仮面ライダージオウ RIDER TIME クウガ 作:カンさん
「スウォルツ! どういう事なんだよ!」
「……どういう事、だと……?」
時は2018年現代。
過去から戻って来た少年……ウールは、同じタイムジャッカーであるスウォルツという男に喰ってかかった。
「クウガだよ! アナザークウガ! スウォルツに言われた人間を使ったら酷い目にあったんだけど!」
「ふむ……」
ウールは時を遡りアナザークウガを作り出した。しかし結果は失敗し、己が殺されるところだった。その事を聞いたスウォルツは驚く事も無く、ただ予報通りと言わんばかりに頷いただけだった。
その態度にウールはカチンと来る。
「そもそも! 何でアイツをアナザークウガにしろって言ったのさ。というかアイツは何? クウガの事を知っているの?」
苛立ちのままウールは感じた事を叫ぶ。
「奴は……並行世界の人間だ」
「並行世界?」
「ああ。ちょうど、別世界に干渉する機会を得たのでな」
スウォルツの脳裏にとある世界の破壊者の姿が浮かび上がる。
「そして、奴はこの世界の人間よりもライダーについてよく知り、何より執着している」
己の世界を捨て、こちらの世界に来るくらいに。
「それを利用したのだが……どうやら不良品だったようだな」
「……言ってる事がよく分かんないけどどうするんだよ。ウォッチが無いとアナザークウガ作れないんだけど」
回収しようにもタイムジャッカーの力を弾いてくる為、そう上手くいかない。
ウールの懸念を聞いたスウォルツは事も無げに答えた。
「我々がやる事は変わらんだろう」
「……?」
「失敗したのならまた作り直せば良い」
「……あぁ。なるほどね」
スウォルツの言葉の意味を理解してウールは、ニヤリと笑みを浮かべた。
◆
《FINISH TIME》
ジオウとゲイツがそれぞれ自分のウォッチを押す。すると、時が回り、時空の力が彼らの身体を張り巡らす。
《VV》
《MAXIMUM》
ジオウの両肩に備え付けられていた装甲が分離し、ジオウと共に空中に浮く。
《EXAID》
《CRITICAL》
ゲイツは利き足にエネルギーを溜めると空高く飛び上がり一回転。そしてそのまま足を突き出す。
《TIME BLAKE》
《TIME BURST》
ジオウの仮面ライダーWの力が宿ったキックとゲイツの仮面ライダーエグゼイドの力が宿ったキックが、アナザークウガの巨体へと叩き込まれる。
それをアナザークウガは両腕で受け止めて踏ん張りながら叫んだ。
『キサマラニヤラレルワケニハイカナイ! オレヲコロシテイイノハ──五代雄介ダケダァ!』
「うわ!?」
「ぐあ!?」
両腕を振り払ってジオウとゲイツを振り払うと、アナザークウガは火炎弾を辺り一面に吐き出し衝撃と爆煙を発生させる。そしてその隙に飛び立ちその場を後にした。
ジオウとゲイツが立ち上がった時には既にアナザークウガの姿は無く、二人は変身解除した。
「逃げられたか……」
「……なんだか、変わった相手だった」
「……? 何がだ?」
「いや、なんだか……あのアナザーライダー、自分の事を凄く許せないみたいな……そんな感じがして」
最初は快楽のためにたくさんの人を殺しているのだと思った。
しかし実際に戦ってみると、彼は力を振るう度に拳を握り締め、画面の奥で苦悶の表現を浮かべているのがよく分かった。
何より、誰かに裁かれたがっていた。
そしてその相手は──。
「その考え、おそらく当たっていると思うよ我が魔王」
「ウォズ。少し気になることがあってね。それは──」
ツクヨミと共にソウゴに合流したウォズが口を開いたその時──。
「──動くな!」
突如、四人の元に新たな声が現れる。
この場に自分達以外の人間がいる事に驚いていると、その者は慎重に、そして手に持った拳銃を突き付けながら近付き……。
「……子どもだと?」
ソウゴ達の顔を見たその男は一瞬呆気に取られるがすぐに気を引き締めて強い口調で尋問する。
「……向こうの遺跡で大量の死体があった。アレは君たちが?」
「いえ、違います! 私達ではありません!」
ツクヨミが強く否定するが、その男は顔色を変えなかった。
