仮面ライダージオウ RIDER TIME クウガ   作:カンさん

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【空我】

 

 2018年 1月30日 12:00

 九郎ヶ丘遺跡。

 

 青空を見る男がいた。

 その男は18年間人ならざるモノとしてこの世界に居た。

 しかし異物は排除されるもの。

 男はこの世界にとって邪魔者でしかなかった。

 人智を超える体を得ようとも、世界に拒絶された彼は日に日に肉体が衰えていた。

 それを補うために──彼は人の生命力を貪って生きながらえていた。

 しかし彼の良心が二つの事を決めていた。人数は二千人まで。それが彼がギリギリ生きていられる許容範囲。

 狙うのは悪人のみ。一般人の命を狙うのは怪人と同じだと思っていた。グロンギ相手なら遠慮なく殺せた。糧にできた。

 

 しかし彼はその戒めを決めたその次の年に破る。

 一人多く喰ってしまった。後悔したが次こそはと自戒した。

 

 しかし一年経つたびに一人ずつ増えていく。

 オーロラの男は己の世界に帰れと言っていたが──彼は、もう元に戻れない場所まで来ていた。

 

 故に彼は五代雄介に殺される事を望む。

 それが救いなのだから。

 

 しかし、彼の前に現れたのは──。

 

「久しぶりだな、ゲイツ」

「……お前がアナザークウガだったんだな……だが、何故」

「言葉は交わさなくて良い。俺はアナザーライダーで、お前達はそれを倒す存在。なら、此処で出会ったのなら……戦うだけだ」

 

《KUUGA》

 

 ウォッチから闇が噴出し、その闇が男を包み込み、その肉体が異形へと、巨大へと、醜悪に変えていく。

 捥がれた筈の腕は当然のように生えていた。

 

 それを見たソウゴとゲイツも変身しようとし──時が止まった。

 

(う、動けない──)

(これは、まさか──)

 

「……しばらく止まっていてね、ジオウ」

 

 戦場に現れたのはウールだった。

 ウールはソウゴとゲイツの動きを止めてゆっくりとアナザークウガと相対する。

 ウールを見たアナザークウガは苛立ちを隠さずに吠えた。

 

『イマサラナンノヨウダ、ウール! ワザワザコロサレニキタノカ!』

「違うよ。ただ失敗作を処分しに来たのさ……この新しい仮面ライダークウガでね』

『ナンダト?』

 

 ウールの言葉に怪訝な表情を浮かべるアナザークウガに、彼はニヤリと笑みを受けべて自分は傍に逸れる。まるで、王に道を譲る臣下のように。

 

 そして現れたのは──。

 

(な……!?)

(なんで、あの人が此処に!?)

 

 ソウゴとゲイツはウールと共に現れた男に驚き、

 

『……ソウカ。ソウイエバソウダッタナ』

 

 アナザークウガは逆に納得した様子を見せ、その男の名を呼んだ。

 

『アノトキ、ウールヲタスケタノハ…………アナタダッタナ。イチジョウカオル』

「……」

 

 男は……一条は黙ってアナザークウガを見つめていた。

 その目には強い意志が宿っていた。

 アナザークウガはその目を見て、後悔で体が壊れそうなほどに情けなくなり、まともに見れないでいた。

 

『……アナタハ、ワタシガアコガレタアノセカイノ……イチジョウサンデスネ』

「……」

『ナゼナノカハワカラナイガ──アナタハキオクヲウシナッテイナイ』

 

 だからこそ分かってしまった。

 彼は──クウガの世界で、五代雄介と共に戦った一条薫本人だと。

 アナザークウガになった事で改竄された歴史から零れ落ちた記録のカケラ。

 そのカケラがこの世界に現れ、こうして偽者の前に現れた。

 

 アナザークウガの言葉を聞いた一条は、チラリとソウゴ達を見て、次にアナザークウガを見た。

 そして、ウールから渡されたウォッチを見る。

 

「今起きている事は理解している。その上で思った事を言わせてもらう」

「……」

「正直、この力を知って──彼を救えると思った」

 

 ──戦います俺! 

 

 ──こんな奴らの為に! 

 

 ──これ以上誰かの涙を見たくない! 

 

 ──皆に笑顔で居て欲しいんです! 

 

 ──だから見ていてください! 

 

 ──俺の……変身! 

