌道を邪魔しない様に離れた位置に移動しつつ武器のモードを変更……

 

 左右両方を速射重視のボウガンモードから、長銃身のライフルモードに変形。更にそれを横に繋ぎ、大出力照射対応(ツインバスターライフル)形態へと変える。

 

『ざぁんねん、丸見えなのよね〜』

『今度は、外しません……ッ!!』

 

 2人の声がテンポよく繋がり、ビームの檻に囲まれ身動きの取れなくなったコウモリ型ゾンダーロボに、黄色い大出力ビームの束が直撃……

 

『《エリアル・ロケットドリルスマッシャー》ッ!!』

 

 両方の翼と耐久力を根刮ぎ削り取られ、力尽きゆっくりと落ち始めたコウモリ型ゾンダーロボのコア目掛けて、現着したストラトスイェーガーの必殺技が炸裂。

 

 見事コアを抉り取りつつ貫き……ストラトスイェーガーはコアを咥えたまま着地。

 

 グオォォォォォォンッ!!

 

 前足で器用にコアを足元に下ろしてから、勝利の咆哮を上げるストラトスイェーガー……シュトゥルムとクーゲルも、胸を撫で下ろすが……

 

《クソッタレ! 冗談だろ?!》

 

 突如通信から響いてきた火麻の声……千葉方面の戦闘は、異常事態に陥っているのだった。

 

──────────

 

 通信越しに聞こえてきた火麻の恨み言……それは千葉方面の戦いが、異常事態に陥っている事を表していた。

 

『な、何と言う事……!!』

 

『何者だ……!?』

 

『……う、嘘よね……ねぇ……リラ……そんな……っ』

 

 ビッグボルフォッグ、撃龍神、そしてシオンの悲痛な声……その理由はただ1つ。

 

 ゾォォォンダァァァ……!!

 

 ゾゾゾ……ゾォンダァァァ!!

 

「フフフ……力無き庇護対象が敵となる……GGGよ、この事態。どう切り抜ける?」

 

 ビッグボルフォッグと撃龍神を翻弄するゾンダーロボとは別に、もう一体……そしてゾンダーロボの肩の上に立つ、薄桃のフードマントを羽織った謎の男が勝ち誇る様にほくそ笑むのだった。

 

⇐To be continued 

*1
クーゲルは分身してないが、シュトゥルムボルグは自身の速度を以ってすれば秒間約200体ほどの分身を余裕で作れる。





想定外にして最悪の事態……でも続きます。
……ちゃんと本編も書いてますからね?!

長くなったから誤字・脱字も多いかも……
……あと、感想もヨロシクオネガイシマス。

本作におけるアナタの理想はどれ?

  • リラを救い出し、原作乖離も進行
  • リラを救い出すが、原作通りに
  • リラを救い出せず、原作通りに
  • リラを救い出せない上、原作乖離へ
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