仮面ライダージオウ RIDER TIME クウガ 作:カンさん
「──今日から君が仮面ライダークウガだ」
《KUUGA》
時間が止められた世界にて、一人の少年がある力を青年に植え付けた。
それは一つの伝説の始まり。
それは一つの時代の始まり。
誰もが焦がれ、憧れ、追い求める力の結晶。
力の譲渡が行われ、歴史が改竄され、青年の姿が異形のソレへとなる。
赤き鎧を纏った巨大な昆虫怪人。
その者の名はアナザークウガ。本来の歴史と掛け離れた姿でこの世界に現れた──仮面ライダーだ。
「さぁ! 力は上げた! 後は君がオーマジオウに代わって──」
王になって。
少年の言葉の続きが放たれる事は無かった。
突如、アナザークウガがその鋭い爪を目の前の少年に向けて突き出し──しかし次の瞬間には地面のみを破壊した。
離れた位置に少年が現れ、額に汗を垂らしながら叫ぶ。
「ちょっと! いきなりなんだよ!」
力を授けたのに、何故攻撃してくるのか。
それが分からない少年は命を狙われた故の焦りと、理解ができない故の苛立ちを目の前のアナザークウガに叫ぶ。
『……チガウ』
「え?」
『コンナノハ……クウガジャナイ!!』
しかしそれ以上の激情をもってアナザークウガが叫び返し、口から炎を吐き出し──その行為にすら苛立ち、頭を掻き毟り、ガリガリと異形の頭皮が剥がれ落ちる。
『ナンダコノスガタハ! ナゼオレガクウガトヨバレテイル! オレガクウガデアルハズガナイ! クウガハアノヒトダ!』
叫び声は徐々に唸り声へと変わり、獣の如き咆哮へと変わる。
完全に理性を失い、力の闇に呑みこまれたアナザークウガを見て少年は思った。
失敗だ。
どうやら人選が間違っていたらしく、面倒な事になってしまったと舌打ちをする。
すぐ様力を使って目の前のアナザークウガの時間を止めようとし──。
『──ガァア!!』
「っ!!」
しかしアナザークウガから噴出した闇が少年の力を弾き飛ばし、逆に少年が体を止めてしまった。
時を止める力によって……ではない。
単純で、しかしとてつもなく大きな暴力による恐怖によって動けずにいた。
それを見たアナザークウガは、自分にとって憎き仇敵である少年を殺そうと腕を振り被り……。
「──危ない!」
しかし、ギリギリのタイミングで少年は駆け付けた青年に助けられて一命を取り留める。
アナザークウガは、邪魔された事に苛立ち、その感情が闇の力で増幅し、少年ごと駆け付けた青年も殺そうとし……。
『──ァ……』
ソレを見たアナザークウガは──まるで逃げるようにその場から飛び去った。
2000年 1月29日に起きた出来事である。
◆
「アナザークウガ?」
「ああ。どうやら、タイムジャッカーの誰かがアナザークウガを作ったようだけど……少し厄介な事になってね」
時計店・グジコジ堂にて、最善最高の王様を目指す少年常盤ソウゴは、彼の臣下を名乗る謎多き青年ウォズから妙な話を聞かされていた。
その話とは──アナザークウガ……アナザーライダーに関する事。
アナザーライダーとは、本来の歴史と異なる人間がライダーの力を得た事によって現れる存在。そしてこのアナザーライダーが作り出される事により、歴史に異変が起きる。
ソウゴは、過去にそのアナザーライダーと戦い、本来の歴史のライダー達から力をと歴史を継承している。
そして今回、ウォズが持ってきたこの話も例に漏れずアナザーライダー関連の話なのだが……。
「厄介って……何が?」
「ふむ……まずクウガについて話そう」
仮面ライダークウガとは、平成ライダーにおける始まりの存在と言える。
「へー……つまりライダーとしては大先輩って事だね」
「まぁね」
「でも、その事と今回の話と何の関係があるの? いつもと違うみたいだけど」
「ああ。違うね。何せクウガは平成の始まり──つまりスタート地点だ」
「スタート……地点……?」