 

「見ている事しかできなかった」

 

 一条の脳裏に思い浮かぶのは、炎の中決意を固め、仮面を被り戦士となった一人の男。

 彼は、戦い続けた。

 一条はその背中を見ていた。

 その背中を見る度に思った。

 彼を巻き込みたくなかった。彼の旅を邪魔したくなかった。

 警察としての矜持ではなく、一条薫が五代雄介という戦友を想った故に、その想いを強くなっていった。

 

「だから──代わりになれると思った」

 

 アナザークウガが生まれる事により、五代雄介はクウガで無くなる。

 もう、拳を、心を痛めながら、笑顔を失いながら戦う事も無くなる。

 だから、ウールからライドウォッチを手に入れた今……彼には選択肢がある。

 

「だがその前に、君の想いを聞きたい」

『ナンダト……?』

「君は──どう思っている?」

『ソンナノ──決まっている!』

 

 アナザークウガが変身を解き、その身を元の姿に戻した。

 そして仮面越しでは無く、素顔を晒して、感情を晒して叫んだ。

 

「俺は本物に殺されるべきだ!」

「……」

「俺があの人の力を、歴史を、想いを踏みにじった! なら! 裁かれるのは当然だ!」

「それはつまり──五代に、君を殺せと、そう言っているのか」

「──」

 

 男の言葉が止まった。

 一条の言葉は止まらない。

 

「なら──」

 

 一条は片手を上げて、それを目の前の男に見せる。

 

「君を認める訳にはいかない……刑事として!」

 

 それは──彼が彼である象徴であり、五代雄介を何度も救ってきたモノ。

 

 一条は、ライドウォッチでは無く拳銃を男に突きつけ、あくまで刑事として、そして五代雄介という男を守る為に──彼なりの戦う意志を示した。

 

 それに驚いたのはウールだった。

 

「な……!? お前! その力を使うんじゃなかったのか!?」

「一言もそうは言っていない。ただ、危険物を取り上げただけだ」

「お前……!」

 

 睨み付けてくるウールに構わず、一条は毅然とした態度で男に行った。

 

「投降しろ。君に五代雄介を想う気持ちがあるのなら」

 

(刑事さん……!)

 

 その強い姿にソウゴは胸に込み上げて来るものがあった。

 仮面ライダーの力が無くても、助け、守り、そして支えてくれる存在は──強かった。

 

「──もう、遅い」

「遅くない!」

「遅いんだよ! 俺はもう──取り返しのつかない所まで来てんだ!」

 

 闇が再び男を包み込み、アナザークウガとなる。

 そして、力の支配されたアナザークウガの腕は──一条へと振り下ろされた。

 

 その際の衝撃により、ソウゴ達を縛っていた時の力が乱れ、拘束が解かれる。

 すると彼らはすぐさま一条の元へと駆け付けた。

 

「一条さん!」

「大丈夫か!?」

「……ああ。大丈夫だ」

 

 一条は無事だった。飛び散った瓦礫が彼の体を打っていたようだが、彼はすぐに起き上がる。そして拳銃をアナザークウガに向けて視線を逸らさずにソウゴ達に問いかけた。

 

「救えるか?」

「え?」

「あの男は確かに罪を犯している。罰も求めている。……だが、救いたい」

「……任してください」

 

 一条の問いにソウゴは力強く答えた。

 彼の言っている事は、ソウゴの理想と同じだった。なら、託されたのなら応えるしかない。

 王として。

 

「なら、これを」

 

 一条はソレをソウゴに託した。

 彼が託されたのは闇蠢く空を青空に変える戦士の力。

 受け取ったソウゴは、笑顔を浮かべて一条にサムズアップした。それを受けた一条もまた、不気味な笑顔を浮かべながらもサムズアップを返す。

 

《ZIKU-DRIVER》

 

 腰にジクウドライバーを装着したソウゴとゲイツは、アナザークウガへと相対する。

 そしてそれぞれウォッチを構えた。

 

《Zi-O》

 

《G EI Z》

 

 そしてウォッチをジクウドライバーに装填し──乱れた時空を回し、戻す。

 

《RIDER TIME》

 

《KAMEN RIDER Zi-O》

 

《RIDER TIME》

 

《KAMEN RIDER GEIZ》

 

 さらにジオウは、受け取ったライドウォッチを構える。すると、ウールが作ったアナザークウガライドウォッチに変化が起き、その力が持つべき者の手に渡った事により本来の姿に戻る。

 

《KUUGA》

 

 クウガライドウォッチ。

 それをソウゴはジクウドライバーに装填し、回す。

 

《ARMOR TIME KUUGA》

 