「……とにかく、詳しい事は向こうで聞くことにする」
「あの……貴方は?」
ソウゴが尋ねると、男は懐から警察手帳を出して毅然とした態度で答えた。
「──一条薫。刑事だ」
◆
「やっぱりアレってゲイツだよなぁ」
ゲイツと別れた後、男は寝床にしているとある廃墟で独り言を呟いていた。
思い出すのは先ほどの出会い。
「真っ直ぐな目だった。それと同時に不器用そうだった」
まぁ、知っているけど。
男はこれから起きる出来事を大まかに予想できていた。2018年にゲイツと遭遇したのだ。そして自分はアナザーライダー。ジオウのクウガ編の冒頭と考えれば筋が通る。
おそらくこの後、ソウゴはクウガの力を継承して自分を倒すのだろう。
──だが。
「悪いが常盤ソウゴに倒されるつもりはない──俺は、本物に殺されるべきだ」
「──それを、本人が望んでいないのに、か?」
男の目の前に突如灰色に揺らめくオーロラが現れ、そこから男の声が響いた。
何度も聞いたことがある声だった。
男は特段驚く様子も無く、オーロラの奥にある男の言葉に返した。
「……そうだよな。五代雄介はそういう男だ。殺したくないのに、人々の笑顔を守る為に仮面で泣き顔隠して戦い続けた男だ──だから、その仮面を剥ぎ取った俺は、五代雄介に裁かれなくてはならない」
「……独りよがりだ」
「ああ、そうだよ。俺は俺の事しか考えられない人間だ。五代雄介と正反対の存在」
この世界に居てはならない存在だ。
男の言葉に迷いはなかった。
オーロラの向こうにいる男はため息を吐く。
「……これが最後だ。元の世界に帰れ」
「断る。俺は、あの日に死ぬべきだとそう決めたんだ。もう、元の世界に戻るつもりは無い」
好きだった世界を、憧れていた世界を、土足で汚したその罪をそのままに、男は帰るつもりはさらさら無い。
もし言われるままに帰っても、例え記憶を失っても──彼はその世界で命を断つだろう。
「……なんでそこまで」
「俺にとってはそこまでの存在だったんだ。クウガってのは──てかディケイド世界のクウガもまだ認めてないからな俺? いや小野寺ユウスケは小野寺ユウスケは好きだけどライジングアルティメットは解釈違いだから!」
「その話も何度も聞いた。……はぁ、本当に良いんだな?」
「……あぁ」
「──せいぜい後悔するなよ」
その言葉を最後にオーロラは消えた。もう会う事も無いだろう。男はその事を少し惜しく思いつつも──この世界に来て18年になる。十分に生きたと満足していた。
「さて──1月30日が俺の最期だ」
◆
「なるほど……そんな事が」
ソウゴ達は自分達の無実を証明し、事の顛末を説明した。
初めは説明するかどうか迷ったらしいが、ツクヨミが「いざという時はこれで」とファイズフォンXを掲げた事で方針が決まった。
「あ、それと。五代さんって知っています?」
「いや、知らないな。しかしその男がどうかしたのか?」
「あ、いや、ちょっと探してましてハハハ」
ソウゴはあそこに現れた一条と五代雄介が何かしらの接点があるのかと思い尋ねてみたが、一条は知らない様子だった。
ツクヨミが机の下でソウゴを小突く。いざと言う時は記憶を消すつもりなようだが、余計な事は言うなという警告。
「しかし、あの遺跡の何かしらの関わりがあるのは確かだ。アナザークウガは必ずあそこに現れる」
「遺跡調査していた人とか?」
「……いや。今回の大量殺人事件でそちらの身元は確かめているが、五代雄介なる者は居なかった」
「そうなんですか……」
一条の言葉にツクヨミが気落ちした様子を見せる。
そうなると手掛かりは既にない。
「すまないな。力になれなくて」
「いえ、気にしないでください!」
「何かあればこちらも協力する」
その言葉を最後に四人は解放される。
四人はタイムマジーンのある遺跡に向かいながら次の行動をどうするか相談し始める。
「どうする? もう一度過去に戻ってみる?」
「あまり得策ではないよ我が魔王。クウガウォッチが無いとアナザークウガは倒せない」
「そして、ウォッチ手に入れるには本来のクウガである五代雄介が必要……」
「いや、そうとも限らないよ?」