「クウガは平成ライダーというリレーレースにおけるスタート地点。しかし、そのスタート地点が無くなればレース自体が始まらない──存在しないんだ」
「……あ」
ソウゴはウォズの言葉の意味を理解した。
平成仮面ライダーはクウガから始まり、その次のアギトへとバトンが渡され、そしてこの日まで続いている。そしてそれは仮面ライダージオウであるソウゴも例外では無い。
それが無になる行為をタイムジャッカーが行っているのだ。
しかし疑問が残る。
「でも、おれの力はまだあるよ?」
《Zi-O》
ソウゴがウォッチを押すと力の波動が流れる。それは彼にまだライダーの力がある証拠だ。
「それもまた当然。確かに平成ライダーはクウガから始まったが、他のライダー達もそれぞれの歴史を持っている。そう容易く消えはしないさ」
「そっか……」
「しかし、それも時間の問題だ。アナザークウガの行動が行動だからね」
「アナザークウガの行動?」
「──それは多分この事なんだと思う」
ソウゴとウォズの会話に入る少女の声。
彼らがそちらに向くと、そこにはウォズと同じく未来から来た少女ツクヨミがいた。
彼女は手に持ったタブレットを操作しある記事をソウゴに見せる。
それは2018年……つまり今年に起きたもの。
「『今年も始まった殺戮ゲーム。被害者は2018人』……これって」
「──ゲゲルって呼ばれてるわ」
「ゲゲル……」
ゲゲル。2000年1月30日より起きた大量殺人事件。犯人は不明。犯行も不明。分かっているのは被害者は全員何かしらの犯罪を犯した悪人である事。犯行時間は毎年1月30日0:00〜同日23:59。そして被害者人数が西暦と同じように揃えられている事。
「ゲゲルとは、クウガの本来の歴史で存在する種族、グロンギ族の遊戯の事だね……つまりゲームだ」
「遊び半分で人を殺してるって事……?」
「それは……ちょっと分からない」
眉を潜めるソウゴに、ツクヨミは言葉を濁しつつ彼女が気になる点について答えた。
「アナザークウガが殺した被害者の中に……ライダーの歴史における重要な人物がいるの……悪い意味で」
「え?」
「正直こういう言い方はしたく無いけど……この人物が居なかったからあの悲劇は無かった。そういう事例がたくさんあるの」
ライダーの敵は怪人だけではなかった。
人間の悪意やエゴもまた、ライダーの敵になる者がいた。
アナザークウガは、それを片っ端から殺していた。
そしてアナザークウガは悪人のみを殺していた。
それによりアナザークウガの犯行を支持する者も多い。
ツクヨミは流石に支持するほどでは無いが──最悪の未来を変える為に過去に来た彼女にとって、アナザークウガの行為を全否定する事はできなかった。
しかし。
「それでも……間違っているよ」
「ソウゴ……」
「例え悪人でも殺して良い理由にはならない。ゲームのターゲットにするなんてもっての外だ。罪を犯した人は、ちゃんと罰を受けて裁かれないといけない」
おれが王として存在する世界なら尚更に。
強い意志を持ってそう断言するソウゴに、ツクヨミは眩しい物を見る目で彼を見て、ウォズは笑みを浮かべる。
「とりあえず止めないと。この悪趣味なゲームを終わらせるんだ」
「流石だ我が魔王。しかし、アナザークウガが活動する日までまだ時間がある。それまで──」
「待つ気は無いよ。当然過去に行く!」
「……即決とはね。だが、それこそ我が魔王」
行動は決まったようで、三人はタイムマジーンで過去に飛ぼうとするが……。
「そういえばゲイツは?」
そこで普段ソウゴの監視をしているゲイツ が居ない事に気付き、ツクヨミに聞くと。
「ゲイツは……」
◆
「うえええええええん!」
「あーくそ……どうしてこうなったんだ……!」
現在、ゲイツは過去に戦ってきたどのアナザーライダーよりも強敵な存在と相対していた……!