 身に纏うは古代の力。

 仮面ライダージオウクウガアーマーとなったジオウ。

 そしてそれを祝福するのは──ウォズだ。

 

「祝え! 全ライダーの力を受け継ぎ、時空を超え、過去と未来をしろしめす時の王者。その名も仮面ライダージオウ・クウガアーマー。またひとつ……いや、平成ライダーの最初の力を継承した瞬間である」

「……彼は何を言っているんだ?」

「気にしなくて良い。いつもの事だ」

 

 一条とゲイツの物言いに、ウォズは気にした様子なく満足気に頷いていた。

 その光景にすっかり慣れたジオウは、一つ笑ってアナザークウガへと改めて相対する。

 

「──行くぞ!」

『ガァアアアア!』

 

 クウガの力を叩き込むジオウ。

 雄叫びを上げ、闇の力を撒き散らすアナザークウガ。

 それを尻目にウールは苛立ちを抑え切れず悪態を吐いた。

 

「クソ。今回もダメだったか」

 

 だが、次こそは。

 今回の件は既に諦めたのか、ウールはその場を立ち去ろうとする。

 

「おい」

「……お前は」

 

 しかしそんなウールに声を掛ける者がいた。

 

 

 

「はぁぁぁぁぁ、とりゃあ!!」

 

 ジオウの拳がアナザークウガに叩き付けられ、巨体が浮く。その隙を突いてゲイツがジカンザックス・ゆみモードでアナザークウガを追撃。

 ガードするアナザークウガだが、ジオウにクウガの力がある以上今までの不死性は保てない。膝を着いて息を荒げている。

 

「行ける……!」

「一気に決めろジオウ!」

 

 ゲイツは弾丸を撃ち続けてアナザークウガの動きを阻害する。以前の戦いでは腕を犠牲にして逃れられた。ならば今回は妨害をし、確実に倒す為に協力する事を決めた。

 

《FINISH TIME》

 

 時を回し、クウガの力を叩き込もうとした瞬間──ジオウは動きを止められた。

 

『な……に……?』

 

 しかし動きを止められたのはジオウだけではなかった。

 ゲイツも、一条も、そしてアナザークウガもまた、時を止められ動けずにいた。

 このような芸当ができるのは彼らしかいない。

 

「そう逸るなジオウ。パーティはじっくりと楽しめ」

「お、前は……!」

「ス……ウォ、ルツ……!」

 

 スウォルツは時が止まった世界で、ウールを伴ってアナザークウガの元へと歩く。

 どうやらウールと二人がかりで時間を止めてアナザークウガの動きを止めているらしい。

 スウォルツは、アナザークウガの首元に飛び乗ると、勢い良く腕を下へと突き出した。

 

『ガ……!』

 

 突き出された腕はアナザークウガの肉を貫通し、スウォルツの手にライドウォッチが握られる。それを引き抜いたスウォルツは、手に持ったウォッチを見て関心した声を出す。

 

「ふむ……よくもまぁ18年も間アナザーライダーとして活動できたものだ」

 

 過去に、15年間アナザーライダーとして活動し続けた者がいた。その者は途中スウォルツの手により別のアナザーライダーの力を得て活動を継続する事ができた。

 しかし、この男は違う。

 この男がアナザーライダーとして活動し続ける事ができたのは……。

 

「他者の命を吸い取って騙し騙しやって来たのだろうが──今のお前ではジオウに勝てん」

 

 そう言ったスウォルツの手にあるライドウォッチは、まるで寿命が尽きたかのように力を失い砂となって崩れ去る。このまま時を動かせばアナザークウガは消えるだろう。だが、スウォルツの目的は──その逆だ。

 

「人を殺し続けたお前は闇だ。殺される人間にとっては究極の闇と言っても差し違えない」

 

 そんなお前にピッタリな力がある。

 そう言って取り出したのは黒いアナザークウガウォッチ。

 それをスウォルツは起動させて男に叩き込んだ。

 

《KUUGA》

 

 今までの比ではない闇がアナザークウガから噴出し、闇は青空を覆い隠し黒く染めた。この空は……この世界は我のモノだと言わんばかりに。

 闇に呑まれ自我を失ったアナザークウガ……否、アナザーアルティメットクウガは、時の力を闇で吹き飛ばし、空に向かって吠えた。

 

《GAAAAAAAAAAA!!》

 

 その際の衝撃によってジオウ達の時止めの力も吹き飛んだ。

 しかし喜んでもいられない。アナザーアルティメットクウガは、口から闇を吐き出すと、その闇から大量の怪人が現れた。

 

