ここは南戸賀鎮守府執務室。そして私は一応提督をしている人間である。
「……」カリカリ
今日も俺が無言でいつもの書類を片付けているとタッタッタと廊下を走る音が聞こえてくる。
そしてその足音の主は扉の前でノックをすることもなくノブを勢いよく回し、部屋中に響く大きな音を立てて飛び込んでくる。
「てーとくー!」
「ノックをしろ夕立、あと体当たりで扉開けんな、憲兵かバーニングラブ勢と間違えてビビるだろ」
「夕立ひまっぽい!」
「見ての通り執務中だよ、構ってられない」
「ひまっぽい~」
「人の話聞いてんのかぽいぬ」
「遊んでほしいっぽい~」
そう言って夕立は床に寝そべって転がり始める。この前掃除したばかりだから汚くはない……と信じたい。
「あーもうわかったわかった、この仕事終わらせたら相手してやるから床を転がるな、また鳳翔さんに服汚すなって叱られても知らんぞ」
「うー……それはイヤっぽい……じゃあとりあえずてーとくのお仕事が終わるまで秋雲のところにでも行ってるっぽい……」シュン
「秋雲?お前アイツとそんなに仲良かったのか」
夕立も姉妹艦以外と遊ぶんだな、微笑ましくていいことだよ。それなら執務の邪魔をしないでほしいというのは本音だが。
「最近
前言撤回。どこが健全だ。頭が痛くなってきた。
「……あぁ、夕立、後で秋雲に執務室に来てその体位とやらを俺にも教えてみろって伝えといてくれ」
「?てーとくも誰かをオとしたいっぽい?」
「んー、まぁそんなところだな、どこか適当な地獄にでも落としたい」
「よくわからないけど秋雲を地獄に落とせばいいっぽい?」
「しなくてよろしい」
改ニになった夕立の火力なら本当にできそうだから困る。
「それじゃ、行ってくるっぽい~!!」
そう言って夕立は入ってきた時と同じような勢いでドアノブを引いて勢いよく出ていく。
「あっ、走るんじゃねぇよ!」
「気にしないでっぽい~」
行ったか……もう少し静かにしてくれたら助かるんだがな、あれでもうちの駆逐艦の中ではトップクラスの戦果を挙げているんだからきつくは言いづらいが。
「……にしてもなんつーことを吹き込んでるんだ秋雲は」
俺がそう毒づいていると執務室の扉がまた開かれる。
「ただいま提督、執務の進捗はどうだい?」
「おう、時雨か、まぁまぁといった所だ、さっき夕立が飛び込んできて邪魔されたがな」
「それは災難だったね、聞いてるよ、秋雲が変なことを夕立に吹き込んだってね、あぁ、お茶を淹れてきたよ」
「さすがにお前は知っていたか、秋雲のやつめ……」
そう言いながら時雨が入れてきてくれたお茶を一すすりする。あっ、うめぇ。
「そうカリカリしなくてもいいんじゃないかな、夕立なら提督以外にはしないだろうし」
「俺にやろうとしていることが問題なんだよ……お前みたいな事情を知っているやつは大体わかってくれるだろうが他の奴らにそれを見られてみろよ、クズだのロリコンだの言われるのは目に見えているんだよ」
「あれ?提督は小さい娘が好きじゃなかったのかい?」
「そうだとしたら今すぐお前を襲うぞ」
「論理が飛躍しすぎていないかい?」
「あーあ、憲兵いなけりゃなぁ」
「そこまではっきり何かをすると宣言していたらもう手遅れだと思うんだ」
そんなに距離を取るな、他所の提督の真似をしただけだ。
「ちなみに提督はこの鎮守府の住人だと誰がタイプなんだい?」
「んー……龍驤かな」
「やっぱりロリコンじゃないのかい?」
「怒られるぞ、確かに背丈は小さいかもしれないがあいつの魅力はちゃんとあるんだよ、俺と艦娘たちとの良い緩衝材になってくれたりするんだ」
「あの人は面倒見いいよね、僕たちもよくお世話になるよ」
時雨はそう言って白露姉さんが最近一段とうるさくてねと付け加えながら俺が飲み終わった湯呑を下げに来る。
さて、早いところ残りの執務を片さないと遠征に行っているやつらが帰ってきたらそれも増えるから夕立のところに行ってやれなくなるな。
「さて、頑張るか」
「あっ、僕もそろそろ交代しないとね」