ウォズとゲイツの言葉を聞いたソウゴが取り出したのはディケイドライドウォッチ。
それを見た三人はソウゴの考えを読み解いた。
「なるほど。確かにその力ならクウガの力を叩き込む事ができる」
「さっきは使う前に逃げられたけど、次は最初から使っていくよ」
方針が決まった四人は遺跡に急ごうとして……。
「うわあああああん!」
「迷子、かな?」
「……またか」
「また?」
「あ、いや、何でもない」
道の途中、泣いている子どもを見掛けた。
それを見たゲイツが若干顔をゲンナリとさせ、それにツクヨミが首を傾げる。
ソウゴが泣いてる民は見捨ておけないと自信満々に子どものもとに向かおうとして──別の男が先に子どもの元に向かった。
「よっ! どうしたのキミ?」
「ひっく……ひっく……パパ……ママ……」
「あー、この子か……」
男は携帯を取り出して何処かに電話した後、子どもに話しかける。
「──ジャーン! ジャグリング!」
そして取り出すのは三つのボール。男は笑顔を浮かべてよっ、ほっとボールを空で踊らせると、それを見た子どもの泣き顔が次第に溶けていき、笑顔となった。
それを見た男は、青空のような笑顔を浮かべてサムズアップし、子どもも同じように返した。ボールを一つ手渡すと、男は言う、
「辛い時に笑顔を浮かべられる人ってカッコいいと思うんだ、俺。昔遭難しかけた時、一緒に居た少年が笑顔で大丈夫だよって俺の事を元気付けてくれて……凄いなーって」
「お兄ちゃんも泣いてたの?」
「そうだな……でもその前に笑顔にしてくれた」
「じゃあ、お兄ちゃんと一緒だね!」
「ん? ……んん、そうか。ははは!」
そんな会話をしているうちに、男が連絡を取っていたのだろう。迷子の親と思われる男女が警察と共に現れ、子どもを保護するとお礼を言いつつ去っていった。
それを見送った男は次にソウゴの方へと向く。どうやら迷子を助けようとしたのを見ていたらしい。笑顔を浮かべると、無言でソウゴに向かってサムズアップをした。それを見たソウゴは、驚きつつもしかしすぐに笑顔になりサムズアップを返した。
男はそれを見やるとバイクに乗りその場を去って行った。
「なんか良い人に出会ったなー」
「魔王。仮面ライダークウガに会った感想はどうだい」
「いや、なんか良い人──ってえええええええ!?」
「あなた、知ってたのウォズ!?」
ウォズの言葉にソウゴ達が驚き、そして何故もっと早く言わなかったのかと問い詰める。
「何故って、関わっても意味がないからさ」
「意味がないって……」
「何故なら、彼は──この世界の五代雄介は、クウガになる前に歴史と力を取られた」
「え?」
「何でそんなことがわかるの?」
「簡単さ」
1月29日の夜。九郎ヶ丘遺跡の調査チームは復活したグロンギにより全員殺される。
しかしこの世界では死んでいない。
つまり、1月29日に歴史の改変が起きたと推測する事が可能であり、1月30日にクウガとなる五代雄介にはクウガの力は無いことが明白だ。
故にウォズは関わらなくても良いと判断した。
「でもアナザークウガは五代雄介の名を」
「……その辺は私にも分からない。ただ、妙な事が起きているのは確かだ」
1月29日に行けば何か分かるだろう。
そう言われたソウゴは、唸りつつも遺跡に向かいそれに続こうとしたツクヨミが固まっているゲイツに気づく。
「どうしたの?」
「……あれは」
先ほどの光景を見て、未来で見た光景を思い出すゲイツ。
偶然と言うには……あまりにも同じだった。
ただ、この時代の男の方が温かった。
未来の男は、寂しそうだった。
その事が頭の奥でグルグルと回る。
「ゲイツ!」
「……悪い。今行く」
それを思考の外に追いやって、ゲイツはソウゴ達の元へと向かった。
◆
《KUUGA》
2000年 1月29日
「よし。まだ残っていたみたいだ」
過去に飛んだウールは新たなウォッチでクウガの力を手に入れる事に成功していた。
外では一つ前の自分が失敗作のアナザークウガを作り出し、男に助けられた所だった。
干渉するつもりは無い。これが本来の時間の流れなのだから。
問題は、誰をアナザークウガにするかだが──。