迷子である。
父親と母親と逸れて泣いている幼き子である。
その子を見つけた時、ゲイツは気が付いたら声をかけていた。生来真面目で優しい男だ。どうしても放って置く事が出来なかった。
「なぁ? お父さんとお母さんはどこに居るんだ?」
「ええええええええん!!」
「泣いてても分からんぞ! それに男なら……」
「うおおおおおおおおん!!」
「あー、そうじゃなくて……」
「あああああああああん!!」
「どうしろって言うんだ……」
仏頂面で不器用なゲイツには、子どもの相手をするにはまだ早かったようだ。
どうしたものかと困っていると、彼に助け舟を出す者が現れた。
「よぉ、そこの坊主」
その男は突然現れると、泣いてる少年の前にしゃがみ込み、何処からともなく取り出したボールを使ってジャグリングを始めた。
何度も練習したのか、手慣れた様子でポンポンボールを放り投げては、軽快にキャッチして、そして投げて……泣いていた少年はいつの間にか空中で踊るボール達に目が釘付けになっていた。
コロリと泣き顔から笑顔に変わっているその様子に、側で見ていたゲイツが驚きの表情を浮かべていた。
男は少年が泣き止んでいるのを確認すると、全てのボールを手に取ってそのままサムズアップしようとし……首を横に振って何かを振り払うと、少年にボールを手渡した。
「わぁ、ありがとうおじさん」
「おじさんって、そんな歳じゃ──って、もうそんな歳か」
キャッキャっ笑っている少年の頭をクシャクシャに撫でると、男は立ち上がってゲイツの方に向き──目を見開く。
その様子にゲイツは怪訝な表情を浮かべた。
「君、この子の知り合い?」
「──あ、いえ。オレもさっき見かけて」
しかしすぐに表情を改めると事情を説明した。
「そうか。君は、良い人なんだな」
「……? それを言ったら貴方も──」
「タカユキ!」
ゲイツと男の会話を遮る様に、遠くから叫び声が響いた。
どうやら少年の両親なようで、必死の形相でこちらに向かって走って来ていた。
少年は笑顔で親のもとに向かい、両親もホッとした表情で息子を迎え入れる。
「ありがとうございます!」
「ありがとうございました……! ほら、タカユキも!」
「ありがとう! おじちゃん! お兄ちゃん!」
「いえ、そんな。オレは何も……!」
「大した事はしてないです」
合流を果たした親子はゲイツと男に何度も頭を下げながらその場を後にした。
それを見送った二人も、それぞれ帰ることに。
「それでは、オレはこれで」
「ああ。またな」
その言葉を最後に、二人は別れ……。
「……?」
ふと違和感を感じたゲイツは、何気無しに後ろを振り返ると──すでに男の姿はなかった。
ゲイツの中で妙な感覚が廻り続けるが、ファイズフォンXに着信が入り、意識が逸れる。
「もしもし……なに……? 分かった、今すぐ向かう」
通信を終えたゲイツは走り出し──それ。物陰から先ほどの男がジッと見つめていた。
◆
2000年1月30日
23:00
ゲイツと合流したソウゴ達は九郎ヶ岳遺跡
へとやって来た。ツクヨミの調査によると、ここに積み上げられた2000人の遺体が発見されたのが、最初のゲゲルの存在が確認された記録。
つまり此処に来ればアナザークウガに会えると踏んだのだが……。
「これは……!」
「……既にゲゲルは終わったようだね」
ソウゴ達の目の前には──数え切れない程の遺体がそこにあった。
未来で戦いに明け暮れていたゲイツ 達はともかく、ソウゴは見慣れない為自然と目を逸らしてしまう。
そしてその視線の先に何かを見つけた。
大きく、暗闇の中に光る赤。
「誰か居る! 行ってみよう!」
「おい待てジオウ!」
「ソウゴ! ゲイツ!」
「……」
ソウゴが走り出し、それをゲイツとツクヨミの二人が追い掛け、ウォズはゆっくりとマイペースに後に続く。
森の中を走るソウゴ。自然と彼は迷わなかった。暗闇で視界が悪いにも関わらず。彼の所有するウォッチが引き寄せているのだろうか。もしくは魔王の力か。
しかし──間に合わなかった。
「っ……」
ソウゴが追い付いた時には既に、アナザークウガはその腕で目の前の青年を殺していた。血飛沫が舞い、青年の白い服が真っ赤に染まる。