「あれは……」

「グロンギ……?」

 

 一条は見覚えのあるその姿に目を見開き、ゲイツはその醜悪な意姿に眉を潜めた。

 血に濡れたような肉体に、頭から伸びる昆虫のような角。半開きの口からは不揃いの歯が見えた。まるでアナザークウガを人型に収めたかのようなグロンギ。それがゾンビの様に溢れ、ジオウ達へと襲いかかる。

 

 スウォルツはそれを見る事なくこの場を立ち去ろうとし、連れて来られたウールは彼に尋ねた。

 

「ジオウがやられる所見ないの?」

「やられようがやられまいが、どちらでも良いさ」

 

 後始末は終わったのだから。

 その言葉を最後に、タイムジャッカー達はこの時代を去り、次の王の擁立に向かった。

 

 その事に気づいていないジオウとゲイツは、大量に沸いたグロンギ怪人の相手をしながら、何とかアナザーアルティメットクウガの元へと向かおうとしていた。

 しかし数が多い。

 

「くそ、どうにかしないと……!」

「!! ジオウ焦るな!」

 

 ゲイツが警告すると同時に、力を解放しようとしたジオウをグロンギ怪人が羽交い締めにし、そこにアナザーアルティメットクウガの闇色の炎が彼を吹き飛ばした。威力は凄まじく、ジオウの周りに居たグロンギ怪人を消滅させるほどだった。

 

「ぐは……!」

「ソウゴくん!」

 

 駆け付けようとした一条だが、その行く手を阻む様にグロンギ怪人が立ち塞がる。

 一条は手に持っていた拳銃を構えて発砲。しかし銃弾はグロンギ怪人の皮膚を突き破る事ができず、パラパラと銃弾が地に落ちた。

 そして一条の首を掴み、ギリギリと締めながら持ち上げる。人外の力で捉えられた一条は逃げる事ができず、苦悶の表情を浮かべてグロンギ怪人の腕を掴んだ。しかし、その抵抗すら面白いのか、まるで楽しむ様にグロンギ怪人は一条を絞め続ける。

 

「やめろぉ!」

 

 助けようとするジオウとゲイツだが、それを阻む様に数多のグロンギ怪人が襲い掛かる。

 

(い、しきが……)

 

 息が出来ず力が入らなくなった一条。それを見たグロンギ怪人は、もう遊べないのかとがっかりした顔をし、不要な物は壊してしまおうと片手を手刀にし、目の前の一条に向けて突き出し──。

 

 

 バイクのアクセル音が響き、グロンギ怪人は横からの衝撃で吹き飛ばされた。

 そして一緒に吹き飛んだ一条は、そのバイクの乗り手によりキャッチされた。

 

「っ……けほ、けほ……」

 

 肺に酸素が供給された一条の意識はすぐに回復し、自分が無事な事に驚く。

 そしてふと視界を上げ──目を見開いた。

 そこに居たのは──。

 

「──五代」

「遅くなってすみません。一条さん」

 

 五代雄介その人だった。

 五代は、抱えていた一条を下ろし自分もバイクから降りるとアナザーアルティメットクウガと大量のグロンギ怪人を見据える。

 

「お前……なんで……」

「正直、俺もよく分かっていないんですが──でも言ったじゃないですか」

 

 中途半端な決意ではなかった。

 

「誰かの涙は見たくない。みんなには笑顔で居て欲しい。だから戦います」

「だが……!」

 

 その想いは本当だった。

 

「大丈夫! ……大丈夫ですから」

 

 それは最後まで変わらなかった。

 そしてそれは今も──。

 

「だから、見ていてください──俺の変身」

 

 五代が腹部に手を添える。すると、彼の身体からアークルが出現し、力を滾らせる。

 そして左手を腰だめに、右手は戦いへの迷いを打ち払うようにゆっくりと前へと突き出し、左から右へと動かす。

 

 それを見たグロンギ怪人達の動きは早かった。

 アレはダメだ。存在してはいけない。

 アレは自分達を否定する──本物だと。

 

「おおおおお!」

 

 それを五代は受け止める。受け止めた右腕が変わった。

 左脚で蹴り飛ばした。左脚が変わった。

 左の拳でグロンギを殴り飛ばした。左腕が変わった。

 回り込んで動きを止めようとしたグロンギを右の回し蹴りで迎撃した。右脚が変わる。

 複数のグロンギ達が掴みかかり、それを五代は受け止め踏ん張り──。

 

「──おりゃあああああ!!」

 