「ん、お疲れ」
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「……やっぱり鋼材と燃料の貯蓄量が心もとないし倉庫を増設するか……?となると上に具申するしかないか……?」
俺が資材の管理に頭を悩ませていると執務室の扉がノックされる。
「ん、入っていいぞ」
「響だよ」
「失礼しますとかじゃなくて開口一番名乗るのか」
「やぁやぁわれこそは」
「武将か」
「響だよ」
どうして秘書艦の担当を前半と後半で似たような達観キャラにしたんだ。
「……なぁお前らの担当日時ってどうやって決めているんだ」
「隊長や加賀さんが決めているよ」
「加賀か……あいつはまぁリーダー格だからいいとして隊長って誰だ」
「五十鈴だよ」
「さんを付けてやれよハラショー野郎」
「響だよ」
確かに遠征や潜水を相手する時は旗艦にしていたがまさか隊長と呼ばれているとは知らなかった。呼び捨てされているけど。
隊長なら神通とかもそう呼ばれるべきではないのか?いや、あいつはどちらかといえば軍曹か。
「執務は進んでいるのかい」
「んー、まぁほとんど終わらせちまったって感じだ」
「それなら聞いてみたいことがあったんだ」
「ん?なんだ」
「司令官はいつも私たちが後半に交代してきた頃にはほとんど執務を残していないのにどうして前半と後半で分けるんだい」
「あー……まぁ俺の気まぐれってやつだ、それに一人に一日中秘書艦を務めさせるのも苦じゃないかと思っていてな、実際前半だけで終わらない日も少なくないしな」
「そうかい、どうして秘書艦を固定しないのかみんな疑問に思っているよ」
そう言って響は残りの書類に目を通し始める。
「まぁ理由の一つは色んなやつの話を聞けるからだな、俺への不満とかも平等に聞けるし」
「みんな司令官には不満だらけなんだね」
言い方を考えてくれよ、泣きたくなるだろ。あいつら目がやらしいとか濡れ衣着せてくるんだぞ。
「他の理由はなんだい」
「ほら残りをさっと終わらせて間宮でも行ってこい、もうすぐ遠征メンバーも帰ってくるぞ」
「露骨に話を逸らすんだね」
「まぁな、いずれ教えてやるかもしれんが今は無理だ」
そう言って響の小さい頭をくしゃくしゃと撫でる。
「おこさまあつかいしないでよ」
「それはお前の姉貴の言葉だろ」
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「……そろそろか」
仕事を終わらせた響を間宮に行かせてから三十分。遠征に向かってもらった艦娘たちがそろそろ帰ってくる頃だろうか。
~鎮守府敷地内の港~
ん、うっすら見えてきたな、というかやっぱりあいつら戦うだけあって視力はバツグンなんだな。
「あっ、司令官!」
「えっ!本当だわ!」
「どういう風の吹きまわしかしら……」
何か色々と驚かれている気がする。基本的に帰ってくるときは出迎えてるはずなんだけどなぁ。
「司令官!ただいま帰投しました!!」
「おう、お帰り、報告は後で聞くからとりあえず入渠とか補給とか色々済ましてきな」
「……はい」「なのです」
あぁ、素直な駆逐艦達は執務の疲れを癒してくれるなぁ。素直じゃない子も好きだけどさ。
そんなことを考えていると
「提督、ちょっといいかしら」と声が掛かる。
「どうした五十鈴、報告なら後で聞くぞ」
「そうじゃなくて、せっかく出迎えに来るならもう少しやるべきことがあるでしょうに」
「はぁ?」
やるべきことって何だ?一応労っているつもりなのだが。
「……まさか本気でわかっていないの?」
「あー……理由は考えとくからさっさと入渠してこい」
「まったくもう、だから出世できないのよ、報告終わったら解答聞くからね」
そういって五十鈴は走り去っていく、出世は俺も気にしてんだよ。そもそもそのやるべきことが分からないし。
「全くよぉ……」
タバコは二本消えた。
とりあえずここで投稿。
後書きって何を書いたらいいのでしょうか?