「──動くな」
思案していたウールの頭にゴリっと硬い何かが押しつけられる。
身を固くしたウールが視線を後ろに向けると……。
「お、お前は……!」
「よし着いた!」
タイムマジーンで過去にやって来たソウゴ達は、空飛ぶアナザークウガを発見する。
「逃げられる前に一気に決める!」
ソウゴはすぐさまジオウに変身し、タイムマジーンでアナザークウガを強襲。
蹴りを一発入れてアナザークウガを大地へと叩き落とすと、自分も飛び降りてアナザークウガの前に降り立つ。
『キサマ……!』
「いきなりだけど、終わらせる!」
《DE DE DE DECADE》
《ARMOR TIME》
《KAMEN RIDER WAO DECADE》
身に纏うのは世界の破壊者の力。
仮面ライダージオウディケイドアーマーとなったジオウは、ライドヘイセイバーを取り出すと備え付けられた針を回す。
《HEY! KUUGA》
《DUAL TIME BLAKE》
指し示すは古代の戦士。
封印の力が剣先に宿り、それを目の前のアナザークウガに向かって放出する。それを見たアナザークウガはガードする姿勢を示すが、アナザークウガにクウガの力を防ぐ事はできない。
巨体が嘘のように揺らめき、そして倒れた。
「行ける!」
ジオウは勝利を確信し、ディケイド ライドウォッチをライドヘイセイバーに取り付けた。
そして備え付けられた針を最大限回す。
《HEY! KAMEN RIDERS》
《HEY! SAY! HEY! SAY! HEY! SAY! HEY! SAY! HHHEY!! SAY! HEY! SAY! HEY! SAY! HEY! SAY! HEY! SAY!》
そして溜め込まれたエネルギーを一気に解放した。
《DE DE DE DECADE》
《HEISEI RIDERS》
《ULTIMATE TIME BLAKE》
20枚のカード型エネルギーを纏ったヘイセイバーの一撃がアナザークウガに叩き込まれ、集束したエネルギーはアナザークウガの体内で暴れ回り──。
『グ、オオオオオオオオ!?』
大爆発を起こしてその巨体を破壊した。
「よし、上手くいった──」
勝利した事に喜色の声を上げるジオウだが──。
「──ジオウ! まだだ!」
「え──」
ゲイツの警告の声と共に、爆煙から飛び出したアナザークウガの腕がジオウを弾き飛ばした。不意の強力な一撃に吹き飛ばされたジオウは変身が解除され、ソウゴは痛みにより咳き込んだ。
ゲイツはすぐにソウゴを庇うように降り立ち、アナザークウガを見る。
何故まだ生きているのか?
その答えはアナザークウガの腕にあった。
「アイツ……自分の腕を身代わりに……!」
アナザークウガの左腕が無くなっていた。どうやら、叩き込められたエネルギーを片腕に集中させ、捥ぎ取り、それでやり過ごしたらしい。
敵であるグロンギに封印の力を注ぎ込み倒すクウガの力の操作の応用だろうか。もしくは執念からくる生存本能か。
兎にも角にも耐えられてしまった。
しかし流石のアナザークウガも深手を追ってしまっている。肩で息をしており、変身が解除されていく。
そして現れた男に、ゲイツは目を見開いた。
「お前、あの時の……!」
「……俺はお前のことを知らないが、おそらく未来で会っているのだろうな」
「っ! 何故分かる? この時代のお前が……!?」
男の不可解な言葉にゲイツは驚き、ソウゴもまた不思議そうにしていた。
しかし男はそれに答えず、彼らに伝えるべき事だけを伝えた。
「おそらく過去に俺とやり合ってこの時代に来たんだろうが、はっきり言っておく──2018年1月30日。その日まで、俺とお前達が会う事はない」
「どういう意味だ……?」
「そのままの意味さ──それまで俺は殺されない。死なない。倒れない」
また会おう。未来で。
その言葉を最後に男はアナザークウガになりその場を立ち去る。
四人は追い掛ける事ができなかった。腕を犠牲にしてでも生き恥を晒す男の気迫に動けなかったのだ。
「どうする、ジオウ」
「──未来に行く。そして今度こそ止めてみせる」
つづく。
間に合わない