 肉体が、顔が、全身がクウガへと変わった瞬間、全員を投げ飛ばした。

 その際にクウガの力に触れたグロンギ怪人達はエネルギーに耐え切れず爆散し、クウガは炎揺らめく中、アナザーアルティメットクウガを見据える。

 

『GAAAAAAAA!!』

 

 雄叫びを上げるアナザーアルティメットクウガ。しかし五代にはそれが泣き叫んでいるようにしか見えなかった。

 

「あの、五代さん!」

「ん? 君は……」

「ジオウ。仮面ライダージオウって言います」

「かめん……? よく分からないけど、俺と似てるね。顔に「クウガ」って書いてあるし」

「あ、いやそのこれは……」

 

「呑気に話してる場合か! さっさとアナザーライダーを倒せ!」

 

 緩みかけた空気をゲイツの声が引き締めた。

 

「オレがコイツらを喰い止める。だからお前らがアイツを──あの男を救ってやれ!」

 

「──と、いう訳なんです」

「うん、分かった。俺もそのつもりで此処に来た」

 

 そう言うと、クウガとジオウはアナザーアルティメットクウガへと立ち向かった。

 自分を害する存在を敏感に感じ取ったアナザーアルティメットクウガは、口から闇色の炎を吐き出しクウガ達を焼き殺そうとする。

 しかしクウガは機敏に避け、ジオウはジカンギレードで打ち払いながら距離を詰める。

 そして懐まで入ると力を込めて思いっきり拳を叩き込んだ。

 

『GU──』

 

 一瞬怯むが、すぐに腕をクウガに向けて振り下ろした。

 

「超変身!」

 

 しかしそれをクウガは紫の力──タイタンフォームの力で受け止めた。まさか避けるのではなく受け止めるとは思わなかったアナザーアルティメットクウガは一瞬動きを止め、背後のジオウに気付かなかった。

 

「おりゃあ!」

 

 ジカンギレードを叩き込み、角を折る。その痛みにアナザーアルティメットクウガは悶え、その隙に青の力──ドラゴンフォームになったクウガは跳躍し、空中で赤の力──マイティフォームに切り替えて拳を振り抜く。

 顎を撃ち抜かれたアナザーアルティメットクウガはバランスを崩し、その巨体を地に沈めた。

 

『GA……ガ……が……ぁぁ……!』

 

 本来なら力の格で言えばアナザーアルティメットクウガの方が上だ。

 しかし実際はクウガの力が嫌と言うほど効いている。スウォルツが見れば理解できず困惑するだろう。

 だが──現にこうしてアナザーアルティメットクウガは地に伏している。何故か? 

 

「君も、戦っているんだろう」

『……ご、だい……ゆう……』

「あともう少しだ。だから頑張れ」

『……で、も……お、れは……』

「──大丈夫」

 

 クウガはサムズアップした。

 

『……』

 

 それを見たアナザーアルティメットクウガは──最後の力を振り絞って起き上がらせた。

 まるでこれから処刑される囚人のように。

 まるで天に許しを乞う咎人のように。

 

「行くよ、ジオウくん」

「はい!」

 

 ジオウはジクウドライバーに装填された二つのウォッチの力を解放して時を回す。

 

《FINISH TIME》

 

《KUUGA》

 

《MIGHTY TIME BLAKE》

 

「ふっ──ハァ……!」

 

 クウガは全ての力を右足へと集め、構えを取る。炎の様に揺らめく封印の力が一点に集中する。

 

 クウガとジオウは、アナザーアルティメットクウガへと走り出し──跳躍。

 そして空中で一回転すると、そのまま足を突き出し──。

 

「うおりゃあっ!!」

「てりゃああっ!!」

 

 気合の掛け声と共に──その力をアナザーアルティメットクウガに叩き込んだ。

 

『──』

 

 すると、叩き込まれた二ヶ所にクウガの紋章が現れる。その力は全身を巡っていき──。

 

『──ありがとうございます』

 

 大爆発を起こし、全ての闇を吹き飛ばして──。

 

 

 

 闇に覆われた天が、青空になった。

 

 

 ◆

 

 

「おめでとう我が魔王。これでまた一歩魔王へと近づいた」

 

 ウォズの視線の先にはクウガライドウォッチ。今回の戦いで継承された力。

 しかしソウゴの顔は浮かばない。

 

「でも……あの人は大丈夫なのかな」

「アナザークウガの変身者の事かい? 彼は特殊な存在だからね。……今回の事は忘れる事はできないさ」

 