アナザークウガは腕に刺さったその遺体を放り投げてゴミのように捨てた。殺された青年は、アナザークウガの方へと腕を伸ばして、口をパクパクと動かすが……すぐに動かなくなる。
それを見届けたアナザークウガは──ニヤリと笑みを浮かべた。
「──なに、笑ってんだよ」
『……ァ?』
「なに笑ってるんだって言ってんだ!!」
《Zi-O》
怒りの叫びと共に、ソウゴは手に持ったジオウライドウォッチを起動させる。
《ZIKU-DRIVER》
そしてすぐさまジクウドライバーに装填し、腰に装着すると──世界が、時が廻る。
《RIDER TIME》
《KAMEN RIDER Zi-O》
そして世界が戻りし時、そこに君臨するのは──時空の王。
仮面ライダージオウ。それが、ソウゴのもう一つの姿。
「うおああああああ!!」
ソウゴの手に専用武器、ジカンギレードが現れ、その時の刃を叩き付ける。
しかし火花が散れどアナザークウガは痛みを感じた様子もなく、虫を払う様にして腕を振った。それだけでジオウは吹き飛ばされる。
体格差が違う。
「ジオウ!」
そこにゲイツが到着し、彼もまたジクウドライバーを装着する。そしてウォッチを起動して変身した。
《RIDER TIME》
《KAMEN RIDER GEIZ》
2068の……未来の力を宿した仮面ライダーゲイツは、ジカンザックスを斧の状態でアナザークウガに叩きつけ、ジオウの援護をする。
援護を受けたジオウは、ジカンギレードを銃に変え、アナザークウガの顔に向けて放つ。
『……コザカ、シイ!』
しかしアナザークウガは闇を放出すると近くにいたゲイツ事銃弾全て弾き返した。
吹き飛ばされたゲイツはジオウの隣に立ち、ウォッチを構える。それを見たジオウもウォッチを構え、それぞれ装填する。
《EXAID》
《VV》
そして現れるのは伝説の力を宿した鎧。
《ARMOR TIME EXAID》
《ARMOR TIME VV》
ゲイツが纏うのは、患者をゲームで救う究極の救済の意味を待つライダー。
ジオウが纏うのは、二人で一人の探偵ライダー。
どちらもオールマイティな力を持つ仮面ライダーの力。
ジオウは、スッとアナザークウガを指差すと鋭く言った。
「さぁ……お前の罪を、教えろ」
その問いにアナザークウガは……。
『シッテ、ナニニナル! オレノツミハ──カレニコロサレルコトデシカ、ツグナエナイ!』
拒絶を持って答える。
咆哮を上げると、羽を広げて夜空を飛び二人に襲い掛かった。ゲイツはジャンプ力で避け、ジオウは風の如き俊敏さで掻い潜りアナザークウガに挑み掛かった。
「私も何か……」
その戦いを見守っているツクヨミは、タイムマジーンで援護しようと踵を返そうとするが、視界の隅に入ったウォズを捉えて彼に駆け寄る。
「何してるの?」
「いや、気になった事があってね」
その言葉を聞いてツクヨミは不快だと顔を歪める。何故なら、今ウォズは先ほどアナザークウガが殺した被害者の体を調べているからだ。
「そんな事よりも今は──」
「……コイツは……まさか、ン・ダグバ・ゼバ?」
しかしそれもウォズの驚いた声により変わる。
表情を変えてツクヨミは彼に聞いた。
「ウォズ……彼のこと知っているの?」
「知っているも何も彼は仮面ライダークウガの最大にして最後の敵。いわゆるラスボスだ」
「ラスボス……!?」
しかしツクヨミの目にはただの好青年にしか見えない。
ソウゴもゲイツもおそらく同様だ。だからこそ目の前で殺されて動揺し、ソウゴは激怒した。
「あ……」
しかしツクヨミは思い出した。
アナザークウガは、悪人しか殺さない。
そして、歴史において悪影響を及ぼす人間を殺している。
「しかし、これでますます分からなくなった」
「何が?」
「彼の目的だよ」
「目的……?」
「究極的に言うと、アナザークウガが行っているのは本来のクウガと同じ事──先程の遺跡の遺体もグロンギがほとんどだった」
「──!?」
ツクヨミがアナザークウガの方へと振り返る。
そこでは変わらずジオウWアーマーとゲイツエグゼイドアーマーと戦っている姿が。しかしそのほとんどが攻撃ではなく、相手の攻撃を捌く事に注ぎ込んでいる。
今回の敵は今までと違う。
「一体、何なの……?」
彼女の呟きが戦場の音によって掻き消された。
つづく。