 アナザーアルティメットクウガウォッチの破壊により、歴史は修正された。2000年から続くゲゲルは跡形も無く消えた。

 

 しかし彼の記憶は残ったままだ。

 このままだと、罪の意識に囚われそのまま自ら命を絶ちそうだったのだが……。

 

「心配しなくても良いと言われただろう」

「ゲイツ」

「そうよソウゴ。信じましょう。一条さんと五代さん……そしてあの人自身も」

 

 ゲイツとツクヨミの言葉を聞き、ソウゴは彼らの言葉を思い出した。

 

『確かに彼は酷いことをしたし、取り返しのつかない事をした』

『だが、歴史が修正され死人はいなくなった。でも罪は消えない』

『だから、彼が望むならこちらの世界で償ってもらう事になる──殺した人以上の人間を守って、そして救ってね』

 

 男もまたその覚悟が出来ていた。今ごろ喫茶店で働きながら勉強し、将来は医師かはたまた警察になって人の為に戦っていくのだろう。

 その事を思い、ソウゴは笑顔を浮かべた。

 

「うん、大丈夫なんだろうね」

「そもそも、大丈夫じゃないのはお前だろう」

「え?」

「聞いたぞ、お前また赤点取ったらしいな!」

 

 情けない醜態を晒すな、とゲイツが怒り出し、ソウゴは言い訳をし始め、ツクヨミが仲裁に入る。

 

 そんななか、ウォズは一人店を出て外に出る。しばらく歩き、一人の男の元へと向かった。

 

「今回は随分と暗躍したようだね……門矢士」

「スウォルツが余計な事をしたからな……ただの嫌がらせだ」

 

 灰色のオーロラが現れ、その先から門矢士が現れる。

 手には五代雄介から返して貰ったクウガのカードがあり、それを彼はライドブッカーに仕舞う。

 

「奴があの男をこの世界に引き摺り込んだ。ならばオレは一条薫と五代雄介をこの世界に送り込んだ……丁度ジオウが引き寄せていたしな」

「しかし意外だったよ。そのカードを彼に託す事に」

「……」

 

 ウォズの言葉を受け、士の脳裏にもう一人の仮面ライダークウガを思い浮かべる。

 底抜けのお人好しで、世界の破壊者なんて言われている自分の仲間で居続けた男。

 

「別に……ただ」

 

 ユウスケだったら、こうしていただろうな。

 などと思いつつも、士はその事を決して言わなかった。

 沈黙を続ける彼に、ウォズは言った。

 

「ゲイツくん達はああ言っていたけど、彼にはまだ被殺願望があるんじゃないか?」

「ひさつ? ……あぁ、被殺か」

「そう。あの男は五代雄介を、仮面ライダークウガを信仰していた。あそこまで大きい想いはなかなか消えないと思うよ」

「知っている。散々話した」

 

 士は、あの男を元の世界に返そうとしていた。だが、男は拒否し続けた。

 クウガに、五代雄介に殺される為に。

 しかし今は、その五代雄介に生かされている。

 

「だが大丈夫じゃないのか?」

「何故そう言い切れる?」

「例え暗雲立ち込めても、雨が降っても、雷が鳴っても嵐が来ても、空はいつか青空になる。照らしてくれる太陽があればな」

 

 士は信じていた。

 五代雄介の対面に立ち、大丈夫だと言われ、その言葉を信じた男の事を。

 

「全く、いつも不遜な態度で言い切るね。君は何様だい?」

「通りすがりの仮面ライダーだ……覚えておけ」

 

 その本にでも書いてな。

 その言葉を最後に士はオーロラに呑み込まれて消え、それを見送ったウォズは肩を竦めるとソウゴの元へと戻った。

 

 

 ◆

 

 

 早朝。

 喫茶ポレポレの玄関にて、一人の男がホウキを手に掃除をしていた。道路に落ちた落ち葉をある程度片付けていると、ふと空を見上げる。

 

「今日も青空が見れるなぁ」

 

「おーい! こっちも手伝ってくれー!」

 

「はーい! おやっさん!」

 

 男はホウキを片付けると店の中へと入っていった。そしてすぐに店のエプロンを付けるが、その胸元には妙な紋章が刻まれていた。

 その意味を知る者は少ない。だが知る者が……例えば、とある学者が見ればこう言うだろう。

 

 クウガ……と。

 

 




これにて完結
被殺願望杯お疲れ様でした!
主催者である氷陰さんにこの場で感謝の言葉を!
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